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「俊水」の掲示板
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一読者です。
2013/06/12

お酒はほどほどに。

おしぐれ俊ちゃんの つんのめりライド(7)カーボチャージ
2013/06/06

本日から出発日までの3日間は完全休養日です。
練習はしない。
ワシのバイブル誌 「Tarzan」 に書いてあった。
試合の前3日間は筋トレを止めて休養と栄養の時間に当てなさい。
肉食を絶って炭水化物(カーボ)を主とした食事をしなさい。体重を増やして試合のスタミナにしなさい。酒はほどほどにしなさい。
禁酒と書いていない、さすがはバイブル誌である。

朝ゆっくり起きて昨日の残りの煮込みうどんを温めながら生玉子と刻みネギをかき混ぜて、やや硬めの仕上がりにしてゆっくり食う。
その後は自転車のメンテ状況を確認しただけでイジらない。
イジリ始めたらきりがないからだ。

トランスポーター車の燃料を入れに行ったついでに自動洗車機のハイグレードコースを選択したら、大量の泡が窓ガラスを覆って視界がなくなり宇宙空間に放り出されたカプセル内に閉じ込められたような気分だった。
このコースは泡洗車とワックスコーティングとでキカイが2往復するシステムになっているようで、長時間孤独のカプセル内に閉じ込められキカイの振動に揺られたから宇宙酔いになったのだろう。
次回からはスタンダードコースにしないとイカン。
飲み物や気つけ薬を持って臨まねばナラン。
心臓に持病のある高齢者なら辞世の句などシタタメてから乗り込むことをお奨めしたい。

家に帰って車内を掃除して、荷室の空きスペースに簡易ベッドを取りつけた。
といっても空気自給式のエアマットを袋から出して広げただけ。
このマットは広げながらエアバルブを開くと、空気が自動的に吸い込まれて適度な弾力に膨らむ。
水難事故やデルタ地帯の渡河の際には緊急浮力補助にもなるUSアーミー御用達という振れ込み品、もちろん防弾の楯にもなる。

去年の夏、秋田男鹿半島の付け根の道の駅で寝てみた。
昼間広げておいた間にマットがすっかり暖まってエアがパンパンになっていて、空気を排出しないと背中が安定せずゴロゴロするほどだった。
しかもその空気が熱いから真夏に電気毛布で寝ているみたいだった。
これは使う直前に空気を充填すればよいものなのだ、とは書いてあっても戦時英語は暗号が多くて読めないからイカン。
ベトナム戦争のころに作られたこのマット、半世紀たってもなお健在である。ウエポンウエアは凄いなあ。

おおそうじゃ、庭の雑草を抜かにゃならん。
素手で引き抜いて奮闘したが、ムラサキトカゲが一匹飛び出してきたころにはドクダミ草の匂いがカラダじゅうに充満して雑草酔いとなり、5分でやめた。
どうもワシは自転車以外の世俗のコトに手を出すと酔うようで、トカゲの安穏にも影響があることからアスリートは余計なコトをしてはナランということなのだ。

今日はカーボチャージに専念する日だからそろそろ昼飯の準備をせねばならん。
めしのあとは昼寝だ。
レトルトカレーなど温めてご飯を食おう。
納豆餅もいいな。
これなら酔うことはあるまい、ビールを飲みながらやるんだから。
syn

おしぐれ俊ちゃんの つんのめりライド(6)勝負服
2013/06/04

前号(5)にて
「BE-PAL誌に掲載されたり福島テレビで放映されたとき、一番かっこよいのがオラだからすぐにわかる」
と豪語したのには訳がありましてな。

届いたのですよ、頼んでおいた2013宇都宮ブリッツェンのチームジャージーが。
週末の 東北サイクルエイドJapan に間に合ってしまった。
レプリカだけどしっかりスポンサー名が入ってオラもプロライダーみてえだんべ。

道ばたでヘタレてタバコなんか吸っていたら石投げられるなあこりゃー。
完走の重責をオノレに科すのもまたモチベーションUPに有効なんですわ。

背面の 緑のくまもん は熊本の黒いくまもんがメジャーに昇格するもっと以前から当地宇都宮で地域貢献度の高い(株)熊本商店のロゴ。
その下の 「走れば愉快だ宇都宮」 の文字はJAZZと餃子と自転車の街 宇都宮のサイクル標語であります。

したらば、コレ着て練習にでかけます。
昨日サイクルロードのトイレで、掃除のおばさんに声を掛けられた。
「あんた よく見かけるけど、競輪のひとなの?」
「いやー ただのリタイヤじじい ですよ」
「あらー 40代だと思ったわ 筋肉もりもりだものー、あんた奥さんいるの? あたし独身よ」

はぁ ♪ 走れば愉快だ宇都宮。
syn

おしぐれ俊ちゃんの つんのめりライド(5)雨降り
2013/05/30

あの変な洒落をいう予報士が気の毒そうな作り顔で、しかも自信たっぷりに、
「関東甲信越 梅雨入りしました」
宣告などするもんだから翌日は朝から雨。それも本格的な降雨。
おかげで4月中頃で止まっていた本欄に書きこむ余裕ができました。

雨で練習に出られない日には部屋を片付けて 掃除をして 風呂を洗って 庭の雑草を抜いて メールに返事を書いて…
色々あった一日の段取りも、結局は小屋で自転車を磨き終わったらもう昼で、「おしぐれ…」 を書いたら栄養補給のための独り宴会で終わりそう。
どちら様も文句はあるまい、オラの人生じゃ。

5月になってすぐに交換したミシュランのタイヤは評判通りの高性能で、練習走での巡航速が1km毎時高まった。
追い風のときには3km毎時速くなったと体感している。
これはどーゆーことかと推測するに、路面に粘りついて走行抵抗となる 「ころがり抵抗」 が小さい特性の恩恵なのだろう。かといってコーナーで滑るとか制動時の距離が伸びたとかの負の感触はさらさらないから、要するに良いタイヤにめぐり会ったということか。
オラにしては珍しい、おフランス製を褒めてしまった。

懸念のエンデュランス(耐久)性だが、商品名エンデュラの通り千?`走ってパンクは一度も無し。
接地面の傷はダンプ道を横切ったときに砕石の傷を少々受けたが、問題になるレベルのものは無し。
さて摩耗度だが、従前のヴィットリアとの比較で千?`では早いと思われる。
ちなみにヴィットリアはオラの敬愛するイッタリンなのだ、決まってっぺえー。

このタイヤ、6月初旬の 「サイクルエイドJapan2013」 までに踏面の有効高さが半分を下回ってしまうのではないかと心配。
現在の減り具合がタイヤとしての働き盛り、盛りを過ぎるとタイヤも男も急速に枯れ葉モードに突入なのよね。心配だあー。
かといって練習走を止めてタイヤを温存するなんて、そーゆー姑息なことは自転車サムライマンの取るべき道ではねーべ。
ここで練習を中断したら筋肉痛の上に筋肉痛を上書きコーティングして構築したオラの自慢の脚が、安達太良山を踏み越える黄金の太ももが減衰してしまうっぺ。

それよりも もーっと心配はこの雨だあ、東北地方の梅雨入りはまだのようだが平年より10日早いとすると丁度イベント当日の頃。
梅雨入り発表の直後に大雨になり、その後いったん小康するのが日本型梅雨の特徴。
小康の日でも何でもいいから晴れて欲しい、出来れば湿度も下げて欲しいもんだなや。

やい、予報士! オメ 風疹かO157に罹って会社を休め! 替わりのヤツには天気図の読めない脳天気なヤツを出せえーっ。

みなちゃん、 最終日福島の四季の里 ゴールは6月9日(日)午後3時頃です。
感動のゴールシーンとグランドフィナーレ 小学館のBE-PAL見てね。
ちなみにオラのゼッケンナンバーは S 9018 いちばんカッコいいのがオラだですぐわかるだ。
syn

おしぐれ俊ちゃんの つんのめりライド (4)雨の日のオタッキー
2013/04/22

4月の初旬は雨の日が多くて気温が上がらず寒かった。出かけるのはやめにして自転車小屋でマシンのメンテに精を出していたんです。
チェーンを洗浄してホワイトガソリンで脱脂し、よく乾かしてからセラミックスのワックスルブを塗り込んだり、変速機のギヤを外して一枚一枚磨いたりしていた。
タイヤホイールは振れ取り台に載せてスポークの張りで左右の回転振れを取る。
±0mmの脳もしびれるシビリアンコントロールなんですじゃ。

「オタクと言うまいなー それ言われんのがいちばん嫌や、雨ではなーんもすることがあんめー」
(この行、雨 と あんめー とが掛け言葉になっていることを説明まで気がつかんとは、とほほ)

”振れ取り”という行程を知らん御仁には台に載せて回せば自動で出来ると思うかもしれん。
だが台が勝手にそんなハイテクなことをするくらいなら、その台を商品化して団塊屋商店の【なーさん】とこに販売を任せてワシは左うちわで暮らすわい。

振れを取るのはワシの手ぇや。スポークレンチという小さなネジ回しを持ったワシのゴッドハンドの手ぇ仕事なんじゃ。
直径が700ミリもある輪っかが振れもせんと「シューッ」と回っているのを不思議に思ったことないのんけ?
あれは中央から何本も突っ張っているスポークっちゅうステンレスの棒が、押されたら往なし(いなし)引かれたら突き戻しして、ウマいことバランスを取っておるからなんや。
そのスポークのテンションを目ぇーと手ぇーで微〜妙〜に案配するのが”振れ取り”っちゅう下町職人の技やないけ、憶えときー。

この世で地球以外のモノが回るっちゅうことは大変なことなんや、宇宙の摂理に逆らって回るんやからな。
回るモノはいつかは止まるやろ、アレが神様のご意思なんや。
なんで地球は止まらんか?
それはなあ、広ーい地表をワシら自転車乗りがぐるぐるグルグル回しとるからなんやが、それを証明できんから自転車乗りは貧乏なんや。

回転体はバランスが崩れると長く回っていられない、北のアホを何とかせんと今に地球も止まるでー。
自転車のホイールを出来るだけ長あ〜く回しとこうと工夫して苦悩する。そーゆーひとは大勢いるが、たまたまひとより少こーし抜きんでいると勝手に宣言した者が名人と呼ばれるんじゃ。
だから本当の名人は普通のひとのなかにいる。
ワシの場合は現代の名工100選のテレビカーがいつ来るのか待っておるんじゃから山師と呼ばれてもしゃーないなあ。

振れ取り台はホイールを卓上に固定する台に過ぎん、その台にトースカンという回転のセンターを見る針を取りつけてワシが作ったオリジナル・ホイールアライナーなんじゃ。
なにーっ! トースカンを知らんてか? ソースカン(総好かん)の語源じゃー。 Google事典に載っとるでー。
死んだばあちゃんの使っていたお針子台を改造して作った世界にオンリーワンの名品なんじゃ。 
なにー! お針子台を知らんてか? 嗚呼あ… 世も末じゃわ。

お針子台はなあ、ばあちゃんの出は會津武家屋敷の隣りというかご町内の外れのほうじゃったが、そこはさすが會津じゃ。會津朱漆(あいづあかうるし)仕上げの見事な出来じゃ。
おまんら見たこともあるまい、国宝級の逸品なんじゃ。
それをワシが持ち出しての、振れ取り台に改造しちまった。
文化財保護法違反なのは知っちょるが、孫のワシの手に掛かって世界オンリーワンのスーパーツールに昇華したんや、死んだばあちゃんも本望だべ。

今、そのホイールに装着されているヴィットリア社(伊)製のタイヤは寿命近くまで使ったので交換時期を迎えている。
雨がやんで晴れて路面が乾いたら、桜吹雪のなかをラストランに行く。
帰ったら感謝をこめてリムから取り外す予定で、振れを確認した後はお湯で絞った温かいタオルで拭いたり、小さな傷のひとつひとつの思い出に別れを告げていたんじゃ。
(オタクもここまでくると〇〇バカといって賛美の対象になりますな)

虫めがねで見ないと無視してしまうほどの小さな傷は尖った小石やガラス片を踏んで付いたものだが、初心者のころはこれが原因でしょっちゅうパンクしたものだ。
初心を脱したと自覚できたのは3年ほど経ってパンクが極端に減ったときだった。減ったというよりパンクしなくなった。
なぜパンクがなくなったかというと、種々試した耐パンク性が高いといわれるタイヤのなかでヴィットリアのルビーノ・プロ3という銘柄が自分に合っていた。

このヴィットリア・ルビーノ、見た目はママチャリ用のような冴えない外観なのだ、センター接地部だけスリックでその周りに細かなイボイボが配置されている。
シリーズ名の意匠もロゴも地味だから店頭では見向きもされない。
だがこのイボイボこそが荒れたロードで小石を跳ね飛ばし、石畳路では目地に喰い付きしてセンター部を破壊から守るらしい。
その分重たくなってレーシーな走りには向かないと世間では言われているが、どーしてどーしてなかなかの性能を発揮。
加速・制動・操安・悪路での乗り心地・静粛性・さらに下りカーブでの絶対の信頼感、そしてそれらに見合った価格、どれにも致命的なところがない。
つまりコストパフォーマンスに優れているとワシは評価している。

輸入車販売店ではイタリア車にはこぞってヴィットリア製を装着しているが、なぜこのルビーノ・プロ3でないのか不思議に思っている。
見た目の地味さに理由があるのだろう、なにしろ車体がキラキラのイタリアンですからなあ。
一方フランス車にはミシュラン、と祖国愛が出ている。
欧州では自転車産業が自国の威信を引っ張っている。小学生の男の子に将来なりたい職業を聞くと、自転車レーサーが第一位。サッカー選手を大きく引き離しているのだ。

ワシの自転車はイタリアで溶接された。
発注から二年後、ミラノ港でフレームを積んだ貨物船が大阪港に入って税関で検査中との知らせを受けたワシはタイヤをパナソニックに指名した。ワシ、一部では国粋主義者なのだ。
パナソニックにはパナレーサーというタイヤ部門があって、国内価格は伊・仏のものより安価。
そのうえ世界に冠たる日本パナソニックの一角であるから内緒で舶来バイクを買った国粋主義者のうしろめたさをカバーするに十分なアイテムであった。

国粋主義ではあるがフレームだけはイタリアでなければならん。断じてならんのじゃ。
自転車はのう、レロナード・ド・ヴァンチが発明したんだぞ、彼を生んだ国の自転車以外は自転車でねえだ。
フランスには LOOK とか TIME とかツールのアルプス登りに特化したカーボンの軽量モデルがあるが、重たくったってユルたくったって、カッコいいのはイタリアンだんべ。

ワシは十年ほど前にミラノ近郊のカンビアーノという田舎町に行った。イタリアンフレームの寸法採りに行ったんだ。
「コルナゴが欲しくばここまで来てオメの筋肉を見せろ、見合ったフレームを作って進ぜよう」
って社長のエルネスト・コルナゴが偉そうに言うもんだでよう。
「ばかやろ おらはエコノミ大国日本のカスタマーぞ。円はリラより強いんだぞ。スケール持ってそっちから来い」
って返メールしたんだ。
そしたら、
「気候風土の異なる御地での計測値は当地での溶接作業にデータの混乱を生じます、なお お支払はユーロでお願いします」
って、およそイタ公らしからぬアカデミックなメールやないかい。
ワシは行ったんだあ、アカデミーノなエルネストに会いによう。

英語が通じるローマあたりまでは良かったが、イッタリアーノばっかしのミラーノエリアに行ったればダメだったなや、
「ほおお ここが映画「シバの女王」のユーロロケ現場け、てーしたもんだなし」
なーんて駅前の噴水に見とれておったれば、退職金前借で換金したユーロ金を大事に入れたバッグを悪ガキに置き引きされてなも。
ワシ、たったひとりで言葉もわからん異国の路上でパスポートもクレジットカードも日本健康保険証もなくなって、途方にくれておったんじゃ。

ほしたらオメ、なーんと ジーナ・ロロブリジータみてえな美人が近づいてきてなも、
「もし あんさん どないしゅつっつがると?」
って分らんドイツ語で話しかけるでないの。
「ははーん これは美人局に違いない」
ってワシは思たんよ。

なに! 美人局ってなんですか? やて?! … はあ 困ったなもし。
ワシ、地球の裏側まで来て美人局の解説などしとれまっかいな。

ともかくも、ワシがfareast極東のJapanの日本からはるばるoverseaして、鍛冶屋のcolnagoコルナゴを訪ねてvisitして来たと分ったら大変だった。
イッタリアーノで鍛冶屋のコルナゴ言うたら、今の安部総理の親戚みたいな歓待を受ける。
当時は3番サード長嶋の親戚みたいな大歓待。
この国ではコルナゴの顧客はプラネットプラチナム色のクレジットカード保有者と同じ扱い。
つまりローマ法王に次ぐVIPだから、ナッポリアーノ大統領が警察庁を機動してあっという間にワシのバッグは戻って来た。マフィアの親分さんが見つけてくれたんだそうだ。
そして小麦畑の真ん中にあるコルナゴの工場までフェラーリのパトカーで送ってくれた。
ロバが荷馬車を引いてトコトコ歩む沿道にイタリー三色旗と日の丸がはためいていたのは言うまでもない。

カラダの寸法はローマで紳士服ジョルジオ アルマーニの職人をしていたというマイスターが担当して、その図面を3Dの自転車画面に転換し、さらに等身大に拡大してからワシの跨るトロイという名前の木馬に被せて決められた。
フレーム強度は木馬のペダルを必死に踏んで巻き上げた石の重さと紐の長さでワシの筋力を判断し、必要最低限の強度にとどめて重量を抑え”しなやかさ”を保つんだそうだ。
そのためパイプ厚と継手の長さ、溶接に使う銀蝋(ぎんろう:ハンダのこと)の量が正確に指定されたオーダー書が作られて鍛冶工房に送られた。
強度レンジはユーロ中年女性の太っていないタイプ(W50S)という仕分けなんだと。
ウーマン50才スリム、分りやすいがそれって非力ってことかいな?
この会社、社長と弟パウロそして子供たちだけで分業しながらやっている町工場。寸法採りのあとはホームパーティに呼ばれて美味しい料理とワインをいただいた。

帰りはフィアットのスポーツカー・アバルトで空港まで送ってもらったが車中、
「そういえば納期とカラーを決めていなかったね」
とパウロに問うと
「んなもなー おまかせなのさ、イタリアンデザインを信じて待っていなせえ。おらのサインも書き入れておくでよ」
タイトなコーナーをドリフトで抜けて行くパウロの返事は自信に満ちていた。

ヴァチカンにもトレビの泉にも立ち寄らず出国ゲートに立ったら、
「荷物はないのか?」
と聞かれた。
バッグごとコルナゴに渡し、チケット類だけポケットに入れてきた軽装の外国人はワシひとり。
テロリストかスパイと思われたようだ、金属探知機とX線でしっかり調べられた。
「ワシの名はデューク東郷、ユーロではゴルゴ13と呼ばれておる。空港に銃など持って来るものか フッフッフ」

成田のショップからワインのお礼に”會津誉れ”の日本酒を送った。ワシのフレームがオナシス海運の船に乗って大阪港に着いたのはそれから二年後だった。
二年間も注文を放っておいたのではない。他の仕事が混んでいたのも確かだが火を入れてから数か月放置して、熱歪みを安定させてから治具に載せて”ひずみ”を取るのだ。
へら鮒釣りの竹竿だって、作者の許に再火入れに出したら二年から三年は戻って来ない。そーゆースパンの世界なのだ。
日本の質屋の三か月は短いのだ。

ところでパナソニックのタイヤではよくパンクした。
小石を踏んではパンク、ガラス片を刺してパンク、おまけに擦り減るのも早かった。
ワシらのタイヤは軽くするために薄く作る、軽さを追及すると貫通防止の補強部材を少なくしていくから縁石に擦りついただけでもサイドが裂ける。
擦り減るのはグリップ性の証しで、減らないタイヤでは氷の上を新幹線の鉄輪で走るようなもの。
相反する軽さと耐久性の要素をどのように融合させて個性の異なるユーザーに満足を得てもらうか、世界中のタイヤメーカーの苦悩は今も続いている。

二面性の葛藤をジレンマという、日本古語では「アチラ立てればコチラが立たず はて ヨイヨイ」という。
ジレンマを自錬磨と訳せば、エンジニアリング立国日本のモチベーションは高まろう。がんばれニッポン。

ジレンマの異母兄妹語にトラウマというのがある。
死んだ會津のばあちゃんが、
「ええが俊坊 よっくと憶えておけよ、もしもおめーが都会さ行って、新宿あだりに 「長州屋」 という屋号のラーメンそば屋があったれば、ぜーってぇに 入ってはなんねえ。
銀座のとんかつ屋だって蒲田の質屋だって 「長州屋」と名が付いでいだら なーんでも 近づいてはなんねえ。
プロレスだって長州力の応援団さ混じってはなんねえ、グレート東郷の側さに廻れ、デューク東郷の従兄弟だあ。
長州はなあ おらほの會津さ合図もなしに大砲ば打ち込んだ仇敵だあ。
おらの爺いさまはなあ 鶴ヶ城を背ぇーにかばって両刀抜刀、賊敵の大砲さ一番先に突っ込んで行ったんだあ。 
おらは決心してるぞお、死ぬまでにいっぺんでええがら 腕に覚えの薙刀で長州さ仇を討ちてえ。長州屋の看板さに爺いさま形見の一太刀をくらわしてやりてえ。
おめは外孫だから形見の太刀を渡すわげにはいがねーが、おらが嫁っこに来るときに、かか様に持たしてもらったこのお針子台をやる。
ええが、これには秘密の仕掛けがあってなあ 心棒を外すと鉄砲になっておる。ええが、撃つときが来たなれば よーくと狙って 一撃で討つべし」

ワシは今でも長州ラーメンは食わない。
ばあちゃんとの約束だからだがラーメンは、
深く碧き猪苗代湖の畔に端座し、潔く高し磐梯山を望み見ながら食べる喜多方ラーメン。その美味しさは正に本邦において他にこれなし、だからだ。
ちなみにばあちゃんの名前はおトラといって、少年期のワシとはなぜかウマが合った。

ヴィットリアのタイヤに出会うまでに履き潰したタイヤは練習用フラットバーバイクの分も含めると相当数になる。
タイヤ数もさることながらチューブとなると三倍数になろう。
パンクしたチューブは廃棄してパッチで貼ることはしないからだ、タイヤを新しくするときにはチューブも新品にするので随分と資源を浪費したことになる。

近年廃チューブのゴムを再利用してハンドバッグや財布などに加工した商品が話題となっている。
ヨットの帆布で作るのと同じ発想だなや。
丈夫だし摩擦に強くて表面に残ったサイズの印字などがエキゾチックでオリジナリティなんだと。
大型バッグはダンプカーのものだろうが、自転車の薄くて細いレース用ブチルゴムならどんな繊細な製品になるんだっぺ?
ワシはサバイバルナイフのグリップの滑り止めに使っているが、テカらない光沢はスパイムード十分で気に入っている。
【かしのき】の浜さん、自動車用なら【里見タイヤ】さんのところにあるでしょうが、自転車用ならワシとこにありまっせー。

ヴィットリアのルビーノにしたらパンクが激減したのはタイヤの適正化も効果あったのでしょうが、手前味噌的に言わせてもらうならライディングテクニックが向上したからなんです。
路面の段差や小石や事故現場の跡を通過するときのガラス片など、それら異物を上手にいなして接地時の前後荷重をスッと移動させるテクを覚えたからに他ならないと自負しているのです。
だがそれだけではない、休憩の度にエイド食を口に運びながら目は立てかけた自転車のタイヤ表面の付着物を追っているんです。
その眼はもうオタクの権化。

自転車は道路の左端を走るから雨で流れて来て溜まった色々な魔物を踏んでしまう。
気をつけてはいるが右後ろに自動車が迫っていれば他に通るところが無く、泣く泣く踏んで行くしかない。いわば社会の矛盾性の上を自転車は行くのだ。

グローブの腹でひとコキしてやれば大抵の魔物は払い除けられるが、ときにはタイヤ表面から内部に向かって進む気配の鉄片を見つけることがある。
そんなときは背中のポケットから小さなビニール製の財布を取って、小さくたたんだ千円札やコンビニのカード・住所氏名を書いた迷子札の底のほうに沈んでいる竹製のピックを取り出し、それでていねいにタイヤの異物をほじくり出す。
竹のピックは焼き鳥の串を削って作る。
これでなければダメだ! 金属製では千枚通しみたいなことになってしまうっぺ。
それに、千枚通しを持っていたらワシより速い長州野郎のタイヤを刺したい魔力に駆られるべえ。
(やっぱりテロリストの血脈なんだわなあ)

異物の多くはスクラップを積んだトラックからこぼれた金属の切粉とか錆びて剥がれ落ちたワイヤーロープの芯線の一部。
これらはどういうものか幹線道路の長い橋を通過するとき、しかも渡り始めにタイヤが踏んでしまうことが多い。
道路から橋への最初の継ぎ目の多くは段差になっていて、トラックが撥ねたとき荷台で揺すられたワイヤーからヨレて落ちた小さな芯線のカケラは砂粒ほどだが、砂より比重が大きいから雨や風に当たっても流れ出ずに頑固にそこに留まっている。
しかも、たまにしか来ない道路清掃車は橋にかかると手前で回転ブラシを跳ね上げて速度を上げて通過してしまう。
橋の上は雨風が吹き抜けるから清掃は要らないと判断しているのか、後続の渋滞を招かないよう気を配ってのことなのか知らないが、自動車の車線に戻ってそそくさと行ってしまう。
だから橋は渡り始めの最初の欄干の下、左端にサタン(Satan:魔物)がいっぱい待っているのだ。

自転車初心のころワシは幹線道路の橋にかかると緊張したものだ。
橋にある自転車レーンはおおむね狭い。車道も狭いのだから自転車用はなお狭く、白線一本分だけの橋がけっこう多い。
主要国道の橋には立派な側道があるが、メイン車線を行くクルマの速度が高いから負圧が生じて吸い込まれそうになる。
特にバスはいかん、あれは側面の面積が広いので広範囲を負圧にして追い越した自転車をまるごと吸い込もうとする。
ワシはアレが怖かった。

あとで分かったことだが、吸い込まれたらそのまま吸われてついて行けばどうということはない。
バスのストップランプが光ったら徐々にブレーキを掛けると、一定の距離50センチを保ったままペダルを踏まずに楽に走れる。そーゆー高等技術は知らなかった。
脱出するには下ハンドルを取って1速落として待ち、バスの速度が落ちた瞬間に左から一気に加速してバスの前に出てしまう。
そのまま走り続ければ驚嘆畏怖したバスの運転手は以後車線の広くなる橋の終点まで自転車の後に付いて静かに走る。
その間は後続の大型車両をバスが完全ブロックしてけっして追い抜こうとはしない。
そういう超美技的高等技術は知らなかったから緊張し続けたまま橋の端の白線の上を走り続けたものだった。

また、吸われたくないときは右ペダルを引き上げて止め、バスが追い越して行ってしまうまで惰性で走りながらハンドリングに集中すれば進路を乱すことはない。
逆に右脚を伸ばした状態でバスの通過を待つと、吸われる確率がてきめんに高くなることを体験で知ったのはずっと後年であった。
右脚を引き上げてフレームの前三角部分の下に空間をつくり、ここに自転車の左側から空気を流して負圧を逃がすとバスに吸われることがないのだ。

ダボダボのズボンなど穿いていたらこの法則は成り立たない。
ワシらのいでたちがピッチぴちの派手ハデ衣装なのは競輪選手への対抗心などではない。空力の作用を生かすか殺すか、最後はおのれを生かすか殺すかの選択の結果なのである。
ダボダボのズボンでバスと張りあったら確実に死ぬのだ。
自転車は熱気球と同じく、ひとさまには何の役にもならないお遊びなのに命がけ。このシニックさったらないね、だから面白い。

県内の新4号国道は上限車速が80km毎時と高速道路並みのうえ白バイはたまにしかない信号機のそばで信号無視を見張っているだけなので、大型車もバスもえらい速度で走っている。
こんなところは自転車レーンがいくら広く用意してあったって、大型車のタイヤ音と風切り音に怯えて自転車はちっとも楽しくない。
よって自転車は旧国道の狭い橋を行くことになる。
そして橋のたもとに待ち構えていたガラス片や金属異物の魔物の上を踏んでしまうのである。

緊張を強いられる橋の上でライダーは、一秒でも早くここを通過しきってしまおうと考えている。だから懸命に踏む。けな気にと思えるほど懸命に踏む。
懸命とは命を懸けると書くんだ。そう安々には使えない崇高な日本語なんだ。
踏めば踏むほど魔物はタイヤ内部へ侵攻して遂にはチューブに達し、エア漏れ すなわちパンクに至る。それも橋の中ほどで…。

ワシは普段の練習に一般道路は走らないよう心掛けておる。
仕事で走っている自動車の皆さんの邪魔をしたくないことと、まだ数年はコルナゴが使えそうだからその間は生きていたいからだ。
そこで自転車専用道路であるサイクリングロードを走っているが、行って帰ってくるだけのロードでは如何にも色気がないから管理者の異なるサイクリングロードを”はしご”することで同じ道を戻らないように工夫しながらコースを選んでいる。
”はしご”にあたる部分が一般道、命の危険ははらんでいる。

サイクルロードは大きな川の護岸上に設けられていることが多い。
この護岸道は国交省の河川管理用車両以外には犬と散歩人と自転車だけが立ち入りを許されていているが、あくまでも護岸である。
したがって道路に係わる法規制の外にあるが、犬も散歩人も自転車も通常道路での約束事を堅持して走ったり歩いたり吠えたりしている。まことに法治国家の国民である。
護岸土手の下にある田畑に行くための軽トラやトラクターの類はお目こぼしされていて、遠慮がちに大きなタイヤから泥をロード上に落としながら走って行く。これもまた法治国家のゆえんである。

ときどき脱法な輩(やから)がいて、走ってくるはずのない四駆のレジャー車がこの護岸土手上を疾走してくる。
3ナンバーでは車止めのポールを実力でずらさないと通れないはずだから、この時点で河川法違反。
輩のクルマは減速の気配すらなし。後席に釣り道具を積んで川の流れの方を見ながらの脇見運転だから危ないことこの上なし。
犬は逃げ去り、散歩人は土手の芝斜面に避難し、自転車は止まって足を着いてやり過ごす。
輩は、「ごめんなんしょ」 も言わないですり抜けて行く。

なんとも無法の輩と振り返ってみると、後方で輩同士のすれ違いに失敗して土手から転落しているではないか。犬に吠えられいるのは自業自得というものである。
それでも心優しき散歩人と自転車マンは泥に浸かって使えなくなった輩の携帯電話に替わって自分のを使えと差し出す。
さらに現在地を伝えられない輩に代って救援車の正規の進入路を指示してやるなんて、さすがは法治国家の国民である。

さらにロードを行くと桜の花びらが頭上から降りかかり、タイヤが巻き上げた路上の花びらが膝をかすめて後ろへ飛んで行く。薄いピンクの雲の中を走って行くようだ。
ヴィットリアのラストランにふさわしい走りができてよかった。
花見会場の小公園から聞こえてくる「さくら花見音頭」に代って、もしも葬送の曲など流れたらワシ、素直に涙が出てしまう。
標準エア圧で来たので荒れた路面になっても乗り心地がよい、それでも7.1BARと大型トラック並の空圧だ。
早目に帰ってエアを抜いて緊張から解放させてやろう。もう少しだ、頼むぞルビーノ。

替わりのタイヤは用意してある。
今度のは、おフランス製ミシュラン。
イタリアンフレームにミシュランの組み合わせ、こんなミスマッチは国際法で許されないのだがワシ法ではありなのだ。グリップ性がよりレーシーで雨中でも行けるという評判なので決めた。
東北三県を縦断して福島にゴールする震災地支援サイクルエイドのイベント参加用に、これまで使ったことのないミシュランをあえて選んでみた。
ミシュランタイヤが主催する「格付けサーベィランス本」のミシュランが東日本大震災に支援を寄せていると聞いている。これで大義名分が立とう。
大義の前には小意を捨てるのが會津の掟なのじゃ。
(ここでは小異に代えて小意と表現している。小意=私の意見との使い方で用いたが日本文法では誤っているかもしれない)

知らない土地を知らないひとたちと走るのは不安より楽しみが先に立って、すでに申込みを済ませてある。
参加費もクレジット決済で払い込んである。
参加証とゼッケンがまだ届かないがJTB旅行社が募集代理店だから持ち逃げはなかろう。

6月初旬の開催ははしり梅雨の雨を予想すると、寒さ対策とタイヤの雨中性能を確認しておかねばならない。
イベントは参加者の走行距離1キロごとに10円がチャリティされる仕組みで、2,500名が平均200キロ走破すれば500万円が通過した市町村に還元される。
しかも自分が走って稼いだ金額をどの町村に寄付するか指定できるシステムなので、沿道民の応援サポートは金目当ても手伝ってもの凄い。
貧乏村ほど役場の職員が事情を知らない爺さん婆さんを駆り出して小旗を振らせる。
応援って、あれはやってるうちに脳内アドレナリンが湧くんだね。やっこら歩いてきた爺さんが小一時間もしないうちに小旗もって走り回るんだから。

この役場職員が来期の異動で老人厚生係長に抜擢されるのは間違いなく、このイベントは限界集落をつなぐ道路だけは立派に舗装された寒村で高く支持されている。
ワシらも走りやすい。
主催者はうまいところに目を付けたものだ。
水・バナナのサービスはもちろん鐘や太鼓に婆さん連の花笠踊りで勇気を鼓舞されて、ワシらはがんばるマンになる。
途中棄権はサイクルマンの名折れ、ジャージの背中にプリントされたスパイダーマンに叱咤されながらでも時間内完走は果たさねばならない。

そこで大事なファクターとなるタイヤ。
ヴィットリア・ルビーノなら何本も履き替えて馴染んでいるから心配ないのだが、交換時期がきて考えた。
「いつものヴィットリアでは当たり前すぎて少し飽きたよね、たまには浮気したっていいよね、どーせ結局は古女房のところに帰ってくるのだから一度だけフレンチ娘とムフフ」
こーゆー考えは浮気男の一方的な論理であって、笑って見逃してくれていたと思っていた古女房から手痛いしっぺ返し受けるのは身を持って知っているのに… 性懲りもなく…。

Amazon経由で届いたおフランス娘は小さく折りたたまれて窮屈なパッケージに入っていた。
急いで箱から出して丸く広げてみたら、案の定折り癖がついて二本のうち一本は一か所に強くペコッとした処が残った。
ワシらのタイヤは折りたたんで補給されるのが一般的だからその点では異論はない、リムに装着して内側からチューブの内圧で押し広げると癖は取れるものなのだ。
だが、ワシとこに届いた一本にはいささか手強い、強く畳んだ折り癖が一か所残りそうな気配を感じたのだ。

アルミリムの振れ取り名人を自認するワシでも、ゴムの折り癖には手を焼く。
「うーむ じゃじゃ馬フレンチ娘め、如何にしてねじ伏せてやろうか」
ソッチの体力は陰をひそめたくせに口だけは強気なんだから爺いはヤダねー。

タイヤの癖の部分をお湯で絞ったタオルで温めて引っ張って、内側にチューブを入れて軽く膨らませ、以前に娘が使っていた無人の部屋の床に安置して一週間熟成させた。
ときどき様子を見に行って、その度にタオルで温めて引っ張る。
同じ側でばかり寝かせておいては”いびつ”になろうと上下をひっくり返して枕を当てたりと、まるで遠い昔の娘が生まれたばかりの頃のようだ。
夜泣きしないだけコッチのほうが楽だが、はたして変形が取れるかはリムにはめてみるまで分からない。
販売者に戻して交換させようかとも思ったがこの手のことで大人気ないと、そのまま熟成を待っていた。

タイヤは生ゴムに黒鉛を加えて強度を増し、さらに芯材に流し込んで加硫・加熱・加圧されて成形される。
イースト菌や納豆菌が棲みついているわけではないから熟成でまーるくなるとは思わないが、もしかしたらなるかも知れん。この部屋で娘も大きくなったんだから。
ここまで手を掛けたのだ、たとえエア充填で少々ペコが残っても、許してやっぺと思うようになったのだからワシもまーるくなったもんだ。

これだものなや【なーさん】が大事にしているボケの植木鉢に、それより大事な孫が三輪車で突進して割ったって、そりゃーしゃーねーわなあ。

ヴィットリアのラストランを終えた翌日、朝から晴れて湿度が下がった。タイヤをはめるに好日である。
すでに昨日のタイヤは剥がしてタイヤ供養塚に丁重に納めた。
したがってミシュランを付けなければ走りに行けない。それが狙いでラストランのあとに剥がしておいた。
そうしないと晴れたら走りに行ってしまうからいつまで経ってもラストランが終わらないのだ。

取りつけたミシュランホイールを振れ取り台で回してみると、一か所ヒョコッとくねる。エアを上限いっぱいまで入れてもクネッとする。
常人の目では気にならない0.4ミリだが、後続車から見える後輪にはめてクネッていては振れ取り名人の恥だから前輪にはめた。
試運転に出かけたらハンドルの前でフレンチ娘が色っぽくクネリやがるんだ、くっそー。
「伊太利亜では斜塔が100年前よりさらに傾いていたって全然OKなんだけど、仏蘭西の音速コンコルド機も首根っこがクネッとしていたなあ」

すっかり葉桜になったロード脇の公園に止めてタイヤのマークを眺める、大きな白文字でMichelin pro 4 ENDURANCE と書かれている、エンデュランスとは耐久・我慢・がんばっぺーの意味。
はあ おらもがんばっぺー。
おなじみのタイヤのお化けみたいなキャラクターも白で大きく描いてあって、ふくよかなフレンチ娘と思っていたがコイツよく見たら男なんだ。
なるほどジダンの一派では反骨のクネッなんだわな。
帰ってからGoogleで調べたらコイツbibendum ビバンダム君というんだそうな。
「腕白小僧みたいな名前だなや、おめ 雨の日でもでーじょーぶだかや」

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