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おしぐれさんの CYCLE AID JAPAN 2014 エピソード 2
2014/08/25

前回のエピソード 1 では おしぐれさん一流のなんだかんだの理屈の末、 「自転車を買い替えることなく 軽る〜く くるくる大作戦」 が開始されたのでした。

道具もそろって おしぐれさん、朝5時には作業場に降りてやる気満々。
朝の太陽光に照らされて煌めく1997年製の鋼鉄フレーム。

気温が上がって鉄が膨張し、かすかに軋む音が間もなく聞き取れる時間帯だ。
寄せる鉄と押し返す鉄がせめぎ合う交点に指を触れて おしぐれさん、

「よしよし 待ってろよー 気合いを高めて待ってろよー、 爆発はもうじきじゃー」

うーむ よい景色ですなあ。 モチベーションの高さがうかがえます。
それでも おしぐれさん、念のため作業台の脇には用心深く気つけの特効薬を用意する。

なんだい、 モチベーション高いのはフレームのほうだけかい。

経過時間と共に気合いの薄れる傾向をどーゆー加減か最近増したと自覚する おしぐれさん、特効薬は下町ナポレオンの20度。
さらにアテには秋元食品の 新しょうが と 薄塩らっきょ。
これらで心臓の不整脈を抑え込みながら世界戦を勝ち抜こうという けな気な心意気なのであります。

それにしても今朝は 梅雨寒む というのか鉄が反応する気温に上がるまで作業場は寒い。
人間にとっても寝起きの寒さというのは心筋梗塞のリスクが高いというじゃーないの、何はともあれ気つけのお湯割りを一杯。
らっきょ を一粒口に放り込んでバリバリと噛み砕き、テレビをつけたら電気の熱で少しは暖かくなるかとBGMがわりにテレビの電電を入れる。

さあここからは後世の歴史を変えることに ‥ なるかも知れないおしぐれさんのスーパーゴッドハンドが見られるぞ。
という まさにそのとき、テレビが地球の裏側のブラジルで主審の笛の鳴るのを伝えてゲームが中断。
何のゲームかって あーた、朝の5時から高らかに笛を吹きまくるゲームちゅうたら サッカー ワールドカップですわいね。

朝の5時というのは日本時間です、ブラジルでは夕方5時。
時差12時間というと 「地球の裏がわー」 とよく言いますが、それだけではありまへんで。
あっちは南半球だす、地球の主星である太陽の回転水平線から23.4度ずれて交差する地球赤道線の向こう側は確かに夕方ですが、アッチは名にしおうダウンアンダーだっせ。
夕方ちゅうてもあんた、日本の午後5時とはダウンアンダーのアッチは時間の観念がちゃいますのや。夜中まで明るいんです。

そらーもう ツー スリー フォー ハイ!  サンバー ♪ だす。
私利私欲は比翼に支離していーんです 尻は左右別々に踊りまくって尻別町の盆踊り。
サンバのサンは太陽のSUNに決まっておろーがや、したらば バ は 婆 でっしゃろ。 SUN婆のブラジルはもう支離滅裂がよー似合うんです。尻別々です。

そのころ 遠く離れた日本のおしぐれ工房では、前回編でハブ分解の道具類を出して写真を紹介したばかりだった。
審判の笛に合わせてオペレーションが中断したところで前回のエピソード 1が終わっているのでした。 思い出してくれましたかな。

オペレーションといえばBC世紀のトロイの木馬作戦以来、AC世紀以降では最も著名なオペレーションであるノルマンディー上陸作戦から今年で70年の記念式典が6月6日に南フランスのノルマンディー海岸で行われたそうです。
オバマ大統領も出席したそうで、このオペレーションの果たした意義は犠牲者の大きさを越えて大きいのだろう。
もう70年にもなるんですねえ。

日本に渡るチャンスを探してスイス国境から自転車でアルプスを越えて来たおしぐれさんが、何度もスポークを飛ばしながら走った1944年のロマンチック街道はナチスの装甲車とよくすれ違ったものだった。
7月を過ぎてからは連合軍のジープがおしぐれさんを追い越して行き、それに向かって手を振るフランス農民の姿をそちこちで見かけるようになった。

マドン峠を下ったところの教会の前で折れたスポークを交換していると、広くて白いエプロンをひるがえしながら走って来て冷えたピレネーワインの瓶を手渡してくれた娘さんがいた。

「マナステー」

東洋風の合掌をしてそれを受け取る おしぐれさんの胸のVISAカードを目ざとく見つけた彼女はカードの裏書のローマ法王のサインに目を見張り、

「あなたは必ず故郷に帰ることが出来ます。 お母さんの名はマリアでしょ、きっと元気ですよ」

そう言うと十字を切って天に祈り、美しい歌声で ♪ アヴェ マリア を歌ってくれた。
彼女が当時この辺りに疎開していたアンネ・フランクだったかどうかは分らないが、そうでないという理由もない。

いまだ故郷に帰り着かないおしぐれさん、この星にあっては異星人だから歳のとり方の計時が地球標準とはやや異なる。 第一次世界大戦の始まりのころ少年だったとしても不思議ではないのだ。
70年経過した今だって青年である。

その後たどりついた日本では団塊屋のなーさんとおない年だった時代もあったが、おしぐれさんより10倍早く時間の経過する地球人のなーさん達はとうに爺じーである。
あのひと達は欲望に負けて浦島のマジックボックスを開け、箱の中の白煙りを放出させたからだ。
チェルノブエリやスリーマイルの後そーゆーひとが顕著化して、だからあれほどおしぐれさんは警告したのだ。それを開けるときはマカか亜鉛剤を先に飲めって。

さて、さほど歴史的価値のないおしぐれさんのオペレーションは、誰も記念などしない本人だけの奇念だから手工と訳すのがよいだろう。
ウイキペディア辞書でオペレーションの訳語は手工が3番目に位置している。用語の使用に際して誤りではなかろう。

それにしても、である。
手工という言葉だけでも名人みたいで恐れ多いのによくもまあ臆面もなく言うものだ。 ペテン師と臆面な師とは同義語だと昔なーさんが言っていたが、はからずも証明された。

エピソード 1 は何だったのかわかりゃーしなかった前回作、失敗の原因はサッカー中継を見ながら横目で おしぐれさん を書こうという横着な了見がいかんかったと作家は反省する。

かけっ放しのテレビが大興奮してFIFAワールドカップ開幕戦を伝える。
ブラジル対クロアチア戦の後半は1‐1からの山場で激しいボディーアタックにより主審が笛を吹いてプレイが止まり、ついでに筆も止まってしまったのだった。物書き作家としては遺憾なことです。
連載ものだから弁解しつつなんとか続いているが、一編ものだったら大家の団塊屋さんにペナルティキックの削除シュートを決められるところだ。

笛の判定はクロアチア選手にイエローカードが出てブラジルのPK。
ブラジルキッカーがクールにゴールを決め、このとき獲得した1点が勝敗を決定づけたのだが 「あれは果たしてPK相当か?」 「日本人主審はかつて日本の移民政策を受け入れてくれたブラジルに有利したのではないか?」
試合中も試合後もレフリングに向けたブーイングが世界中で吹き荒れた。

開催国チームが勝利して開幕した一戦はそれゆえ目立った。
王者ブラジルが相手に先制ゴールを許した展開を世界中がライブ中継で見ていた。 見ていなかったのは参戦チームを送っていない中国だけだったろう。

そこでPKの断を下した日本人主審は、試合後の移動の空港でテロに遭う騒ぎにまで発展した。
過去にオウンゴールで敗退したチームが祖国に帰ったら自国民のピストルに撃たれて死んだ事件があったが、サッカー世界戦は第三次世界大戦の代理戦争に等しい。

こーゆーのは日本人には解からない異教徒の心象である。
「断が下ればその後に生じた結果は審に戻らない」 とするのは日本の法制の根本、千年以上の儒教基本だから何の不思議もない。
邪教信のヤカラは自国敗戦の怒りを日本人主審に向けることでウサを晴らそうとしているようだが、そーゆー心象こそが邪教と貶めされるゆえんである。

正教家のおしぐれさん 分解して取りだしたベアリングの ”玉っこ” を清浄なウエスの上に置き、両手でコロコロ転がしながらそう呟くのであった。
コロコロ転がしながら念の気を注入して玉っこをまんまるの真円に仕上げているのだ。

およそこの地上にまんまるの真円など存在し得ない。
地球はその誕生時より溶鉄のコアを中心にその周りに地殻を重ねて出来ているから磁気を帯びている。そーゆー環境下で金属球を作れば必ず極性が付随し、いやでも極方向に潰れた楕円球になる。
説明は要らないだろう、誰でも知っていながら誰も説明し切れないだけだ。

なに! そんなのは おしぐれさん のでほらくだって? あんたは 宇宙の基礎科学っちゅーもんを知らんひとけ?
ヨーロッパ発マイナス金利のことは知っていても地球の根本を知らないと、団塊屋なーさんのように無人島にひとりで漂着したとき生きて行けへんでー。
なぜなら樹上のバナナの実を小石を投げて落とすには、放物軌道に変化の少ない真球に近い小石を探さねばならんという原理を理解せんからや。

地球の磁場極性はコアが鉄で出来ている惑星テラの宿命だから仕方がない。
そのなかで出来るだけ真球に近づける工夫加工は、超電導界の環境中で玉っこを作ることだ。
だが、たかが自転車のベアリングに入れる玉っこを光より速い加速器ニュートリノの気の遠くなるほど長いトンネル内で作っていたら、退職後にはお小遣いで自転車を買おうと心に決めて働くお父さんのお財布で買えるような自転車ではなくなる。

それにね、宇宙船コウノトリの実験室で作った真球玉っこだって、地上に降ろした途端に歪んで駄球になってしまうのだ。
自転車のホイールをクルクル軽るーく回す唯一の手法はね、バラした玉っこを1気圧20℃の肌寒い作業場で清浄なウエスに包んでコロコロ転がして念の気を注入することだけなのよ。

数日後、この日も早朝4時からイングランド対ウルグアイ戦。ライブ中継を見ながら玉っこのコロコロ作業をしております。
こちらの試合も白熱した肉弾戦だからテレビから眼が離せない、主審の笛の度にコロコロの手が止まって一向に作業がはかどらない。

この試合の1時間後には日本対ギリシャのキックオフである。
きょうはベアリング組み立てまで進めるかどうか微妙なおしぐれさんの心象なのである。

下図に自転車の車軸ベアリングの模式を描いていただいた。
おしぐれさんにこれ程の画才があったとは作家は意外であったが、考えてみれば氏ほどの正教家かつ稀代のペテン師なれば造作ないことなのであろう。

大きい方の図がユーザーでも簡単な工具で分解&組み立てが可能なカップ&コーン式と呼ばれる単純軽量な方式である。
世の中にグリース潤滑油とボールベアリングがほぼ同時期に誕生したときからの、そのまんまのベーシックデザインである。

小さい方の図はインダストリアル型(工業型)と呼ばれる一体完成品、一般に多く使われる非分解式のベアリングである。
シールドされているから玉っこは見えない。
ふたつの図に大差ないように思えるのは作画したご仁の責任だが、このタイプは玉っこが摩耗してベアリングにガタが出ても修正は効かない。そっくり交換するしかない。

そこで新品では遊びをぎゅうぎゅうに詰めて出荷されるから使用初めの回転は鈍重で固い。
これを専門用語でプレロード(pere Lord ≒ 与圧)と言う、人間社会でも中間管理職はアタマをぎゅうぎゅうに押さえられておるそうですなあ。

回転が ”こなれ” て調子が出て来るまでにはやや時間がかかり、そのピークを過ぎれば今度はガタに向かって下降して行く。
いやはや やっぱり誰かに似ておりますですなあ。

さらに、カップ&コーン式のハブボデーに相当するスポーク穴の付いたハウジング内にこの工業型ベアリングを収めて使うことになるから、全体では部品点数が増して重量増となる。
また同じベアリング径にしたいとなればハウジング径も大きくなってやはり重量増と空気抵抗を招く。

そして最大の相違点は、組み付け納車後においても玉っこの押し加減の微妙な塩梅、すなわち味加減のさじ加減をねじ加減による転がり具合の調整でいとも簡単に可能にしたのがカップ&コーン式である。
プロメカニックは春夏秋冬の外気温変動と回転による発熱を考慮しながらねじ加減を塩梅するという。
これ、構造簡単だからじつは素人でも出来るのだが失敗して玉を割るアホもいる。安価だから買い直す覚悟でやればいい。

しからば何故ゆえに欧米の高級自転車にインダストリアル型が多く用いられ、カップ&コーン式は日本シマノとイタリアの老舗 名門カンパニョーロにしかないのか?
答えは嫌になるほど簡単でした。

ホイールの最初の組み立ての際、インダストリアル型の方がめっぽう簡単なのです。
ベアリング屋から通い箱に入って届いたヤツを、すでにスポークを組み込んだハブにスッポンっと嵌め込んで終わり。
組み付け仕様書など読めない海外某国の工場作業員でも表と裏さえ見分けられれば出来る。

しかもインダストリアル型シールドベアリングは外観の見てくれに高級感があり、高温下の力走後にもグリスの流れ出しがない。 よって高価でもユーザーが喜ぶ効果のあるこっちを選んだのです。
さらに言うならば、玉っこの押し加減をその都度調整する名人芸は儒教の民にしか出来ない ”手わざ” の修練技の作業ゆえ、欧米邪教人には出来ない芸なのです。
名門カンパニョーロでも熟達の名人は華僑の儒教人だ。

おしぐれさん 生まれは遠い冥惑星M16フェミニン星ですが、宇宙船が漂着した地の欧州邪教門を経て東洋儒教者となってからの年月が長いから手わざ舌わざ冴えわたっております。
カップ&コーンベアリングに入っていた玉っこが、たとえ邪教の国で造られたいびつなシロモノであろうとも大丈夫。
得意の手わざ舌わざのこころでコロコロするとあら不思議、真ん丸回りのクルクルに仕上げてしまうのであります。

さあここで日本戦が始まります。
応援に専念するべくいったん筆を置かせていただきます。

なに! 結局は講釈ばかりで何もしていないじゃないかって? あんたねえ そーゆー懐疑の態度はよくないぞ。

2時間後 …
この日の試合 日本が大勝したならばここでエピソード 2 を終わるつもりだったのに、なんだか今後の雲行きが怪しいので おしぐれさん を続けます。
”おしぐれさん かく戦へり” は続けるのですが、気つけ薬が効き過ぎたので今朝は寝ます。

それから数日後 …
本朝は ブラジル 対 カメルーン 戦を見ながら書いている。一次リーグのトップ通過を懸けるブラジルが4‐1でリード。
こーゆー展開なら片目でテレビ、片目でパソコンが可能な作家なのだ。 さらに片手でカップラーメンのフタを押さえながら歯と唇で手を使わずに割り箸を割ることだって可能なのだ。
こーんなことは千手観音様の孫弟子を源師匠に持つおしぐれさんなら当たり前の当然なのだ。

先日の 日本対ギリシャ 戦ではそんな余裕はなかった、点の取り合いを期待して固唾を呑んで見守ったがノーゴールのドロー。
熱湯を注いでおいたカップラーメンはフタが付いたまま冷めてしまった。
なぜなら試合終了間際には固唾と薄塩らっきょを肴にイライラ酒を飲んで、ぶつぶつ言いながら寝てしまったからだ。
そーゆーひとは日本中に大勢いたはず、日本人の健康に良くない。頼むでや サムライ ブルー。

さて、ベアリングのハナシ。
図の中央にある ”玉っこ” が前後に迫るカップとコーンを仕分けてクルクル回わり、 玉っことコーンとハブが一体となって縦方向の荷重と左右方向の全ストレスを受け持つのだ。

分解したシマノのWH‐RS21型の場合、玉っこの大きさと数はフロントが直径3mm程の鋼球が11個、リヤの玉っこはそれより大きく6mm程あって9個入っていた。
前後の外径はほぼ同じ仕上りになっており玉っこの数が共に奇数なのは工学的に大きなな理由がある。
回転と停止をくり返すホイールベアリングは玉っこを奇数にして偏摩耗を防ぐのだ。

なぜ奇数か? それをここで説明しても読者はついて来られないだろうから省略。宇宙の深淵に迫る理論だからこのページでは終わらない。
リヤの玉の直径が大きいのはベアリングの幅を大きくしてチェーン駆動力により常に右前方に引かれるストレスに耐えるためだろう、可能なら小さいほうが良いのは携帯電話と同じだ。

兎も角も、工学のハナシを文章で書くのは愚の骨頂、くどくど書くのは避けて作業をしましょう。
小保方博士もなんやでー ”なんとか細胞” ちゅうのをメディアの前でひょいひょいと捻って作って見せれば一発解決なんや。

おしぐれさんが玉っこを清浄なウエスに載せ、ゴッドハンドでコロコロ捏ねくっている作業の写真は鋼球の直径の ”真円仕上げ” をしているところ。
ちなみに捏ねるの ”捏” は捏造の捏。
本来梵語での捏は一所懸命の意味だったんじゃが、近年使い方が変化しよった。

「えーっ? ベアリングの鋼球って真円じゃないの!」

「真円でありますかいな、宇宙船コウノトリ用の鋼球じゃありますまいものよ! 日本NSKやジェイテクト の玉っこを使っているなら真球に近いんだろうけれど、RS21は段ボール箱に入って貨物船に山積みされて遠い国から来たんだっせ。
ドコ製の玉っこか分らんのや、内戦のときの銃弾を拾ってきて釜で煮てリサイクルしたのかも知れん。

ヤマト便の伝票以外はオール外国語の箱から出したとき、内部の緩衝材がズレてスポークやハブに塗装の擦れを見たときにはガッカリしたもんや。
それを手に持ってぐりーんと回したときは床に膝を付くほど落ち込んだもんや。ベアリングの回りがゴリゴリやったからのう」

写真のホイール (エピソード1参照) は11速用ホイールとして現時点では世界一廉価といわれる入門用。
エレガントさで売っているおしぐれさんのコルナ号に似合うようなモノでは決してない。

ないのだけれど諸般の事情でコレを買った。
諸般の事情というのは例のカード払いの規約が贅沢品の購入を禁じているからで、カンパニョーロ社のカーボンホイール BORA 1 など高くて買えない。
コンビニでビールを買うんだって二級品の発泡酒でないとブザーが鳴る。
いったい何処で見張っているものやら、時代の変遷と物価スライド制に合わせて正確に贅沢品を見極めるのだから魂消たカードなのだ。

RS21は入門用ゆえに少々重いが堅牢さは世界一、外観は無骨で何のお愛想もないけれど面倒見の仕方次第で世界一回りのよいホイールに生まれ変わる素地を持っていると一部のネットで絶賛されている。
実際に何人かの玄人が回転を組み直してスポークテンションを張り直し、自分用に使って得意がっている動画がYouTubeに流れている。

よいホイールとは何をもってして言うのかということになれば、これはもう文学のハナシですから ええ書きましょうともよ、くどくどとねえ。

1 軽いこと。 じつは軽さには二種類あって、重量が軽いのはもちろんだが回りの軽さが重要。
  単に軽くても機械強度が弱くてはダメ。走行中のスポークには凄いストレスが作用しているし、それを受け止めるハブの外殻には何百kgもの荷重がかかる。

  外周部のリムにはタイヤチューブからの内圧が静止時で100PSI(≒7気圧)以上かかっていて、常にリムを外側に押し広げ破壊しようとしている。
  おしぐれさんが練習から帰ったらエアを半分抜いているのはこの為だ。
  軽量アルミ合金で作るのが普通だが断面形状を工夫して軽くて丈夫で回転バランスの良いことが求められる。

  一方の回りの軽さとはベアリング性能に尽きる。空気抵抗も少なからず影響する。
  手に持ってひょいと回したとき何時までも静かに回り続けるものが良いとされるが、リム外周部に変な重さがあって遠心力を味方にして回り続けるまがい品もある。
  いくつかのブランドを同条件に並べて回してみると違いが分る。
  とは言っても貧乏僧侶の身分でそんなコトはなかなか出来ないからサイクル雑誌のレビュー記事を読んで判断することになる。ただし雑誌記事は買収されていることも多い。

2 見た目の良いこと。
  自転車はなんといってもコレであろう。かっこ悪い自転車では乗り手まで鈍重なイメージになるしモチベが全然上がらないから結局は遅いのである。

  野党時代の日本自民党総裁にタニガキさんという格好良い自転車乗りがおられた。現政権では法務大臣である。
  落車時のテープをデコに貼って登壇されたとき、その凛々しいお姿に日本中の自転車乗りは喝采を捧げたものである。
  世が世であったなれば日本宰相であった氏を放り投げた自転車は、イタリア デ ローザ社の KING というハイエンドモデル。宰相が駆る自転車はキングでなければならん。
  もちろんホイールもイタリアのカンパニョーラだった。
  日本アンカー社やパナソニック社に総理とか大統領とかいう ネーミングの機種があれば氏も転ばずに済んだものにねえ。
  
  ホイールは自転車のサイドビューを彩る大きな面積を占めているからデザインとカラーリングは重要なのである。
  スポーク組の美しさにも言及したいのですが読者のひんしゅくを買う前にやめておく。いずれホイールを手組みするときにくどくどと申しあげましょう。

本日はここまでっ!


(作家謹述)

ながらくパソコン内に放置しておいたエピソード 2 でした。 これを送出してしまわないとメモリが詰まって動きが緩慢になってきたのです。
ジ△パ▽ネットの安売り専用機のせいなのかおしぐれさんの毒気のせいなのかは判りません。

毒気といえばおしぐれさん、自家中毒したものか最高出力0.3馬力(若いころ)の推力発生器にトラブルが生じまして、大ボラを吹いて完走を誓った10月の 「CYCLE AID JAPAN in 郡山 ツール・ド・猪苗代湖」 を欠場することになりました。

ご声援をいただいておりました全国の皆さまと冥惑星の大応援団の皆さま 申し訳ございません。
次回作にて 「小生意気なカーボン勢に果し状を返す」 に至った切なき心情を吐露してお詫びいたす所存でございます。

軽量コルナ号はすでに完成しているというのに、何としたことでありましょう。残念です。
このエピソード 2 が未完の遺作とならないうちに、句読点の些細な誤りなどかまわずに 投稿送出ぅーっ エイ!

syn

おしぐれさんの 閑話休題
2014/07/18

このところお成り (鳴りかもしれん) のなかった おしぐれさん でございます。
此処までのところ 土手のロードで犬のウンコを避けたはずみにラインを失い、下の河原まで転落してドクターヘリで搬送されたという いつかはありそうな 心待ちな、
そーゆーウワサは聞いておりません。

きょうも何処かで吠えておるのでしょう。

あにー ? 「小保方博士の学位認定は論文のクトー点の誤りや名前にフリガナがないなど ちぃーっと ばかし甘かったものの、取り消しの裁定に至る結論には現時至らず」 だとーっ !

ばかこくでねーだど ワセダ ! Dr オボカタの博士号に信憑性がねえだなどと、そーゆー論議が起こるなどとは おしぐれさん へのペテン師よばわりと同様に傾きかけたもんへのパワハラちゅーもんだんべ。
そったら了見の狭めーことではいかねーぞ ワセダ、ここは同窓のもんとして あったかーく放っとってやるのがワセダ破帽のココロ意気ちゅうもんだんべや。

団塊屋の衆を見てみろし、あそこの衆はなあ なーんぼ おしぐれさん がでほらくしたって、 「はいーっ それは氏の個性ですっ、そちらさまの定めでよしなにお取り計らいくださいまっせ」
柳に蛙 いや柳に風 と受け流して、ちぃーっとばかし喉に残った鰯の小骨を第3 ビールでゴクリと飲み込んでおるでやないけ。

そーゆーのを何というか知っとるけ? 
「貧鈍すればすなわち清呑する」 というのやー。

あにー? 意味かね。 賢者のことをいうとるのや、 ‥ きっと。

syn

おしぐれさんの CYCLE AID JAPAN 2014 エピソード 1
2014/06/16

きょうも雨が降って練習ロードに出られない。そーゆーときには おしぐれさんの 「わが戦い」 を書きまする、と宣言してしまったことをいささか後悔しているのです。

だって、サッカーのワールドカップ戦はブラジルが会場だからテレビの中継放送は日本では朝方、おしぐれさんの練習時間と重なる。
練習を中止してワールドなそれを見ながら、草カップ戦に向けたオノレのへたれな道のりを書くのはあまり面白くないでしょうや。

ついつい華々しい戦いを書いてしまいそうで心配です。
だから 最初に告白しておきましょう、「あまり本気で読まないでね、大方は でほらく なんだから」

新式カーボン勢に伍して坂を登って行くには機材の軽量化しかない。

「その前にオノレの筋力と登坂スキルを高めるべきだ」

そーゆー無慈悲なご指摘は無視させていただいておる。
筋力もスキルもこれ以上は前に進まんから自転車を軽くして前に進もうと言うておるのやないかい、べらぼーめー。

軽くするといっても2007年にろう付け溶接で製造されたクロモリ素材のフレームはカーボン素材に比べたら倍ほども重い。
軽量なコンポーネンツを選んで組み立てているとはいえ計量したら10.9kgもあった。
どうやって計るかというと、自転車を抱いてタニタの体組成計に乗り、その値から自分のピュア体重(呼吸を3分止めたときの体重)を差し引くのだ。
おしぐれさんの自転車小屋には最新デジタル秤などないのだ、べらぼーめー。

ちなみにピュア体重は普通体重より20g前後軽くなる、魂の重さなのかも知れない。

最新カーボン車のハイエンドモデルは完成車重量6.4kgである、UCI 国際自転車競技連盟の規定している最低重量とピッタリ同じだ。
これは何を意味しているかというと、すでに世界の主だった自転車メーカーでは求められる安全強度を満たしたうえで重量規定を下回る車両の開発を終えているということ。
フレーム内の何処かにバラストウエイトを隠して6.4kgに仕上げている。
いま凌ぎを削っているのは走行中の空気抵抗低減競争なのだ。カラダへの負担が減る。

その隠しウエイトは簡単に取りだしてメカニックのポケットに入れることが出来る、実際には5kg台の自転車が峠を軽々と越えて行く。
おしぐれさんはひとりで二台の自転車に跨って峠に立ち向かっているようなものだ。

最新型の6.4kgの同じような形の自転車の優劣はどこでつくのかというと、フレーム ジオメトリーによる加減速のスムーズさとライダーへの肉体的負担の少なさだろう。
これらはなかなか数値化できない分野なので、バランスとか総合力とかいう曖昧な表現で語られてきた。
しかし近年ではハンドル部に取り付けられるワットメーター(出力計)なるものが出来て、ライダーはどのメーカーのフレームが一番自分に合っているか、どういう踏み方をしたら大出力を得られるのか、即ちレースで勝てる自転車はどれかが分るようになった。

ここがおしぐれさん最大のネックなのである。
おしぐれさんの自転車はヨハネ パウロ二世の黄金のコルナゴのコピーだと前作で書いている。 1978年製をコピーした重たいフレームで走ることをヴァチカンから義務づけられているのだ。
そうしないと例のどこでもドアーのような支払い免除のVISAカードが失効してしまうのだ。

あれが使えなくなると、おしぐれさんはお気楽な旅の似非坊主などしておれんようになる。
団塊屋商店のコピー機と紙を無料で借りて、若いころ模写した般若心経をカラーコピーしては大仰な装丁で掛け軸に仕立て、リヤカーを自転車で曳いて信州一帯を行商して歩かにゃーならん。

フレーム以外は最新の機材に更新が許されているのでこれまでにも色々やったのだが、筋力の後退と引き換えに変速比が大きくなってローギヤの半径が巨大化し、その分の鉄の量が増えて軽量効果と相殺されている。
ギヤ鉄の比重はアルミ材の3倍だからこれは堪える。なにより回転体の外周部が重たいとジャイロが効いて自転車が立ちあがり、コーナーでの挙動が緩慢になるのだ。
俊敏さが怪しくなったおしぐれさんプラス緩慢な車体では勝負になんめーや、べらぼーめー。

しかしそれで引き下がるおしぐれさんではない。
アルミやカーボンより3倍重いとされる鉄フレームの自転車でも、完成車重量では彼らの2倍の重さにまで身を削って肉薄させた先人の労苦を思うとき胸が熱くなるのである。
素材の宿命的重さを加工技術で克服し、鉄のしなやかさを堅持したラグ式工法のフレームは、ゆえに細身で美しい。

歩道に停めてあるだけでひとが立ち止まり、やがて人だかりとなって口々に 「美しい、セクシーだ」 と呟く。
アルミやカーボンでは 「すげー 速そう」 とは言うが セクシーだ とは言わないだろう。

老練なるおしぐれさんが軽くしようとするのは車体重量ではない、ホイールやクランクなど回転体の摺動を軽くして走りを軽くしようというのである。
ブレーキレバーの引きを軽くするだけでも終盤での疲労に差がでる。
これは工学的にまことに正しい方向性といえる。 チューニングの王道と誉めたい。

さすがは宗教家のおしぐれさん、思想の根本が儒教である。
儒教ばかりではないヴァチカンだってポタラ宮だって、それぞ宇宙の根本と喝采を送っているはず。
遠くM16冥惑星などではブラジルサッカーのテレビ中継を止めて惑星出身儒教者のプロフィールを流し、地球での快挙を祝っている。

まだ具体的に何の行動も起こしていないのに声明だけで快挙とは、冥惑星というのはさすがおしぐれさんの故郷ですなあ。
たしかおしぐれさんはペテン師症候群の隔離病棟として幼時に地球へ流されたと聞いておりましたが時代は変わったんですなあ、つくづく。


手始めは前後ホイールのベアリングのチュンナップである。
自称自転車名人、おしぐれさんの手腕に期待いたしましょう。

効果の評価は摺動抵抗値 〇〇g/秒 の低減。その効果は車重 △△gに相当。と関数化するのが今風なのですが そこはそれ、そんなゲージやメジャーやエクセルは小屋にはありゃーせんのよ。
ありゃーメジャーでリッチなファクトリーにしかないのよ。
手で回したグリグリ感を体感5段階で評価すればええの、おおいに儒教にかなっておる。

写真 : シマノのホイールハブ、これをより一層クルクル軽く回るようにしようという企み。工具はベアリングの玉当たり調整用レンチ、黒はリヤ用 オランダ製 青はフロント用 北米製。
     日本製もあるが高価なのでこれでよし。 中央の丸い缶はシマノ純正グリースの容器。 道具はこれだけ、あとはおしぐれさんのゴッドハンド。

おおー 後半25分 ブラジルがペナルティ キックを貰ったぞ。
本日の作業はここまで。

syn

おしぐれさんの ロード歳時記 episode11 「北海岬」
2014/06/02

海辺の町 脇野沢まで降りてきたおしぐれさん、漁港を望む丁字路で <左:むつ市方面 右:九艘泊 北海岬> と書かれた標識の前に自転車を止め何やら考え込んでいる。

「はて くそうどまり とな ? さても面妖な。
壇ノ浦の八艘跳びにて名を馳せし 清和源氏のおん大将 九郎判官義経どのの名を騙る九尾の狐でも隠れおるか、おのおのがた 油断めさるな」

昨夜の宴会場で繰り広げられた會津源さん家中 対 秋田良助マタギによる薙刀 VS 鉄砲合戦。
金屏風の陰に隠れて座布団枕に眠りこけていながらも戦乱の余韻が残っているのか、荘厳なるさむらい口調である。
おのおのがた、と重々しく言ってふり返ったところでおしぐれさんひとりしかいない。

海抜521メートルの人切り峠から一気に海水面まで降りたのでは高度順応不適合、すなわち高山病になってこの程度の意識混濁は起こるのかも知れない。
高度順応不適合による判断力の低下で引き起こされる山の遭難危険については、初の日本女性隊エベレスト登頂を成功させた隊長であり、またご自身世界七大陸最高峰制覇の実績をもつ登山家でもある山エッセイストの田部井淳子先生が注意喚起をされている。

「下りこそ登るときより慎重に、低い山でも裾野の先はエベレストに繋がっています。ゆっくり息を吸って水分補給を忘れずリズミカルに、しっかり足を着けて降りるのが大切」 と書かれている。

ところがおしぐれさん、上りは失速寸前のヨタヨタ登りなのに対して下りとなると滅法速い。
ブレーキのゴムを擦り減らさない走法は単にケチなだけなのだが、エンジンブレーキのない自転車ではゴムの代りにひじや膝を擦り減らす肉弾ブレーキがある。

「ひじや膝なら一週間でカサブタが取れるさー なんくるないさやねえー」

本気か嘘か そーゆーことをうそぶきながら1秒間に高度を2メートル下げる速度では高山病にもスリムキ擦過傷にもなろうというもの。

おしぐれさんの研究によると、自動車や自転車のタイヤメーカーでは原料の天然ゴムに硬度と強度を与えるため黒鉛カーボンCを添加する。それでタイヤは黒いのだがそんなことはどうでもよい。
添加の際に両者を混和させたうえしっかり親和させる役目の硫化剤として硫黄Sを使うのだそうだ。
むつかしい化学のハナシだから、わからんひとはそーゆーもんかとご理解いただくだけでよろしい。

そこでおしぐれさん、スリムキ擦過傷の身を引きずって硫黄の温泉に横たわる。
すると硫化水素硫黄分が替えゴムのひじや膝からヒリヒリと沁み込んで、強くて厚い活性カサブタを形成し内側の傷の復活速度を高めると同時に肉弾ブレーキ性能の保証を可能にする。というもの。
この科学的なリカバリ療法で峠の下りと、下り気味な人生の数々の難局を乗り切ってきたという。

説明されれば実に納得のいくこの治療法は、信州地獄谷温泉の猿に聞いた。
尻の赤い部分で温泉に向かって山の斜面を滑り降りて来るとき、摩擦熱で赤いパッドがすり減って臀部を火傷するドジ猿がけっこういるんだそうな。
でも落下した処が硫黄の温泉なのですぐに良くなる。これをくり返すうち強靭な赤い尻の構築が完成するという訳だ。

今やレジェンドとなった高崎山出身のボス猿ベンツなら、こーゆーときには葛西選手のスキーを借りるか北海大蕗(クロボックルフキ)の葉っぱを尻に敷いて滑ってくるのにねえ。
確かに大分の猿よりも信州猿のほうが尻の赤味に緻密さというか光沢と言おうか、シルキーな厚みがあるように観察される。
九州地方には生育しない岡谷桑 (群馬では誇りを込めて富岡桑と呼ばれる) の葉っぱを食べているという側面もあろう。

余談だが、サイクルパンツの機能性 快適性で世界一評価の高いパールイズミの製品は、パッドの色が赤である。尻パッドに赤色を譲れない理由は地獄谷にあった。
どーゆーことかというと、パールイズミの創業者 清水釿治氏の生まれ育った故郷の村は 真珠のような泉に清水湧く 信州飯田。
飯田は地獄谷の野猿公苑に近いこともあって動物好きの釿治少年、幼少のころから自転車に乗ってお猿に会いに出かけていた。

猿のおケツはなぜ赤いのか? 赤いおケツは摩擦に強いのか? ボクのおケツも赤くなったのはサドルで擦れたためだがとても痛い、赤いおケツのお猿は自転車に長時間乗っても痛くならないのか?
そーゆーことを考えながら成長した釿治少年、長じて自転車アパレルのパールイズミを興したのである。

日本のサイクラーでパールイズミのお世話になったことのない者はいない。100パーセントいない。
スポンサーの関係で海外製品を使わざるを得ないツールのプロ選手でさえも、ロッカールームでこっそりとインナーにパールイズミを着用する。
ジャパンライダーはメーカーロゴ満艦飾のレーサーパンツの下に純白の羽二重サムライパンツを着けて戦いに臨む。ニッポン武士道とはかくなることか。といわれるゆえんである。

そればかりではない、信州茅野の ”まっさか落とし” を見てみなれ。大杉の御神木の先頭に跨った勇者の股間をよく見てみなれ。
神事だから白のさらしを腹に巻いて純白の猿股着用だがその下にはきまって、信州が生んだ股間の守護神 パールイズミ を穿いている。
まっさか の勇者のおケツを守るのは、ゴールドウインの野球用プロテクターではなく、地獄谷の赤い猿パッドなのだ。(添付写真参照)

ここで信州諏訪地方に縁者のない読者に ”まっさか落とし” の説明をせねばならない。

まっさか落とし をひとことで語るのは難しい。信州諏訪大社に納める式年遷宮用材の杉の丸太 御神木の 「おんばしら」 を山から切出すところから始めないとならないからだ。
大樹の気を鎮める神事を済ませ、これまで何も切ったことのない処女斧で切り倒す。
大斧を振るう 斧師 を勤める若者を排出するのは一家の誉れ。

その斧の出処ゆえんについても書けば、一編の鍛冶屋物語が書きあがるほどの安岐刃がねの壮大なロマンのヒストリーなのだ。
そのほかにも斧の柄となる強靭な 牛殺しの木 をツチノコのいる山中で探し出すのも大変なら、ノコギリを撥ね返すその木をヤスリで切り採る作業に三日もかかる。
この祭りが四年に一度しか開催されない理由がご理解いただけよう。近代オリンピックは おんばしら に倣った。

村の衆総出でわっせわっせと御神木をお仮屋まで搬送して、もう皆んなヘトヘトだからとりあえずおっ立ておいて あとは来年にすんべえ。
こーゆーエンドレスのお祭り、おんばしら祭 の最終ステージ前夜祭のモチベーションに酔った集団ヒステリー が、まさに ”まっさか落とし” なのです。
当番町が四年がかりで準備して、毎年少しづつ高めていったテンションを真っ坂の坂で一気に放出 爆発させる。なんと最後の坂の50メートル断崖を真っ逆さまに落ちるのです。

運び手の村の衆が断崖を前に ”づく” 尽きて、えーい ままよ と突き落としたのが真相なのは間違いないが、このパフォーマンスが受けた。天の岩戸が少し開いて女神さまがにっこり微笑まれたという。

命がけの落下転落がこれほど素敵でセクシーなお祭りは世界にふたつしかありません、諏訪の おんばしら祭り と イングランドの チーズ転がし祭り だけです。
ジャワのバンジージャンプですか? あれはカテゴリーが異なるじゃありませんか、却下です。
おんばしら の映像はNHKアーカイブスでご覧ください。

茅野のまっさか落としはおんばしら祭りのひとつのステージに過ぎないと書きました。
全部で何ステージあるのか正確に数えることの不可能なミニ集団ヒステリーがそっちこっちのご町内の坂で巻き起こっているのです。この時期の信州諏訪地方というものは、全域が魔界そのものです。

茅野生まれの著名人に団塊屋の なーさん がいます。いうことはありますまい、 魔人です。

ところで、その起源は平安時代という信州の奇祭 おんばしら大祭 を高い樹の上から目撃した信州の猿のハナシの続きです。
前頭葉の何処かが茅野の人間に近いんでしょうなあ、急斜面をケツで滑り降りることに並々ならぬ興味を持ってしまった。

茅野市郊外で行われる ”まっさかさ落とし” のグレートかつエクセレンスな狂乱ぶりに興奮した酔狂な猿が、杉の木の小枝に跨って地獄谷の崖を滑り落ちてきては熱湯池に まっさか に飛び込んで溺れる事故が4年毎に多発するので、祭りが近づくと長老猿は気が気でないんだそうです。

さてさて こちらは下北の脇野沢、道路標識の前にしばし佇むおしぐれさんのハナシです。
昨夜泊めてもらい硫黄の硫化水素温泉にも入れて貰った源さん民宿はイノシシ園の近くだったから此処よりも標高が高い。そこで一晩高度順化をしてから降りてきたのだから高山病ではないはず。
彼が変なのは単に二日酔いが醒めていないだけなのだ。

ここで冷静な田部井隊長なら次のようなご助言をいただけると思います。

「空気の薄いエベレスト高地で521メートルの区間を4分半で降りるプロ登山家などはいません。
それは素人の弾丸登山といって、弾道が単放物線を描くせかせか短慮型。
ヘリコプターを使った土日登山でエベレストに登ろうなんて無謀なテレビ局があるようですが生物学的に無理でしょう。そんなことをしたら短時間で生命を脅かされる高度な高度障害に陥ります」

先生、駄洒落がお好きだったとは ‥ 。 おしぐれさんを越えていますなあ。

「あのね、ヘリコプターのエンジンにガソリンと空気を送るキャブレータだって高度が上がると気圧が下がって混合比が変調するんです。近年はコンピュータで最適制御がなされますからずいぶんよくなりましたが天候急変で気圧がさらに乱れた気塊ゾーンに入ったりすると、酸素濃度の補正が間に合わずに墜落することがあるんです。
ジェット旅客機がエアポケットで急落下した場合は高度を落とせば収まりますが、こちらはエンジンが失火したままプラグが湿けって復旧しないんだから深刻さにおいてはより高度障害です。

ところで、おしぐれさんの場合は下降開始の海抜高度が521メートルですね。
エベレスト スケールメジャーで簡易換算するとこの高度は低度で、約520メートルはヤク山羊の産児放牧場より低い。

軽井沢の碓氷峠より少し高い処から自転車で何やらワメキながら降りてきたというだけのハナシですからご心配なく。
東京スカイツリーの高速エレベータに赤ちゃんを抱いて乗っても大丈夫なのと同じレベルです。
ただ この標高差をたったひとりで自転車を駆って4分半で降りてきた勇気には正直 ‥ ワタシ 泣きました ‥ いるんですねえ こーゆー団塊がまだ ‥ 」

「おおー パタゴニアの氷河の崖を吹き上がった風が ワシを呼んでいる、はやく来いよと叫んでいるー。 いざっ! 参らせ候う 北海岬ぃーっ」

おしぐれさん、自転車のアタマを右の方向に振ってわからんことをアジっている。
田部井隊長さらに続けて、

「これは二日酔いだけではなさそうねえ。 こーゆーキャラクターなんでしょう。 放っておくにかぎります」

脇野沢から九艘泊までは、さしたるアップダウンもなく、陸側に垂直の高い崖を見ながら進むと静かな入り江に着いた。
心拍もアップダウンしないままだったのでさしたる感動もないが、三方向を崖に囲まれた九艘泊の港は波も風も凪って静まりかえっていた。
天然良港とはこのような港を言うのだろう。 九尾狐の気配はない。

小さな船溜まりに四艘ほどの小型漁船が係留され浜の網干し場から潮の匂いが流れてくる。
残りの五艘は沖に出ているのかそれともこれで全部なのか、九艘もの船を収容するにはちと狭い港なのだ。
先の方に漁師小屋と見えるトタン屋根の作業小屋があって、軒から船を直接引き上げられるようにコンクリートのスロープが海水面の下まで延びている。

このコンクリート構築物はどうやって海のなかに生コンを注入して形成したのだろう。工事を指図した棟梁は祈りで大海原を切り開いたという七聖人のひとり、モーゼ親方だったのだろうか。
ふだん海の近くに暮らさないおしぐれさんには見慣れない風景だから自転車を押して近づくと、潮の匂いに混じって焚き火の匂いも漂っているのがわかった。
ひとがいるのだろうが人影はない。
声も聞こえない、聞こえるのは海鳥の鳴き声だけ。

朝の早い漁師は昼寝タイムなのかも知れない、時計を見ると7時30分だった。もちろん午後ではない。

田部井隊長のアタック隊がエベレスト臨頂登攀を開始したのは午前1時05分。風の止まっているうちの帰投可能タイムから逆算するとこの時間がアタック開始のぎりぎりなのだ。
星は瞬いているが真っ暗ななかで天候と隊員のモチベーションを判断をしてGOの決断をするのが隊長の役目。
あとは仲間のガッツと幸運と日本製機材の揺るぎなきを祈るしかない。

祈りとは人間の最終ウエポン。 MQ‐1プレデター や 利剣 など無機質無人の冷血アタック機とは根本のポンが違うんでえ べらぼーめえーっ!

宗教家のおしぐれさん 意を強くしてガッと踏み出す自転車にはこだわりがある。

1978年、ヴァチカンの中庭に引き出された一台の自転車。
献上されたばかりの黄金のコルナゴに跨った ヨハネ パウロ二世、周りの心配をよそに石畳の上を花壇の端まで50メートル走り、ブレーキを上手に使って後輪を浮かせると鮮やかなラビット ターンを一発で決めた。
たなびいた法衣の裾から風が起こり、ローザマリアの小さな花弁をつけた小枝がフヮーっと揺れた。

カメラ団の前に戻って来た法王の晴れやかな笑顔と黄金のコルナゴの映像はあっという間に地球上を駆けめぐり、宗教の垣根を越えて世界中のひとびとが喝采し歓喜した。

そのコルナゴのジオメトリーをそっくりコピーしたのが、後年おしぐれさんの乗車となったコロンバス スチール製のフレームである。
製鉄が産業としてイタリア ジェノバで始まったときの製鉄会社コロンバス。業種を問わず会社としての創業は世界最古といわれる。
クローム(Cr)やモリブデン(Mo) といった代表的改質元素の他にニオブ(Nb)と呼ばれる希少元素を添加して自転車向けに靱性強度を調整したコロンバス入魂の薄厚星型断面パイプは巨匠コルナゴの工房で溶接され強靭な自転車フレームになった。

おしぐれ号は平民用だから黄金メッキではなく、フェラーリレッドで塗装された。したがって法王号と比べたら格段に軽い。
そう書くとそれまでだが、あんた フェラーリレッドでっせ。そんじょのナニとは格もオーラも違う。

「ベネディクトのやつ、あんな重い自転車をよく漕げたよなあ。しかも90RPMでペダル回しながら両手離しでお祈りなんかしてやがった。
バイエルン生まれのスプリンターは生まれながらの敬虔なる クリスチャン・デ・ビチクレッソなんだねえ」

おしぐれさん、先代ローマ法王とたまたま同じ名前の知り合いの男を懐かしむ。
くり返します、たまたま同じ名前のベネディクトです。
先々代の法王 パウロ二世の自転車メンテナンス係をしていたベネディクトとは、よく一緒に地中海ロードの直線で ”もがき” 合った小坊主仲間です。

ベニーは 「ヴァチカンを卒業したらツールの選手になる」 のが将来の夢でした。
ヨーロッパの少年はみんなそうです。日本ではサッカー選手が夢の第一位のようですが、それは心得違いというもの。

サッカーは舗装された道路の少ない中南米系に任せておくべきで、国中に自転車で走れる道が敷かれた欧州や日本では自転車で世界チャンプを目ざすのが健全な少年のありかたなのです。
ちなみに現ベルギー国王のフィリップ陛下は、皇太子の時代にその健脚をナショナルチーム監督のエディー メルクスから懇願され、オリンピック ロード競技の強化選手に加わっておられます。

エディー メルクスに関しては、ここで多くを書く愚を避けますがベルギーの国家的英雄。わが国で言えば長嶋茂雄・大鵬幸喜です。
自転車とはそーゆーステータスですから、もちろん国技です。
皇太子はイタリア合宿にも参加され、苛酷な石畳の練習ロードを歯をくいしばって走っているところをぼくとベニーは何度も見かけました。
その頃はパールイズミの創業前で、石畳路は地獄のノルマンディーといわれたものです。

ぼくらは地中海ロードのフィッシュ&チップス屋台の前の、少し傾いたバイクスタンドに自転車のサドルを引っかけてからムール貝の砕いた貝殻をコンクリートに混ぜてある防波堤に並んで座り、夕陽を見ながらソフトクリームを食べるのが好きでした。
ぼくが首にさげているVISAカードはソフトクリーム屋でもミラノ ピッツア屋でも使えました。支払いはどーゆー仕掛けになっているのかは今でも知りません。
贅沢品は買ったことがないけれど、そーゆーときには雷のブザーが鳴って閻魔大王が出る。むかし母に言われたことを憶えています。

ぼくもベニーもイタリア生まれではないけれど、ここに座っている間はイタリアの男の子だからそれらしい振る舞いをしなければなりません。
海から吹いてくる気持ち良いシロッコ風が吹き抜ける防波堤に座り、浜辺を歩く金髪ビキニ美女に向けて 「♪ ピュッ ピュー 」 なぁーんて 口笛を吹いたりしていたものです。

でも夕陽が傾き、門限に厳しいヴァチカンの夕食までに帰るためには死にもの狂いで帰路100キロのペダルを踏まなければなりませんでした。
喉がカラカラになっても踏み続け、呼吸筋が 「♪ ピュッ ピュー 」 と鳴りました。大リーグ養成ギブスのような音でした。

それから何年経ったでしょう、たまたま同じ名前のベネディクト16世が第265代ローマ教皇に就任されたとのニュースが遠い日本にも届きましたが、タメ口で語ることの出来る男はメンテ係のベニーのことです。

九艘泊の鼻を曲がってさらに北に行くと左手の視界が大きく開けた。
ここが北海岬、日本のパタゴニアである。
ここより先に道は続いていない、崖に当って行き止まりになる。崖上の森を歩くにしても自転車を担いで崖を登るすべはない。

南米南端のパタゴニア岬には、足元の氷河の端っこに 「地の果て アッチは南極」 と書いた旗が立っていて、それが強風に引き千切れそうにはためく鮮烈な風景なんだそうですが、ここは静かな処だ。
海の先は北海道、西の遠くはロシア。海岸に漂着しているプラスチックゴミにはハングルの文字。

パタゴニアと同じ国際規格の Road End の標識の立つすぐ下の海を見て驚いた。

「びえーっ! ウニがいる 海底の石の上にウニがいっぱい うにうに しているーっ」 

ウニがこんな浅いところに、まるで道の上から黒の碁石を撒いたように、うにうにのウニが普通に見られるとは思っていなかった。
ウニは海女さんが鼻いっぱい空気を吸い込んで、握った昆布を逆にたどりながら潜って行った深い岩場にいるものとテレビの あまちゃん を見て思っていたからだ。

この辺りの海は透明度が高く、深いところのアワビまで海底の様子が見えるがウニは腕まくりして掴める深さにいるのだ、しかもでかい。
殻を少しだけ割ってスプーンでひと掬いして身を食べた後は、硫化硫黄液に漬けてまた海に戻せば小さな傷など忽ち元気になって大きく太りそうなウニちゃんなのだ。

おしぐれさん、自転車を止めてガードロープに立てかけると、靴を脱いで海に入り一個取ろうとロープの下をくぐって水辺に立った。
ウニちゃんはすぐそこにいる。
スプーンはないが笹の葉っぱで代用できるだろう、山側に生えている下北曲がり竹の葉は鋭く硬い。

「キーイ キッキン キッキン キューッ!」

背後の山の崖にしがみつくように生えた高い木にいた猿が、アラート信号を投げてきた。

「ひとが来る、小さな装甲車と中型の戦車が迫っている。海から上がれ! 極めて危険 危険!」

岡の方をふり返ると手押し車を押した婆あさんが道より高い土手の上にいて、手押し車を支えにして倒れないようにしながら額に手をかざしてこっちを見ている。
さらにその奥の方から荷台にのぼり旗をおっ立てた軽トラが、ガタピシしながらこっちに近づいて来る。
荷台ののぼり旗の横には鋭くて長いモリが縛りつけてあって、ガタピシ揺れるからキラキラ光っている

「なんだい 人がいるんじゃないか」

おしぐれさん のんびりそれらを見ていたが、

「えーっ 密漁取締り監視車 って書いてあるよ。密漁ってワシのことかね」

一切を合点したおしぐれさん、腕まくりをした両手を海の中に突っ込んだ。
ひえーっ そんなことをしたら密漁行為で検挙されるか、悪くしたら漁師のモリで突き殺される。

「おーい オメさん そごで何してんだあー こごはおらほの漁協の特別漁圃場だで よそ者は入ってはなんねーだ! もーじき けーさつが来っから そごを動くな!」

軽トラから降りてきた爺さんが海に向かって大声でいう。腰には鉈まで下げている。
もしかしたら背中に村田銃を背負ってんでねーのけ。

聞こえたのか聞こえなかったのかおしぐれさん、海に突っ込んだ手で両手一杯にすくった水を思いっきり顔やカラダにブチ当ててバシャバシャ洗う。水底のウニが驚いてうにうに逃げる。

滴をポタポタ落としながら道路に上がってきたおしぐれさん、手には何も持っていないし裸足に裸同様のサイクルウエアだから隠すものもない。
爺さんは腰の鉈に手をかけたまま睨んでいるが、近づいては来ない。
おしぐれさん、ゆっくりした動作で自転車のパンク用品入れから小さなタオルを取り出し濡れた顔やカラダを拭いていると、おしぐれさんの来た道をサイレン鳴らしてパトカーがやって来た。見覚えのある青森県警のミニパトだった。

「あいやー おめさん、福浦のー ぬいどう石山のー デカチン プロライダーでねえすか? こったらどこまで トレーニングだすか。はっちゃ ごくろーさんだすなあ。
爺ぃーさん、おめ 早とちりしてはなんねーだ。このひとは有名な自転車選手でなあ、しかも偉い坊さまで福浦のドライブインの陰のオーナーだあ。そのうえ旅行作家の先生でもあらせられる。
見でみろ! 海で汗を洗い流していだだけでねーが、このっ! えーが おらだぢは忙しーんだがら 思い込みでいぢいぢ呼ばねーでけろ」

ミニパトは生活安全課のあの二人組だった。
おしぐれさん 一言も釈明しないまま嫌疑が晴れて、ミニパトは帰って行った。
というよりこの二人組、おしぐれさんには出来るだけ係わり合いたくないという表情ありありで、無線機をがーぴー言わせながらそそくさと行ってしまった。本編には単にちょこっと出演してみたかっただけなのだろう。

「ほれみろ 爺ぃーさん、おらも言ったべしよー このひとは密漁者ではねーって。
濡れたシャツから透けて背中の彫り物が見えるっちゃ、同行二人 と彫ってあるべっちゃ。
この岬さまでわざわざ来たよそのお人で、同行二人といったらばあー このひとと弘法大師さましかいねえっちゃよ。おめ ケーサツなんか呼んで 罰ち当りな爺ぃーさんだなあ。
天罰が下らねーよに おらが拝んでやるだに」 

手押し車に寄りかかり、倒れないようにしながら婆あさんが両手を合わせて念仏する。
安心した猿たちが木から降りておしぐれさんの後ろに集まってきた。

「かんべんしてけれやー 旅のひとー。 おらもなあ 見張りの猿が鳴かねーがら いづもの密漁団とはちーっとばがし違うなあど思っていだんだあ。密漁団はボートで沖から来っかんなあー。
オメさま 猿語も分んのけ? てーしたお上人さまなんだなやー。 したらば おらは帰えーっからよー 罰ち当てねでくろっちゃー」 

結局、おしぐれさんはまったく無言のまま 爺ぃさんも婆あさんも去って、またひとりになった。
北海岬に静寂が戻り、逃げていたウニが浅い石の上に戻ってきた。
猿たちが小石の浜に降りて亀の手を拾っては器用に殻をむいて食べている。これは漁師が種を撒いたものではないので獲ってもいいようだ。

そのとき、静かだった崖の樹上から再びアラートが鳴った。

「八戒がくる! みんな上がれ、樹に登れ」

浜の猿たちは一斉に走って樹に駆け上がった。
逃げ遅れた子猿がおしぐれさんの背中に飛び乗った。戻ろうとしていた母猿はそれを見て高い樹に跳び移った。

「ガサガサガサァーっ」

音のする方から一匹の大きな牙のイノシシが一直線に崖を駆け降りてきておしぐれさんの前まで来た。
全身汗まみれ泥まみれ、鼻や耳や牙に蔦や蔓が絡んで吐く息荒く 悪鬼の形相。

「キキキッ」

小猿が怯えておしぐれさんのアタマの上まで這い上がる。それを捕えてジャージの胸に押し込むと小猿の震えが止まった。

「八戒 どうした。 柵を破って来たのか?」

「ハイだす、おらだってやる時にはやるよ。おしぐれさん 無事でよかっただすーう」

イノシシから悪鬼の気配が消えた。

「密漁監視車に追われでいなさるっちゅう 知らせがあっただ、おらあ三回目の体当たりで柵をブチ破って走ってきたんだあ。
おらが猪獅子から受け継いだ下北のシマで おしぐれさんにもしものことがあったれば、おらはフクシマの仲間から恩知らずの 意気地なしの 卑怯者の 大飯ぐらいと言われっちまうだ。
おしぐれさんがフクシマのイノシシのことをキチンと正確に書いてくれたことが ローカル双葉 民友新報 に載って、なんぼ勇気づけらてたことかってアッチの仲間から便りがあっただよう。
おらは字が読めねえだが手下には学問のできるヤツもいるんでさあ」

「八戒 ついて来い、海でカラダを洗ってやる。 小猿 おまえも手伝え」

「キキキッ」

小猿がジャージの胸元から顔を出し崖の木々から母猿たちも降りてきた。

北海岬、ここの浜と崖が北限猿の越冬と子育てのために秘匿された本当の場所。だが地図にはもう少し南に寄った脇野沢と記されている。
環境省も青森県も Zenrin地図も、担当者はそのことをよく知っているが黙っている。そして Road End の標識の先は空白に染められている。
よって読者諸氏よ、口外はなりませぬぞ。

八戒の汚れたカラダを海水で洗うと茶色い流れが起きて、それはウニの栄養分なのか うにうにうにうに 黒い碁石が集まってきた。囲碁なら白の一手総取り勝ち。


北海岬 おわり。


次回には下北半島の首根っこ地帯に戻って、核燃サイクルロードの環状線をひとサイクル終える予定でした。
ところがつい先日、恐れていたことが現実になりました。
サイクルエイド JAPAN の実行委員会から2014の開催案内に添えて、前回上位完走者であるおしぐれさんに対し 小癪にも 「果たし状」 が送られて来たのです。

原籍地を出奔中でしたからそちこち回送されて、お尋ね者のおしぐれさんの許にやっと届いた封書には経由地郵便局のスタンプが何個も押され、なかにはパタゴニア経由南極昭和基地特設郵便局なんてスゴイのもあってお宝鑑定団に出したいほど。

果たし状を突き付けられて 「腹が痛い」 と言っては 「逃げるか 臆病者め」 のそしりは免れぬ。

「ふっふ 片腹痛いわ 若造め 返り討ちにしてくれようぞ」

んな訳で、しばらくは筆を置いてトレーニングに励みます。じつは今年に入って股関節が変なんです。
でも言い訳しないのがサムライライダー 鉄の掟。
コースの猪苗代といえば旧會津藩ゆかりの地ではないか。

おしぐれさんは受けて立つことにしたのです。今年こそは新式村田銃にやられて果てるかも知れん、どっちにしろ果てるまでは走らんばならんのや。
新式カーボン勢を一台でも多く斬り崩して果てたなら、コロンビア CrMoスチールの切れ味と冴えの今も変わらぬことを先に逝ったベニーに届けられる。

雨で練習ロードに水が上がった日には昨年同様 「おしぐれさんの CYCLE AID JAPAN 2014 old rider かく戦へり」 をお届けしましょう。

それではみなさん ごきげんよう
おしぐれさんの熱きモチベーションにどうぞご期待ください。

syn

おしぐれさんの ロード歳時記 episode10 「人斬り峠」 パート 4
2014/05/19

大そうな宴席が用意された源さん民宿の”会見場”。 上座に案内されたおしぐれさんが金屏風を背にして二枚重ねの座布団に座ると、なかなかのお上人さまでございます。

パリッと糊の効いたゆかたは大変よいのだけれど、峠でそちこち刺された虻の痕が温泉で温められて赤く腫れていて、そこが糊に擦れて痛痒い。
ゆかたの胸元から期限切れのVISAカードを吊るした細い紐お数珠が覗いている。

昔 小坊主の修行に出されるおしぐれさんを不憫に思った生母が首にかけてくれたカードだ。
そのとき母のあるおしぐれさんを羨ましそうに見ていたのがお供となった犬猿雉である。彼らに吉備の団子を分け与えたのはじつはおしぐれさんの母親だった。

「この子はお調子もんだで心配じゃー、皆んなー 頼んだでやー」

動物語が話せる生母は、当時としてはハイカラなマリアという名前だった。

その後そちこち旅をして、ローマ法王が裏書してくれたカードはなぜか50年以上を経てもコンビニのレジで使えるスーパーさである。
紐お数珠はダライ・ラマ師がカードに通してくれたチベット山中のレアメタル紫曜石。
長年の汗と脂が沁みたうえに心拍の振動と熱で炭素化しカラードダイアモンドになった。渋い輝きを放っている。

民宿のおかみさん すなわち源さんのおっかーがおしぐれさんを見て思わず手を合わせたのは、そのお数珠の威光である。おしぐれさんのお上人ぶりに手を合わせたのではなかった。
まだ修行が足りておらんようです。

おかみさんの実家は青森の木地師で仏具も作っていた。子供のころからお数珠を見れば手を合わせるのは習い性だった。
そうしないと木地師の父親から材料を寝かせておく真っ暗で恐ろしい蔵に閉じ込められるからだった。
何年も生地のまま寝かされる仏具用の印度産 堅木地からはよい匂いがした。暗いなかでひやりとした木目に触れると仏さまの輪郭が指に伝わって、少女は恐ろしさが消えた。

こーゆーひとと長く話すとおしぐれさんの似非坊主が露見しそうだから、何はともあれ宴会を始めることにした。

料理はお上人さまの下命通りにイノシシ抜きの山海の珍味。
酒もイカンということで般若湯を隠した竹筒から青竹の芳い香りがしている。
脇野沢は北限猿の越冬地として知られるが近海漁の漁港としても有名なところである。源さん民宿は山の部に属する猟師民宿。見たことのないキノコや蕗も並んで芸者衆も到着した。

「はいはい ご免なさいましよ。 いやいやいやー お上人さま 大旦那さまあ〜、 こんち また けっこうなお席でげすなあー」

太鼓持ちは良助どん、このひとは鉄砲の名手だそうだが幇間職もよく似合う。

村に芸者置屋はないのでむつ市内に住む源さんの娘がふたり、俄か芸者となってやって来た。
魔界の虎に憑りつかれた父親の窮地を救ってくれるというお上人さまにサービスをしろと源さんの厳命である。
ふたりとも市内の剣道場で一刀流 薙刀 (なぎなた) の師範だという。茶髪にロングスカートのヤンキー風師範である。

ひとしきり賑やかに飲んだところで 語り部 源さんの 「斗南藩哀史」 が始まった。
このひと会津ゆかりの者なのか徹頭徹尾の會津びいき。
戊辰の役のあと会津から下北に減封されて斗南藩となった旧會津藩への肩入れが程を越えている。戊辰戦争は會津の敗戦で幕を閉じたとは言わない、発展的撤退と美化する。

その点では自転車乗りが 転んでも ”落車した” と言い張るのと一脈通ずるものがある。だが史実や年譜の逆転などにお構いなしなのは如何なものか。
魔界の虎に憑りつかれた男にしては何ともお気楽な男である。
その点でもおしぐれさんと一脈通ずるものがある。こーゆーひとたちが知り合うと発展的展開は爆発的展開に … ならなければよいが ‥ 。

ちなみに会津は地名を、會津は会津地方の人や文化を顕しているので混同してはならないのだそうだ。

哀史というくらいだからご陽気なハナシではないと予想はしていたものの、それはそれは悲しくも哀しくて何処かがおかしい。
そーゆーハナシであったから聞かされる方のおしぐれさんは般若湯が大いに進んだ。

話す方の源さんも飲みながら喋るからなのか、普段からそうなのか、何処までが史実で何処までが創作で、そのうちの何処が 法螺ばなし なのかの境界が判としないという点ではあの名作 「おしぐれさんシリーズ」 にたいへんよく似ていた。

でほらくばなしには慣れているから法螺ばなしと与太ばなしの区別はつくものと、多寡をくくって会見場に臨んだペテン師おしぐれ上人であったが、それを上回る源さんバナシの幻惑効果に酔いは激甚であった。
魔界の虎を退散させるほどの法力を有するおしぐれさんであったが、源さん民宿の密造般若湯は またたびの実 が原料なのか虎も静まる催眠酒のようですっかり眠たくなった。
それほどに源さんばなしは面白くなかった。
カヨちゃんのドライブインに居候していたときに見たNHKテレビの 「あらすじ版 大河ドラマ 會津の桜」 の中味を會津有利に改編した 贔屓の引き倒し ばなしだったからだ。

「お上人さま 聞いてっかあー 目ぇー開けろし。
ほりでぇー よう、 国界いの山さ越えようど峠に向がう若侍さに、伝家の宝刀を振り上げだご家老はどーしたかってえー ハナシの続きだがや」

「次の休みのホリディー に藩士たちと山梨さ行って ほうとう を食うべえ、これがほうとうの(本当の)コミュニケーションだあ というごとになったんでげしょー。
さっき 聞いたがやー」

こちらもすっかり良い心地の良助どん、むつかしい漢字は読めないのになぜかカタカナ語の駄洒落を言って、幇間の仕事は果たしている。

「馬鹿こくでねーど 良助、おめ 知ってっかー 廃藩置県をこれがら進めっぺってー時代によ、遠い甲斐の国さーまで行っで ほうとう 食って その日のうちさに帰えーって来るごどなんか出来っかあー。
週休二日も北陸新幹線も関越道もまだねえー頃なんだどう。 この放蕩やろーめー」

「そごだあ 源さん旦那、斗南藩士はよ ワープっちゅう術が使えだんだ。人切り峠の頂上神社には 「どごでも ドアー」 ってぇ仕掛けがあってよ、そっからピューっと どごでも行げだんでげしょー。
だども 行ぐのはええんだけんど、「帰りの ドアー」 っちゅうのがねえんだなあ これ」

「そーなんだ、おめ よぐ知ってんなあ。 帰りがねーがら 藩士の数がどんどん減っちまってなや。業界用語で 脱藩 とか フケる ちゅうらしいが 坂本竜馬の発展的脱藩道 とは微妙〜に違う。
ところで おめ、藩の最高機密の 「秘術 どごでもワープ」 のことをなんで知ってんだあ。
ははあ〜ん おめ、幇間に化けた敵の間者だなあ、このやろ 伝家の火縄銃で撃ち果たしてやる。 おっかーっ! 種子島を取れえーっ」

「なにを申すか 老いぼれの會津爺いめー 指が震えで火縄に火が点くまいよ。 
正体がばれっちまっでは仕方がねえ。 えーが! おらほには新式村田銃があるだ。 熊撃ちマタギをなめんなよー」

「あにー 村田の銃とな! 我らが聖城 鶴ヶ城に砲弾を撃ち込んで来た薩長の銃が村田ぞ。この裏切り者めー。
おめ、マタギと言ったな? そーいえば おめは秋田がら婿に来たんだったなあ。 あんとき口を利いてやったのはオラだぞ。 この恩知らずめー」

「なにおーっ 恩知らずと言われようと裏切り者とそしられようと、耐えて生きるが忍びのつとめ。
秋田マタギの哲学をまっとうし 斗南の陰謀を生国に伝えるまでは断じて死ねん」

良助どん、角帯の背中に差した太鼓のばちに似せて隠した小型銃を取って水平撃ちの構え。
それを見た源さんの娘らが忽ち父をかばって前に出て、素早く三味線の棹を払うと中から仕込み刀が現われた。それを棹につがえて閉所戦闘用の小薙刀となる。

「さては さては 間者め、秋田佐竹家の密命を帯びておったか、拙者としたことが迂闊であった。
秘密を知られたからには此処から出して成るものか。
おっかー! 仏間のなげしから伝家の宝刀 會津双龍の槍を取れえーっ! 娘たちーっ 抜かるなよっ! 會津日新館 免許皆伝 誉れの一刀流 薙刀の冴え、見せるは今ぞぉーっ!」

会見場ははからずも會津対秋田の決戦場と化してしまったが、この日二度のヒルクライムに疲れたおしぐれさんは座布団を枕に眠り込んでしまった。
座布団とはいえ布団で寝られるのはこの後しばらくはないのだろう。 おしぐれさんの旅は続くのであった。


明治新政府によって戊辰の役の改易から藩の再興を許され、極寒下北の現在のむつ市大湊辺り、過疎な原野地に名目3万石(実質1.5万石)の領地を得た元會津藩の斗南藩だったが、
會津での旧領地が33万石(実質45万石)との圧倒的な格差に落胆した藩士が脱藩したり、貧困が原因の藩士同士の対立が相次ぎ、基盤の定まらぬまま結局は廃藩置県によって斗南藩は消滅した。

徳川直系の會津松平家が下北に減封されるに際しては、新政府より会津にほど近い猪苗代湖周辺にも同じ3万石で候補地が示されたという説もある。
誇り高き會津藩が断固猪苗代を蹴って、あえて寒風吹きすさぶ下北を選んだ訳にも諸説があって有力説が定まらない。
それらは歴史家の考察に任せるとしても、朝廷の真筆の信任状を持ちながらも戊辰の敗戦により朝敵とされ、汚名を背負ったまま謹慎地の秋田から船出して海路むつの大湊浜に着いたとき、
彼らの見た風景はどんなだっただろう。

黄金色の稲穂が磐梯山の風に揺れる會津の郷を見慣れた藩士の目に、下北で最初に映った景色は熊と狼と猿と、猪と鹿と蝶が跳ねまわる茫漠の原野だったのだろうか、
それとも此処を足掛かりに蝦夷に独立国をつくる希望の大地だったのであろうか。

後者であれば蝦夷への最短岬は大間である。
夏場ならヒバの大木に掴まって泳ぎ渡ることの出来る距離である。現に酋長モグールに従った灰色狼の群れが泳ぎ切っている。
大間崎への街道を開こうと若侍たちが峠に挑んだ理由は理解できる。

現在でもむつから大間に向かうルートはふたつしかない。ひとつは下北を真っ二つに縦断して風間浦に出る山路だが中間地に恐山の要害がある。
ここは摩訶不思議の別地だから避けるとすれば残るは半島西側を海沿いに行き、脇野沢から人切り峠を越えて仏ヶ浦を通り大間に至るルートである。
峠には魔界からの使者のような虻が今でも待ち構えているが、ここを運よく突破できれば仏ヶ浦には弁天さまのようなカヨちゃんがいる。こちらのルートをお勧めいたします。

明治2年、斗南藩の上陸当時の峠には名前などなかった。
人切り峠の名がついたのは本編に書いてきたように辛く哀しい事実があったればこそ。
通過の際には山頂神社へのお参りをお忘れなきよう。またその際には帽子長袖長ズボンの着用を強くお勧めいたします。

また麓にある道の駅 わきのさわ にてキンチョールのアブコロリを購入することが出来ます。
会計の際に 「會津」 と渋くひと言 ”合図ワード ” を呟くと割引が期待できると源さんが言っていましたが、どうでしょうかねえ。


「人切り峠」 おわり

前章 パート 3 に添付の画像が、より本章に合っていましたかな。
次回予告は 「北海岬」

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