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「俊水」の掲示板
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重箱爺いの 隅をつつけば(3)
2013/10/02

ワシな ここ数か月のあいだ世間を避けるように こそーっと生きとるやろ、こーゆー暮らしもなかなかいいもんじゃ。
工房に籠ってチマチマと工作などして、つつましやかに暮らしておる。
かっこつけて言えば隠遁の暮らしやな。

買い物には行かん。
スーパーマーケットには不特定多数の目があるうえに、広すぎる売り場面積に対し出入り口が少なくて、しかも一度入ってしまうと出口までが遠い。
レジという関門もある。
その距離は自転車ならひと踏みじゃが、走って逃げるのはしんどい。

ワシ 脊柱管狭窄症なんよ、背骨に痺れの走るテロリストなんてかっこよすぎてシビレますなあ。
その原因はむかし砂漠地帯で受傷した爆裂弾の破片のせいや、ということにしてますのや。

駐車場は窮屈なうえに下手くそな軽乗用がへんな止め方をしていると、ワシのトランポはデカイので一発で公道に出らるとは限らない。
こーゆーところでトランポを楯にした銃撃戦など展開してはシロート衆に迷惑だ。
だから食料品の調達には近くのコンビニへ公園で拾った自転車に乗って行く、時間は明け方。

価格の割高感はあるが、冷えたビールとレンジでチンして貰った惣菜を一食分だけ買えば家の冷蔵庫やレンジは使わなくともよい。
塩分が多めの食品が多いこと以外はまあ気に入っている。
豆腐や納豆には醤油などかけない、塩気の多い惣菜と一緒に食べれば胃の中で調和されるじゃろ。

ビールさえ美味ければいいのじゃ。
明け方のビールはことのほか美味しい。

わが家から出されるゴミ袋の中味は、プラスチック容器とアルミ缶ばかりだから資源ゴミの日に出す。
不用なダイレクトメールや督促状、工作のメモ類といった紙のたぐいは小さく千切ってその日のうちにコンビニのゴミ箱に入れてくる。
宛名や個人番号の部分は剥がし取って工房のバーナーで燃やすのは習慣化された。

ワシは逃亡中の犯罪者というわけではないぞ、市民税や健康保険税だって督促状2回目までには払っておる。
いつまでも払わないでいると、市や県税の調査員が様子を覗いに来るからだ。
彼らに払う委託費でいったい何人の難民の子供たちが予防ワクチンの接種を受けられるだろうか。

ワシは早朝や深夜には工房から金ノコや電気ドリルやガスバーナーの音を出さんよう気をつけておる。
「キーコ キーコ」 「ガガガー」 「ガンガンガン」 「シューシュー」
こーゆー音やケミカル油の焦げるニオイが漏れ出ると、公安の捜査員が水道の漏水調査を装って様子を覗いに来るからだ。 

だからってワシは Dr Zoo を主稜とするテロリストの一員などではないぞ。
自転車の強度を落とさず重量を軽減するために金属を削ったり孔を開けたりの工作はしておるが、パーソナル破壊兵器など作っておるわけではない。
体力の低下分を自転車重量の軽減分で補って、オキナワ Century Run の完走を目ざしておるんじゃが、軽量新型車を買えないから自分で作っておるだけなんじゃ。

だから米箱の隅をつついて米粒を探し出すような経済状況下であって、隅をつつくべき重箱はない。
重箱とは絢爛たる会津漆塗りの弁当箱を何段にも重ね連ねてあるから重箱というのだろう、一重(ひとえ)では重箱とは言うまい。

標題は 「重箱爺いの 隅をつつけば」 である。
ワシとこにあるのはコンビニ弁当のプラ容器がひとつ、いやはや ひとえにご容赦願いたい。

さてその一重の重箱爺いがプラ弁当をつつきながら 「んむ!」 と顔を上げたのが先日曜日の夜8時前のことだった。
この日は大阪府堺市の市長選挙があって、開票作業は午後8時から行われるとNHKのニュースが伝えていた。

そのニュースの末尾で、臨時ニュース的な扱いながら 「現職の当選確実」 の字幕が流れたのです。
続いてアナウンサーが音声で 「NHKの出口調査で現職の再選が確実となりました」 と述べ、
同時に歓喜の万歳に湧く現職候補の陣営の様子が中継された。

コレおかしくねーけ?
午後7時で投票は締め切られている。だから出口調査から各候補の得票を推計することは自由だが、この時点ではまだ選管は開票を開始していないし最終投票率の発表もない。
確かにNHKの出口調査による当確は、これまで外れたことがない。
だからって、選管が開票に着手していない7時台後半にそれをニュースで報道していいのだろうか?

これは報道のフライングではないのかと問いたい。
また、選管発表を待たずにテレビの当確予報だけで勝利宣言をして万歳を叫ぶ陣営に対しては、大人気ないと申し上げたいのだがいかがであろうか。

この時点で当確を確信あるいは入手したとしても、選管による開票の進捗と確定投票率からしての絶対の確度が得られるまでは発表を控えるのが報道の姿勢ではないのか。
また候補陣営も逸るココロを抑え、勝利宣言の準備をしつつ対抗陣営にも塩を送り、粛々とその瞬間を待つというのが正しい日本の選挙ではないのか。

ワシは大阪都構想や維新の会や道州制のことを言うつもりはない。
たまたまテレビを見ながらプラ弁をつつきつつ、今回の大阪府堺市市長選挙の当確発表を ”第二選管” NHKで目にしたのである。
重箱ならぬプラ容器の隅をほじくるような事象ではござろうが、わが日本の文化である美徳のココロについて瞬時思った次第でござるよ。

syn

俊水工房発 「木質表面処理の新工法」 特許出願なるか?
2013/09/21

前回の当欄にてわが俊水工房は方針転換を表明しました。

ちっとも売れない木工屋をいったん閉めて、本業であるところの <自転車で超長距離を行ってもへたれることなくモチベを維持し、快怪走をずーっと可能にする車体改装に係わる事業>
グレーカンパニーの定款みたいな言い回しのシゴトに本腰を入れる旨の宣言でした。

ターゲットは 「美ら島 オキナワ Century Run 2014 大会」 http://www.cocr.jp/
設計は31年前といささか古いが気骨のイタリアンバイクを房主自ら駆って、息は切れてもモチベ切らさず華麗なる100マイル。
完走は最低義務やが問題は時間、7時間半での美走完徹を目標にしたのや。
ションベン以外は止まらんどー。

なあーに ご心配には及びませんぞ。老骨とは申せ ひとムチくれれば ハイヨー! シルバー。 
んん シルバー? やっぱり枯葉マークかあ。
<路上ションベン随時可> の許可シールも欲しいなあ。 ん お前もか キモサベ。

そーでねーべえ! ひとムチくれれば脱兎の如しだっぺよ。

おいおい、それを言うなら 稈馬の如し でねーの?

わかっとらい べらぼーめー! 稈馬はフェラーリのマークだから遠慮してダットサンにしたんじゃ。

何はともあれ工房内を自転車屋の雰囲気に戻さなければなりません。
木屑や木っ端の散乱した房内を片付け、木粉の降り積もった作業台や工具などを雑巾で拭いて大掃除をしました。
これからこの工房内には木粉でなく鉄やアルミの金属粉が舞うのです。

失敗作と放り出してあった未完のナイフなども埃を雑巾で拭い、前々回紹介したあの稀有な素材の白木材と共に箱に入れてワイヤーで天井に吊るそうとしていました。
天井からは替わって自転車用品を降ろすのです。
当工房は倉庫がないから空きスペースは有効に活用しないとワタクシの居場所がありません。
昇降ワイヤーはブレーキワイヤの古いのを再利用して作りました。この手動式エレベータはへたれ工房自慢の仕掛けのひとつです。

それはともかく、そのとき大発見をしたのです。
未完成のまま塗装されずにあったナイフの鞘と握りに <房変> が出現していたのです。

房変 ‥ こんなコトバはありません、ワタクシの造語です。

漢字通りに翻訳すれば <閨房での異変> ですからナントモ艶めかしいハナシでございます。
ただし、艶笑モノはワタクシが敬愛してやまない赤塚不二夫先生でさえ決して手を染めることのなかった禁断のテーマでございます。ワタクシごときにはトテモとても。
その手のおハナシなら、あの小沢昭一先生が第一人者でございました。
お二人とも故人になられましたなあ。 したらば‥ 先生亡きあとはこのワタクシが… 。

こらーっ! そーゆーハナシでねーだよ。
房変とはオラの工房で起こった摩訶不思議な現象のことだっぺー。

陶芸の世界には極めてミラクルな <窯変> というコトバがありますな、それに相当する木工房の突然変異を房変と呼ばせていただきました。

焼き物窯の窯変は、名人と称えられるご仁の窯に稀に現われる超自然の彩色美・熱と炎の奇跡と言われます。
滅多なことでは出現しない超レアな、それこそ神憑り的神秘ものなんですってねえ。

その ”変” がワタクシのもとに現れた。
とうとう ついに いよいよ やっと、へたれの偏執のと呼ばれ続けたこのワタクシの工房に創造の守護神が降臨ましましたのでございますよ。
ちゅーことは、ワタクシも名人の仲間入り? てへー 照れるなあ。

写真はマクロ撮影で接近撮りをしました、房変がお解りでしょうか?
磨かれた木部の表面に波のような ”しわ” が細かく浮き出ているのが見えますか?
何本もの木目の線と線の間に柔らくて小さな凸が並んで、板カマボコのように膨らんでいるのが見えますでしょうか?

写真の木口がギザギザに写って見えるのが凹凸の大きさです。微細なものですがトゲトゲしさは無く、クレープようの ”しわ” です。<ちぢみ> と言った方がよいでしょうか。
黄色に写って見えるのが凹に走る木目の線、ここが刃物で削ったときの元の高さです。対して白く見えるのが房変と呼ぶべき凸。膨らんでいます。
刃物で出したのではありません、ひとりでに凸んでいたのです。房変です。

それは、平滑に磨き込まれたこれまでの製品のものとは明らかに質感を異にしています。
握ってみれば手の平に吸い付くときの感触の違いが分かるのですが、写真ではそれが出来ません。じつに残念です。
その分は十分すぎる文芸表現でお伝えしましょう。

おまかせ下さい。ワタクシは余技に木工も自転車もやるマルチ爺いですが、その本性は文芸作家ですから。

握るとさらりとした感覚が気持ち良いのです、その効果は持ち重りを軽くします。
しっかり握らずとも滑りませんから自在に動かせます、長時間の細微なナイフィングにも疲れず楽しく取り組めます。

そしてなによりそのナイフの美しさにワクワクしてしまうのです。
作業しながらも時々掌を開いては、手元の道具に見入ってニンマリしてしまうのです。
それは道具と使い手との関係性において、これ以上なしの無上の良縁と言えましょう。

すべて申し上げました。素晴らしい文芸表現に作家自身が驚いております。

すべてワタクシの主観でありますが、万人に共通であることに違いありません。
もしも、万一そうでないご仁がおられたら、ご仁は刃物などを持たせてはならない超不器用人。こーゆーお人は無視のこころだ。それでいいのだ。

写真は房変を発見した時より二度、薄くうわぐすりを掛けて ”しわ” を定着させた状態で撮影しました。
うわぐすりの溶剤で ”しわ” が戻ってしまわないか? 塗料によって凹凸が埋まってしまわないか? 
心配しながら見守っています。今のところ波状カマボコ房変は良好に保たれています。

あと3回ほど上塗りを重ねる予定です。行程の途中で通常行う”研ぎ出し”は行わず、このまま完成させるつもりです。

完成後は失敗作どころか俊水工房を代表する作風に出世する可能性が出てきました。
はじめに失敗と判定した理由は刃物部分の安っぽさからでしたが、木地部分はこだわり工房の手法通りにしっかり作ってあります。

鞘のなかに納められている刃は、折れて廃品となった工業用鉄ノコを知り合いの金型屋さんで貰い、グラインダで削って砥石で磨ってをくり返して仕上げた自作品です。
よく切れますが元が近代炭素鋼で造られた工業製品のノコギリですから、刃紋はありません。

燕三条の打ちものの切り出しと比べたら重厚さや存在感といった ”風合い” で勝負になりませんでした。
ナイフ刃の刃紋は付加価値というよりイノチそのものですからねえ。
逆に工業ノコに妖艶な刃紋があったら不気味でしょう。

また切削感も大事な要素です、木材に刃先を当てた瞬間に判ります。
ふっ と柔らかく入って しゅっ と進むのが燕三条なら、カッ と当って グッ と切れるのが近代炭素鋼。
どちらを好むかは諸人色々でしょうが、ワタクシは三条派。

ですから今回の写真にも近代炭素鋼の刃物部分は写らないようにしています、握りと鞘が立派に仕上れば KOBE STEEL(神戸製鋼)の刻印が残っていてもご愛嬌となるでしょうが。
偏執で古徹な職人は当初その冷徹無機なブランド刻印が気に入らず、駄作箱に放り込まれていたという訳です。

偶然とはいえこの失敗作の木地に ”しわ” のある握り感の工法を発見したことにより、ワタクシあと一ヶ月は木工屋を続けなければならなくなりました。
ナンテコッタイ べらぼーめー。 美ら島はどーするんじゃー。

まあまあ‥ 落ち着きなされ。
美ら島は日本固有の領土やから逃げないが、新工法の世界特許出願は1日の遅れで巨億の富を逃すでよ、スピードがイノチなんですじゃ。
団塊屋はん、とうとうワシにも運が回って来ましたでえ。ひと口出資しまへんかあ?

この房変、何によって出現したものか?

わが工房に期せずして棲み付いた不精酵母菌、あるいは植物由来のチェーン油に房主の汗が混じって生まれたビフィズス菌へたれ株の妙なる作用。
それとも 「名人よそろそろ目覚めよ」 という創造神のご啓示。

んなワケない ない、答えは木粉の埃を拭いたときの濡れ雑巾から供給された水分です。

乾燥しきって水気を欲していた木材表面は、僅かな水分が与えらた瞬間から面白い動きをします。
ワタクシはその瞬間を見てしまいました。

日本中に木工屋は大勢いるでしょう、見る機会は平等にあったはず、でも 「コレ使えるでや!」 と見たのはワタクシひとりだけ。
古来、木を生活の道具・材料として用いてきた日本の先人達を含めても、コレを 「コレや!」 と見たのは、なーんとワタクシひとりだけ。
だって、この手法で作られた製品は家具にしろ手道具にしろ、これまでなかったもの。

なーさん あんた知ってるけー? 見たことあっかやー? 正倉院の宝物殿にこんな細工の太刀があったかあー? ないべさー!
これは日本の木工文化の新しい黎明なんや。ヌーベルバーグなんや。えらいこっちゃで。

さて、タネ明しをします。なーさん あんた箝口令は知ってるよね。
企業機密に属す事項が含まれますから、これより以降は知り得た情報の取扱いに厳重な注意を願いますぞ。

雑巾が触れて水が木地の繊維に浸みた瞬間、渇望した水をさらに得んとして木は組織をプッと膨張します。
このとき木目の筋部分とその間に挟まれた木質部とでは繊維密度の違いからリアクションに差があるのです。
膨張率の違いと水吸収開始時間に百分の一秒ほどの差があることが分っています。
なんてったってワシ見たんやから。

木質部が先に伸びて比較的硬い木目の筋は置いて行かれるが、筋にくっついている木質端部はくっついているが故に中央ほど伸びられない。
これがカマボコ型に形成される妙なんですわ。
雑巾が去り、時間が経過して水分が抜けてゆくときは膨張した筋が内側で踏ん張っているので木質部は初期位置まで戻れず、カマボコ状の波が残って房変が生成されるっちゅうワケや。

水分が抜けて乾燥したカマボコ中央部には空気が入り込んで内外気圧差を打ち消します、ですからからここで房変は完結するというワケです。
内部の空気が見た目より軽い握り感を演出するのです。
塗装しないままの木質部はフカフカして頼りない。そこでうわぐすりで空気の出入りを遮断するのと同時に握りと鞘としての強度を保証して完成です。

こーんな簡単なコトなんです。
これまで誰もやらなかったことが不思議です。
サンドブラスト法や強アルカリ液に漬けて木質部だけを溶かす工法も考えられますが、いずれも木質部が凹みます。
当工房の新工法では木質部が凸るのです。画期的やおまへんか? おますやろーっ!

子供の頃に通った小学校の古い木造校舎。明治期に建てられて以来百年、反り返った杉板が互いにがっしりと食いつき合って風雨をしのいできました。
その杉板の表面に房変と同じ原理の凹凸が出来ていて、とても綺麗だった。

机でじっとしているのが不得意だったボクは、床を這い回っては先生から教室の外に追い出されるのが日課でした。
古びた杉板に寄りかかって節穴に鼻くそを押し込んだり、ざらついた木目の模様を指でなぞって遊んでいました。
風化して凹んだ部分を舌で舐めると、少し膨らんで高さが変わるのが面白く、校舎じゅうの杉板を舐め回して 「なめくじ俊ちゃん」 といわれたものです。

統廃合とやらでとうに取り壊されたと聞きますが、木造校舎の外壁の杉板に刻まれた風化の跡がワタクシの房変マジックの原点だったんですねえ。
校舎の外構に使われた木は乾燥と含水を繰り返しながら紫外線に焼かれるうち、より硬い筋部が残り木質部は減衰して風格・風合いを醸していたんです。
風化の板は舐めるとホコリ臭い日向の匂いがして、美味しくはなかったけれどなんだか好きだった。

当工房の房変は風化の逆手で、柔らかい木質部を浮き立たせています。
それが握ったときの気持ち良さを演出しているのです。

一瞬の含水で木質部を浮き立たせる手法では含水時間の妙が決め手となります。企業秘密の特許出願準備事項であることは言うまでもありません。
当然ながら水もタダの水ではありませんぞ。
七夕の日の早朝に里芋の葉に溜まった水滴を亀の甲羅に集め、ズイキの茎を搾った痒い汁を加えてさらに恐山まで運び、イタコの祈祷力で神力法力の双方を授かった宝水なのです。

この辺りの記述はおよそデタラメです、企業秘密ですから簡単には開示できません。
特許が認められたアカツキには ISO 20201−B あたりで明らかにしなければなりませんね。

正直に申し上げましょう。房変は偶然でした。
それに気づいたとき、ワタクシの製作の常で 「奇をてらって」 駄作入の箱から引っぱり出し、うわぐすりを掛けてみたのです。
時間が経つにつれ、仕上りに近づいて行くにつれ、木肌に現れた房変の ”しわ” が醸す気配の上品さはどーでしょう。
ひょうたんからコマというやつですかねえ。

それより懐かしさに泣きました。
ワタクシ半世紀以上前の悪ガキに一気に戻って、手に持ったナイフを舐めました。当然です。
樹種が異なるから凸凹感は違うけれど舌が憶えていました、杉板のでこぼこです。幼時のときからワタクシは職人だったのですねえ。
うわぐすりが効いて房変は定着したことも確認できました

こーゆーのも茶道具でいう ”景色” と言うのでしょうか。
定規で画一に引いた ”しわ” でなく、天然の木目の並びに従って粗密が順不同に並んでいるところなど、けれん味がなくて良い景色と思うのです。
そのように自讃しています。

当工房の房変は水分で木地が膨らむ膨変を利用したものでした。
登り窯の窯変は釉薬に熱の灰と炎風がかかって稀に起こる奇跡の景色です、その壮絶なる景色を <かまへん> と読む輩が多くなった当世では、
膨変が房変でも かまへん やろ。

特許については樹種を変えてもう二三本あるいはもっと作り、技術の確立を証明しないと出願には至らないと思います。
でも仕込むべき刃物がもうありません、KOBE STEEL が最後の刃だった。

だからといって、木片だけのテストピースに ”カマボコしわ” を発生させて標本とする、というのはワシ好かん。
ワシが作っておるのはナイフや。刃の無いナイフなどよう作れんわい べらぼーめー。
よーけ切れる刃を鞘に出し入れして、脅してすかすと木の方もあきれて変質してくれるんじゃ。

砂鉄を集めて炭火で溶かしてハガネを作る前に備長炭の炭焼き修業に行かねばならんがもう夕暮れじや、まずは駅前横町の焼き鳥屋へ行こう。


 おわり


なーさん ヘンシュウ長のコメント。

ボクもやってみました。
縦に木目のある割り箸を布巾で拭いてみたのですが、なにも変わりません。
そらそーです、ラーメン食べていて割り箸に膨変が起きては なると を落として呆然しますわな、呆変です。なるとなると。

名人の話しでは、その前に100時間ほど磨きこんで木目の筋に成長ホルモンを呼び覚ます刺激を与えておくことがポイントなんだそうで、その辺りも特許項目なんですと。
偏執者でないと出来ませんなあ。
なんと磨きには撞木鮫(シュモクザメ)の腹側の皮と熊笹(クマザサ)を使うのだそうですよ、どんな種目でもいいとは言っておりませんでした。
衆目も驚く変質者ぶりでございます。    < 合掌 >

美ら島 オキナワ century run 2014
2013/09/09

いやー 涼しくなって参りましたなあー。
晩夏の暑さに練習をサボって <不沈ナイフ> など削っている間に季節はめぐり、早朝の外気温は22℃を下回っています。
となれば、自転車ライドを再開せねばなりません。 ワタクシのサダメですから。

ところが先日の関東の大竜巻のあと、空の具合がねじ曲げられたのか毎日雨が降ったり止んだり。
今朝も表に出てみると今にも雨粒が降り落ちて来そうな空模様。沈思黙考を1分、アッサリと出かけるのをやめました。

2か月近くも走っていないと出走の決断というものは、めちゃ好天気で低湿度・プラス気分ハイでないと中々決心がつかないものですなあ。
すでにケツの筋肉が劣化して、フニフニになってしまっています。
6月のサイクルエイドの後、モチベーションがどうもフニフニのままのようで、サダメは何処へ行ったやら。

することが無いので仕方なく、また今日もナイフを1本削って、塗料を掛けて乾燥の時間待ち。
乾燥中は匂いにつられて飛んで来る小虫や浮遊性微細塵がひっ着かないように工房を閉めておかなければなりません。当然ながら房主も退室。
これで完全にすることが無くなった。

わが家にあった刃物という刃物は、引出しの奥で忘れられていた家宝の 「新潟燕三条 別製 特打ち出しの切り出し小刀」 まで総べて <俊水スペシャル> に改造し尽くされました。
残るは台所の包丁だけ。
以前居た家人が置いて行った包丁に対しては、旺盛な創作意欲を誇るワタクシでもさすがにフニフニで、俊水工房ははやくも材料不足の手詰まり状態。

暇つぶしにと開いたメールにJTBスポーツエントリーからお誘いの新着があった。
サイクルエイド参加をきっかけに時々メールが届くが、今回は凄いのが来た。

「美ら島 オキナワ CENTURY RUN 2014」 という超ビッグなタイトルである。 ご参考 http://www.cocr.jp/

センチュリーといえば100マイルすなわち160km、へたれライダーの自転車ライフの集大成にふさわしいメジャーなイベントやないけ!
自転車乗りとして輝かしい歴史を経た大方のご仁の集大成はハワイ ホノルル センチュリー ライド なのだろう。だがワタクシは海外渡航禁止処遇の身。
オキナワなら祖国の一部やないけ、パスポート発禁者でも行けるんやないの?

詳しいことは書きたくないので簡単に説明しておく。
9.11事件の前年だった、南半球の山と湖の美しい某酪農国に入国する時、持ち込んだへら鮒釣り用の餌(ホワイト グルテンと麩系の粉)に麻薬・覚醒剤の嫌疑がかけられた。
この国には淡水湖や川での釣りといったらルアーとフライ以外には釣りとしての文化認識がまったく無い。しかも国民は南十字星がどこに見えるかを指差せるものが皆無という変な国だった。

入管の大男は餌を使う釣りは海の企業漁だから、漁を行うには法人として申請せよと抜かしやがる。
釣り餌と称したオリエントの麻薬を持ったままではここを通さぬ、と時々解からん中国語を交えながらねめつけるのだ。

すでに機内で日付け変更線を2度も越えるうち、 Budweier beer をしたたか飲んでご機嫌だったワシは、持って来た羽二重の竿袋から竹の竿を抜いて正眼に構え、断固屈せぬ抵抗の意思を示した。
「ワシとワシの釣り道具に手を触れる前に領事館員を呼べ、国際法を遵守せよ! I fromm kamikaze country」

独立民主国 日本男児として真っ当なことである。
「誰だってそうだろう。 違っててたまるか べらぼーめー。 My name as Rimbaud」

だが 「カミカゼの国から来た男 ランボー」 がいけなかった、<カミカゼ> も <Rimbaud> も空港ポリスの隠語ではテロリストを指すのだと後で知った。

たちまち武装したSWAT部隊に取り囲まれ、公務執行妨害罪と危険外来植物種由来の餌による水質汚染防止法違反準備罪で拘束された。
その後のことは書きたくないが、成田行きの飛行機のドアが閉まるまでワシの前後には大型拳銃を下げた制服警官が付いていたから手続きカウンターで並ぶこともなく、極めてスムーズなVIP待遇ではあった。

そんなこんなでワシは国外犯罪者だからホノルルには行けんのよ。
テロと麻薬嫌疑に係わった者の入国拒否には時効がないんだそうです。

しからば My country オキナワがある。美ら島がある。
目標が定まればモチベーションも上がる。
少々の雨だって練習に行ける。 長く続いた「燃え尽き症候群」から脱却できそうだ。

だがあの頃と違って、今は年金の身の上だからオキナワ渡航の費用ねん出が大問題である。
企業スポンサーは付かないし、<俊水スペシャル> の売れ行きもイマイチなので再度全ラインナップの写真を掲載いたします。

これで作り止めですけん、レアレア の アレアレー Array Nippon でっせ。
オキナワに行きたいんよー。
魔除けに一本買っておきなわんしー。

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写真左: 在庫が10本にもなった <俊水スペシャル> ナイフ群の雄姿。
   中: 見るだけでモチベ全開の木目が美しい逸品 割り箸の木の軽さとは違った趣。
   右: これらは水に浮きませんでした。
      燕三条の打ちものは多田羅(たたら)製鉄由来の本鋼(はがね)、ビゴ砂漠から千年かかって流れ着いた日本海の砂鉄が元です。
      上から 孟宗竹 栢(かや) 橡(とち)で作ってみました。

木工屋 俊水工房発(3)
2013/09/06

昨日、県内に大竜巻が起きて、県の中西部から北部の数市町で大暴れをしたようです。
家を飛ばされたり倒れた電柱にクルマを潰されたりの被害があって、怪我を負った人もあったという。
突然のことで手伝ってやれることもなく、気の毒に思うばかりである。

竜巻の素になった積乱雲は当工房の西北を通過して行ったようですが、そのころはまだタツノコ程度のものだったのか頭上は雷と雨だけだったから作業に没頭していて気付かなかった。
夕方になってテレビニュースで件の天変地異を知り、驚いて知人の安否を尋ねると 「無事」 とのこと。

没頭していた作業とは写真のナイフ作り。
おかげさまで 「水に浮くサバイバル ツール」 として <俊水スペシャル> シリーズが、極一部の極めて少数の好奇心の方々にのみ好評で(エーン)、
「どーやって作るの?」

問い合わせはあっても肝心の受注には至りません。
「刃物は自分で打つの? 木材はなに? 鞘の内部は何で削るの? 塗料は?」

つまり、作り方だけ聞いて自分で作ろうという魂胆 … バカヤロー 。

ふん、どーせキミらには作れんよ。
これはなあ、人格なんじゃ。

ひとには人格を構成する様々なエレメントがあるが、 その中の <偏執さ> これが人一倍でないと出来んのじゃ。
わかりやすく言うと、<変なひと> でないと作り上げるまでモチベーションがもたんのや。

接着剤が乾くまでの24時間を固定したバイスの前でじっと待てるか?
写真の丸太を割って製材して、削り出しのグリップを成形して鞘との芯を出せるか?

日本刀の鞘のように一直線にスッと収まらなならん、緩ければアホみたいに抜け落ちてしまう。しかも木目を合わさにゃ二束三文だ。
たかが木工だが、神経をすり減らし胃の痛くなる作業にキミらは耐えられるか? 

それより、節のまったくない原木の白木が入手出来るか?

この原木はなあ、もはや日本では手に入らん。
出来上がって袋に入って、タイやカンボジアから届いたのがスーパーの割り箸売り場にあるが、あの細さではグリップや鞘にならんだろーや。

写真はかれこれ20年前、アジア産に押されて廃業を決断した割り箸製造業者から貰った丸太材の切れっ端。
現在の日本国内にはこの切れっ端が一点のみ残っている。

これが水に浮く。

バルサの次に水に浮くのがこの木なのだ。
樹種名は言えん、当工房の最高機密じゃ。

スギやホウの木でも作れるだろうが、水に浮かせるには木材量を多くしなければならんから刃長とつり合いの悪い不格好な仕上りとなってしまう。
ナイフは男のロマンやから不格好なモノは持ちたくないよね。

よって 「float & return」 のナイフは当工房でなければ作れない、ゆえに <俊水スペシャル> なのじゃ。
少々高価な訳が分かったら当工房に発注の図面を送りなんし。
ちなみに写真のナイフの完成予価は ¥10,800

syn

木工屋 俊水工房発(2)
2013/09/04

水に浮くサバイバルツール第二弾はノコギリです。

山中で仲間が怪我をして急いで杖や担架が必要になったとき、、木や竹を切り出すにはナイフよりノコギリのほうが早いですよね。
切り口が平らで面取りが容易なことも二次災害予防上のメリットです。

遭難を待ち望んでいるアドベンチャーはいませんが、困難は向こうからやって来ます。大方は無予告ですから対策のツールで自衛することは反則に当たりません。
そこで、リュックの横ポケットに忍ばせておける軽量な味方ツールのご紹介。

直線挽きはもちろん、狭いブレード巾は合板やトタンに丸い穴を開けるのも得意。
潰れた山小屋から脱出するとき使えそうです。(使ったことはありませんが)

写真のブレード部をよく見てください。もしも悪意の野獣と闘ったら (ねずみ・野うさぎ・コウモリ・ムカデが対象です、熊は無理)、この鋭さと横への一振りは武器として一級です。
必ずシース(鞘)を装着して帯行してください。

シースの美しい木目模様は荒野であなたの心を和らげることでしょう。
また、どうしても点火の手段がない場合にはシースをグリップで強くこすると火が熾せ、よく燃えます。(塗料が燃えるときのガスを避け、屋外で作業してください)

新銃刀法規制の対象外、工具の扱いです。
軍用のようなゴツイのはどーもという方にお薦め、水に浮くお守りノコです。

仕様 全長 250mm
    全巾  23    
    全高  21
    刃長 125
 ノコピッチ   2 (1mm毎に左右跳ね) 工房内の細工用ノコとの比較では中荒、したがって怪我に注意。シートベルトはひと曳きで切れました。
総重量 45g

素材 ブレード: 工具鋼 (耐錆超鋼炭素鋼)
      厚み  1.0mm
      元巾  7.0
      先巾  0 (鋭角 つまり とんがり形状です、最大注意)

意匠 グリップ&シース: 白木 (バルザ材に似て非なる軽木、目が混んだ美麗種ながら樹名不詳 割り箸用の木かも知れない)
      塗装: 下地 木彫オイル 上塗 耐水ウレタン系硬化型

その他 シースの抜け止め: シース内部のテーパーがノコピッチに接触制動方式。

販売価格 ¥4,320 (スミマセン ノコ部の仕入れ価格が高いものですから)

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