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「俊水」の掲示板
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特別掲載 「北の山 〜 さんへ」
2014/12/02

当掲示板の大家さんである 団塊屋オーナーのなーさん のご奔走により、このたび 故宮的中国史研究家である 北の山〜さん と知故を得ました。
はい、 団塊仲間文壇の主峰の座を狙っているあの 北の山〜 め であります。

早くも千年の知古のような書き方をしております。 どうぞお許しください。
過日なーさんに託した伝言 「おーし 受けて立とうじゃないか 青二才め」 に対し、氏より丁重な返信をいただきました。 
それで ちこっと 知故った。 と洒落たくて ‥ いやー のっけから申し訳なし。

若き研究者の 北の山〜さん ですから私ら団塊世代を扶養する年代なんです。
いったいどれ程の負担をお願いしているのか。 そーゆー下世話かつ複雑精緻な計算は団塊屋さんの専門です。 

私は好きなときに寝て、目が覚めたら自転車で出かけ、雨の日はローラー台に乗るかおしぐれさんを書くか、その前に 信州から届いた 宮坂酒造の美味しいヤツを一杯遣って昼寝しよーかと、極めていいからかん (後述) であります。

北の山〜さんの近著の冒頭部分にたびたび、「なかなか進みません」 とあるのを読むたび、たっぷり時間のある いいからおじさん は心が痛みます。
若き文学者には研究と文筆以外の時間を強要してはいけない。 おじさんは思います。

団塊屋オーナーのなーさん、北の山〜さんを団塊屋の学芸員に指名して参与なみの級俸を付与し、自在存分に故宮史研究に没頭していただく。 こーゆー提案はいかがでしょうか。

なに? わが国のGDPがアベノミクスの当初予想値のとおりだったなら、そーする心算だったってかいね? 
今回の衆院解散にはやられましたな。 栃木のエース みっちゃん2 などにとっては新党準備に奔走するさ中の解散でしたから、こりゃー意地悪が過ぎるでや。

さて、北の山〜さんへ。
ご貴殿の中国研究には出て来ないであろう おしぐれさん とか いいからかん とか へたれマン とか、極めてヤマト語であるこれら俊水用語について解説をしておこうと思うのです。
「なかなか進みません」 ではなく 「おー みなの衆 待たせたなあ。 掲載してやったでこっちさ来て読めし」 そーゆー横柄かつ極めて みっちゃん 2 的態度をキープするのに俊水用語は役立つに違いありません。

* おしぐれさん
時雨が語源。 本来は晩秋の季語ですが急にザァーっと降って15分でまた晴れて午後の蒸し暑さを増す夏のしぐれ雨を連想。 転じてなんの役にもならない。 濡れても平気だがなんだか鬱陶しい。 こぜわしいひとの冠詞。 

* いいからかん
よい唐の漢。 痴漢のかん 風来のひと。 言動にはてんから保障なし。

* へたれ
屁こ垂れ を語源とする向きは多いが、そうそう簡単なものではない。 サムライの切腹と同義とする研究者もある。 ヘタる とカタカナ表記すると工業用語で 減衰する の意となることにも注意。下手る がその源初か。
樹上より柿の実のへたが腐って落ちる直前のさまは壮絶。 地面を紅く染めて音も立てない。 

*宮坂酒造
小沢 昭一 師の話中しょっちゅう登場なさる ”宮坂おとうさん” の酒蔵会社かどうかは定かでない。
そうであろうとなかろうと、ここまで有名になれば個人名の侵害とはなり得ない。

中国史のほうに出てくる張飛さんや曹操さんや始皇帝さんは苗字か名字か官職名か感触が判としない。 そのせいか硬い感じがしますね。 漢字だから。
おしぐれさんにももちろん漢字は出てきます。 漢字かなまじりが日本の国語だからですが、かなばっかりだったらなんのことだかわからなくなります。 適度に混じってソフト感が生まれます。

だからといって、三国志の英雄を愛称のちゃんづけで呼んでは本国からクレームがつきます。 「チャンとしなさい」 なんてね。
日本で最も有名なチャンはアグネス・チャンとマイケル・チャン。 このふたりだけはチャンで切っていいのです、その時点で尊称となっています。

ところで最近 made in china という表記をとんと見なくなりました。 PRC と書いてあります。 どこの略称かと思っていたら中国のことだった。
product by republic china というのだそうです。
もう支那ソバとは呼べないのです、PRC麺 (プリック ミェン) というのですかね。
もっともラーメンは戦後日本のオリジナルであって、中国では温麺・湯麺・担麺でないと通じませんね。 ギョウザだってそうです。 餃子日本一の宇都宮餃子は焼き餃子、しかも羽ねつき。 中国では焼かない、蒸すかスープで煮る。 復員兵が持ち帰って宇都宮で羽ばたいたオリジナル羽ねつき焼き餃子は遠慮することなく世界一と称してよい。

*レールマン・ラフネンコ
おしぐれさんの古い友人。 定年までは北海道でラフな鉄道ダイヤを編んでいた。
あるとき、役員室に呼ばれたレールマンは大変な謀略の計画を明かされる。

北海道レールウェイ株式会社 (仮称) が国の補助を受けて新規建設中である北海道新幹線の広軌道を利用して、ICBM ピースキーパーのロケットランチャー台車を高速無尽に走らせ、神出鬼没の発射基地化により※国の極東戦略上の最重要塞となって日本から独立し、国名をリパブリック・ノースレールアイランドと称する。

国の基幹産業は北海漁業と酪農業・観光のほか、ここが本音だが目の前の北方領土を※国ICBMを後ろ盾にして全島奪還し、さらなる領土拡大を国是とする。
謀議完遂のあかつきには、今ここにいる役員が全員内閣の要職に就くほかレールマンを鉄道省長官に任ずる。

 
「どーじゃ オメさん ここにある血判状に印しを押さんか。 社長、専務も是非にと言うておるぞ。 オメさんの編むレールダイヤはプラチナムだってなや。 おまけにロシア語が話せるそうじゃないか。 有能なオメさんのことは アイ ノウ じゃよ フエッ フエッ フエーッ」
北の黒幕とされる大地屋商店 (仮称) の会長が奥の席から鼻の穴をふくらませた。

「どこがリパブリックじゃい、 バイ国キングのペテン師どもめ。 ワシはたった今引退するけん話は聞かんど!」
敢然と椅子を蹴ったレールマン。 役員室のドアを開けたらそこに立っていた社長秘書のピリカが目にいっぱい涙をためて黙って差し出す花束を受け取って、エレベーターの前まで歩いたところでよろめいて倒れた。 
北海黒百合のフレーバーには何やら化学物質が盛られていたらしい。 ピリカよ おまえもかーっ。

北大鉄道病院 (仮称) の玄関を出るレールマン・ラフネンコの横顔は晴々と清々しかった。 過去の記憶をほとんどなくしたタダのおじさんになっていたからだ。
宇都宮に帰ったレールマンのその後のことは、バックナンバー 「四季咲き桜」 「レールマンの逆襲」 などを参照されたい。

ある種の化学物質でコーテングされた彼の脳からコート剤が少し剥がれたのは、おしぐれ師匠による自転車特訓のサドル振動とメンテ用チェーン洗浄ケミカル剤の蒸気を鼻から吸ったことでコーテングが溶けたのだろう。
市販のチェーン潤滑剤には米国デュポン社のフッ化製剤が主剤として使われていることが多い。それを溶かして洗浄する日本クレ工業 (仮称) の実力は凄い。

そのデュポンのフッ化剤が脳にどうなるのかここに書けないもどかしさはあるが、デュポンとムジナ穴を同じくするCIAの調査能力と攻撃のえげつなさを知っているボクらは何もいわない。
レールマンはあいかわらずボケたままである。 最近作でこのふたりが北の大地をめざし装甲車のようなトレーラーを引っ張って旅をしている真の理由などボクは知らない。

* お方さま
謎の美女 峰 雪子こと ラフネンコ 雪子 = おまんの方さま
赤いプジョーのトランクが沈み込むほどのジュラルミンケースの中味が何処から支援されたものなのか? 
そーんなこと、ボクが知っているはずないでしょうがや。 ほんまですってば。


いやーっ 調子にのって登場人物の個人情報まで披歴してしまいましたなあ。
あのね、 これは架空のハナシですけんね。
このあと どーゆー展開になるのか長期展望などハナからない いいからかん の でほらく ですけんね。 わかってますやろ。

*でほらく
出法楽 あるいは 出呆楽。
語源となったエピソードはバックナンバーでどうぞ のこころだー。

*作家のえせ関西弁
このひと、うそっぱちのときは何故か名古屋訛りの広島ふう関西弁になる。 山梨〜新潟〜山形弁のときには割とまともなこと多し。


北の山〜さん、俊水掲示板はこーんな調子なんです。 ある種のアナーキスト向けに暗号化された指示書の掲示板なんです。 本気にしてはいけません。 
禁を冒して解読をこころみる変な仮面の男たちのアジト屋上に生タマゴ型UFOが来ていたりするのをユーロ支部ハットリ諜報員から報告されています。

この章 おわり

地震そのとき
2014/11/24

突然の大地震。

その直前にかけっぱなしにしてあった宇宙TV宇都宮チャンネルが叫んだ。

 
「ぺフォー ぺフォー  長野で地震。 備えてください! 大きいです。 大きいです。
観測 P波 通過ぁー、 続いてS波到来 3 秒前ぇー。
臍下丹田に気を込めて構えーっ。 おーっし 来るぞぉーっ! サン ニィ イチ 押忍!」

ゆらゆらから がんっ と来て ぐらぐらグラぁ〜ッと大揺れに変わり、ほどなく収まった。
棚から落ちた物はない。 
揺れの間もローラー台を漕いだままのおしぐれさんだったが、そのペダリングにも特に影響はなかった。 
ヘソはいつだって締めている。 肉体の修練と精神の修養を高めたアスリートには極めてあたり前の当然のことだった。

うーん さすがはインター ステラーのテレビだ。
400Km離れた震源から地震S波がP波の後を追って関東に到達するまでの時間は、地域補正値をプリセットしたカシオ電卓ソロバンの電源を立ち上げて長野 → 宇都宮と入力する間もないだろう。 
放送値は大よそのハッタリに決まっている。 さりながら実質は極めてピッタリだったのだ。 大したものである。 
彼もまたオールドな真空管の身の上ながら辛苦な空間にみずからの身を晒し、古術放電流 最後の伝承者としてのプライドを賭けて 奥義 プラズマン の荒行に耐える覚悟の証しであったろう。

JR大糸線沿線の東側から関東平野までは地殻の浅いところに地震の伝播速度を遅延させる要素の構造帯はないといわれている。
だから2次波の大揺れは距離×Pの倍秒遅れで到達し 「いまくるよ はいよー」 の計算は補正値なしの大よそでもOKという大胆さなのだ。 修練が確信を生むのだ。

石油帯や天然ガスの層は揺れの大きなS波を吸収減衰するダンパー効果があるといわれるのに対し、およそ7km毎秒速といわれるP波は個体以外でも平気で透過して到達してくる。
つまりここには鉄・窒素由来の岩盤組織はあっても石油・ガスのような気液資源の埋蔵はないということだ。

それは残念なことなのか幸いなことなのか判断には個人差があろうが、そんなことを考えている間に遅れてS波がやって来たという訳だ。
それがどれほど速いかというと、現在天候不順で打ち上げが延期されているJAXAの 「はやぶさ 2」 に搭載されている小惑星表皮採集装置 ”インパクタ” の発射初速度5.2km毎秒に迫る3.5km毎秒速といわれている。
これではどれほど速いのか余計に分かりませんね。 いいじゃーありませんか、とても速いんです。

今いくよ・くるよ というお姐さん漫才がそーゆー観点からネーミングされたのは間違いない。
そのこころは、 太った相方の反応速度が若干ずつズレて累積するたびに衣装の白鳥の首が上がる。 ‥ うまいっ! 上手っ! でも説明が長いから座布団は1枚。

そんなことはともかく、褒めたいのはおしぐれさんの集中だ。
震源震度6−の揺れをものともせずにペダリングを続けるアスリートの使命感の崇高さには頭がさがる。
3・11のときはフクシマに繋がる電線塔の下でローラー台にセットした0.9キロワット毎分の発電機を死にもの狂いで回していた。
あのとき、県境の山中で電線が切れてさえいなければ原子炉の冷却は継続できたはずだ。

この男なら 「人類の移住可能な未知の惑星」 を必ず見つけて地球に帰ってくるだろう。

映画 「インター ステラー」
11月24日(祝)より順次公開開始、 地球環境を一度でも汚した覚えのある者は見ておくべきだ。
アンタのことだよ! スナック帰りに雀の宮銀座館の駐車場の塀のところで立ちションしたべ! オラは見てたぞ 隣りに並んでな。


時間の経過とともに長野県北部での惨状がわかってきた。 白馬村からの中継映像が倒壊家屋や寸断した道路を映しはじめた。
さいわい死者はなかったようで、怪我人は収容が進み行方不明者はないそうだ。
お見舞い申し上げます。 建物ならいつかは再建できます、今はたいへんでもいつか必ずできる。 頑張ってください。 応援しています。

先年、小谷村から白馬五龍や大雪渓をまじかに見ようと村内の道から山の道に分け入って二日間挑戦したことがある。
マイカー規制地点を過ぎ、路線バス終点を過ぎ、歩いて登山口に向かうハイカーを追い越すたびに 「がんばってぇー」 と声をかけられ照れくさかった。

あまりの斜度にロードバイクのギヤ比では進まなくなり、日陰の苔の上で靴をペダルから外す間もなく転倒した。
下を向いたまま降りてくる山道ですれ違う登山者たちは、白いジャージのひじと背中にべったりと付いた緑色の苔土の痕跡を見て黙って視線を外してくれた。

敗戦のバイカーに 「あら どーしたんですか?」 とか 「もう上まで行って来たんですか? すごいわねえ」 なんて言葉がどれほどの恥辱であるかを白馬の登山者はよく知っていた。

大雪渓をあきらめ、下り基調となる反対側の山の小川村へ行ってみた。 
道の駅のトイレの白漆喰の壁に 「日本一 美しい 小川村」 と書かれた幕が風に揺れていた。 柿の実が熟した頃の夕陽の小川村は世界一美しいに違いないと思ったものだ。

あのとき通り過ぎた美しい村々の民家の屋根が落ちている。 なんということだろう、冷たい雨も降り出したようだ。 余震はまだ続いているという。

あの辺りは昔から地震の巣があったように思う、松代群発地震と呼ばれていた。 最近あまり聞かないと思っていたら奴めエネルギーを溜めこんでいやがった。
糸魚川‐静岡構造線と関連あるともいわれているが、地殻エネルギーの発露なら糸魚川の海に注ぐ美川 青海川の源流域へ翡翠の塊りを押し出すだけに止めてもらいたい。


<目が覚めたがそのまま寝てしまった。朝になってかみさんにこっぴどく叱られた>

ローラーから降りたおしぐれさんが最初に打った安否お尋ねのメールに対し、数時間後に返ってきた長野市在住の知人 N さんの返事は極めておとなしめであった。
こっぴどく叱られたという奥さまが、まだ近くのコタツでお茶など啜って居たからかも知れない。

その程度でよかったと言えばそうだが、そーゆーことで オメさん いいのか。 再びローラー台に向かうおしぐれさんは呟くのであった。

信濃の国は大和のまほろば、つまり信州は日本のヘソだから地震が集中する。
これは地学者からは一笑に付されるであろう。 しかし医学者やジムのスポーツトレーナーは大いにうなずくところである。

思いっきり、地震のような屁をコキだしてごらんなさいな。 ほら、 ヘソまで揺れるでしょうがや?
腹囲95cm 脂肪層5cm超の N さんなら揺り返し分も含めて振幅はそうとうでしょうなあ。

揺れが収まったらしっかり起きて、かみさんに怪我のないことを確かめ、 「オレより先にお前を死なせん」 と どさくさまぎれに言い、家長として毅然とご近所に声掛けをして、とくに一人暮らしの高齢者には気を配りましょう。
こーゆーこと、いちいち書きたくはないが最近の前期高齢&予備者は体力があるからその分眠りも深いんだわ。 深酒のせいもあるがねえ。
奥さまの方は旦那のいびきの振動に慣れっこなので少々の揺れには目が覚めない。 これはそれでいいのだ。 そーやって地球は丸くおさまるのだ。 

この章 おわり

おしぐれさんの 「黄金伝説」 3
2014/11/21

「なあ レールマン、北海道はあっちやど。 フェリーに乗らんとどこさに行くんじゃ、そっち行ったら竜飛やないかい。 太宰の文学碑しかないわいな。
ほら見いや 走っとるクルマがめっきり少のうなってきた。 軽トラばっかりやないか」

相方から返事がないのでしかたなく外の景色を眺めていた。

津軽はすっかり晩秋の気配である。
 
道路の奥の丘陵はすべてリンゴ畑だ。 頂上近くまで見事に耕された畑には枝の先に残って真っ赤に熟したまんまるのリンゴたちがこちらを向いて揺れているのが見える。 
自家用なのだろう最後の収穫の日を待ってみちのくの柔らかな陽光を遠慮がちに照り返している。

太宰も見たのだろうか。

「あーっ 吉 幾三 記念館 なーんて看板があるやんけ。 こらー そうとうローカルなところに来ちまったでえー。 彼のいうとおりや、電信柱とデカパイの乳牛しかおらん。
記念館ちゅーのはソフトクリームを売っている牧場のことけ?」

「おしぐれさん あんた さっきからうるさいよ。 しばらく黙っとれ、着いたらマグロを食わせてやる」

「マグロかいな、 そらええなあ。 
けんどマグロは大間でないかい? 大間は下北の突端やで、津軽半島を行っても大間とは離れるだけやろ。 それともなにけ、このクルマ 海も渡れるんけ?」

「馬鹿なこというな、トレーラー引いて海を渡れるものか。
いいか よく聞け、大間だけがマグロの基地ではない。 海はソルトウォーターという形態自由の境目のない溶液で繋がっているのだ、よってそこを泳ぐマグロのうちのヘソ曲がりかつ減塩志向の小群れが竜飛岬の清水を飲むために岸に近づくことがあってもいいのだ。 公海航行の自由なのだ」

「あのねえ いつか言おうと思っていたけんど、オメさん そのバカボンパパみたいな口調はやめれ。 とても生来のバガボンドとは思えん」

「なんだとー!」

「ヘソ曲がりはあんたでねえの、ほんまもんを本場で食うてこそ旅の醍醐味やないか。 わし ヘソの真っ直ぐなマグロを食いたいなあ」

「黙れ だまれ! えせ関西弁のおろかな者よ。 
ツアーバスのミーハー客が素通りする辺ぴの浜にすっくと立ちてひとりヘソ曲がりのマグロを食う。 
醤油などいらん、ワサビなどはもってのほかである。  トッピングが欲しければ青森名産大玉ニンニクの生おろしかけ。 これぞパーソナル旅の本質なのだ」

「ほえー オメさん ええこと言うのう。 あの三文作家のやつに聞かせてやりたいもんだでや」

「ふん、 おまんのようなミーハー者は後ろに行って寝とけ。 戻りはおまんの運転じゃ」

キャンピングカーの狭い中央通路を最後尾まで行って硬めのソファーに座るまでのわずかな間に、おしぐれさんは二度ほどふらついて肩を左右の構造物にぶつけた。
レールマンの運転は顔に似合わないラフなハンドルさばきなのだ。

「痛てて、 おーい ソフトな運転しろよー」

鉄道線路ではブレーキとパワーレバーだけだからいわゆるステアリングハンドルなるものはない。ガードレールに沿って勝手にキャンピングカーは曲がって行くと錯覚するクセが彼にはあるから寝てなどはおれないのだが、万一の際には後部にいた方がダメージが少ないという判断である。

後ろの窓から牽引されて追走してくるトレーラーが見える。 前走車の巻き上げる木の葉をその端正な顔面にバシバシと受けながらも離されまいと必死について来る、歯をくいしばって走っている。
マラソン35Km過ぎの修羅場・決死の追走・サングラスを捨てた。 そういう悲壮かつ胸の熱くなるイメージなのは前引きのレールマン・ラフネンコ選手のハイペースのせいだ。 

国内最大寸法を誇る豪華トレーラーの車内に例のサイクルトロッコとおしぐれさんのコルナ号が積まれている。 人用の居住装置を取り払って二台のマシンと防寒着やヘルメットなど装具・発電機・スペアパーツと工具類などを固定しているので内部は極めて無骨である。
外観はシンデレラハウスのようでも中のしつらえはおしぐれ自転車工房とあまり変わりがない。むしろ支店の小屋である。
万力が取りついたダイニングテーブルの足元で発電機が唸っているシンデレラルームに女性を招き入れても、「ダメよ〜 だめ だめェー」 であろう。

牽引トラクターである前走のキャンピングカーと合計の全長は大型トラックほどとなり、狭い道は不得意であるがここまでのところは国道を走って来ているので何とかなっていた。 この先は分らない。

ふたりとも大型トラックなど運転したことはない。ところが乗用車ベースのトレーラーは牽引免許なしでOKだというのだから日本の道交法はラフだ。
そのおかげで怪しい二人組には不相応な豪華&ロングトレーンはふらつきながらも竜飛崎の方向に向って走っている。

めざす北海道にまだ雪の知らせがないので海峡を渡る前に津軽・陸奥あたりで物見遊山しよう。 そーゆーへたれな発想であることに間違いない。
無人のおしぐれ小屋の前で作家が途方にくれていたとき、まるで面倒な物語の始まりを予感させるような真っ赤なプジョーに乗ったお方さまが現われる二週間ほど前のことであった。

伝説 3 おわり

投稿読者 ご紹介
2014/11/19

(その壱) 目黒の 錢形 警部補 さま

やい 三文作家!
オメ やっぱし 正体はソリ引きのゴーシュ犬だったな。

どーも調子のいいヤロだと思っていたんだあ。
イヌイットのキャンプからアザラシの生肉を積んだソリがごっそり行方不明になって、先頭のゴーシュに似た犬に引っぱられた一隊が氷の海を渡って西へ行ったという通報からもう15年にもなる。

数年めえ、木ゾリの化石が中露国境のアララット氷河で見つかったとき、一時はノアの方舟の一部だと大騒ぎされたが木質の残留宇宙線年代測定から北アラスカ産ドロヤナギの木と判明して迷宮入りとなった事件。
あれはオメの仕業に違げえあるまい。

対共産COCOM統制により禁輸だったあの辺りの民族にアザラシ肉を大量横流しして得た金を元手に、日本でちゃっかり作家ズラしていたとはなあ。
仲間の犬はどーした。 最近ニュースを賑わせておる放棄犬とは犬種が違うようだが知っていることがあるのでねーか?

ええが 三文! 世間は忘れてもインターポールに時効はねえーど。
おらの目が黒いあいだは陸奥だろうが蝦夷だろうが、地の果てまでもオメを追い詰めるかんな。


(その弐) 目白のお方さまこと 色白の 峰 雪子 さま 

三文さん、目黒の旦那、 駄洒落もたいがいになされまし。

「メリヤスのももひきを取ってめえりやす」 

って、 たったこれだけを言いたくて前号を長々と書いたのでございましょう。
んなの、 ソリがごっそり と大して変わりませんわ。 ソロ弾きゴーシュ に至りましては論外でございますわねえ、余りものの合酒などしかお飲みになれないのでございましょうか?


(その参)

「なんだとぉー 峰 雪子ぉー! オメも仲間かあーっ。 インターポールの星 錢形平蔵 さまを愚弄するとはいい度胸だぁー」

「あ〜んらぁー 素読経でごめんあそばして。 摩訶般若波羅弥陀 オホホ」 

(係り)
きりがないので読者登壇を強制的に終わります。

おしぐれさんの 黄金伝説 2
2014/11/12

おしぐれ自転車工房のドアを外側から閉めたものの鍵がどこにあるのかわからない。
作家が訪れたとき小屋のドアは無施錠だった。
窓からの日差しが直射しない場所がコルナ号の定位置なのだがそれが消えている。 おしぐれさんは不在、そーゆーことが確認されただけだった。

中に入ったとき、思いのほか整理整頓された部品棚に例のTANITAの電子天秤を見つけた。
この棚に載っているものは、この小屋ではVIPな処遇を受けている数少ない高級機器なのだ。
なにかデータが残されていないか電源をONしてみると、液晶の窓が数秒間パラパラと点滅して天板にのしかかっている北緯の重力の補正を終えたあと精密天秤は0を示して静止した。
メモリは消去されたらしい。

おしぐれさんの魂の重さ、あるいはコルナ号のフレームに隠された黄金の重さを示したであろう怪しげな数値の記憶を期待したのだが、そんなものはもともと無いものなのかなにも解からなかった。

「さぁーて どぉーしたものかいのぉー。 探しに行くといってもなや みちのくの奥の奥の陸奥の国とはまた、やっかいなところを徘徊しとるもんだでや。 こっちが遭難してしまうで」

閉めたドアノブに手をかけたまま天を仰いでいると路地にクルマが入ってくる音がした。

「ぎょっ! 団〇屋のなー〇さんではあるまいな。 黄金がことのほか大好な彼のご仁はスーパー地獄耳レーダーとハイパー嗅覚センサー『ジャッカル』を駆使してやって来るから油断ならんでよ」

入ってきたのは団○屋の金マークがドアの中央にデンと印された黒ベンツではなく、この界隈ではとんと見慣れぬビビットカラーのプジョーだった。

「ああ よかった。金印のご仁とはなるたけ関わり合いたくないでよ」

こ洒落たプジョーはこの路地におよそ似合わない真っ赤な外装、ぴったり閉めた電動幌は漆黒である。 おしぐれさんの処にこーゆークルマが来るはずがない。
作家は天を仰いだまま無視することにした。

だがタイヤ音はおしぐれ工房のドアの前でシカトする作家の背後で止まった。
ふり向くと新品のスノータイヤから新しいゴムの匂いがした。 降りてきたのは小柄で上品な婦人だったがプジョーは彼女の重み分の車高を取り戻してもまだ後部に重みをのこしていた。

皮のブーツがコツコツと規則正しい音をたてて近づいてくる。
おしぐれさんが独りでこの小屋に暮らすようになって以来、この界隈では久しく聞いたことのない香しき品格音である。

「はぁーん やっぱりおしぐれさんの知り合いでではないね、きっと路地を間違えただけだ。
もしかしたら置きっぱなしのトランポの駐車料金を取りに来たパーキングのオーナーかも知れんなあ」

「あのもし こちらはおしぐれさまでございましょうか 左様なれば 奥さまにおめもじはかないましょうや?」

あちゃー おしぐれさまにおめもじだってよ〜。
古典噺のたらちねさまみたいなお方さまが来ちまったぜ、どーよ これ。

「はいはい 確かにおしぐれ庵に相違ございません、ですがお方さま 当草庵のあるじは留守でございます。
それにね あのへっぽこ坊主に奥さまなぁ〜んて洒落たものがおらすはずがねぇ〜でございましょうよ。
あっしも探しているのでございますがね、どーやら陸奥の国あたりをほっついておるらしゅーございますです」

「あら 陸奥でございますか 北海道ではありませぬか?」

「へっ! 北海道? 北海道は 水曜どーでせう でしょう」

「みどもの主人がJR貨物北海道に長いことおりまして、先年退職をしてこちらに戻ってからは どういうものか おしぐれさまとよく連れ立って出掛けておりましたのよ。
それゆえ、今頃は雪の広軌道を自転車トロッコかと思っておりましたわ」

「自転車トロッコ? そらぁー なんだす?」

「あら あなた知りませぬか? ザラ板張りの保全作業車に自転車を取りつけた軌道トロッコですわ。
雪の季節になると全面運休する貨物線でトロッコ三昧するのが主人の長年の夢でしたのよ。 凍ったレールは走行抵抗が減って面白い動きが楽しめるのだそうです。  
主人が設計して製作をおしぐれさまが担当なさったファンタスチックなスーパーカーゴバイクですのよ。
制作には資金と広大な敷地が必要でございましょう、 あたくしね、裏庭に栽培していた里芋畑のほんの一部でございますけれど作業場に提供いたしましたのよ。 オホホ」

「びぇ〜 お方さまは あのレールマンさまの奥方さまでございましたかぁー」

昔からの読者はご記憶であろう。
バックナンバー 36 「四季咲き桜」 〜 30 「レールマンの逆襲」 あたりに登場していただいた北の亜鉄人 レールマンである。

自転車では超へたれな足手まといの定年オヤジという設定であったがなぜか奥方は大金持ちで、やんごとなき定年オヤジはなぜか文無しのおしぐれさんと馬が合った。
おしぐれさんに叱咤されながら土手のロードをふらふらと行く際のエナジーフードであったあの 『里芋煮っころがし』 の料理名人が、目の前のお方さまである。

「あたくしねぇ 主人の特殊体型に合わせて毛糸の冬用インナー手袋と腹巻き付きももひきを編んだのでございますのよ。
出発には間に合わなかったけれどやっとできました。
あのひとクレジットカードもバンクカードも持たない主義でございましょう そろそろまとまった現金が必要かと、届けに参るところでございますのよ」

びぇーっ! プジョーのトランクが下がって見えるのは現金の入ったジュラルミンケースの重みなのか。
TANITAのハカリでは計り切れないまとまった現金っていったい?

「届けに行くに際し、おしぐれさまのものも預かって参じましょうかと本日はまかりこしましたがお内儀さまはあらぬと、そのようなご事情は存じませんでした。
あなた、えーっと 三文作家さんでしたわね。 ええ存じておりますとも、団塊屋さまの 「相談 相続シリーズ」 のついでに 「団塊仲間」 も読ませていただいておりますもの。 オホホ」

「びぇ びぇ〜」

「よろしければ同道されません? あたくし陸奥の国は不案内でございます」

「びぇー されます されます。 陸奥の国だろうが蝦夷の国だろうが女護ヶ島だって、里芋団子をいただけるなら喜んでジュラルミンケースのお供をさせていただきやす、猿とキジには内緒でっせ ワンワン。
けんどお方さま ちびっと待ってやんなせえ、あっしも犬ゾリ用の皮軍手とメリヤスのももひきを取ってめえりやす」 


伝説 2 おわり

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