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おしぐれ俊ちゃんのつんのめりライド(1)
2013/03/27

「アンタなあ、100キロを4時間で走るって威張っていなさるがそら平地でのことでっしゃろ。
ライダーちゅうのんは峠を越えて行くひとのことや、平場の遊水地周りでママチャリ追い越して鼻の穴ふくらませて満足しとんのはノリダーちゅうのや。
車椅子レーサーにチョッカイ出して抜き返されたばかりか見えなくなるほど置いて行かれ、泣いて帰ったっちゅーのんはアンタのことやないのんけー。
あたりまえだがや、あのひとはパラリンピックの世界二位やで。性根が違うんやアンタとはなー」

おじさんのピーキーな心拍数を考慮に入れない手厳しい批判に、
「ばかやろー ワシだって山ぐらい登れるワ、見とれー 頂上から位置情報付きメールを送ってやる。
雷鳥と一緒に写った写メールを送ってやる、ゆえに雷ダーと言うのだ。秀逸なる洒落にチビるなよー」
発奮したワシは今季初の峠へ向かった。

県南西部の山地には標高330m程度の峠が鎖状に連なった格好の林道がある。
20分から30分の登りで頂上まで行けるので、心拍が170を超えたらアウトなおじさんでも150手前ぐらいで登り切れる。
なんだ! その懐疑的な眼差しは? ふん 百歩譲って 登り切れるはずだ。 と訂正しておいてやる。

少し休んで心拍が110になったら再スタートし、次の峠にかかるまでの20分を軽いギヤでクルクル回して足に栄養と酸素を行きわたらせてまた登るのだ。
ただしそれは調子の良いときであって、ダメなときは一番目の峠にかかる前から心臓は波を打って150を示している。
そういうときは登らない、自転車をUターンさせて麓に向かう。
峠の反対側から登り切って、そうして降りてきたような顔をして麓の駐車場に戻るのだ。
対向して登ってくる若くて元気なライダーが尻を上げて踏み込みながらペコリとヘルメットを下げて挨拶してくるのに対して、ここで卑屈になってはいけない。
「オー! がんばれよー」
なんとも鷹揚な返事を返す、おじさんの威厳を保つ秘策なのである。

麓の駐車場に止めたトランスポーター車内に気つけ薬がある。
心拍が乱れたときのタバコがいけないことなど死ぬほど解かっているが、どういうものか一服点けると心臓が落ち着く。
ここ数年はこの方法が奏功している、医者に話したら呆れていた。
毒をもって毒を制するこの手法がいつまでも通用するとは思っていないがまあいいでしょう。
こういう日は自転車をやめ街道沿いのザゼンソウ群生地などで時間をつぶし、昼近く名物そば屋で一杯すすって家に帰る。
結果的にはそばを食いに行っただけだがまあいいでしょう。オリンピックに出るわけじゃないんだから。

朝のうち地元の通勤車が抜け道として通る以外は通行のクルマはなくなるので日中の林道は走りやすい。
この辺りは地そばの名所だから休日になるとジジイやババアの乗った県外車がカタクリの自生する山を目ざして押しかけて来るが、多くはナビに導かれてそば街道と呼ばれる大きい道を行くから林道には入って来ない。旧道の峠道は自転車天国になる。
土日には自称クライマーが大勢走っている。ほとんどが単独走だ。
登りでは能力差がはっきり出るから連れ立っての走行には向かないのを知っているからだ。

平日、ワシは大越路峠を目ざした。
名前もロマンチックなら山容と道のくねり具合がまたよい、美しい峠だ。
帰りに立ち寄るそば屋の頑固蕎麦がまた一際の絶品。
休日にしか山に来られない若いひとに峠道をシェアするために、ワシは平日にしか自転車をやらないようにしている。
登りで次々に追い越されるのが面白くないという理由も少しはあるが、シェア ザ ロード は有閑おじさんの務めであろう。

登り口の分岐点で車載の標高計をチェックすると167m、トランスポーターから自転車を降ろした星野自然公園の駐車場は136mだったからここまでは大した登りではなかった。
だがここからは休みなしに332mの頂上に向かって平均斜度9%の坂を一気に登る。
場所により11パーセント超の急勾配もあり、道幅いっぱいを使って左右に蛇行しながら少しでも実勾配を減らして登る。
標高計は3秒毎に気圧の変化を基に補正される、したがってより強い勾配に差しかかっていても3秒前の計測値が表示されていることがあって、この点はリアル表示のGPS機に劣るが機器の重量と外形の小さいこと、値段の安さでこちらを選んだ。

勾配(斜度)の演算は3秒毎の高度変化に対する進んだ距離から導き出される仕掛けだそうだ。
一日の累積獲得高度も記憶されるとのことだが、家に帰ってから「標高のわかる検索無料地図 マピオン」でなぞってみるとけっこう誤差が大きい。
車載機のしくみが気圧依存だから天候気温によっては30m程度の誤差は当たり前なのだろう。
ワシが現地で今すぐ知りたいのは勾配(斜度)だ。
45度を100%として今の自転車の斜度が知りたいのだが、ブレーキを握ったまま上に向けて坂道に止めた自転車の斜度を即時表示する機器は今のところない。
ガラス管に気泡を閉じ込めた建築用のアレがシンプルで良いが、走行中にリアル数値をデジタルで表示してくれる小型の単能機は見つからない。

現在勾配が分ったところで何のアシストにもならないのはまさしく事実。むなしくレバーを操作するも既にギヤはローまで落ちている、これ以上のギヤはもうない。
あとは死にもの狂いで踏むしかないのだ。
踏み切れなくなって失速すれば倒れる。足を着くくらいなら倒れた方が何百倍もかっこいい。
倒れたまま坂の下まで滑り落ちて行ったほうが何千倍もかっこいい。

「オラは今11パーセントを登っている、足を着かずに登っている。 オラはえらい がんばれオレ! 踏め、踏むんだ!」
勾配のきつさはモチベーションを鼓舞する一助にはなっている。
きつさ辛さを勾配という数値でモチベーションに変える。この手の脳のドーピングはワシ得意なんじゃ。
ジャージの襟に超小型のボイスレコーダをクリップして勾配と心拍数と辛さの実況を声で記録している。
家に帰ってから 「つんのめりライド記」 を書くためだが、再生してみると悲鳴と罵声と呼吸音ばかりである。
喉が枯れて声にならないのだ。
水のボトルを取るために片手をハンドルから離すなんて、とても出来ないのだ。
へたれなヒルクライマーほど単独行を好む理由がお解りいただけよう。

石臼挽きのそば屋の前を蛇行で過ぎて、100mほど行ったら頑健なバリケードが現われて通行止めになっていた。
2年前の大地震でこの先に地崩れが起き通行止めの措置が取られていたのは前年来たときに知っていたが、いまだに復旧しないとはこのまま廃道になってしまうのだろうか。
この美麗かつ冷酷このうえなしの峠道がふさがれてしまうのは惜しい。
登った者だけが見ることのできる頂上からの景観は北関東一と謳われていたが、行政は数年前に麓からトンネルを通して山の向こうまで新道を造ってしまった。
地元民念願の新道であった。
この開通により高速東北道の栃木インターチェンジから蕎麦の産地まで45分短縮され、都会から昼飯のそばだけの目的で来る酔狂者が増えた。
おかげで旧道は自転車マンの好適地になり、関東のヒルクライマーにとって聖地となっていたのだ。

石臼そば屋の手前が最大勾配の11パーセント。
車載器をチラリ見て確認できた。
ここを今年も足を着かずに登れたことが嬉しかった。
同じ自転車で同じギヤ比で同じ坂を登りきれたことは、体力低下に怯えるおじさんライダーにとって自信の維持効果大きい。
頂上までは行かれなかったが、一番つらい石臼そば屋の前を昨年同様にクリアできて大いに安堵したのである。
もしも道が続いていて頂上の観望台までクリアで登ることが出来たなら、5年前と同じ体力と確信できたのになあ。
鉄のバリケードにもたれかかって大きく息を継いでいると、下からヒュンと登って来たオートバイが急停車し残念そうにUターンして坂を降って行った。

ワシも続いて坂を降ったが、新道との合流地点で先ほどのオートバイに追いついた。
コーナーの続く降りなら自転車のほうが速いのだ、腕と度胸が違うのじゃよ お若いの。
嬉しさが自転車を前に押し出す。
こういうときはグングン踏めるのだ。

永野川に沿って静かな山あいの村を行くと左手の川の向こうに寺坂峠の登り口が見えてきた。
こちらの峠は通行止めの箇所はなく、山を越えると古刹 出流山満願寺(こさつ いずるさんまんがんじ)の門前に抜けられる。
昨年登ったのは夏だったが杉木立の中の林道はひんやりして薄暗く、頂上から満願寺に向かって降るあいだに半袖ジャージではカラダが冷えてしまった。
今年はまだ早いから熊の残留者がいるかもしれないのでそのまま村の道を上流に向かう。

渓流釣りは解禁前なので沢の魚影が濃い、竿の影が映れば用心深い岩魚が橋の上の丸いタイヤの影には警戒をゆるめ流れの中で餌を追っている。
「鹿の飛び出しに注意」の看板のあたりで路上のひき蛙を見て止まった。
この先の話が先週の

 立ち止まる 二匹の蟇(ひき)が 動くまで 自転車とめる 春の山道

というヒューマン短歌に続くのでございます。
来週はいよいよ寺坂峠かなあ。

syn

おしぐれ俊ちゃんのつんのめり短歌
2013/03/25

 立ち止まる 
 二匹の蟇が動くまで 
 自転車停める 
 春の山道

蟇はひき蛙のこと、山側の土の中から出て来て道の下の農用池へ行くらしい。
作者はなんと優しいひとでありましょう。
後続の車両を自転車とわが身を楯にして止め、カエルの水帰行を見守っているのですねえ。
「がんばれカエル」
と応援したくなると同時に、
「無茶しないでよ おじさん」
作者本人の安全が気がかりでございますなあ。

今年の春は例年より早いとはいえ山はまだコブシの花、桜はまだまだです。
三月の末でもう出てくるとは思わなかった、しかも二匹連れ立って。
冬眠も一緒だったと考えるのが自然でしょう。そのような生態を知っていましたか?
止まったらなかなか動き出さないのが蟇の特徴、このあとどうなったものやら。

つんのめり短歌を送ってきたところから察するに、カエルもおじさんも無事帰還されたようですな。
よかった よかった。

作者おじさんに写真も付けて欲しかったと伝えたところ、
「ワシはピュアでリアルなヒルクライマーやで、デジカメだのケータイだのそったら重たいモンは持たん」
素っ気ないお返事でありました。


  二題目
 
 やっと来た
 市税の過納還付書で
 迷い始めた
 決戦タイヤ

これは意味が解りませんでしたので作者のおしぐれさんにお訊ねしました。

「あんなー ワシなー、12月末に退職したやろ。そんで1月に最後の給料が振り込まれたんじゃが、市県民税ちゅうのが控除されとったんじゃ。
そんなもんじゃろと思うておったが2月になってな、市から24年度の残り分の市県民税をまとめて払えと言って来た。ワシの給与が止まったから天引きでけんちゅうての。
そやから払ったさ、ワシ優良納税者じゃけんのう。
じゃがな、明細をよく見たら1月分を二重に支払っているのに気が付いたんじゃ。天引き分と市の納付書でコンビニで払った分となあ。
そこで元の勤め先と市役所の両方に掛け合ったんじゃ。このころは寒くて練習に出られんかったから閑だったんでなあ。

おんしらー 年金生活者の生活困窮ながら優良納税者のワシから二重課税しておいて、当人から指摘されるまで知らん振りとはなにごとじゃー。
ことの瑕疵はどっちにあるのかは知らんが即刻還付せい。
いーか金利を付けて戻せよ。利率か? 納税遅延の際に重課する利率でよしとしてやる、もちろん日歩じゃー。
調査費用と電話賃についても請求権あるが勘弁してやる、ありがたく思えー。

そしたらな 昨日になってやっと市から通知が来ての、3月29日に還付の振込みをすると書いてある。 金利? 付かんわなあ。
ワシ思うんよ、金利は取って取れんことないやろけどその手続きで何万円もかかっては原資をオーバーするから諦めるひと多い、集団訴訟なら団塊屋のなーさんが専門やから任せようてな。
長い付き合いやワシの手数料はタダやろ」

は〜 それで、決戦タイヤとは何です?

「それや、先週のつんのめり俳句でお知らせしたろ。サイクルエイドジャパン用の本番タイヤじゃ。
いま付いているタイヤは本番出走前に替えとかなならん、練習走で来月末にはツルツルになってまうでなあ。
大会会場で周りの選手共をビビらせるビビットかつ超スペックのタイヤを履いて行かなならん。優勝本命やからのう。
じゃがなあ、そーゆータイヤは高いんじゃ。
勤めておったころはポイポイ替えとったタイヤを取っておけばまだ使えたのになあ、年金生活者はトイレだってなるべく公園でするようにしとるんやで」

は〜 それじゃ犬ですなあ。風呂は公園の噴水池ですか?

「そんでな、Amazonと楽天をよーく見比べて、安くて長持ちして見た目もマアマアで送料の掛からんのを選んで発注したんや、おとといのことや。
そこへ昨日の還付通知やないか、間ぁーが悪いのう。
業者の動きを見たらもう発送しとる、これをキャンセルしてビビットで超スペックのおフランス製のヤツと交換して貰うにはどうすれば良いのかお悩み中なんよ」

は〜 おフランス製ですか。ミシュランですな、それともピレリ?

「うん 生産国はタイランドか台湾なんじゃが伝票は本国経由なんじゃ。日本のP社だってB社だってそーやで。
製品のバラつき度では日本のを選んだほうが良いのじゃが、周りをビビらせるのも作戦のうちやからのう」

は〜 それより水道料金を払ったほうが良いと思いますがねえ。


一緒にサイクルエイドを走る勇者募集中
老若男女問わず 自転車とヘルメットやウエア等一台分用意あり(無償) 懇切指導 エントリー費用は本人負担 滞在費は野宿につき安廉。 
出走により得られるメリット : 特になし 南東北の明るい田園風景と限りなき自己満足だけ。幸運なら福島テレビ経由全国放映かも。
最終ゴール後、打ち上げパーティあり(落伍者でもバスで回収参加できます)
大会詳細 : サイクルエイドジャパン2013で確認されたし。

syn

おしぐれ俊ちゃんのつんのめり俳句
2013/03/25

添付の写真、 埴輪に見えるのはアナタの仏心不足なり。
これは 仏さまですがな、 断じて仏さまです。作者がそーいうのだ それでいいのだ。
ワシが彫った 一日がかりで。
自転車小屋が削りかすで粉っぽくなった。切り出しのマメが右手の親指にできた。
素材は建築現場でひろった樹種不詳の木っ端、文句あっかー!
170×80×60mm 小品ながら100年後には国宝であろう。少なくとも家宝としては取り扱って貰いたいと遺言状に加筆。

さて本日は春の彼岸、お墓参りには何時に来るのかとおふくろから電話。
「ごめんね 東日本復興支援サイクル エイド ジャパン2013という超国際級のイベントに出るので、その練習で暫くは行けないんだ。
おやじのこと? 忘れちゃぁいないよ、練習ロードの渡良瀬遊水地近くの赤麻寺にある六地蔵さまに手を合わせているよ。本当さ 夜には木像だって彫っている。
レース? うん 福島テレビに映るから放映日を連絡するよ。大丈夫だよ、ちゃんと飯は食っている。健康診断も受けているって」

ワシ、おふくろに嘘をつくわけにはいかんから今日は練習をやめて木像作りをした。
ワシのお師匠はあの円空師だからこれを埴輪と言われてはお師匠さまに顔向けができん、諸事情お察しくだされたく。
*サイクル エイドが終わったらこの仏さまを届けにおふくろに会いに行く。
完走証を持って行くのはもちろんである。 あるとも … ありたい。

ここで一句
「お彼岸に 行けぬ理由に ほとけ彫る」

俳句の背景説明はすでに済んでいる。
題名の 「おしぐれ」 を説明する、
おしぐれ=お時雨  しぐれ雨のようにせわしく落着きのない様子、またそのような人物をさす。さすらしい。
ワシ、子供のころから おしぐれ俊ちゃん といわれて来た。
「あのねー ワシは忙しいのよ、天才がアレしろコレしろって脳内で走り回るのよ。時間が足らん、ワシを止めたらアカンでー 腹にダイナマイトくくっとるんやからなあー」

*について
cycle aid Japan 2013で検索可能(カタカナでもOK)
6月8日の白石市と9日の福島ゴールのコースにエントリー済み、2000人が150km走れば300万円が被災の自治体に寄付される。
ワシ、もう一台もっている。出たい人あったら使っていいよ。あのカド号です。

ダイナマイトについて=検査結果は来週になると。
「何とも思っちゃあいないよ、ワシいそがしいんじゃー」

重箱爺いの 隅をつつけば (2)
2013/02/23

重箱爺いより お知らせ! 長崎火災原因の公表あり

緊急通告: 長崎グループホームの火災原因は加湿器と確定

<読売新聞web news (2月22日 22:10) より>
2月08日、長崎の グループホーム・ベルハウス東山手 で起きた4名死亡の火災原因とされる加湿器について、2月22日TDK(株)が自社製品「KS-500H」型機が出火原因となったと謝罪。
当機は1990年1月(通産省=当時、 現在=経産省)に対しリコール届を提出、同時に生産販売を停止していた。
対象 : 20891台
回収率 : 73.6%
ベルハウスの当該機はリコール未実施のもの
リコール理由 : ヒーター部脱落から火災の恐れあり

 <ここからは重箱爺いの私感>
ヒーター脱落⇒本体底部に接触⇒加熱⇒過熱(過温度センサ不作動) (NHK報道では1000℃超)⇒出火
上は不具合から出火までのプロセスだが、せっかくの過温度センサが働いていない!
脱落して距離が離れたためセンサが感熱しなかった。と理屈っぽいが、結果感熱しなければ安全センサの意味ないねえ。

ヒーター脱落とはねえ。情けないよねえ。
1990年と古い製品だが熱源の落下ってチェルノブイリやフクシマと同じ崩落やないけ。
リコール漏れの機だった。と逃げ腰だが、リコール周知と追っかけの徹底ぶりはどうだったのか?
新聞紙上に公示したあとは何もしない、ユーザーが持ち込んで来るのを待っているだけのメーカー・販売店は残念ながらあります。
リコール実施率・回収状況の報告義務はありますが、監督官庁のプッシュはカタチだけです。
「最後の一台を血まなこで捜しておりますが、今のところ所在不明」
と報告すれば、その年度は安泰なんです。

それよりも! TDKはなぜ今頃になって自分とこの製品だったと言うの?
火災は2月08日、当初から加湿器が疑われていたのに・自社のリコール未実施機がまだ5509台あって、過去に事故が46件報告されていたのに。
22日の公表までにもしも他所で同じ原因火災があったら、未必の故意による殺人罪だよ!
総務省消防庁も同罪です!

このホーム火災をきっかけに長崎ベルハウスと同規模の小規模施設にもスプリンクラー設備の設置義務が取りざたされています。
こーゆーのを論理のすり替えと言うのです。
スプリンクラーだの非常脱出装置だのを義務づけされないと採用しないで済む小規模施設を造って、規制前に創業してしまおうと企む輩の温床になっている消防法。
悲しくねーけ? 

さて、前号で長々と書かせていただいたアイリスオーヤマ(株)の SHM-100T 加湿器については、今回火災とは無関係でありました。
アイリスの同型機種をお持ちの方で 「団塊屋相談室」 へご相談された皆さまには個別お知らせをいたしますが、長崎火災と無関係ながら当該機の漏水の事実が消えたわけではありません。
引き続き使用時には注意が肝要でありますこと書き添えます。

今後とも重箱爺いの つっつきリポート をご支援賜りますようお願い申しあげます。

 おわり
2013-02-23 syn

重箱の隅をつつけば
2013/02/19

重箱の隅をつつけば桶屋が儲かる? はたまた藪をつついて蛇を出すか?
この作家には珍妙な題名を先に付けてから中味を考えるヘキが見受けられます。癖が強すぎてイグ書評大賞選考会はいつも悩まされるのです。
ねらいは何なのか、最後に何を言いたかったのかを手前のところで有耶無耶にする手法は百年後まで評価の卓には載らないと思いますよ。
でもね、昔テレビで見た「青島幸男の意地悪ばあさん」 あれはわかりやすかった、と思い出させてくれたことには感謝しています。 あっ これ投票には関与も考慮もされませんから。

                                                                                       匿名を条件に某選考委員の談話より


                       重箱の隅をつつけば                                          

    加湿器


2月初旬に長崎で起きた老人グループホームの火災では、4人焼死、依然数人が意識不明と伝えられています。
痛ましい事故、いや事件だと思います。
このとき私は自宅にいて、NHKニュースの報道を横目に見ながら 「自転車屋おやじ 第五話」 などをチマチマと書いておりました。
<警察・消防は出火原因を室内に置かれた加湿器のショートと見て調査中>
アナウンサーの第二声を聞いて手が止まり、頭を上げてニュース画面を注視しました。

焼けた加湿器の映像を待ったのですが映し出されることはありませんでした。検分中のため報道カメラは遠ざけられたのでしょう。
かわりにホーム側のひとのコメントが伝えられたのですが、
<3年ほど前に購入、メーカー名などは分らない> 
これだけの内容でした。
コメントはもっとあったのかも知れないけれど放送ではそこまでだったのです。死者を悼む気持ちの話しはあったと思うのですよ。
放送時間の割り振りとかNHKにも都合はあったでしょうが、哀悼、謝罪の部分をカットしたことで、
「この施設 良くねーぞ」
と感じた視聴者は多かったのではなかろうか。

それゆえ、重箱爺いとしてはついつい余計なことを考えてしまうのです。
このホームでは同時に買って残っているものがあるか? とか、加湿器への水の補充やオン・オフは誰が担当していたのか?
老人たちが就寝時間中の運転は断・続どちらで管理されていたのか? まさか入居老人たちに任せていたのではあるまいな?
そもそも加湿器という空気に潤いを与えて老人の気管支や肺や皮膚を乾燥から守る役目の、いわば優しき機械が出火元になりうるのか?
これら私の疑問にニュース放送は翌日になっても十分答えるものではありませんでした。

室内に置いてあった加湿器のショートという捜査関係者の話しからは、次のようなことを想起させます。
(1) 電気式の加湿器であるとわかる。… ショートと言っている。超音波式、加熱式(スチーム式)など方式は数種あるがこの時点では特定できず。
(2) エアコンの送風中に水分を添加するいわゆるセントラル式ではない。… 出火元の室内に置いてあった。という表現は成人が手に持って運び、かつ設置も容易であったと解せる。
(3) ショートとは、電気回路の短絡を意味するのが一般的。… ショートの逆はオープン(断線)。オープンでは火災原因にならないとの先入観が感じられる言い方だが、本当にそうか?

かつて電気式の加湿器は超音波式が主流でした。水を振動させて水分子同士を衝突させ、撥ね飛ぶミストを小さな送風機で室内の空気中に送出して湿度を高めるというものでした。
本体内に加熱器を持たないので安全、日々のメンテナンスほぼ不要。
水を切らさない限り発生ミスト量は一定で多く、また少量に制御も可能。消費電力は加熱式(後述)と比べ圧倒的に少ないと謳われて家庭用にも産業用にも売れました。
しかし加熱器がないのは事実ながら、水分子の衝突を繰り返すことで発熱は起こります。沸騰するほどではないもののタンク内の水は温水になります。

超音波式で困った問題が顕著になったのは10年ほど前。
それまでよくわからなかったレジオネラ症という病気の発症原因菌、レジオネラ菌の発生元が突き止められてからでした。
この文章をお読みの世代の方々なら、温泉地や銭湯などで集団発症した事件を憶えておられるでしょう。
程よい温水がブクブクしている環境はレジオネラ菌の恰好の繁殖環境だったのです。
たまり水にはもちろん、水道水中にも普遍的に存在するとされるこの菌が、大増殖して人々の呼気する室内空中に浮遊するのはいけません。
そこで水から菌類を排除した純水を使ってミストを発生させるタイプの機器が考案されました。純水は食塩を大量に使って精製します、大型ボイラーに通す水と同じですね。
ビル管理者の常駐する大掛かりな施設でないとメンテし切れません。もちろんセントラル方式になります。

加熱式の場合は水を沸騰させて出てくる蒸気をノズルに集めて先端から空中に噴出させる考え方です。
噴出といっても蒸気機関車トーマス君のような勢いでは周りのひとが火傷を負いますから、そこは程々に。
水の沸騰は電気ヒーターで行います。金魚鉢にいれるヒーターのように防水された熱棒が水に接しています。
小さな容器にタンクから水を導いてヒーターの周りを沸騰させるので持ち運べ、部屋の容積に合わせて設計も自由ですが個人で一個だけ作るわけにはいきません。
通常はメーカーが作った数種のなかから部屋に合わせて選ぶことになります。

超音波式で気がかりだったレジオネラ菌やその他の雑菌も、常時沸騰下の条件では棲息も繁殖もできないといわれており、加熱式が主流となった理由です。
ただし分不相応な大型機を買えば電気代は倍々の二乗倍になります、長時間運転することを考慮して決めるべき。
もうひとつ加熱式の問題はカルキ分の沈着です。
水道水に含まれる塩素、カルシウムなどのミネラル分が高温かつ長時間のブクブク状況下で石灰化し硬質の沈殿物を生成します、薬缶の底に着くアレです。
電気ヒーターの周りや加熱容器の底部に付着し堆積するのです。

私の実験では市販の加熱式加湿器を使いました。水を追加するとき以外は止めずに3週間連続運転させたらヒーター棒が倍ほどの太さになっていました。石灰質の塊りに覆われていたのです。
使用した水は居住する地区の水道水です。
加湿器に適した水と称して販売されている商品の存在を知りませんが、あっても買うひとはいないでしょう。
二年前の東日本大震災と原発事故の直後、赤ちゃんのミルク用にとヨーロッパ産のミネラルウォーターや沖縄海の深層水など、福島からできるだけ距離の離れた産地の水から順に売り切れたことがありましたね。
そのような家庭でも加湿器の水は水道水だったのではありませんか?

水道水で3週間連続運転したって! モニター依頼された? 違うの! なぜそのようなアホな実験に精を出したのよ、爺いさま?
おいおい分ります、私 重箱爺いですから どーってことないコトをほじくり返して生活の糧にしているのです。
団塊屋さんに言わせると山師と言うんだそうです。

石灰分の生成物は熱源ヒーター棒が顔を出している水容器室の方にも堆積が進み、底部の角張った形状の部分を核にして成長します。3週間で容積の半分が埋められていました。
その結果として蒸気発生量が減少して空気中の水分が低下したのですが、見えない湿気をなぜ量的に減少したと言えるのか? の質問には以下のように答えています。

 実験方法
水タンク一杯の水が無くなるまでの連続時間と室内湿度を計測
(1) 実験 1日目 :  8時間 56%
(2)     7日目 : 10時間 51%
(3)    15日目 : 16時間 44%
(4)    21日目 : 22時間 29%

私の実験が子供騙しの域を出ていないのは認めます。
外界と遮断された実験室で環境条件を一定にして行わなければ、その日の気象状況で湿度はいくらでも左右されますし、減水量だってそうです自然蒸発分は室温と湿度で刻々変化するからです。
子供騙しではありますが、その情熱たるやピタゴラスもかくやと思わせますね。3週間も加湿器の湯気を見つめていたのですから。
この間に秀作の短歌だって出来たんですよ。

  水やれば いまも潮香の凹み石 ここに置いてより まだ三年か

三年前、自転車で佐渡島一周路(県道45号線)210kmに挑んでいたとき、へたれて休んだ道ばたで護岸の下に見つけた凹み石、両手で持てる大きさ。
へたれ石と名づけて海に戻し、その後も走ってゴールして民宿で寝て、翌日トランスポーター車で回収してきた凹み石。
へこみ具合が気に入って作業場の隅においたまま。たまに水を入れてみる。
石はあの海に帰りたいだろうか また行ってみたいなあ 待っているのだろうか 佐渡の激坂どもめ。

賢明なる読者諸氏は、まだ 三年か の処を はや三年 とすべきか詠者が苦悶したことに気づくと同時に 石の上にも三年 の有名なワードを意識されたに違いない。
この三年、私のスキルは向上したであろうか 自問する3週間でした。

えっ? 何ですか、寒かったから家に閉じ籠って加湿器と遊んでいただけだろうって?

でも、それでもいいんです。
私ほどの科学者・数学者であれば環境条件補正に必要な掛け率など、暗算でチョイとひねるだけでよいのです。つまり無視するのです。
上の表を見てください、立派に傾向が示されているではありませんか。
電極棒が石灰石で完全に覆われた21日目の湿度29%などは家の外の湿度とほぼ同じ、ほとんど加湿されていないことを示しています。
加湿器を触ってみるとほんのり温かくなっていて暖房器としては役立っていたようです。
このときの電流量を測っていないので断言できませんが、使用電力量は実験1日目のときと同じだと思うんです。
なぜなら電気ヒーターの周りを石灰化した石が取り巻いて固着したために水を加温する能力が失われても、内部の発熱体は知らん振りを決め込んで電気を食い続けているからです。

この手間ひまかけた大実験から導きだされた結論こそが大事なんです。

 結論
電気加熱式加湿器は毎日お手入れをしましょう。
内部に残った水を捨て、このとき電極棒の周りや容器底の沈着物を古歯ブラシなど使ってコソギ落とし発熱体と水との接触をスマートな状態にしておきましょう。
づくがない場合や時間的余裕のない場合は、水タンクをセットする前に内部を流水で流してやるだけでも効果はある。あると思います。
というのは内部に水を入れて揺さぶったとき、そこそこの量の沈殿物がはがれて水と一緒に捨てられるのを目撃できるからです。
このとき加湿器本体の電気部分に水が入らないように注意してください。
実はこの 「水」 のことが今回の 「重箱の隅」 で重要になってくるので、あとでまた重複します。

(注) 4行上 「づくがない」 の意味について
長野県諏訪盆地でのみ通用する地方言語で 「づく」 とはやる気・根気・性根 すなわちモチベーションを表す言葉のようです。
4行上の使用例では、加湿器の手入れをしたほうがよいとは思いつつも 「えーい 面倒臭い」 と言ってやらない状況・そのときの気持ちを 「づくがない」 と表しています。
「づくなし」 と女性から言われたあなたは 「甲斐性なし男」 と罵倒されたのです。これは致命的です、修復不能ですからすごすごと退散しましょう。
語源は 「欲得づく」 のづく 「業つく張り」 のつく 「尽くす」 のつくと思われますが違うかも知れません。

さて、私が自宅の執務室で使っているのが、まさにこの電気加熱式スチーム噴出型の加湿器なのです。
執務室と書けばたいそう立派な響きですから、相応の加湿器がデンと据えられている。
そのように思われるでしょうが、2年前の12月にインクジェットを買いに行った近所のホームセンターで、入り口近くで展示中の冬物商品棚に並んでいたのを衝動買いしたのです。
数種並んでいたなかで一番安くて小型でシンプルな形状の卓上タイプを買ってきただけです。たしか1250円だったと記憶しています。

この一番安くて小型シンプル形状の加湿器がとてもよく似合う私の執務室は、ですから其れなりのシンプルさと安さボロさです。
同時に乾電池で動くデジタル表示の温度計と湿度計が一体になった温湿度計も買いました。こちらは580円くらい、携帯電話ほどの大きさで机の上に置きました。
温湿度計についてさらに書くと、580円のを買う3年ほど前に当時勤めていた会社の健康保険組合から1年間医療機関にかからなかった御褒美に貰ったものがありまして、こちらはデジ表示の時計とカレンダーも付いている豪華版。
ところがコイツの温度・湿度がどうも嘘っぽいのです。同じ部屋で燃えている石油ストーブ(灯油ファンヒーターというらしい)にも現在温度が表示されているけれど、差が開き過ぎている。
温度感知部分の設置されている床上高さが1mほど違えば温度差は当たり前なのかも知れないが温度計としての精度を知りたい。
小さな扇風機を天井に向けて部屋の空気をかき混ぜているので、その効果も知りたいと比較用に580円のも衝動買いしてきました。

こちらの結論を先に書きますと、温湿度計の表示はどちらも似たような数値を表示して、扇風機効果がなかったことが顕わになっただけでした。
いまは扇風機を首振りさせています、でも首を振り戻すときに 「コキッ」 と異音を出すので深夜の執筆時には不気味で嫌なんです。

今回の主題とは離れますが、深夜の執筆とはまた恰好いいですなあ。まるで物書きセンセイみたいで独りで照れてしまいます。
午後に寝て深夜に起き出して午前中くらいまで書くというスタイルが一番書けますますから、その様にしています。高名な先生方もそうなんでしょうかねえ。
食事ですか? 書きながらはお茶だけです。昼近くに疲れたら止めにして食事します、酒飲みしながら4時間くらい。
午後3時ごろ風呂に入って、パジャマのまま自転車を小屋でいじっているうちに眠くなりますから寝ます。ですから食事は日に一回。

酔った状態で自転車の変速機をいじって何度も調子を狂わせたことがあります。サイクルショップの店長に怒られます。
えっ? 自転車はいつやるのか ですか。
春から秋です、この間はもの書きは休止です。雨の日に少し書くだけ、私 本業は 「さすらいの自転車爺い」 と自負しておるのですから。
「孤高の自転車爺い」 と名乗ることもありますが標高が高くなると、たちまち 「へたれ自転車爺い」 です。

加湿器と温湿度計を買ってきてからの執務室は確実に快適化したと思っています。
思っていると書いたのは、それ以前が不快適だったのかどうか確たる証明ができないからなのです。
それ以前というのは 「濡れタオルぶら下げ方式」 これも立派な自然給湿機です。でもこれは加湿量が不安定でした。
湿度計を信頼していなかったと前に書いていますね、ですから体感でやっていた。というより洗濯物を乾かすのに丁度よいといった感じのものですかね。
この濡れタオルぶら下げ方式で私は十分満足していました。

洗濯物が乾き切ってしまったあとは喉や眼に感じる乾燥度で濡れタオルを二本にする、とかやっていたんです。
ひと昔前の丸いストーブに薬缶を乗せる方式を懐かしく思いながらね、これだと一定量の蒸気が薬缶の口から噴き出てきますから、安心感・安堵感といったものがありました。
いまでも丸いストーブありますよ、でもこれ換気をこまめにしないと酸欠危険なんです。そのうえ強い火力は狭い執務室にオーバークオリティなので自転車小屋専用です。
薬缶からシューシュー湯気が立ってきた頃には小屋の温度は真夏並みになり、冬のいでたちでは暑いから半袖になってチェーンの洗浄などするのです。
真冬でもまったく乗らないわけではなく、ローラー台に載せて踏んだり筋力維持程度に近くの公園を走ったりしていますからメンテは発生するのです。
スプレー式の洗浄液を使ったとき 「そろそろ空気中の可燃性粒子濃度が危険ゾーンだなあ」 とは思っていたんです。
で、ストーブの方を見ながら 「あとひと押しだけね」

そしたら、私の足元からストーブまでの空間が青い光りの帯で2m繋がったんです。
「ボッ」 小さく爆発音がして足元は少し暖かかったでしょうか、きれいな青でした。
無線ルーターの側面で光っている青い発光ダイオードと同じ明るい青色でしたよ。
つい最近これをテレビのニュースで見ました、ロシアに大きな隕石が燃えながら落下する映像です。
自転車小屋の狐火はスプレー缶を放り出して瞬後に消えて無くなりましたが、次には足元も背筋も寒くなりました。心拍数は測っておりませんが数秒間は計測不能値だったのではないでしょうか。
すんでのところで死ぬところでした。

(注) すんでのところ
これは諏訪盆地に限らず日本中で通用するべき正しい日本語なのですが、久しく聞きません 「寸出の処」 と書くのだと思います。
大工さんの鉋(かんな)の刃を起想しますね、研ぎ込まれた鋭い刃が硬い樫木の台からわずかに覗いた状態、これが寸出なのでしょうか。
この鉋でシュシューっと削った板を二枚合わせるとピッタリくっついて離れない。
名人の技が気圧を接着剤代わりにして離れなくなるんですねえ、凄いものです。
作家ならどこかでいつかは使いたい、嫋やか(たおやか)な日本語じゃーありませんか。

加湿器で死ぬこともあるんだ、という話をしなければなりません。
そもそも長崎の死亡火災から始まった話しですから、スプレー缶で死んでいては支離滅裂作家の風評が定着してしまいます。
わが家にやってきた加湿器は 「スー」 と穏やかな音とともに 「ほわほわ」 した湯気を吐き出して、執務室の卓上の温湿度計はたちまち18℃ 53%になりました。
ただし灯油ファンヒーターとの併用です。帰宅直後の冷え切った状態での温湿度を測ってなかったのが悔やまれます。
今からでもすべての電源を切って窓を全開にし60分放置すれば再現できますが、寒いのでづくがないだけなのです。

寒い室内で加湿器だけ運転しても湿度計はさほど上がりません、加湿器なしでもストーブで室内温を上げると湿度も上がります。本当です実験しました。
でもその後は湿度はどんどん下がってきます、ストーブでカラカラに乾いてくるのです。
当初湿度計が上昇値を示したのは、次のようなことからだと考えています。

温められた室内空気は膨張して圧力が増しますが、完璧に密閉された部屋ではないから圧は窓の隙間から逃げて室外大気とほぼ同じ気圧です。
室内に残っている空気は温められて粒子密度が粗くなり、その粒子の開いた隙間に外の大気中から水蒸気分が入り込んで結合します。
結果室内の水蒸気分は増加して湿度計は上昇する。
時間が経過してさらに室内が温め続けられると、水蒸気分は酔っぱらったように膨らんで昇天したくなっちゃうんですねえ。だから外へ出て太陽に向かって昇って行ってしまうんです。
一緒に空気分も少し出て行っちゃうけれど、ドアの下の隙間から冷たい外気が侵入してくるので窒息することはないから安心して、
そしてこれを繰り返すうちに最終的には水蒸気分の極めて少ないカラカラ空気だけになるのです。
だから冬の日本では加湿器で水蒸気分を補い続けなければならないのです。

どうです小学生でも納得する説明でしょう。
さらに得意がって言うならば。
冬の日本ではなぜ湿度がさがるのか? これをスラスラ説明できればあなたは小学生から尊敬されます。

晴れた日の日本列島上空の天気図は西高東低のスタイルといわれますね。
西に高気圧、東に低気圧の配置です。地球の自転により日本は自分から突っ込んで行って西の高気圧勢力に覆われてしまっています。
気圧は1013ヘクトパスカル(1気圧)を境に高い低いと分れます、高いとは空気密度が高いことと同義語ですから空気粒子は押し潰されて水蒸気分を担保しにくい。
一方低気圧の方は1気圧より低いんですから、何でも吸い込みますね、まるでブラックホールのように。
何を吸い込むかといったら水蒸気分しかないじゃありませんか。(もちろん中国上空でPM2.5も吸い込みますが)
水分を吸い込むから重い、「雨雲が低く垂れ込める」 という文学的な表現は理に適っているのです。
気象をネタに変な洒落を言う気象予報士でさえ、臆面もなく使います。

ゴビ砂漠で生まれた高気圧が西にあります。日本列島はそれに向かって地軸を中心に左回転しながら近づいて行くと晴れの領域に入いっていきます。
高気圧帯には水分が少ない話はしたよね。冬の日本では大気中に水蒸気分を担保していないから乾燥して湿度が下がるんです。

なぜ ゴビ生まれの高気圧は水分がないの? 
なぜ ゴビで高気圧が生まれるの?
なぜ 低気圧だと雨や雪になるの?

小学生よ よっく聞け。
冬の砂漠は乾季といって雨が降らないから乾燥中でしょう、水蒸気分がないと空気密度が進むことは説明済みですね。空気密度が高いことこそ高気圧って言うんじゃないのっ。
一方の低気圧はその名の通り圧力が低いから水分が入り込み易い。吸い込むんだって、それが雨の元だって10行前に言ったじゃないの。思い出したかい?
こーゆう局地的なことが地球のあっちこっちでテンデンバラバラに起こっているんだけれど、地球全体では互いに繋がり合ったり反発したり影響し合っているんだ。
なぜなら地球の表面は空気 大気ともいうね、それと海とで繋がっているからね。
不確かなモノで繋がったことを不完全連鎖っていうんだけれど、不完全だからこーだってひとつに決めつけられない。
砂漠があったり熱帯雨林にデルタがあったり、しかもそれらはいつも同じ位置にあるわけでもない。気まぐれっていうんだ。
地球と回転は同じでも周速度の遅い軸付近の北と南には水が閉じ込められて、しかも太陽から遠いから氷河になっちゃったりするんだ。これも動くよね。
全体が不完全な連鎖をする地球では月と太陽の機嫌次第で、一日遅れで毎日気象が変わるのさ。
そこで気象予報士という曖昧さで商売しているひとたちが、やっとこ生活できるというわけなんだ。山師の出世頭さ。

台風の大きさが取りざたされます、中心気圧で表すしかないのが現状です。940ヘクトパスカル台だったら超大型ですよね。風速は毎秒50mを超えるでしょう。
数年前、青森のリンゴの木を根こそぎなぎ倒していった台風の中心気圧は最大勢力のとき944でした。
影響の及ぶ範囲を気象図に円で囲んでいます。1000ヘクトパスカル以下で(以下とは1013を境にマイナス側に大きいんですよ)、風速15m毎秒以上を台風円として示しているんです。
最大勢力はあくまでも中心部での気圧と風力ですが、直接計測は危なくて出来ません。状況値・推測値なんです。
水だけ入れて高速で回転中の電気洗濯機の中心部って、凄い環境だと思いませんか? 入ってみたいと思いますか?
台風は半径が何百Kmもある洗濯機なんです、そんな渦巻きの中心部にはドイツの天才気象学者シーボルトだって近付きたくなかったんですよ。だから推測値でいいんです。
真の中心部まで運よく行ってしまえば思いのほか平穏なんですが、脱出するときの縁(ふち)は魔の淵ですからバラバラになってしまいます。

行ってみたひとがいるんです。
我々の知っているひとで一人だけいます。1992年晩秋、26個のバルーンに吊ったヒノキの風呂桶ゴンドラ、ファンタジー号に乗って風船おじさんが琵琶湖から飛び立ちました。
いまだ帰ってきませんが、fantasticな旅を続けているのです。
台風が我々の頭上を通過して行くとき、実際地上1mのところの気圧は1000を下回ることは滅多にありません。1013で大気圧です、吊り合った状態ですね。
900だったらスカイツリーだって持っていかれてしまう。
この値、2違ったらエネルギー量では8倍になります。
計算式? いいんですっ 暗算なんだから。
1013からは高気圧なんですよ、たった1013分の50で命のやりとりになるんです、凄いでしょう。

ここまで一気に喋れたらあなたは小学生のヒーローです。
気象予報士のかたで異の趣旨ある場合は、団塊屋で受け付けますのでそちらへお願いいたします。
ここからは大人向け解説。 ああ そうだったのかと、今さら聞けなかった永年のもやもやが解けるひとは多いはず。

北の北極圏、上空は地球自転の遠心力が小さいから低気圧が出来るんです、これが日本の方に下がってくることを低気圧の南下といいます。
南下してきた低気圧は北極育ちだから冷温のまま日本列島近くまで来たところで、西の高気圧に押されて東に流される。流されながら高気圧の下に潜り込みます。
なぜ潜り込みなのかの理由は歴然。重いから。
これが日本列島の背骨山脈にぶつかって雪を降らせるのです。山陰 北陸 新潟 西東北に大雪を降らせるのはコイツなんです。
北海道の雪は別物です、ロシアオホーツク沿岸に降る雪の一部と考えてください。
ロシア中央高原の東端上空を南下してきた低気圧が西の高気圧に押されて背骨山脈北西稜にぶつかるのです。ですから雪にはPM2.5は(基本的には)含まれていません。
そして雪として水蒸気分を放出し軽くなった低気圧は山脈を安々と越えて東東北から太平洋へ抜けて行き、置き土産として埼玉 群馬 福島に空っ風を吹かせるのです。
この寒風はもの凄いんです、そりゃーそうです台風の成りかけなんだから。
余談ですが埼玉の山沿いと群馬全域それに福島相馬地方の女は成りかけどころかホンマもんの台風でっせ、あんなんに吹かれたらひとたまりもありませんわ。

ただし台風はマリアナ海域で出来た低気圧が超大化したヤツの名前で、そうでない場合は台風とは呼ばない。
したがって北方空っ風の埼玉 群馬 福島の女性が台風おんなだという風説は誤りです。台風ではありませんが其れなりに怖いんです、気ぃーつけなはれや。
北極やシベリア・ロシアで出来た低気圧には名前がないんです。生まれや育ちで偏見差別をつけるのは如何なものかと思いませんか?
私なら白熊のナターシャとか大相撲的に露風と付けますがねえ。
だって台風はマリアナで生まれたのち台湾国をかすめて大きく育ち、そーして北上してくるから台風というのでしょう。

私の加湿器の話しです。
初日私は寝るときにも寝室にこれを持って行って使いました。水タンク一杯で8時間の連続運転を確認できていますので安心です。
睡眠時に口呼吸するヘキのある私はいつも目覚めは喉がガサガサでした。
今日からは加湿するので安心です。万一寝過ごして9時間経過していてもヒーター部に温度上昇監視センサーがあって、電源を切って空炊きを防止してくれるのです。
安心感というものはひとを安眠させるものですね、この日は10時間くらい寝ました。
それから2年、たまに不安感で安眠ができないことがあるのは老後の自転車ライフを考えたときと法人としての団塊屋の先行き不透明のためです。
加湿器は黙々と私の喉を守ってくれていること書き添えます。

翌日、健やかに目覚めた私は執務室に加湿器を戻して内部を水洗いし、少し生成を認めた石灰性沈着物を除去してからタンクを満タンにして電源を入れ、ストーブも点けて仕事に掛かりました。
私が仕事に懸ける時間は24時間から次の数点を差し引いた全時間です。これ考えてみたら、もしもですよ会社勤めの頃にこの調子でやっていたとしたら、今頃はどうなっていたでしょうね。
社長さんでしょうか、それとも。
えっ なに? はっきり言いなさいよ 怒らないから。 
次の数点とは
(1) 睡眠
(2) トイレ、風呂、ついでに洗濯
(3) コンビニへ行く、
(4) TVを見ながらコンビニの惣菜で酒
(5) コンビニの弁当を食う
(6) 小屋で自転車を撫でさする そして寝る
(計)  10時間  

上が現在の冬パターン。対して夏パターンは下、
(1) 睡眠
(2) トイレ、風呂、ついでに洗濯
(3) 自転車で出かける
(4) 自転車のメンテをする
(5) コンビニへ行く
(6) コンビニの弁当、総菜で酒、飯 そして寝る
(計)  23時間

仕事に掛かって2時間ほど経過し、作章も佳境となったとき 「パチャッ」 わが執務室には無いはずの音が響き渡りました。
「なにー? 出版会社の取材なら団塊屋さんを通してくださいー、写真はマネージャーさんに言ってくださいー」
と言いながらふり向くと、愛おしい加湿器のノズルから 「ほわほわ」 した湯気が出ていないじゃありませんか。「スー」という音もしません。
停電か? でもパソコンも電灯もOKだし同じ電源から取っている湯沸しポットはパイロットが点いている。

「ははーん 水が無くなったか、でもそんなに早く?」
タンクに水は入っていました、十分量が残っています。念のため水を補充してみましたが変化なし。
思い切ってリセット釦を押してみました、「グッ」 と押された感じがしてリセット釦兼用のパイロットが点灯し、程なく 「スー」 音が戻って湯気も立ち昇り始めたのです。
「はて? 面妖な」

作章作業を再開して30分くらい、再び 「パシャッ」 
作章は佳境を迎え私はハイでしたから、ふり向きざまにリセット釦を 「グッ」 
作業を再々開して15分くらいで 「パシャッ」

私はその行で作業を止め、珠玉の章を記憶させてパソコンをシャットダウンさせると腕まくりをして立ち上がりました。こーゆーことは断じて許しておけないタチなのです。
そのタチが災いして会社を辞めました。二度目の独身にもなりました。町内会は会費を取りに来なくなりましたが、ゴミステーションのお掃除当番だけは三月ごと回ってきます。
温湿度計を見るとふたつとも19℃ 48%、加湿器の電源コードを抜いて本体に触ってみても、まずまずの温かさで異常温とは思えない。
水を捨ててひっくり返し、裏側を眺めても異変は見られず外観上は手がかりなし。

自転車小屋に持って行って裏蓋を開けてみようとして思い直しました。
取りつけネジは4本だから簡単に開けられそうですが、そうするとクレームに持っていったとき何かと難くせをつけられる。
ABS樹脂のネジ穴は下穴にタッピングネジをねじ込むだけの方式が多い。この加湿器も例外ではあるまい、なにしろ1250円の格安品なのだから下穴にネジ切り加工などのコストは掛けられないはず。
この手のネジは一度外して締め直すと、二度目に緩めるときドライバーに係る回転重さで前に誰かが開けたのが解る。
買ってきたホームセンターのクレーム係には分らなくても、メーカーのサービスマンには判るだろう。少なくとも私なら一発で解る。
この先に展開するであろうリコール騒動を想像して私はワクワクして参ったのでございます。
重箱の隅をつつくのが生き甲斐の私はもう嬉しくて、佳境の章のことなどすっかり忘れてこの不具合加湿器に係りっきりになったのでございますよ。

まず保証書を確認しました、アイリスオーヤマ(株)の製品で製造国は中国、保証は1年間とあります。
昨日買ってきたのだから保証期間は十分、どこにも製造日から1年なんて書いてない。
外箱や仕様書は捨てたので手元にはありませんが本体に貼ってあるシールに定格80W 温度フューズ167℃ 電流フューズ5Aとありました。
80Wだからこのシリーズ中最少モデルなのでしょう、小さく卓上型とも書いてあります、初めて読みました。
さらに水容量0.8l 最大加湿量100ml/h とあります8時間もつ計算ですわな。

私はこの不具合加湿器に水を満たし、昨夜使った寝室で8時間連続運転して再現テストを試みることにしたのです。
暖房なし 窓全閉 ドア半開 禁煙 一名在室というシンプルな条件下でやってみました。つまり私が加湿器を運転させた寝室でもういちど8時間寝てみるちゅうことです。
ドア半開の理由は昨夜ドアを閉めて寝たら、窓ガラスや天井に結露ができていたからです。暖房なし密閉では結露してしまうほどの加湿効果なんですねえ。
起きてまだ4時間ですから眠たくありません、こーゆーときには眠り薬の酒ですわなあ。
再現テストのための必要措置ですとも、けっして飲みたくて発案したわけじゃーありません。

五六時間で目が覚めたとき加湿器は順調に働いていて減水量もそれなりに。
なんだか飲み逃げみたいな、うしろめたい気がして水が無くなるまでゴロゴロしていたんです。
寝ていれば寒くないけれど起きて暖房なしは辛いですよ、室温5℃です。防寒衣服を着こんで再現テストを続けました。
このしつこさ、私 好きですよ、でなけりゃーこんなコト書いていない。重箱つつき爺いはしつこさが身上なんです。
クレーマー最上の楽しみはクレームを受け付けて貰ったときではなく、メーカー・販売店がクレームを受け付けざるを得ない事実をこの手で立証したときなのです。イヒヒヒ。

結局、室温5℃の寝室では安全装置が過敏に働いてしまう不具合は再現しませんでした。
水が無くなってしばらくしたら自動で電源が切れ、そのときにあの 「パシャッ」 音がしてパイロットが消えました。
ここまで予想通りの展開です。次に執務室に機材一式を戻し、室温19℃で再現確認テスト。
思った通りここでは運転中に電源が突然に切れました。
このときのテストでは不具合発生までの時間が早かったように思います。温感スイッチに作動癖がついた、こういうことは産業用装置でもあります。

これで不具合の発生は室温の高い条件下で起こると確認されました。空焚き防止の温感スイッチがオンになる温度を低めに設定し過ぎなのです。
機器の外側にユーザーが任意に設定を変えるネジなどはありません。
これは安全上そのように設計したと見るべきで、コストを抑えたいためだとするのは穿った見方でしょう。
内部を見ていないのでスイッチのタイプは不明です。不明でいいのです、クレーマーにとってはそれは知らないほうが色々言えて都合がよいのです。

室温19℃で加湿器を使うことが通常か通常でないかの判断は、そのときの湿度により分れるのかも知れませんが、
冬季の日本家屋内で暖房器(灯油ファンヒータ)と併用することが通常の使用法に逸脱するとは裁判官も検察も考えにくい。
「しかも当該加湿器はその四方40cm以内に発熱を伴う何れのものをも有しない卓上空間にあって、なお歴然と不具合を生じせしめたのであります」
上の一行をぜひ裁判所で発言してみたいものですなあ。

私は勝利を確信しました。
今日は前祝いをやって、明日一番でホームセンターお客様相談係にネジ込もう。
そうと決まったら不具合加湿器は自転車小屋に安置して、濡れタオル方式の加湿で喉を保護しつつお酒を飲もう、明日はいっぱい喋らねばならんからねえ。
公判の前日は敏腕弁護士さんもそうするって聞いたことありませんか?

翌朝10時、近くのホームセンター (株)カンセキ へ件の加湿器と保証書を持って出かけました。
私 販売店やメーカー名・商品名を実名で挙げています。上場企業であればこの文章に実名を載せても社会的に批判されるものではないと思っているからです。
一方個人名や特定の私人を想起できる表現は慎むべきであり、個人経営のお店名などもそれに相当すると考えます。
公人の場合、公職に係わる部分では実名でも許されるべきで、しかしながら誹謗中傷に当たると容易に判断される事態に発展する可能性を秘めたことがらについては、その様なことのないように細心の注意を払っているつもりです。
では信州の団塊屋さんとそのフェローについてはどうなんだ? 
確かに不意のご登場を再三願っており、事前のお知らせをしたこともありません。あちら様ではタチの悪い洒落として取り扱って戴いておるようでございます。

お店に入って最初に行ったのは一昨日購入した加湿器が置いてあった冬のリビングコーナーです。
開店直後で店内はさほど混雑してはいません、一直線に加湿器の棚まで進みます。
コンビニのレジ袋に入れて持って来た加湿器と同一の商品がまだ5個ほど棚に乗っています。並び具合を観察すると、私のあと誰かに1個売れた様子。
そのなかから一個、無作為に掴んでレジで支払いを済ませ、
「ありがとうございました」
会釈するレジ係に尋ねました。
「クレーム担当に会いたい」
「はい?! クレームでございますか」
「うむ コレが不具合なんじゃ」
買ったばかりの商品が入ったレジ袋を右手で差し上げました。持って来たほうの袋は左手に提げていましたが、財布や今もらったレシートなどを一緒に持っていたから右を上げただけです。
正確には、それら一連の挙動は計算のうえの演出です。

担当を呼ぶコールが店内マイクで響き渡り、男の社員が二人血相を変えて走ってきました。
走りながら、たまたま近くにあった懐中電灯の長いやつを手に持って走ってきます。店内コールにはレジ強盗を知らせる秘密の暗証が含まれていたのかも知れませんね。
訓練のたまものなのか、たまたまなのかは知りませんが懐中電灯とは良いモノを握っています。

案内されたのは店の隅に設けられたカウンター席。
レジ強盗ではなく、ただのクレーマー爺いと知って担当は一人になりました。
台の上に家から持って来たほうの加湿器を置いて昨日起こった不具合の状況と私が推定した不具合原因、さらに推定に至るまでの過程と根拠。
これらを話しました。あえて訥々と話しました。

名人大工が研ぎ澄まされた鉋(かんな)で削った杉板を立てかけ、それにヤカンの水を注ぐとー、水はしゅーっと霧になる。
そーゆーふうに喋ることも出来るのですが、訥々と喋りながら相手の反応を観察するのが楽しいんですコレが。
「ところでワシは脊柱管狭窄症といってな、立っているのがことのほか辛いんじゃ。こんなに長く立たされたのはココが初めてじゃぞ」
たちまち椅子が届けられました。
椅子を勧めたら次はコーヒーじゃろが、んー、店長の挨拶貰うまで帰らんぞー。
上の一行には 「 」 がありません。そーゆーことは言わないんです。

「さて、クレーム修理としてお預けするが、メーカーに戻すとなれば2週間や3週間は掛かろう。その間の代替え品は借りられるのであろうな?」
「なに? ない! あのなキミ、今は冬じゃぞ空気が乾燥中じゃ、脊柱管が痛む。じゃから一昨日加湿器を買った。それをキミに預けた、たった今な。代替え品は当然じゃろ、店長を呼べ」
「なに? 本社へ行っていて居ない。 代替え品も勘弁して貰いたいってか?」
「ふん 想定済みじゃ。 そこでなキミ、これを見ろ!」
ここで肩の入れ墨など見せようなら、威力業務妨害の容疑が発生します。私がこれを見ろ! とテーブルに置いたのは本日新たに買った同型の加湿器です。

「キミはまだよく解かっておらんようじゃ、いいかよっく聞け、そしてメーカーに伝えよ。今後の如何によっては本件は一大リコール事件に発展するんじゃぞ。
対応を誤れば、キミも店長も片道5時間の支店に飛ばされる」
ここで凄んで金品など要求しては、恐喝容疑が成立します。団塊屋さんは私を山師と呼びますが、山師と犯罪者とは違います。

「この店からこれと同じ商品が何点か売れているな、他の支店にもあろう。そのお客のところでワシの言う不具合と同じ訴えが起きていないかの調査が必要だ。今すぐにな。
ワシはな、今日買ったこれを家に帰ったらテストする。昨日・一昨日の使用よりきつい条件でテストする。
そして、もしも同種不具合が起こったそのときは、この店のアタマを飛び越えて通産省へ通告する。今すぐ店長に報告して指示を仰げ、それがキミの今すぐの仕事だ」
私は腰の脊柱管をかばいながら立ち上り、買ったばかりの加湿器をぶら下げて店を出ました。

時系列を整理しましょう、このあとが本章前半部の3週間連続運転とそれに伴って分った水道水からの生成物や湿度と気圧の話しだったのです。
二台目の加湿器は不具合なく蒸気を立てて働き続け、執務室と寝室を行き来しながら前半に書いたデータを提供してくれました。
水なしの空焚きテストも良好で、過温度作動からの復帰も問題なし。
最初に買った一号機だけたまたま過敏だったようです。
同時に製造され他のひとに買われて行った個体については分りません、(株)カンセキからもメーカーのアイリスオーヤマ(株)からもそのことについては何もありませんでした。

私の一号機が返って来たのは年が明けて1月の末。店頭に預けてから一か月近く経過しており、私の二号機によるテストも終了させてからの頃でした。
受け取りに行ったカウンターには椅子が用意されていて、それに座ってクレーム担当からメーカーからの回答書を見せての説明をうけました。
それによると、再現試験で不具合が確認できたこと、
原因は私の推定と同じ、
対策はヒーター部と過温度監視センサ(リセットスイッチ一体)を交換して運転試験を実施。良好なる結果をうる。
となっておりました。
手書きの配線図と監視センサの断面図が付いて、末尾にユーザー様にお詫びと説明をしてご理解を得てもらいたい旨の文言が記載されていました。

この回答書をわたしは修理品といっしょに貰って帰ってきたのですが、内部文書を安易に出していいのかな、ユーザー用と内部用の二部作成する用心さが必要だと感じたものです。
ついでに書きますと、不具合によって生じた私の不利益への補償はなし(とうとうコーヒー一杯も出なかった)。
不具合発見に対する謝礼、商品開発フェローとして高給でお迎えしたいというオファーもなし。
私は一か月間楽しめたから、別にー いいんですけどねーえ。

春になって花粉が飛び始めたころ、二台の加湿器はていねいにお手入れをされて仕舞われました。
1250円の商品としては過分な働きを労われ、コンビニの袋に入れられ秋までの休暇を言い渡されたわけです。
時はあっという間に過ぎて秋になり、やがて初冬を迎え再び袋が開けられました。
「こーゆーものはひと夏おくと水タンクのゴムが駄目になってたりするのよねー」
重箱爺いは疑り深い、やだねー。

1250円の格安品は過大な いや適切な期待を持たれなかったことが不満なのか、2シーズン目にも過激な使用に耐えられそうな面構えでしたので通電してみました。
二台並べて同時運転です。同じような 「ほわほわ」 湯気が立ち昇って、
「あれから一年たったのか 自転車の筋力も下がるわなあ」
劣化したのはゴムパッキンより私の足のほう。
今夏に挑んだ鳥海山と男鹿の寒風山では、いづれも山頂の遥か手前から降りて押しました。

見晴し台の芝生に寝転んで名物 「いちごソフト」 を食べていたら、たいそう立派なオートバイで上がってきた初老の紳士が近くでエンジンを停め、私の自転車をしげしげと見つめて、
「わたしは恥ずかしい、帰ったら自転車に買い替えます。来夏にはこの山が登れるように練習します」
「ほう それはよい心がけでござる。失礼だがそのオートバイと交換、プラス消費税くらいで買えるでしょう。この自転車は楽々登れるんじゃが、ワシが登れんかった」
私は正直に白状したのです。紳士は静かに微笑むと頭を下げてきびすを返し駐車場のカーブを綺麗に曲がって坂を降って行きました。

そして2月初旬、長崎のグループホームで火災のニュースです。
加湿器が出火原因とだけ報道されてそのあとの情報がなくなった。出火原因となった根本の原因を究明中なのか、大方の関心が北の核実験に向いちゃったのか、それとも大きな圧力が加えられた?
私の二台の加湿器のうち一台がこの頃に変調したのです。
出火原因となりうるか? それでしつこく長崎での出火原因の続報を待っているのです。

変調に気づいたのは1月下旬。
寝室で使っていた1号機を起床後は執務室に持ってきて、乾燥注意報の午後には2号機を応援して二基運転がこのころのパターンでした。
1号2号の見分けはちょっと見で分らないから、最初に買って修理に出した機を1号として本体の樹脂部分にシールを貼り、目印としています。
堆積物を洗ったりするとき取り外せるノズルや水タンクは行ったり来たりするうち、どっちのものか分らなくなりました。

1号機を持ち上げたとき台に水滴が残っているのに気付いたのが1月下旬、傾けて溢れたのだろうくらいに思っていました。
数日後日中に二基稼働させていて、水補充のときに卓上に水滴があるのを視認。しかも1号機のほうだけに。
このとき久しぶりに重箱爺いの突っつき心に火がついたのでございます。
折しも長崎火災の直後、機種に共通性は無いだろうが加湿器は共通ワードである。
販売店のカウンターの椅子が頭に浮かびました。脊柱管は自転車のおかげで好調です。

さっそく小屋に持ち込んで裏蓋を外してみることに、外した4本のネジ中2本が黒く変色して水との接触を物語っています。
電気ヒーターの位置の真下にあたるネジです。
「出火原因」 の文字がちらちら頭をよぎります。 
「いかんぞ、その功名心がここまでの人生で災いの元になったんじゃないか。団塊屋を見習え、あそこはぼーっとしとったから敵を作らず出世して大過なく定年を迎えるんじゃないか」

すでに1年の保証期間は過ぎておりますから遠慮なく裏蓋を引き剥がします。
蓋の内側には細かい水滴が付着し、あからさまになった本体内部にも 「水没機器」 特有の湿っぽさと溶融アルミの粉っぽさが見られます。
配線の束も濡れており、ヒーターを本体に止めているアルミ板が水濡れ特有のゼニゴケ模様を示しています。
さらに熱害防止のために配線の一部に被せられたガラス繊維のチユーブからは 「ぽたり」 と水滴が転げ落ちました。
これは水漏れです。水分がよそから回ってきて凝固水となったのではなく、明らかに上部の水容器室から重力で滴下したもの。
裏蓋はヒーター部分に近いから温度も室温より高めで自然蒸発もあったろう、運転せずにおいたならかなりの量が卓上に滲みだして発見は早かったかも知れない。

ヒーターが顔を出している水容器室の堆積石灰分をていねいに剥ぎ取ると、樹脂の本体に僅かな亀裂を思わせる線が二本あった。
ここで私はいったん執務室に戻り、2号機の水容器室をじっくり検分したが亀裂様の線は見られず、もちろん裏蓋側への水漏れも無し。
あの亀裂、なぜ生じた?
二台とも運転時間に大きな差はないから熱歪みは同程度だろう、生産時期・ロットも同じはず。
二台で異なる点は? あった。1号機はクレーム修理に出している。

急いで保証書とあの修理報告書・店への回答書を捜しました。
あの回答書には過温度センサーとヒーターを交換したと書いてあったじゃないか、センサーは本体体躯の空間温度を感知する位置にあるから水との接触はない。
一方ヒーターは直接水の中に顔を出している。
これだ!。 水漏れはヒーターの脱着に起因している。
推理は 確信に 確信は 自信に 自信は 喜びに変わります。重箱爺いの喜びに。
購入は2年前の12月だが修理完了日あるいは私が受け取った日からは、きりきり1年未満なんじゃないの?

こーゆーときは見つからないのよねえ。
シーズンオフに加湿器をしまっておいたロッカーには地デジの保証書や自転車の保証書ばかりで、肝心の加湿器の分がない。
一度保証書を使っているからそのとき何処かに置いたままにしたか?
でもこの家の何処かに必ずある。と自分を励まして小屋に戻りヒーター部分の取り外しに掛かりました。
そういえば三十数年前女房が見つからないと泣いていた結婚指輪も出てこないままだなあ。

ヒーターを本体に押しつけて固定しているアルミのプレートを外すと、意外なほど簡単にヒーターが抜け出てきました。
ヒーターは本体下側つまり裏蓋の側から上方に向かって取りつけられ、ヒーター棒の外側形状に合わせた耐熱性のゴムパッキンがアルミプレートで押し付けられて止水している構造と解かった。
私はここで2号機の状況を確かめてみました。
2号機は一度も修理を受けていないので各部のネジは初回緩めのトルク感を保っており、外したビスはユニクロメッキの渋い光沢を見せて水濡れのなかったことを誇示しています。
問題のヒーターを固定しているプレートは、ビスを外しただけでは取れません、ヒーターを上に向かって押し付けたまましっかりと張り付いています。
液体パッキンあるいは接着剤を間に塗って締め付けられているに違いありません。
この部分、1号機ではビスを外したらあっさり抜け出てきたと5行前に書いています。水漏れ箇所と水漏れした原因がはっきりしました。
修理時の止水ミスです。
あの亀裂はヒーターを抜こうとして過剰な力がかかったため。
この機種はヒーターの交換など考慮しない作られ方をしているのです。修理を試みるより新品をお客に渡すべきだったのです。

修理ミスの漏水というより修理したからこそ起きた漏水が火災原因になる因果関係を突き止めると、こんどこそコーヒー一杯では済まなくなりますなあ。
水を使う電気機器の水事故が火災原因となり、構造を誤認させる設計でサービスマンの判断ミスを呼んで起きた人災だったらメーカーの命取りでしょう。
そしてそれらの根本原因は行き過ぎたコストダウン指令なのです。
安全よりコスト、ありがちですがあってはならない。製造国が中国であっても作らせた日本会社の責任は免れない。

何枚か写真を撮ってから、これしかし どーする。
実際の火災は起こっていないし、写真にしたって私ひとりで私の作業小屋でやったこと、捏造だと反論されたら証人がいない。
あの回答書は何としても見つけ出さねばなるまい。

しばし考えた末、組み立ててみることにしました。
ヒーター保持のアルミプレート内側に3Mの接着剤を塗って取りつけて、止水できれば私の勝ち。
ここで止められれば亀裂部分からの浸水も止められる。
でもそれは私ひとりの内部勝ち、直ってしまってからでは 「ああ そーですか」 で終わってしまう。
直らなければ 「ったく シロートがいじり壊してからに」 と相手にされない。
1250円という元値を考慮すると、私の奮闘は如何ほどの金高に換算されるのであろうか?

ともかく組み立てて水漏れ克服の小さな勝利感を味わおう。
私の奮闘の対価を換金する手立ては 「そーゆーことには」 滅法乗り気になる団塊屋さんに相談しよう。
さて3Mの最適なる接着剤はあるかな? 赤鬼の角を着けたやつ。

結局、接着剤を買うためにホームセンター カンセキへ行ったのです。
暖房器具売り場の横を通って接着剤のコーナーへ、熱・水・ショックに強いとパッケージに大きい文字で書いてある 「セメダイン スーパーXG」 これが無溶剤・弾性接着剤。
さらにパッケージには−60℃〜120℃対応、肉やせしない、2分で接着24時間で完全硬化・弾性あり。
耐熱&肉やせしない、というところが気に入って買ってきました。帰りがけ加湿器のコーナーを覗いてみたら似たようなアイリスの商品がありましたが、私のと同じものはもうありません。

セメダインスーパーXG は塗布する前に接着面をきれいにします、アルミプレートを磨いたら古い接着剤と思われるフィルム状のカスがポロポロ剥がれ落ち、私はウンウンと頷いたものでした。
塗布面は脱脂が必要で、これにはキャンプコンロ用ホワイトガソリンを使います。以前に山形秋田遠征の折りカンセキで買ったもの。
内部の水気をドライヤーで乾かし、亀裂部分にも接着剤を塗り込んで丁寧に組み立て24時間待つことにしました。
明日の完成検査まで裏蓋は外したまま安置して作業小屋を閉めました。

ここまでの奮闘で爺いは程よく疲れ、2号加湿器の湯気が「ほわほわ」立ち昇る執務室兼台所で一杯飲んでいるうちに眠ってしまったようです。
漏水と出火原因との因果関係はいつ考えるのでしょうかねえ。
これ考えてみたら大変恐ろしいことですよ、外出するとき加湿器を止めるのは普通でしょうが寝るときは運転しているでしょう。
外出から帰ったら家が全焼していた、は諦めがついても就寝中に火事になったら命がないですわな、酔っ払いにとっては。

からすカーで朝になり、一番に先に接着剤の乾燥具合を見に行きました。
見た目くっついていますが、端にはみ出たセメダインを爪の先でつついてみるとまだホニホニしているから水など入れては駄目です。
どうも私は一日にひとつのことしか出来ないタチみたいで、修理中の加湿器のそばで24時間目をずーっと待っておりました。
こーゆー状況を生産用語で 「手まち」 と言います。次の工程に進むあいだの作業員が何もせずにぼーっとしている時間ですね。この間にも人件費と在庫管理費は進み続けますから経営者は面白くない。
でも面白くないひととぼーっとしているひとが同一人の場合は、ぼーっとしている行為が面白くないだけ、と簡単な計算がつきます。
そこでもう何年も使わなかったヘアドライヤーを捜してきて 「ガー」 っと温風を接着部に向けて吹きかけ、吹きかけでは爪でつつくという不毛な行為に妥協点を見出すのです。
つまり、温風を当てて乾燥を促進し24時間の指定乾燥時間を20時間に短縮させ、手まちタイムでロストする経費を削除することによって面白くないひとをニッコリさせよう。

これを、じつに素晴らしい物づくり日本のエスプリである。と称賛しては駄目なんです。
温風を当てようが冷風を当てようが、常温下20℃で24時間という指定は40℃で温めたら12時間で硬化するというものではないのです。
接着剤の性格によりますが、まわりの空気に接している時間が、あるいは空気と遮断されている時間が24時間必要だと接着剤メーカーはいっているのです。
温度は超熱・極寒でなければあまり関係ないのです。
ドライヤーで温めると乾燥が促進されるのは日曜大工の木工用スプレーペイントだけです。あの行為は揮発する溶剤を温風が吹き飛ばして、新しい乾燥面が空気と接触する機会を与えてやっているだけなのです。

会社のためと好意でこれ(指定時間を自分の判断で短縮)をやるから水漏れ事故だの発火事故だの二次災害をみずから作るんです。
今回のヒーター部水漏れに限って言えば、クレーム修理では手元に接着剤がなかったのか、漏れはしないだろうと思い込んだのかは分りませんがアルミプレートに古い接着剤が乾いて残っているまま再組み付けをしています。
同種不具合で持ち込まれた例が他にないことを切に願うのです。

接着剤を使うとき、常温の20℃以下の環境下だからとの理由でドライヤーで温めるなら、接着行為の前から当該部を温め接着後も可能なかぎり温め続けることです。
出来れば作業場全体を温めて、母材と接着剤をその温度になじませてから作業を開始するべき。
その意図は、通電して運転されるときの温度すなわち運転温度に近い温度で接着が進むことで、全体形状を運転時の膨張した形状に近づけて後々の歪み・亀裂を軽減させる考え方です。
いづれにしろ運転・停止のくり返しで温度の上げ下げは否応なしに起き、それによって派生する材料の歪みは否めません。
設計強度で決まってしまうことですから、コストと軽量化で安全を損なうことは物つくり日本の方向性から外れます。

そうこうするうちに24時間経過しました。重箱爺いはいつでもこんなこと考えて生きているわけではないのですよ。
ぼーっと手まちしているときには丁度よい時間の過ごし方の思考の型だと申し上げておきます。
完成検査を始めます。
卓上に新聞紙を敷いて満タンの水タンクだけセットした加湿器を置きます、まだ通電はしません。1時間新聞紙が濡れなければ水の重力だけの水漏れテストをクリアした判定、次の運転試験に進みます。

私の加湿器1号機は通電運転試験にも合格して、裏蓋を取りつけられる前に配線接続部の腐食や取り回し、ハンダ部のやせ等のチェックをうけて完成しました。
今は2号機と並んで「ほわほわ」湯気を立てています。
同時スタートからの減水量に二台の差はありませんから、加湿能力も同等と満足しております。
この延べ三日間の顛末をメーカーおよび通産省に通告したか? とお訊ねなら。 しておりません。
長崎県の火災原因となった加湿器が私の1号2号機と同じメーカー・同じ機種だったら、そうしようと思いニュース続報を待っているのですが、テレビではロシアに墜ちた隕石の映像ばかりです。
ちなみに本章に登場する私が使用中の機種の名称・型式は以下の通り。
同型機に心当たりの方は団塊屋へご相談ください。

アイリスオーヤマ 加熱式加湿器
型式 SHM-100T   製造番号 100049181(1号機) 100010392(2号機)

長崎の火災原因が電気部分のショートだとまだ断定されたわけではありませんが、今回のことを経験して次のように思います。

水加熱室や水タンクが電気配線の真上にある構造は、止水性の経年劣化を考えたら避けるべきではないのか。
裏蓋内に5アンペアの電流フューズが取りつけられています、ということは最大5Aの電流に耐える太さの電線で配電されているのだと思います。
ちょっとまってください、この機種の定格出力は80Wと記載されていますよ。このワット数であれば1.2か1.5アンペアのフューズの使用が適正。
5アンペアでは500W超相当の電流が流れ続けるまでフューズは溶断されません。
もしもですよ、適正より少ない量のハンダで接続された部分があったと仮定して、電流が流れるとやせたハンダ部は発熱して溶けて離れることがあります。(これをオープンといいます)
オープンすると供給されなくなった電流を他の回路から融通して貰おうとする機能が働くものもあります。この回り込み電流の増加分が融資元の回路をパンクさせます。
場合によっては発火します。
オープンして垂れ下がった線が他の電気部分に接触するとショートと呼ぶ過激電流が流れます。警察はこれを調べているようですが、断線からは火災原因とならない先入観は駄目です。
ボーイング787のバッテリーは16ボルトの設計です、長い間12ボルトのバッテリーを造り続けた経験は電極セルが2個増えたらもう役に立たないんです。
加湿器のこの機種の場合は5アンペアまで流れ続けます。
実際には110%の余裕率で造られますから5.5アンペア流れるのです。
フューズの購入価格は1.2Aでも5Aでも同じですが細かく在庫すると管理部品の点数が増える、そこで同じ工場内で生産している大型機種に用いる5Aフューズや太い電線で兼用していませんか?

たばこが1個410円もする時代に1250円の加湿器は3シーズン目に入ってもがんばって蒸気をほわほわさせています。
家のなかでこれほど長時間運転されるものって他には冷蔵庫と湯沸し保温ポットくらいのものでしょう、でもこのふたつは日中に待機しているだけの時間がけっこうあります。
それは非生産性の手まちタイムと非難されることはありません。省エネモードとかいって褒められる。
ずーっと沸騰させてカルキの攻撃とも戦っている加湿器が一番がんばっているんだ。家のなかで一番えらいのは一番安い1250円の加湿器なんだ。
水を補給するときは一旦電源を切って少し休ませてやりましょうよ。内部のカルキを洗ってあげましょうよ。


       おわり    syn
2013-02-19

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