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「名人〜ん。 いますかー お邪魔しますよ〜」
「おお これは剣志郎どの、よう参られた。 ささ入られよ、なにもう入ってワシのロッキンチェアーに座っておるってか。
そーか それならそれでもよいがの剣志郎どの、そのへんのものに汚い手で触れてはならんぞ」
「なにそれーっ! ボクはまだなーんにもしていないよ」
「まだ がいかん。 おぬしは目を離すと何でも触って口に入れる」
「赤ん坊みたいに言わないでくださいよー」
「おぬしも知ってのようにワシの工房にはケミカル剤の乾燥を待っているモノがそちこちにある。
養生中の蒸気には弱いが毒性もあるでな、安定乾度になるまでは触れてはならんのじゃ。
こらあーっ! 座ったまま動くでねーっ。 息も止めておけーっ。 まばたきするなあー、ほこりが舞うべえーっ」
「ほこり? ですか」
「うむ 当工房の梁や天井や壁にはな、特殊なほこりダニが代々住み着いておるんじゃ」
「家ダニですか?」
「いや ダニー家田だ」
「へっ? パラキンですか」
「うむ 隣の家田さんちへ食料調達に行った際に誤って花王のダニパラエースを舐めてしまった阿呆ダニが帰って来てからワシの作業台の下で死んだ。
その死骸から発するダニロートとケミカル剤のケミとが接触反応すると酸化触媒作用が起こるんじゃ。
そのとき熱と同時に生成されるのがダニカルパラリン酸なんじゃ」
「なんだす その 無理ごじゃっぺな命名は?」
「うむ 近くにいて接触吸入した者をな、浜名湖うなぎの幼生であるロックンシラスのような半透明人間「ヤマハロックの ダニー東名」に変身させる凶魔の気体じゃ。
無念に死んだ阿呆ダニが人類に一矢報おうとする ”気” じゃとワシは思うておるんじゃよ」
「ぎっひー 出直しますですぅ〜」
「まてっ! 帰るのはかまわんが手土産は置いて行け」
「えーん 手土産ないから帰れません」
「だったら最初から来るな。 他家を訪ねる際の作法というものを知らん男にはまったくもって困ったものじゃ。
それでよく剣士を名乗っておられるのう」
「あっちゃー、作法 でございますかあ〜。
卜伝流 鍋ふた無刀派指南 鹿島 剣志郎。 奥儀皆伝の後の気のゆるみ、慢心にございましたっ。 お恥ずかしゅうござりまするーっ。
かくなる上はここにて腹を切りますゆえ、先生には介錯のお慈悲をいただきとう存知まする」
「ふん おまんなあ、大げさな口上はサムライびいきの世論を味方につけてかかる事態を穏便に乗り切ろうとしておるのであろう。
うつけめが! 介錯が欲しいてか。 なればオートマチック逆転2枚刃電動カッターのスイッチくらいならいくらでも押してやるぞ」
「ひえーっ お見通しの如くでござりまするぅー。 恐れ入りましたぁ〜。
オート動作の逆転2枚刃電動カッターだけはお許しくださりませえ〜。 フランス革命ギロチン台のほうがマシでございますうー」
「ふん、やっぱり出直しレベルじゃのう。
いいか おまん。 いくら狭い作業場とはいえ広さを感じさせる入りかた、アプローチの作法というものがあろう。
来るなりいきなり房主のロッキンチェアでは、まるで四畳半の距離感ではないか」
「あのー 四畳半と申されましたか? 三畳と思うておりました。 そーですか 旧建築基準ザル法の六畳だったんですか? なつかしい団地サイズ規格ですなあ」
「おまんなあ 殴られたくてここに来たの?
せっかくの休日というに、そ〜んなにご家内といっしょに家にいるのはつらいか」
「ひえーっ そーゆーおハナシはお許しくださりませ〜」
「ああ 出来るならワシもしたくはないものじゃ」
「話題を変えましょーよ 名人。
広さを感じるアプローチの距離感って、あるんですか そんなの」
「ああ、遠近法で発声しながら接近するんじゃ。 ♯ ご め − ん く − だ さ り ま っ せ ー ♪ っ てなあ。
ええか。 リズミカルに高らかに、そして清楚に、格調テノールの音域が必要じゃな。 おまん できるか?」
「格調テノール ですか、エタノールを変調した密造酒のことじゃないのね」
「おまんわざとトボケておらんけ?
師匠のワシをおちょくって浮世のウサを晴らそうってか、馬鹿ものの短慮もののうえに小心阿呆なる恐妻家め」
「そこまで言いますか」
「ええが よっく聞けよ。 テノールはのう、グライダーの着地アプローチと ♭ おーんなーし じゃあー ♪」
「パチパチパチ 名人、おみごとですなあ。
んで、遠近のテノールの発声がグライダーの着地とおんなしとは如何なる由縁でございましょう?」
「ああ、この世は音楽じゃ。 そーは思わんか」
「あっひゃー。 音楽ですかあ〜。 これまでのおしぐれさんシリーズにはない衝撃的イントロダクションでございます〜う」
「ああ、ワシな本来はミュージシャンなんじゃ。 こー見えて幼少のみぎりはウィーンの賛美歌隊、長じて清楚でヘビーなロッカーになった」
「ぎょえーっ! 冬の竜飛岬の更衣室ですかあ〜」
「なんじゃ それ?」
「はいーっ 秋の大掃除のあとは誰も来なくなって竜蛇の巣になった海峡パラグライダーマン用ロッカールームですうー」
「ふんっ 無理がありすぎる。 どーゆー落ちを狙ったものか作家の意図がわからんちゃ。
だいたいなあ 竜蛇ってなによ。 タッピーなヘビーロックの枕詞か、馬鹿者め」
「あらー これでは受けないのけ? 今回はレベル高いわねえ」
「ワシがロッカーの素性を隠して生きてきたのはな、こころならずもじゃったが食うための仕事を得る方便じゃったんじゃ。 マリアさまも許してくれた。
じゃがいよいよ引退してグライダーを大空に放ったときからワシは自由なロッケンローラーに戻ろうと決めたんじゃ。
マリアさまも祝福してくれたぞ」
「げっひゃー。 これまでも十分に自由な六軒長屋の浪々人生だったじゃーないですかあ〜。
同じことは自転車を始めたときにも聞いたように思いますぜ、「俺にかまうな 俺はヒッピーライドの旅に出る」ってねえ。
ところでマリアさまって 山下達郎夫人 のことですか?」
「そうか、そんなことを言った時代もあったか。 じゃがな、ヒッピーも山下も 過去のことにはかまわんでくれ。
マリアさまか? ツール ド フランのマドン峠の麓、 ローザ教会のマリア菩薩さまに決まってっぺし、もの知らずの馬鹿たれめー」
「げっぴー 馬鹿出し3度めぇ〜つ。 馬鹿座布団1枚! な〜んちゃって」
「無視して先に進めるべし。
さてとオメさん、ほんとに手ぶらか? よく来れたのう」
「あいかわらずですなあ。 ロッケン名人」
ボクは自転車で来たんだもの手みやげなど持てません」
「うん まあよかろう、オメさんは白いリムジンで送られて来たって手ぶらじゃ。
なんたってオメさんは楽丼カードっちゅう魔法のナニを持っておるでのう、手ぶらで来ても大丈夫」
「なんですかそれ、名人あんたもしかして 腹が減っているの?」
「ああ もう昼どきじゃ。
ワシな、このあいだ表の通りのうなぎ屋の前でな、うなぎ屋主人にバッタリ会ったんじゃ 「最近さっぱりですなあ」 って言うんだよ。
たまには行ってやらんといかん」
「たまにはってあんた、先月ご馳走したじゃないの。 しかも特上をさあ。
それになんですよ、うなぎ屋の前でうなぎ主人に会うのはバッタリじゃないでしょう。
主たる目的を確固に持ってそこへ行ったとするのが当たり前の順当かつ万人がうなづく司法な判断です。
あなたは表通りを白昼ひとりで歩けるよーな真っ当なおひとではない、相当なリスクを承知と覚悟でソコへ行った。 違いますかあ。
あなたはうなぎ屋主人をその八つ目な眼力で無言に脅し、特上うなぎの忖度を得ようとした」
「ずいぶん断定するねえ。 検察は状況だけで予断を持ってはならんぞ」
「いーや 十分なる予断にてキッパリと断定させていただきます。
うなぎ主人の 「最近さっぱり」 の意味はね、お客の入りがさっぱりで売り上げが下がる一方だということです。
名人のことは 「ぜひ来ていただきたい上客さま」 と思っていないことくらいはいくら鈍感なあなたでもさすがに分かった。 なのでその日はすごすごと帰った。
定年後はすっかり落ち目の名人のことを表通り商店街では 「かつての虎の衣を借る収賄魔・わいろマン」 とウワサになっていますからねえ」
「おまん、師匠のワシをずいぶん落としめしてくれるじゃないの。
いいか、グライダーマンに ”落ちる” ”下がる” は禁句じゃ。 株式マンもおなしじゃろ。 以後こころしておけ」
「はいっ がんばります」
「よっし、ところで先月のその節は世話になった。 うな特は美味であったぞ。
ついてはと言ってはなんじゃがな剣志郎どの、ワシな、死ぬまでにいちどは特特上を食してみたいと考えておる。 おぬしとなあ」
「げっ」
「グライダーマンにとって上のさらにそのうえの特上のもっとうえ、特特上は成層圏だ。
風の又八郎も吹かれたことのない高さである。 そこは セントアルバトロス しか昇ったことのない至高の高みであろう。
メニュー名は 地中海風サーマル風のアルバうな特 だ」
「イタリア料理ですか。 うなぎ屋で?」
「うむ、現代は蕎麦屋も寿司屋もグローバルに商売せねばならん」
「地中海風はわかりますが、サーマル風ってなに?」
「バカっ! サーマルふう ではない。 サーマルかぜ じゃ。 翼長3mのアルバ級グライダーを成層圏まで押し上げる上昇気流のことじゃ」
「ほう それはようございましたなあ」
「それだけ?」
「へっ?」
「さあ 行きましょう とか言わないの?」
「悪いところに来ちゃったなあ。 んじゃー こーしましょう。 出前をとるんです、特特うなのつまみ焼きだけをね」
「なんじゃ それ」
「だって先月名人とお店に行ったときはうなぎの焼けるまでお酒を飲むことになりましたわなあ。 うな骨をつまみにして。
うなぎ屋もよーく承知していてうなぎはわざとゆっくり焼く。 その間お酒がどんどん進む。 そのうち、
「やい うなぎ屋、かば焼きはつまみ用に薄味に仕上げろ。 うな骨はあきたからうな皮を焼け」
とか言って結局うな重は食べずに特上うなのつまみ焼きと松たけ肝吸いお椀と会津寒仕込みの特上酒だ。
よーけ飲みましたなあ。 松たけは松茸でねぐ松と竹だったけんどねえ」
「うむ、梅はうなぎと食い合わせが悪いでな松と竹なんじゃよ。 よーく計算されたギャグじゃろう。
おしぐれさんシリーズの作家は只者でないのう」
「無視 無視。
さらに店主はあんたと結託していると見え、うなぎ屋のくせに
「フグ焼きもありまっせ」
なあ〜んてねえ。 商売熱心なことおびただしい。
こーゆーお店にあんたと行ったれば自転車のタイヤを買おうとしていた予算を全部使ってしまうことになる。
よって出前は特特うなのつまみ焼きのみ、酒はこちらの台所の隅にあるやつで済ませます」
「フグ焼きはないの?」
「ボクがコンビニまで走って ”ふくちゃんのフグ焼き風かまぼこ” と ”松たけの香りお吸い物の素” を買ってきます。 お湯沸かしといて」
1時間後。
「おい もう酒がないぞ。 会津寒仕込みはどーした」
「ふぁい ボクがコンビニまで走って買ってきます」
「うむ、”ふくちゃんのカニかま風”も買ってこい。 いや待て 自転車では危ない、コンビニのほうから出前させろ。 ワシはナーコのゴールドカードを持っておる。 残高を使い切ってからしばらく現金チャージをしておらんがポイントの分はきっと残っておるぞ」
「名人〜ん カニかま風でねぐ ”かま風カニ缶” のゴールド焼きでげしょ。 はよ電話して。
なに! NTTの電話は解約した? あんたそれ倹約のつもりでそーしたの?」
「そーやぁ」
「そーですわなあ。 年に1度も使わない固定電話に基本料金払うといのはおかしい。
設置はあるが使わないお客からは基本料金は徴収せず、回線保守料金の年150円だけにすべきだ」
「そーじゃ、そのとーりだ。 じゃけんがこのおしぐれさんシリーズはのう、実在の企業を指してその経営理念をあれこれいうことはしないのが基本コンセプトなんじゃ」
「名人〜ん あんた ええひとやなあ〜」
2時間後。
「まて、それを弄ってはならん。 不意にペラが回って危ない。
コラッ 外してあるバッテリー線を繋ぐんじゃないって言っておろーが。 触るな」
「名人 プロペラは飛行機でしょーよ。 なんでグライダーにペラがあるの? んーなの反則でねーけ。
ボクらのロードバイクに内緒でアシストモーターを付けたよーなものだ」
「うむ たしかに航空法にいう有人グライダー実機にはペラも動力装置もない。 あるのは充電式無線機と翼に繋がったワイヤーを操作するペダルとハンドルだけだ。 エアコン、トイレはもちろんバックミラーさえない。
ところがだ、そこにぶら下げてあるワシのグライダー模型機には小さいながら立派なペラが付いている」
「ふん ふん」
「実機も模型機も航空機じゃからなんといっても空に浮かばにゃハナシにならん。
じゃがグライダーとして国交省と総務省に登録した実機はエンジンにしろ電動にせよ動力装置を持たない。
そーゆー約束で優遇税制が適用されておる。 排ガスの100パーセントゼロエミッションだからだ。
「ほーっ そーゆーものけ」
「そこで上空までの打ち出し装置が必要となる」
「ふん ふん」
「電動ウインチ等で引っ張る ”手綱式” 火薬で打ち揚げる ”カタパルト式” 小型飛行機に曳航されて飛び立ち、十分な上空まで浮いたらワイヤーが外れる ”子捨て式” さらには自らワイヤーを切る ”身投げ式” などがある」
「ほえーっ! グライダーは優雅な飛び姿のわりには空に浮くまでが超スパルタンな乗り物なんですねえ」
「そーや。 じゃが優雅ゆえに荷室などはない。 計算外の重量は負担できないうえ好天の日しか飛べないから災害救助になどは使えない。
ひとさまのお役に立つことはなあ〜んにもないのよ」
「ほえー」
「あれはフライヤーの自己満足だけなのよね。
しかもよ、ひとたび落ちればひとさまに多大な迷惑をかける。 音もなく落ちてくるからオスプレイより始末が悪い」
「なんで国交省は禁止しないの?」
「空へのロマンとしか説明がつかん」
「ひえ〜っ 荒井 ゆーみん の世界ですかー」
「んー?」
「ひこうき雲 ですう〜」
3時間後。
「さて話しを進めるぞ。 模型機のほうじゃが紙ひこーきグライダーの時代はタコ糸で機体と結び、一方の端を持って少年は向かい風の方向に懸命に走る。 そーやって揚げたもんじゃ」
「はいーっ 憶えておりますともー」
「ぐんぐん揚がって行ってタコ糸が少年と一直線の角度になって、ついに白い機体が下を走る少年を追い越したら」
「追い越したら?」
「握ったタコ糸を クンッ と引く」
「クンッ と引くとぉーっ?」
「フックから離れた白い機体はフイーッと」
「フイーッとぉー?」
「白いひこうき雲になる」
「あっひゃーっ ボクは泣きそうですぅ〜」
「お客さんたちぃ〜 ええ話でんなあ〜。 八つ目うなぎの胡麻山椒あえ 焼きまひょか」
「やい うなぎ屋。 ワシらはいつからオメんとこに来ているんだ、ワシの工房で飲んどったはずじゃがなあ。 ここは焼き鳥屋か?」
「へい 焼きうなぎ屋でがす。 オラ家では備長炭でねぐ文明開化以来の伝家の宝炎、明治瓦斯の木炭ガスで焼くんでがす」
「うなぎ屋、その凄い木炭ガスの話しは次回に特集するでよ、すまんが今日はあっちに行っていてくれんかなし」
「ほんとに特集してよ、凄い木炭ガスなんでがす。
ヘマして爆発するとガス発生釜のフタが成層圏まで飛ぶんでがす。 翼もないのに ・・ 」
「名人、このおとこ 無視しましょう」
「でな、フックから外れたあとは風まかせじゃ。 どこに飛んでゆくのかは運まかせじゃ。
えーじゃろー ロッケンなヒッピーの世界じゃー」
「それですぅー それこそがボクらのロマンだったんじゃないですか。
なのに、なのに無線機つけてペラ付けて、堕落このうえなしだぁ〜 うっうっう」
「泣くな。 オメいつから泣き上戸になった。
堕落だの落ちる用語はご法度だって言ったっぺよ。
どーして無線機とペラの時代になったのかを話すまでは泣かれては困るぞ」
「めいじ〜ん はやく話してくださいましな。 ボクは泣きたい、ひこうき雲でー」
「やい うなぎ屋、ゆーみんスペシャル のカラオケを回せ!」
「だんなあ〜 うちはうなぎ屋でがすが、いたってポリシーなしのごじゃっぺですからスッポンもやっていますぅ〜」
「スッポンが どーしたあーっ」
「へい、かみなり雲 しか用意がありませんー」
おあとがよろしいようで。
3 につづく
写真の説明
前回号にて予告しました Amazon の赤い吹き流しが入荷しました。
中国郵政の火車と貨物機に乗ってチベットネパール国境近くから長い旅をして来ました。
チベット・ネパールは山岳信仰と色とりどりの三角旗のふるさとですから吹き流しも綺麗ですね。
かの地では風が強すぎるので吹き流しより三角旗のほうが屋外では安全なのかも知れません。
長い旅を終えいま異国の風をはらんで竿の先、たたみジワを伸ばす音が聞こえますねえ。 「シワヮーッ」
旗や吹き流しは風になびいてこそですなあ。
日本でも普段からもっと旗を立てましょうよ。
さて、さらに写真に注目すべきは吹き流しを支えるその棹。
この場合竿というより棹が適当かと。
竹棹の曲がり具合の妙が筆舌に尽くし難いほどに美しいと自慢しておりますがいかがでしょうか。
熊のテリトリーの奥山に踏み入ったおしぐれさん、見つけたときは膝が震えたそうです。
熊の足跡が斜面に続いていたからなのか見つけた喜びからなのか不明ですが、ひと目ぼれさが勝って怖さを忘れて採ってきた竹なのですねえ。
そして棹を地面に突き刺す石突きの部分、ここにも注目です。 素材は 「うし殺しの木」
かつて北関東下野の鬼怒川や那珂川には鮎や鮭を獲る専業の川漁師がいました。
幼少期のおしぐれさん、「なりたい職業」ナンバー2が川漁師でした。
堂々のナンバー1はこどもにしては渋く村の鍛冶屋でした。
小学校の帰り道に必ず寄っては師匠の見習いをし、夕方になっても帰らないので心配した婆やが提灯を点けて迎えに行くと、鍛冶屋の爺さんと焼き鮎を肴に晩酌をやっていたなあ〜んてのはしょっちゅうでした。
鍛冶場では鋤(すき)鍬(くわ)や鉈(なた)も打ちましたが鮭漁の銛(もり)を打たせたら名人と言われた爺さんでした。
自分が川で鮭を銛で撃つならば、こーだよなー あーだよなあー と実際にフィールドに出てシミュレートしながら曲げを工夫し重さのバランスを取った銛は正確に鮭の肩を貫き、イクラや白子に傷をつけることはなかったといいます。
漁師たちが操った特殊形状の木造小舟を笹っ葉舟と呼びました。 笹の葉のカタチのひとり乗り川舟を作る舟大工にも名人がいました。
この時代、ひとさまの命にかかわるモノを作るひとの多くは名人と呼ばれていました。
いい加減なモノを作るひとは村に残れなかった厳しい理由から、おしぐれさんの廻りには名人しか居なかったのです。
考えてみたら凄い時代だったと言えましょう。
笹っ葉小舟は前後に細長い船形が急流で舳(読み:じく 意:へさき)の向きを安定させ、常に上流を向くので竹棹一本で流れを遡るのに有効であったといわれています。
漁師が小舟を進める水棹(みざお)は自分で作るのが鉄則です。 水中で岩を蹴って砂利と格闘するその先端部には必ず「うし殺し」を鋳込んでいた。
極めて硬い木である 「うし殺しの木」 を打ち込んで、抜けないように鉄のタガで締めて仕上げるのです。
もちろんそのタガは名人鍛冶屋が出雲の玉鋼(たまはがね)から打ち出しました。
ノコギリを受け付けないほど硬いうし殺しの木は拒鋸(きょきょ)の木とも呼ばれます。 ヤスリで削って鋳込みます。
水中で流れる小石と長時間戦って”ささくれ”ないのはこの木だけです。 さかなクンならぎょぎょですね。
昭和中期のとび職さんが初回東京オリンピックのスタジアム建設の杭を一日中打ち続けて有名になったあの鉄の大ハンマーの柄がこの木でした。
硬いばかりではなく打ち下ろしの反動を上手に生かすしなやかさもあったのです。
剣聖塚原卜伝が宮本武蔵と打ち交わしたという木刀が卜伝の墓所のある霞ヶ浦鹿島の神社に伝わっています。 墓誌に丑殺しのうんぬんと刻まれているそうです。
うし殺しの名の由来はもはや書く必要はありますまい。
下野は優れた牛肉の隠れ産地ですからなあ。
この木は関東の山野に自生し、株のすぐ上から四方に枝幹が派生する茶色の低木落葉樹です。
ですが似た樹種は多くひと目で「うし殺し」と見分けのつくひとは少なくなりました。
おしぐれさんは前回号のあと熊の山に竹を採りに入って見つけたのですが、そのときは嬉しくて熊の出没を忘れて舞い踊ったたそうです。
先年猪山で舞茸を見つけたときもそうでした。
このひとは嬉しいとメガネが落ちるんでねぐ、ロックでヒップなダンサーになるんです。
ひとしきり踊ったあとで、竹切用の鉈(なた 作:下野俊水)を1本ダメにする覚悟で何度も振り下ろし、汗びっしょりになって一幹切り取りました。
そのタダならぬ百鬼の形相に幽霊迫る鬼気の様、裂帛の気合に鉈の煌めき物凄く、雷鳴さえ木霊したといいますな。
背後の藪の陰から一部始終を見ていた熊がいました。 抜かしかけた腰を押さえてそーっと踵を反し、静かに離れて行ったそうでございます。
このひとには笛などいりませんな。
次回はウルシの木を避けながら沢筋を登って行ったおしぐれさんが人食い猪に遭遇したハナシがいいですか?
それとも大岩をどかしたら野槌(つちのこ)が冬眠していたハナシがいいでしょうか?
なにっ! グライダーにプロペラが付いている訳を早よう説明せよってかに?
いやー 忘れておりましたなあ。 それでは 3 でお会いしませう。
滑空場のある河原に着いたのは夜明けから間もないころだった。
芝生に降りた霜が光っているうちならグライダーの胴体着地がよく滑ってくれると思ったからだ。
摩擦抵抗係数×制動に必要な距離÷時間=風の神様の機嫌 というデタラメなのになにやら超高度な計算式を脳裏にちらちらさせるときほどおしぐれさんをうきうきさせることはないのだが、どーせ超弩級プロ用語をこねるなら神岡の光加速器のカミノカムイカンデに渦巻くトンネル効果のはやて風の ・・ くらいのことをサラっと言って欲しいものである。 まあいいけど〜。
まだ誰も来ていない滑空場で西の空にわずかに消え残る金星を惜しみつつ見上げ、仮説ふたつで証明できる無茶理論をひねり出してはひとりニタリするのであった。
このおかげでおしぐれさん、病気もせずに弥栄さっさの元気さである。
このおかげとは金星遥拝のおかげなのかそれともデデニオンな思考のたま物なのか、Eテレの黒いカラスほどもおしぐれさんは考えたことがない。
シナモン号には車輪がない、腹の下側はツルンとしている。 そーゆー設計なのだ。
上昇加速中の空気抵抗を減らして到達高度と滑空時間を延ばすこと。
さらにツルンのお股で外乱風を軽る〜くいなせば粋に身軽に飛べるという経済効果優先すこ〜しお色気期待の算段なのだ。
そーゆー算段の期待が高まるオレンジ色のツルンの機体を設計したひとはえらい。 ミック ジャガーか忌野清志郎を崇拝するおひと以外にはおるまいよ。
「なるほどそれは解る。 経済を語るにはすけべな了見が必須やゆーことやな。 じゃけんど着陸装置を捨ててまでやることか?」
「飛んでいる機体をひとは下から見上げてその神々しさに心を打たれ、そして思わず両の手を合わせるものだ。
だからグライダーは腹側のデザインが秀逸でなければならん。 いうなれば菩薩像の腹を覆う衣のヒダの流れのようになあ」
「そーゆーものけ」
「そーじゃ。 上から見下ろすのはトンビと雲とお日さまだけだ」
「もうひとりいるじゃないか」
「だれじゃい」
「富士山だよー」
「そーだー そのとーりだ 日本一だー べらぼーめー。
日本人は富士山を見るとなぜか手を合わせるな。 それはナショナルなアイデンティティーだから遺伝子検査しなくとも国籍が証明される」
「なんのハナシですか」
「うむ。 万人が見上げる日本一のセクシーなその腹にだぞ、無粋なタイヤなどあってたまるか べらぼーめ」
「べらぼー ですか」
「違うってーのか、すっとこどっこいめー」
「たまげたなやー、江戸っ子やな〜。 むっちゃスパルタンな思想やー。
オメさん、生まれは土佐け? 長州け? それとも会津け?」
「べらぼーめー 江戸っ子やな〜 って いま言うたばかりやないかい」
帰って来るときに使うバッテリーのことをトンと考えずに宇宙の彼方をさして飛んで行ったNASAの木星ボイジャー・木犀号。
異国の機ながらあのもののふのいさぎよさを思い起こした江戸っ子おしぐれさん、朝から泣いてしまった。
ここへ来るまでの道中 ゆーみんの 「ひこうき雲」 をCDに入れて運転してきた。 あの曲は飛行前に聴いてはいかんのかも知れない。
そーゆー心情の起伏があったからかなかったからか、それとも第三国のテロかこの後 「ひこーき雲」 クラスのアクシデントがあったのです。
きょうはそのハナシです。
おしぐれさんシリーズは万事うまくゆくハナシばかりではない。 退職後数年のあいだにそれがよーくわかった初老がそれでもスキを見ては暴れようとしている。
その悲哀が全国の団塊たちの感涙を誘い絶大なご支持をいただいておるんとちゃうけ。 うん それでいいのだ。
夏のうちに繁茂したヨシが枯れヨシになって寒々とした河原にシナモン号を落として垂直尾翼を失った。 (写真1)
水平尾翼のフィルムも一部が裂け骨材のバルサが痛々しく露出しているが幸いにもメインパイプの骨折はなかった。 (写真2)
原因と申しましょうかコトの起こりは北風の方向に降ろしながらゆっくり飛行させ、定石通りの 「向かい風着陸アプローチ」 に移行して行こうとした矢先に起きた。
昇って間がない未使用エネルギー満ち満ちのぎらぎらの眩い太陽光のなかに機影が入ってしまったんです。
で、言い訳がましいんですが飛行中の操縦者は両手がふさがっていて手をかざして陽光を防ぐ動作はできない。 一瞬下を向いたときに下腹に載せていた送信機のスティック操作が乱れちゃったんですね。
だったらスティックから手を離しちゃったほうがよかったんです。 そーすればスティックは自動でニュートラル位置に戻ったんだ。
「そんなん ばかやろー あとから言うなあー」
んでもって高い処から減速の余裕もないまま不意の不時着を敢行しちゃったというたったソレだけのことなのに、目撃者の多くは墜落というのです。
おしぐれさんのそ〜んな茶飯事はいちいち墜落などと大袈裟に報告してはイカンのです。
やっと入れて貰えたラジコンフライトクラブの会長から墜落インシデント王の尊称 (損傷かも) を与えられ、名誉の滑空場草刈り奉仕を言い渡されてしまいます。
ここは慎重に用語を選んで擁護したい。 ねえ そーでございましょう。
おしぐれさんの胴体着陸はなつかしき地球、母なる大地への勇気ある帰還行為でございますから不時着というのが相当なのです。
地表までの最後の1ミリまで必死にコントロールへの努力を続けての不時着は、墜落とは明らかに違う。 断固違う。 それは操縦者が最後に決断した死を賭しての着陸ダイブであった。 だから着陸です。 すこしカッコ悪かっただけです。
対して墜落とはある時点から制御の意思と熱意を放棄し、落ちるがままにして機を見殺した操縦者としてあるまじき非人道的で軽蔑的な人物を指して蔑む場合をそういうのだ。
而しておしぐれさんは断じて墜落者ではない。 単にへたくそなだけなのだ。
河原の芝生の滑空場とその外側のヨシ原との境い目を目測計測器に頼ったおしぐれさんの眼鏡が合っていなかっただけなのだ。
自転車サングラスではダメなのだ。 飛行系にはフライトグラスなのだ。 NASAも使っているレイバンのいいヤツをアマゾンに注文せねばならん。
それと滑空場周辺の風を読みきっておらんかったことも原因や。
おとといは出張した山のゆず畑から狭い空に向って揚げた途端に風に吹かれた。
華麗なソワリングどころかたちまちの乱気流に流されて向かいの山の落葉木に引っかかった。
山では風の音などしておらなくても巻き風の巣がそっっちこっちに出現するらしい。
初めて知ったわね そ〜んなこと。しっかりした携帯風向計か吹き流しをアマゾンに発注せねばならん。
このときは無傷で回収できたのだが幹周り30センチほどのウルシの木を根元から切り倒しての救出劇となった。
じつはウルシかぶれが心配なんです。 冬でもかぶれの植物系蒙菌は活発なのであろうか? なんだか首とか脇とか股間とかの皮膚の弱いところが赤痒いような。
機体救出に出動し充電式電動のこぎりマンを務めたゆず畑のオーナーはなにも言ってこないけれど、今ごろは全身かぶれで寝込んでおるのかも知れん。
かぶれのひどい処にゆずの絞り汁など塗り込んだれば、めっちゃ面白いやろねえ。
あっ これは、おしぐれさんとてウルシ蒙菌かぶれの可能性はまだまだ大でございましょうに。 ゆめゆめそのようなことは妄想されませぬよう。
昨夜は前例にならって荒井由実の 「ひこうき雲」 を聞きながら 3rdビール で尾翼の供養をしたんです。
そして今朝は早く起きて尾翼の修理をしたんです。
えっ 直るのかって?
前にも言いましたやろ、おしぐれさんは現代の名工やって。
こーんな程度の直しは あっちゅー間の上得手なんでございますー。
そやからへーきで機を落とすんですー。
いやー そんなことない。 ないだすー。
まだ内緒やけどな、先のきりもみ事故のカリプソ号なあ。 大変やったけどあらかた直ってますのや。 今は優れた接着剤がありますでなあ。
でもちょっとセンターのヨジれが残ったままでしてな、ペラが真っ直ぐ向いておりませんのや。
そやから試運転飛行でちゃんと飛ぶまでは内緒にしてますのや。
そやないと急いでシナモン号を買ったことを世間からは 「この薄情者の浮気者め」 と責められますやろ。 そのとーりなんやけど。
ともかくもだす。 フライトサングラスと航空用吹き流しをアマゾンに発注したんです。 共にプロ用機材。
フライトグラスは 「プライム会員お急ぎ便」 できょう届きました。
吹き流しのほうは中国から発送されるのだそうで2週間かかるとか。
この吹き流し、口径50センチ・長さ80センチメートルとあるからちょうどよいサイズ。
オレンジ赤色に蛍光グレーの夜光帯を縫いつけた本格仕様でなんと送料込み435円、プロ機材がこんな価格でだいじょうぶなんかいな。
アマゾンの画像をコピーしてそのまま掲載しては法に触れそうなので、次回に写真を撮ってお見せしましょう。
ちゃんと届いたらのハナシですけど。
問題は吹き流しを立てる棒です。 現地へ行って立てるのですから鯉のぼりの柱では往生します。
だいいちうちの子は娘ばかりでしたから鯉のぼりの柱はありません。 お雛さまならまだ出したままですけど。
さあ吹き流しの竿、いかがいたそうか。 家宝のへら釣り竹竿ではもったいない、初代俊水名人のばちが当たります。
さればこれから山へ入って竹材を採って来ようと思います。 初代名人も竹を切った山です。
ついでにウルシかぶれのゆず大将を見舞って参りましょうかねえ。
「ふっふっふ ウルシの痒みには熱燗がええですなあ。 きょうは雪が降るほどに寒いからイノシシのゆず鍋に日本酒がよー効きますやろなあー」
「おしぐれさん、あんたやっぱりソコかいね。 なればわたくしもお供いたしましょうぞ」
「ふっふっふ 団塊屋Nさん おぬしもなかなかのワルですのう」
けさ7時台のNKHニュース。
「若者よりタチの悪いキレる老人の実態」 ってあんた。 老人はキレないと思っておったんかいな。
認識甘いであんさん。
いまの老人はめっちゃ元気なんや。 それもわるく元気なのね。
酒席で若いもんに意見を言うておる前でスマホなどいじっておったら躊躇せずビール瓶で殴りかかるんやで。
いうたら凶暴なるご老人なのだ。
それは何故か?
最近70歳代になったひとたちの子供時代にそのヒントがあるんや。
憶えておるかベトナム戦争。
あんひとたちはそれを見たんや。
当時の日本はえせ富裕のなりかけ時代だった。
政府は子供たちにえせでない真実の世界を見せなければならないと考えた。 今では信じられないがそーゆー内閣があったのだ。
全国から出来のよい少年少女を少数選抜し、アジア交流団として硝煙けぶるビルマ(現ミャンマー)とカンボジアとベトナムに派遣した。
派遣前に風土病の予防注射とM16ライフルの実弾訓練を実施したのはもちろんのことである。
ひとの教えは武士道やない! デルタの泥を啜ってでも生きて還って殺してやる。 兵士の希望はひとへの憎悪でできている。
そーゆー目をしたひとたちを子供のころに見たんや。
目で見ただけやない。 死にそうなひとを見殺しにしてほんもののアンガーマンになったんや。
おしぐれさんを見てみい、あんひとはいつだってキレっぱなしや。
だから死なずに生きてこれたんや。 日本人の寿命が延びたから、だからついでにおしぐれさんも長生きや。 ちゅーのとは違うんやで、似とるけど。
70歳で自転車損保から締め出されたときだってそーや。
損保に意趣返しをしようとしたんや。 むちゃくちゃやろ。
本来そーゆーときの苦情は総務省とか菅官房長官に談判するのがスジやちゅ−ことはようわかってますのや。
わかったうえで損保会社のビルの屋上にラジコングライダーを飛ばそうちゅーんや。
ドローン機やないで、もっとコントロールの危ういグライダー機や。 しかも老眼が進んで機体の動向がよー見えんまま飛ばすんや。
翼長が3メートルもあるんやで、エアコンの冷却塔に当たらんようコントロールするなんてそーんなワザが出来ると思うか。 ん。
どーじゃ損保め! 恐れ入ったか ばかやろー。
ワシゃのう、オメの会社のラジコン保険に2年契約の現金一括払いで加入したトコじゃ。 文句があっかー べらぼーめーっ。
四十九日も過ぎないうちにおしぐれさん。 新しいナニをなにやらナニしたそうで、なんと節操のないおひとでありましょう。
でもねえ、わけを聞いたら 「ふ〜ん そーなのかあ」 と思うところもあるのですよ。
来年70歳になるおしぐれさんの許に○○保険会社から通知が届いたのです。
「当社および日本のすべての損保会社では70歳以上の方の自転車保険をお引き受け致しておりません。
お客さまには長年のご愛顧を感謝しつつ本年度限りのご契約とさせていただきたくご連絡させていただきます」
ふ〜ん いいとこだけ取るのね。 そーゆー申し合わせのギョーカイなのね。 これまでご贔屓にしてたのに70過ぎたら自転車は引退せよと、そ〜ゆーことをへーきでいうのね。
オメらだって70になって、そんでもってビンビン元気だったらどーするんじゃ。
「ふんだ、いーわい。 ふんならオメらの頭上でひこーき機飛ばしちゃるわい」
オメらが売っているラジコン保険に年齢上限はないはずじゃ。 そーじゃろーが、違うかー。
どーじゃい。 自転車じゃねーぞ、ひこーきじゃ。 めっちゃスパルタンじゃろ。 ざま〜みやがれ、ばかやろー。
そーゆーことでの 「ひこうき雲」 でしたんですねえ。
おしぐれさん 怒りにまかせて とゆーか、気合が萎えないうちに 「後添え」 を迎えました。
いーじゃないの萎えないんだから、文句あんめや。 ねえ。
新しい機体をご紹介します。
写真1 シナモン号といいます。 とてもコントローラブルだというので購入を決断。
前のカリプソ号はビギナーには難しい機体だったようです。
初飛行は柚子もぎの山の斜面。 気合が入っていたから墜落はしませんでした。
でもやっぱり着陸は難しく (というより着陸すべき芝生の平地がない)、 向かいの山の落葉木の先端に引っかけて止めました。
それもテクのうちでございましょ。
その木を根元から電動のこぎりで切って機体を救出してくれたのはだれあろうあのNカメラマンでした。 なんと彼はゆず山のオーナーだったのです。
その木の切断現場写真がないのはカメラマンとして断腸でございますと当のカメラマンが。 でも仕方なかったのです、のこぎりマンがNさんなのだから。
えっ! おしぐれさんですか? あのご仁は送信機を持ったまま手前の沢の枯葉のプールに落ちて身動きできなかったのです。
いやーっ アドベンチュアでございますなあ。
写真2 機体内部に補助翼のコントローラーを装着中の作業風景。
光で硬化する接着剤を使います。 とってもスパルタンなのでございます。 開口部の上方に主翼が取り付きます。
写真3 長大な主翼は取り外して運び、滑空場で機体に組み立てます。 繊細な部品ですから移動中は車室に転がしておくわけにはいかない。
そこでココにゴムバンドで仮付けます。
ココとはルームランプのレンズの平らな部分。 車室内で空いている処ってココしかないでしょう。
こんなアイデアはおしぐれさんの平常心の新案特許です。 あのひとは現代の名工ですからなんでも工夫してしまいます。
ただし 「諭吉の偽札を1ロットどーだんべ」 とゆーような相談には 「うーむ メールの記録が残ってはなや ・・ どーだんべ」 ということでございました。
昨夜のおしぐれさん、荒井由実の 「ひこうき雲」 をユーty−部で見て泣き、聴いて泣き、なんどもリピートしてさんざん泣きました。
グライダーが墜落死してしまったのです。
正確にいうとおしぐれさんとカメラマンN氏の操縦ミスで墜落させて死させてしまったのです。
どうも前日の 「行き止まり」 写真が不幸の始まりだったような。 カメラマンN氏は貧乏神なんでしょうかねえ。
N氏が帰ってひとりになったおしぐれさん、3種ビールでさめざめ泣いていると夕食おかずを配達にきた 「ワクミ」 のおばちゃんが心配したか、
「配達終わったればまた来てみるけ。 あだしー 後家だから仕事の後はヒマなんよー。 いっしょに泣いてやっぺーかや? あだしー ビールは2種でも3種でもいいけんど、ほんとはやっぱしのビールが好きだなゃー」
「来んでええわい」
写真 1 就航前、試運転検査合格時の勇姿。 手前の影はカメラを構えるえせ検査員のN氏。
写真 2 トランスポート時の収納状態。 お気づきでしょうか、よく見ると機体に傷をつけない工夫が随所に。 素晴らしい。
箱内に送信機やバッテリーの他お弁当やお茶や缶ビールなどを入れ、トラロープのストラップで運びます。
ここまでは良かったのです。
将来的にはビールサーバーも運べるようゴムタイヤを装着する予定でしたのに。 まったく もう。
写真 3 重大インシデント事故調査と死因検分中の写真。
直接の死因は頚椎主幹破断創とのこと、苦しむことはなかったそうです。 それにしても敷き物のチェックな柄がなんともはやハイキング
です。 合掌。
泥を洗ってきれいに並べたおしぐれさんとN氏、あふれる涙を隠そうともせず 「ひこうき雲」 を絶唱しましたのです。 嗚呼。










