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「俊水」の掲示板
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実はすごいところを走っていた会津浪漫輪道
2015/11/01

ロード脇のトイレに並んで用を足しながら福島県警の古いクラウンパトカーのお巡りさんと親しく会話する機会を得た。
以下はその全容であるがなにせご両名は公務のお方。 お名前 官名等は仮のものとさせて戴いた。


両手がふさがっているから腰の拳銃は容易には抜けまい。 安心してタメぐちである。
なぜならワシは駐輪スタンドにきちんと自転車を留めたし、昨夜は喜多方の北方に位置する蔵の湯温泉で遊湯税もきちんと現金で支払った。 
トランポ車での野営地は公設キャンプ場であり、夕飯を兼ねた遊興街での徘徊は早めに切り上げて寝たきわめて善良なる旅行者である。 領収書ならお風呂セットのポーチ内にあるぞ。

早めに寝たのは一軒目を出たら蔵の街はどこもかしこも灯を落として真っ暗じゃったからじゃ。 ふん! 
土曜と違って日曜の夜はこんなものなのか、駅前のタクシー乗り場には諸国からの旅行者が ふんっ ふん! の大合唱だったわい。 治安の良いことは結構じゃが民活度はどーなる! 混沌こそがアジアン仏教の根本ではないか。

「旅のひと、どさくさまぎれに渋い洒落かますでねーだよ。 街の治安をちゃあーんと担っているのは剣道4段の相棒とオラの腰のモンだ」

あに! ワシを真ん中にして剣士は左、オメさんは右に立ったのはそーゆーセオリーがあったのか。
右手は常に空けておくのがガンマンのキマリ。 容疑の標的者を左側に見て立つのは右腰をフリーにする会津ポリスのモチベーションだって? アンタ、福島のクリント・イーストウッドかいね。

「ご両名、会津もののふの気概はしかと分かり申したが なして自転車ロードにそがいな暑苦しい装束で?」

「旅のひと、よぐ聞いてくれだなやー。 この道は県道なんだすわ、福島県唯一の (全国的にも類の無い) 自転車専用県道なのでわしらのパトロール区域っちゅうワケだす。 
磐梯山・猪苗代湖・喜多方ラーメンに次ぐ会津の誇りじゃで、本官ほか1名は所々にある自動車道との接点から歩いて巡視しとるっちゅうわけでございますよ納税者さま。
 
はいー 年寄りにはしんどいだす。 早くに出世しておったれば歩き巡視などせんでよかっただになー。
この時期のマムシはなや、冬眠前の荒食いだで気が立っとります、革の編み上げ長靴にエルボーチョップ用のヒジ当ては欠かせませんだす。

もしもヤローが警告を無視して恭順の意志を見せず、さらに善意の市民および本官らの生命財産に急迫不正の重大な危機が及ぼうとする際には、司法公務員職務執行法の精神に照らして躊躇など明らかに不要。 
ウムを言わさず44マグナムの全倉発射じゃーっ。

はいー フルオートマチックのダーティーハリー仕様、グリップに純銀を用いたスペシャルシルバーモデルだす。 
少々重いが抜く手は見せぬぞ、全弾命中じゃ。 のう平手うじ」

平手と呼ばれた若い方の警官は川面のカモの数を目で追いながら 「アンタ うるさいよ」 背中を向けたまま肩から上げた手をヒラヒラさせた。
それで平手というのかも知れん。

さらにこの男、川面に揺れて咲く川藻の白い花に群れる小魚がパッと散って根方に潜るのを追う川ガモが、暫くして顔を出すたびその数を倍にしたり戻したりするのを見て ふっとつぶやく。

「されば 梅花藻 (倍カモ) と名付けたり」

「お若いの、平手うじと申されるか、お見それいたし失礼した。 さすがのお点前でござる。 一刀流か?」

「恐れ入ります。 お手前こそさすがの慧眼。 
川ガモが川面の川藻に遊ぶさまをしっかり捉えての三点フルバージョン盛り、無駄も外しもない自然流。 敬服いたしました。
 
もしや雲水どの、あなたさま もしかして あのご高名なるおしぐれご坊さまではありませぬか? なれば各地を旅してご存じではあるまいか。 房州下総行徳寺の妙真尼どのはご息災にあらせられるかと」


(注釈 : 以下の解説は福島のクリント・イーストウッド氏によるものです)

      平手造酒 (ひらてみき): 天保水滸伝に登場する美貌の剣豪。
      北辰一刀流 抜き打ち技の名手として関八州に名を馳せたが生来の酒好きと女好き、さらにはその美貌が禍となり身を持ち崩す。
      お玉が池の千葉道場を破門となってからは下総の元締め博徒 笹川の繁蔵 親分の食客となり利根川の堤筋で颯爽の風となる。 今風にいうたら利根のロードマンですなあ。
      このとき平手の無事を祈って山寺にこもり、厳寒の滝で水ごり祈願をしたという美形の尼僧が若き日の妙真尼である。

      浪曲 大利根月夜唄のモデルとして 千葉・茨城 ではつとに有名

「はぁー そーなんですか? アンタ、会津の誉れから房州博徒の用心棒の恋バナまで関八州の人文地理をよー喋りまんなあ。 ポリスアカデミーの卒論だすか? 
わたいの聞きたいのはマムシ情報だす。 そいたら転んで草むらに落ちたらアキマヘンな」

「アキマせん 足を着いたらアキマせん。 
秋風が立っちょるちゅうに なんでライダーは無防備にスネば出しとるんかいねえ。 
ゴールまで一気に突っ走って行かねばタヌキに化かされマム公に食われて命を落とします。 ここはネヴァーなワイルドランドだと認識すべきです。

一番危険なのが雑木林での立ち小便。子持ちタヌキの巣穴にひっかけて祟られ、石地蔵に化かされる例が後を絶ちません。 これはライダーに非があるだすから立件・起訴の対象となりませんなあ。
よって7キロおきに公設トイレがあります。 パンツを下す前に便器内に銭形模様の動くものがいないことを確かめたうえでご利用願います。

銭形の動くものと申しましたが、碕玉県警からインターポールへ出向中の銭形警部のことではありませんだす。
はいー ポリスアカデミーの同期だす。 まあ あのご仁も毒の強さではマムシ以上の虎ウツボですがなあ。 がっはっはー」

これはいかん。 銭形の知り合いでは今後いかなる災難の展開となるか想像もつかん。
一刻も早くこの場を立ち去るのが良策であろう。 マムシも恐いが銭形の刺青を背中にしょった地中海の虎ウツボはもっと恐い。

「ひょえー! 素敵なワンダーランドですなあ。 利根川サイクルロードの颯爽に対し、こちらさんはワイルドさにおいて完全に勝っておりますだす。
ほいたら ぽちぽち出発しますで いずれの地でかまた会いましょう。 さいなら」

「お待ちなせえ 旅のひと、ここで逢ったもなにかの縁。 めったに口をきかん平手が3行も喋ったのもご縁のおかげ。 お礼の気持ちを込めて完走祈願の祝砲をたてまつらん。
 
平手巡査長、 気をつけーっ! 直れっ! 射撃姿勢をとれーっ!
わしの44マグナムを式典銃として特別に貸与する。 南11時の方向に捧げ 両手構えーっ! ええが 全弾撃ち尽くせ。 ちっとは軌道がそれてもかまわんぞ。 よーい!」

「ひえー! かんべんしてちょーだい」


正式名称 : 福島県 県道392号線 会津若松 熱塩温泉 自転車道線 
愛称通称 : 会津浪漫輪道 (あいづロマンチックりんどう)
計画距離 : 49.9km
整備距離 : 会津若松側 14km 喜多方側 9km
沿川    : 大川 押切川 濁り川

<写真説明>

1枚目 : 起きぬけのウォームアップにキャンプ脇を通る会津 米沢街道 (国道121号) を大峠に向かって登る途中、偶然見つけたこの標識がすべての始まりだった。
      この瞬間 本日予定の 「恋人坂」 のキャンセルを決断した。 「オラはちゃらちゃらした坂は嫌いだ、行くならこの道だっぺーよ」

      恋人坂 : 会津にはこーゆー名前の坂が実在するのです。 なんと浪漫な県民文化でせう。
      写真は撮ってあります、いずれお目にかけたい。 

2枚目 : いったんベースキャンプの道の駅 「喜多の郷」 まで戻って旅支度を整え直す。 バックパックにはお師匠さま形見のお数珠を忍ばせた。
      モチベーションに本気度が乗ったときはいつもそうしているが、考えてみたら拙僧にとってお数珠は本業だったなや〜。
      このときなんと 「浪漫輪道」 が駐車場のすぐ裏を通っていることを発見。 お師匠さまあ〜。

      写真の標識は最近設置された電気自動車急速充電器の小屋に隠れて見えなくなっていたのだ。 なんてことをしてくれるんじゃー。
      前夜 喜多方の飲み屋街から乗ったタクシーが 「自転車道はあっちの方やないけ?」 と言ったのはこのロードのことだったのか。

3枚目 : 平手酒造(株)の酒蔵と 「会津浪漫輪道」 開通記念碑。 平成11年とある、こんなところに埋もれてもったいなや。 のう平手うじ。
      このあたりは酒造会社のみなさんによって綺麗に整備されていたが、少し行けばタヌキやマム公が出る雑木林が川に沿って続くばかり。

      街路樹があたかも桜花のようにピンクに写っています。 そりゃーそうです酒蔵から漏れ出た酒精の水を吸って年中紅葉している木々です。 ええですなあ。
      酒蔵は稼働中、シャッター押しを頼めるひとはいませんでした。

      街路の時計は10時40分を指しています。 祝砲弾の飛んだ方向、会津若松まで残り20分で行けるか? 
      軌道がそれて宇宙をひと回りして降ってくるマグナム弾をこの身を挺してでも受け止めねば善良なる市民に迷惑がかかるばかりではない。
      拙僧が終いの巣舞いと決めておる父祖の城、會津鶴ヶ城の神聖美麗なる大天守の鬼瓦に穴があくではないか。

      ハイヨー シルバー、  走れーっ コルナ号ー  タヌキもマムシも蹴散らして、いざ 参らせそうろうーっ!

      お師匠さまあー  まっこと不肖の弟子でございました。  
      お側に参れるかどうか、とんとわかりませぬ仕儀とあいなりましたも渡世の義理。 男の意地。 お許し下さりませーっ!


<大利根月夜唄より一部抜粋>

      えーい 止めてくださるな妙真尼どの、落ちぶれ果てても平手は武士じゃ。 受けた恩義を返すは今じゃ。 行かねばならぬ 行かねばならぬぅーっ!
 

題無し (台無しの誤植ではありません)
2015/10/23

  ふるさとのなまり懐かし首都高の
   
  「このー ごじゃっぺなまはげやろー おだおだすんでねー」

  「あんだどー おめごそとっとと男鹿さにけばれ ぶりこの網ば さばけてっぞー」

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のっけから難解なフレーズが続きましたが短歌です。
注釈しないと短歌と解からないでしょうか? そのせいか 「NHK日曜短歌」 に渾身の投稿をいたしましても相手にしてもらえない。

「だからって団塊屋に投げてくるなあー」

「すみません。 他にはなくて、お願いしますですうー」

たぶん選者はこの短歌が 「カーナビゲーションの地点登録」 を詠んだ歌だと気付かないのです。
週のお題が ナビ・カーナビであったなら、選者が新進のヌーベルバーグ詠者であったなら、上の句は特選の上の大吟醸。年間秀作賞に輝いたはずなのですがねえ。

しかたがありませんから解説者の先生に快説をお願いしましょう。
無茶句 先生お願いいたします。

「あー この歌はね、首都高環状5号の17番パー3、 246ヤード 第2打のことですね。
分岐に出ようとして間違いに気付き、走行車線にふらふら戻って後続車とトラブルになったと、そーゆー場面ですね。東北道方面へはもすこし先です」

「なぜ17番だとわかるんですか?」

「あそこはね、最終ラウンドを意識してあせるんです、前のひとがナイスオンしたのを見てハンドルの切り込みが早くなった。
ナビの分岐ライン図を見ていなかったんでしょうかねえ」

「見てもいいんですか?」

「ツアーのプロだって見てますよ。ラウンドの合い間にポケットのあんちょこを見ているでしょう、しっかりコースラインを読むことが大切です」

「あのー 男鹿さにけばれ というのは何かの符牒なんですか?」

「オメさん ほんだらごども知らねで放送席に座ってんのけ、たまげだなあ。 秋田名物はたはたなまはげ男鹿ぶりこだっぺーよ」

「ひえー?」

「沖の漁場さに入れる網が破れで年寄りのおどーが困ってっがら早く帰えーって手伝いてーと、そーゆー望郷の歌だあ」
喧嘩しているのはどちらも男鹿の出身だったようだなや。
 
美しい同郷愛を目撃した詠者もまた秋田のひとなのでしょう。
ここへ来れば懐かしいふるさと訛りに会える。 そういう一連の事情と心情とがよっくと詠み込まれたこころ打つ秀作です」

「ほえー?」

「この男たちはなや、魚探やロランは蛍のけつだがカーナビは海では扱わねーうえに乗って来た軽トラにはそんな設備はねーのがも知んねーなあー。
そんでもってこーゆーごどもあるんだわな。 許してやってちょーだい」

「軽トラで何しに東京へ来たんです?」

「そらオメ、豊洲さ移転の決まった新築地市場さ営業だっぺ。 ぶりこはハマチの子供だかんなや、高額商品だあ」

「蛍のけつ はなんです?」

「浜のホタルをいっぺー集めでな、かごに入れだ集魚灯だがや。 
ぼーっと明るいが発熱しねーのがメリットだ。 ぶりこの鮮度が保てる。
逆さぼたるというのはな、はげのおやじのことだあ。 こっちは生ぐせーんだ。

「みなさま、不適切発言がございましたので最終ホールアップまで放送を続けることが出来なくなりました。
こころ残りではございますがこれにて失礼いたします。
怪説は無茶句 精強 先生でしたあー」

「なんでよー、 なまはげ俳優のはげのことだっぺーよ。 精強な男ほど男性ホルモンの作用ではげになるんだぞー」



団塊屋のみなさま。

なまはげ神社の縁石で滑って股間を痛め、久しく休んでおりました俊水掲示板。 
傷癒えて再掲載の運びとなりました。

リターンマッチ第一戦といたしまして、近日中に最新カーナビゲーションのカスタマーレビューを上梓する予定でございます。
いましばらくお待ちください。

syn

私設 おしぐれ託老所 でほらく班
2015/08/12

「おーい 鬼さん、クルマは庫裏に入れろ。 アタマが鴨居に当らんように気をつけるんだぞ」

「庫裏ってよー 裏のツリーハウスのことかあ。 ははあーん、栗の木の枝をそのまま鴨居代わりにしてあるから それでクリっていうんだなあ。
青いイガの実がいっぱい付いているじゃないの。 気をつけろってーのはオラのアタマけ、それとも選挙カーの屋根のことけ?」

「どっちでもいいから早くエンジンを止めろ、この山ではCO2排出量の1日量がひとり0.4g以下と定められている。
夏場は地表近くでも空気密度が薄いから0.4gといっても馬鹿にならぬ割合となって地球環境には負担となる。
山は光合成のふる里じゃ、米国デュポン社の毒素フロンはもちろんじゃがワシらのCO2もご法度なんじゃ」

「それってよー どれっくれーの量なんだや?」

「ナトリウム塩分の摂取限度の1割だ」

「なんだそれ? オラは半魚族だから塩気はエラで漉しているだよ」

「缶ビールの炭酸2本分だ。 汗かいたからこれから1缶飲んで、晩酌の口開けに2缶目を飲んだらそれでひとり分の定量だ」

「汗かいたからって あんた。 まだなーんもしておらんよ、栗の木のクリハウスにクリマを入れただけじゃないの。 ブルーシートを張っただけのクリーンな庫裏によー」

「ワシは先ほどより選挙カー改め鬼村旅情カーをどのように設計したものか、頭脳をフル駆使しておったから前頭葉海馬付近がひどく疲れた。 
まずは飲もうじゃないか。 早く出せ」

「出せって 何を? まさか缶ビールを出せってかいね。 オラはどらえもんのポケットじゃねーよ」

「ふっ ふっ ふ 知っておるぞ。 車内の保冷クーラーはなんじゃ? 昨夜の選挙事務所打ち上げパーテイ用のビールじゃろ。 
そーゆーものは早く処分しないと選挙法違反になる。 お前さまは臨時職員だったのだから職務上横領罪に問われ、悪くすると野ざらしの刑だ」

「あちゃー 降ろし忘れていただよー。 まだ冷えているっぺーか? 業務用のデカいクーラーだから冷えたままだといいなあ」

「おぬし、なかなかの役者よのう。 
塞爺いから選挙カーを貰ったとき、旅情カーとして使うからこれも欲しいと言って中味の入ったままの保冷クーラーを積んだままにしておいたんじゃろ」

「見てたの?」

「塞爺いから連絡があったのさ、鬼さんのことをよろしく頼むってな。 伝書キジが手紙をくわえて飛んで来たばかりだ」

「あんたら、桃太郎の世界かい!」

「まあよい、飲もうじゃないか」

「CO2の許容量はどうなるだね。 オラだぢの胃袋ではあっという間に越えてしまうぞ」

「ふっ ふっ ふ 大丈夫じゃ。 もうじき10人増える、今日ワシらはひとり当たりプラス5人分まで飲める」

「なに それ?」 

「あのな、塞爺いが村役に最高得票で当選したろ。 そこで村議会の議長になって老人対策の議案を通すというんだ。
託老所という施設を当庵に併設して寺全体の経費を村費でまかなうという計画だ。
拙僧が住職兼施設長、寺男に新採用するおぬしが託老所長というわけだ。 塞爺いがそういうておる。 
女子介護職員も村の嘱託職員として給料が支給されるから近所のおかみさんが応募してくるべとなあ」

「ひょえー 色っぺー かあちゃんが来るだかや。 オラも介護されてえー」

「何をぬかすか、おぬしの女房だ。 他に暇そうなおかみさんなどおるか」

「なあーんだ そーかあ。 でもオラのかかあは介護師免状など持っていないよ」

「村の元気な老人が任意で通ってくる私的なクラブだから公的免許はいらぬ。 村はそれを支援する条例を制定して資金援助をするのだ。
当節は老人福祉政策といえば大抵通る世論の盛り上がりがあるでのう」

「塞爺いはアタマいいねえ。 選挙中はそんなこと言わなかったがよう」

「言ってもお前さまには聞こえなかっただけじゃ、宿直室で昼寝しておったからのう。
老人の足腰鍛錬には水泳が一番ええから下の潤沢を堰き止めてプールを作る。 沢の主のカワウソ又吉どのも了解済みじゃ。

冬場はスケートリンクになる。 又吉どのは氷下魚(こまい)養殖の準備を始めたそうな、さすがの商才じゃのう。 アクタ川賞じゃからなあソツがないわ。
そうそう半魚のおぬしには水泳コーチとして別手当が加算されるというぞ」

「ひょえー ええ話しだがオラとゴン太のサイクル旅情旅はどーなるだや?
ゴン太に聞いたら寅さんと古鞄と茶色い犬の写真は 「あー あの犬はオラの親爺だ」 ってこともなげに言っただよ。 あいつは名門の出なんだわ」

「好きなときに休暇を取ってゴン太と出かけろ。 その旅情カーだが万一のときには救急車として使うからストレッチャーを固定できる装置を付けて88ナンバー登録をする。
88の特種車両はな、

「われらはお上の御用である。 こちらお犬さまは緊急救助犬 徳川ゴン太号綱吉さま、火急のご出座である。 しもじもの者 御用である すみやかに道を空けろーっ!」

と大上段に構えて選挙カーのスピーカーで音声すればカーフェリーがフリーパスになるから予約なしで佐渡だって北海道だって行ける。
もしもバレたら、「大冗談だよ〜ん」 とシェーすればいい。 目は半月下弦のマークにするんじゃぞ。 なに 知らん? 赤塚漫画で勉強いたせ」

「しぇーっ!」

「よっし そのポーズじゃ。 できるじゃないか半魚人。
ワシは先程来、ボデーに描く宅老所のロゴマークを厚生省のマークに紙一重で抵触しないよう多々考えておったから脳が疲れて喉も乾いたんじゃ。 早ようくだんの隠匿物を出せ」

「ひょえー でっかいどー で自転車旅情かやー。 待ってろよー 北海道ぉー。 
トドを爆竹のひと投げで倒すオラとヒグマをひと吠えで撃退するゴン太の勇者コンビがもうすぐ行くかんねー。 ロシアの赤ワシなどひと捻りじゃわー」

「お前さま 何しに行く気ななの?」

「ささ 飲んでけれ、施設長さま。 
ほーんで この山に老人が10人増えるっちゅうワケかあー。 村の老人のうち元気に歩けるひとのほぼ半分だなや」

「そうだ、その老人たちがこぞって塞爺いに投票したんだ。 
なにかスポーツをしなければと考えながら自分ひとりでは何をしたらいいのか分からなかったひとたちだ。
老人トライアスロンチームを作ろう、監督はコーチのおぬしだ。 しっかり働けよー 半魚人、まずは飲もう」


というわけで今日も旅情カーの制作はとんと進まないまま日が暮れるおしぐれ山でございます。
写真はおしぐれ託老所の見込み受注の前祝にAmazonで新規買い入れしたおしぐれ住職のサイクルシューズ。 
期末に使途不明金として追及されることになるのは必至だが、まだ先のこと先のこと。 

左 : 欲しかったパールイズミのワイヤー式シューズ。
   中央の丸いダイヤルがワイヤー (といっても釣り糸のようなボロン製のシュー ・ 米BOA社の特許) を巻き取るしかけ。 
   任意の位置で止められ血行不良でむくんだ足を締め付け過ぎない。 走行中にも加減が効くので足に障害のあるおしぐれさんに好適。

中 : 左右で PEARL iZUMi と読める秀悦なるバックスタイル。 文字は再帰反射性。
   追走者はこのマークを見たら足が萎えて追うのをやめるという。

右 : 底面の金属スパイクがクリートと呼ぶビンディング装置。 ペダルに嵌まってビンディングする。
   つま先のメッシュ穴は通気用エア穴。 F14トムキャットみたい。

   昨日試運転しながらクリート位置を微調整したばかりで底がピカピカしている。 ただし歩くのは大変、トイレの濡れたタイル床でほとんどの人が転倒を経験している。
   一時停止で歩道の縁石に突いた左足が滑ると ・・・ フランスではルイ16世の股裂きの刑と呼ばれている。 想像したくない。

   これまではシマノのマウンテンバイク用シューズだったからクリートの周りにゴツゴツしたゴムがあった。
   このあとしばらく投稿が止まったなら ・・・ きっと お股がマリー・アントワネットに ああ想像したくない。

でほらく庵 しぐれ異聞 5幕 「車載装置について考える」 第1景
2015/07/24

「和尚、町のライダーどもの間で流行っている いん行 ってなに? オラだぢも参加できるっぺーか」

「おぬし何処でそーゆー享楽的 刹那的、かつ魅力的なネタを仕込んでくるのだ。
オラだぢと言ったな。 ワシのことではあるまいと確信はしておるが、他に誰だ?」

「オメさんだがや。 行きたくねーのけ」

「あのね、拙僧の立場というものを考えろ。 ワシも連れて行けなどと正面から答えられようか。 ばかたれ。
そーゆーときはな。 行く先 目的を言わず、ワシに目隠しをして手を引いて行くものじゃよ。 
乞われれば何処にでも行って説法するのは仏僧の勤めじゃからなあ。 はっはっはー」

「 和尚ぉ〜、 オメさんもホントは参加してーだか? 直接的に言え。
そらー心強いなあ。 オラは未経験者だでなあ、よろしく頼むでや、いん行のベテラン」
 
「これ、大きい声で言うな。 ご本尊さまに聞こえるではないか。
会場は何処だ? 塞爺いのところか」

「いやー もうちっと遠くだんべえ。 電車で行くだもの」

「電車? ほー 都会か?
どーも怪しいな。 都会碕玉には陰謀の匂いがする。 
こっちは村役の選挙だがアッチは知事選じゃ。 銭形のヤツが目を光らせておろう。 ワシは行かんことにする、おぬしも止めておけ」

「なんでよー? 乗り気だったじゃないか」

「お前さん毎晩のように塞爺の選挙事務所で酒食のもてなしを受けておるというではないか。 
県外なら足はつかんと碕玉のほうまで出掛けて行ってお色気接待を受けようというのだな。 この果報者め、いやいや軟弱者め」

「 ・・・ ?」

「お前さん、酒食のほかに色も食ろうたら公職選挙法に3倍も抵触してしまうぞ。 
半漁人とはいえ意図的 組織的だから逮捕は時間の問題だな、公選法の3倍罰はよくて死刑だ」

「悪ければ?」

「野ざらし じゃ」

「なんでよー? いん行するだけじゃないかあー」

「それがいかん!
いいか。 逮捕拘留されれば飯くらいは食わせてもらえるからお前さんはそれでもよかろう。
お前さんが紅ショウガを省略した並み盛りのカツ丼に目がくらんで、接待の実情をべらべらしゃべれば公選法違反の嫌疑は容疑に固まる。
候補者本人の塞爺いは連座より罪の重い主犯として投票終了と同時に検挙され、当選は無効となる」

「げげげ!」

「それでは何のための選挙だったのか意味がなくなろう、塞爺いもそれくらいは解かっていると思ったがなあ」

「 ・・・ 」

「しかも選挙事務所でいん行とは前代未聞の破廉恥事件だ。 次の選挙にも出られんわなあ」

「違うよ和尚、いん行の話しは出入りする支援の若い衆が昼飯のときに仲間内で話しているのを聞いただけだ。
そんで和尚にいん行ってなんだ? って聞いたんでねーが」

「このやろ、公選法違反をとぼけるつもりか?」

「何のハナシだね。 オラは選挙事務所の臨時職員だからその日の解散時に夜食を支給されている。 
寝る前に塞爺いと飲む酒は近所の自販機から塞爺いがポケットマネーを出して買ったものだ。 この時点でオラと塞爺いとは友人関係だ。
これは選挙運動とは一線を画した完璧にプライベートな飲食だから法や官憲の介入する処ではない。

公職選挙とは確かにデリケートなものだ。 
そのなかでわれわれは公正に戦って堂々と勝利する。 後世に1点たりとも汚点を残すことがあってはならない。
たとえ出先の者が犯した間違いであっても当主が腹を切れ。
これが明治以来脈々と受け継がれた塞家の選挙訓である」

「ほう ほう お前さま、マニュアル通りの返答だなあ。 で、何の職員なワケ?」

「事務所の宿直係りだ、みんなが帰ったら鍵掛けて朝までは寝てもいい。 
選挙カーの中の候補者が乗る馬に悪さする対立候補の破壊工作員がこっそりやって来て、厩舎の前で月夜茸の混じった人参をポケットから出して馬に見せたなら動かぬ証拠。 
間髪を入れずに犬のゴン太が自動撮影カメラの照明スイッチひもをくわえて引く。
 
オラは急いで起きてパンツを穿いたら雀追いの爆竹を四方八方に投げ付ける、パンツを穿かないと火傷するでなあ。 逃げる工作員をゴン太が追撃して撃退する。
そーゆー係りだ。 オラとゴン太とセットで時給千円だ」

「ほう、すると臨時の宿直員はゴン太。 
おぬしは爆竹を闇雲に投げるだけの投てきマシーンという訳か、酒飲んで裸で寝ていてもいいワケじゃなあ。 せめてパンツは穿いていろ」

「だんべえー、 だから選挙法違反の恐れも可能性もない。 
なぜなれば、オラとゴン太は厩舎の宿直員でもあるワケだから当然そこに居合わせたことになる。 選挙事務所は厩舎の一部を期間中だけ借りているだけだからよ。
オラとゴン太に課せられているのは馬と建物施設を身を挺して警護する重要なミッションなのである」

「ほう ほう ほう、よく訓練された宿直員である」

「だんべえー。 1票の重みってーやつよ。 オラは選挙権あるかんなあ。 オメさまと違ってよーお。
気がかりは夜中に人に向けて爆竹を鳴らす火薬取締法違反だけだそうだが、オラが投げる爆竹は人に向かってではねえだよ。
厩舎に備蓄のかいば飼料を狙って山の猪が出たんで、雀追いを鳴らして追い払ったと言い張ればお咎めなしだと塞爺いが保証している。 さすがは塞翁が馬だなや」

「おぬし、どーゆー意味で言っているの?」

「ん、塞翁が馬かい? 塞爺いの馬は馬場馴れしてっからファンファーレだの雀追いの爆竹くれーではビックリしねーって意味だんべー。 
それより いん行 って何だ?」

「あのね、それは地球で人間だけがまだ未熟だという証拠なんだが、欲望渦巻く人間界特有の煩悩なワケよ。 
お前さまたち半魚族はとうに高潔の高みに到達されていらっしゃるから、そーゆースケベ煩悩はないの。 徳川埋蔵金探しに専念しなさい」

「スケベなハナシなのけ? なんでも自転車を電車にinする袋がどうとかこうとか言っていたが、スケベな袋って玉ブクロのことだったのかあ。 
そうかあー。 オラは半魚だから玉は1個しかねえなあ。 爆竹で火傷しねーでよかっただよー」

「なに? 自転車をinする袋? そりゃー お前さま、輪行でないの」

「りん行 ・・・ け?」

「輪行袋という布ケースに自転車を入れてな、車輪やペダルなどを完全にカバーすれば肩にさげて電車内に持ち込みinしてもよいJRのシステムじゃ。
ただし混雑の時間帯は避けねばならん。 一般客に配慮して車両の一番前か後ろの端の座席を取ることもエチケットじゃ。
それとな、あの股間もっこりの自転車パンツは公序良俗という点で電車内では問題があろうから薄手のオーバーパンツを着用して行け」

「もっこり 公序良俗 いん行ではないワケね?」

「輪行を利用して知らない土地を自転車で走るのはいいもんじゃなあ。 
旅情じゃ。 おぬしの好きなキャサリーン・ヘップバーンじゃ」

「それだあ 和尚、ヘップバーンの旅情だ。 早く言え。 
オラはよ、選挙が終わって給金もらったればゴン太を連れて北陸新幹線で輪行ってのに行ってよ、輪行島あたりを走ってみてえだよ。
塩田のしぶきを浴びたってよ、オラの自転車はカーボンだで錆びねーだんべ。 ゴン太にはノドグロの干物を食わせてやりてえ。
犬に塩気はいけねえから目の前で塩なし干物を作ってもらうだ。 輪行島でよ」

「輪行島? ノドグロの干物? ははぁーん 石川の輪島のことか。 
おぬし憶えておるか、昔ふうてんの寅さんと茶色い犬が沖の方を向いたまま黙って突堤に座っているいい写真があった。 あれは間違いなく日本海であろう。 
ふたりの後ろ姿と脇に置いた古びた皮かばんだけ、旅情だなあ。 泣かせる風情だったがあれは鞄屋のコマーシャルだったかも知れん」

「輪島ぁー りん行ぉー かぁばんー 旅情ぉー いい日ー 旅立ちー 百恵ちゃーん」

「旅情は良いがの半魚の鬼どの、はたして実現はどうかのう。 
しっかりパックすれば自転車は問題なかろう、水かきをグローブで隠せばおぬしもOKじゃ。 じゃがゴン太がなあ。 旅客の手回り品の一部と認めてもらえるかどうか。
それにおぬしだって酒に酔って油断の寝姿は半魚半鬼の魔人ぶりじゃでなあ。 目が覚めたら鉄道警察隊が捕鯨銃を構えてまわりを取り囲んでいたりなあ」

「なにいうだあ、犬は電車にだってレストランにだって入れっぺ。 
ゴン太は賢い犬だあ、知らない人には目を合わせずに間合いを取ってじっとしていることが出来る。 仕事以外には吠えたりしない。 水洗トイレの使い方も知っている。 オラも知ってるよ。
他人に迷惑は掛けねえ」

「電車やタクシーに乗れるのはペットの小さい犬だ。 目安として耳が垂れていることだ。
ゴン太はデカ過ぎる、出会ったひとに畏怖を感じさせてはペットの枠をはみ出てしまう。 あれはシンガポールのマーライオンの子ではないのか?
レストランや遊園地にそのまま入れるのは盲導犬や介助犬として登録され、そのむねのスタッフ胴衣を着用した見た目のやさしい犬だけだ」

「塞爺いは馬に乗って県庁にだって行くが誰もなんにも言わねーぞ。 それどころか街道の商店の親爺が代わり番こに出て来て交通整理までしている、動物差別だんべ」

「ひとの乗った乗馬と馬の曳く馬車は車両なんだ。 それに塞爺いはかつてこの地を治めた藩侯の曾孫だから今でも街道筋で人気がある。
明治新政府が定めた太政官布告により訓練された馬だけは別格とされた。 陛下の召馬は平安時代からの公式御乗り物だからだ。 牛車もそれに倣ってクルマということになっている。 
よって平民でも車道の左端を信号に従って進んでよい。 ただし乗馬が条件、曳いて歩く場合は右側を行く。

それから100年以上経っているが、近年は馬車も牛車も極めて少なくなったから布告の見直しは検討されていない。 馬が車両なのは今も法律だ」

「法律かあ。 塞翁が馬ってゆうコトワザはそーゆー意味だったのかあ。
んじゃーよ、ゴン太のタテガミを競馬の馬風に編んでポックリ下駄履かせてリヤカー引かせればよ、オート三輪の70ナンバープレートを貰えるっちゅーワケやな」

「お前さま、とっとと選挙事務所へ帰れ」

数日後、懲りない鬼が中古の車を運転してやってきた。 ナンバープレートが付いているのでおしぐれ住職は安心した。
この鬼、ときとして変な乗り物で公道を行動してくるから目が離せないのだが、今回はまともなバン型車である。

「和尚、電車がダメならコレで行くでよ。 自転車が積めるようにしてくれ」

「どうしたのこの車?」

「選挙が終わったでよ、役目を終えた選挙カーをもらったんだ。 馬をもらうよりはこっちのほうがいいべ。 ガソリンで動くでなあ。
うまい具合に屋根の上に演説ステージが乗っかっている。 あそこに自転車を積めるようにしてくれ」

「してくれって、あんた。 車載用具は準備したの?」

「ない。 和尚なら何とかしてくれるっぺーよ、屋根に自転車を積んでゴン太とオラが車内で寝られるようにしてくれ。
オメさん、得意だっぺよこーゆーの。 お経よりよっぽどなあ。
旅情に行くんだ。 塩田ロードとノドグロの干物だ。 待ってろよー 輪行島ぁー」

「あのな、鬼どの。 折角の屋根上ステージだがのう、そこに自転車を載せて低いガードをくぐり切れずに落としているチームサポートカーを何度も見ている。
おぬしは都会に行くことはなかろうが立体駐車場にも入れん。 それに、旅の伴侶ともいうべき自転車機材を雨に濡らすのは忍びなかろう。
盗難防止の意味合いからも自転車は車内に入れるのがベストなんじゃ」 

「うん、でもオラとゴン太の居住スペースは確保できるのけ?」

「そこじゃ、下の写真を見ろ。 室内幅の3分の1だけ自転車に当て、残り3分の2があれば夜露をしのぐには十分。
室内はゴン太に譲ってお前さまは屋根に上がって星を見ながら酒を飲み、そのままゴロンと板の間に裸で寝るというのが一番ええ旅情やないのけ?」

「OK それでこそ旅情だがや。 オラは工作苦手というか水かきの手だからオメさま作ってけろ」

「おしっ、作ってやるから材料費を出せ。 最初に5万、即金だ。 完成引き渡し時に10万」

「オメさん、僧侶のくせにひとの弱みにつけこんで金を取るのけ? 友情ではないの」

「ないのよ。 お前さま選挙事務所のアルバイトでしっかり稼いだじゃないか。 ゴン太の働きだがなあ」


というようなやり取りの末、中古の選挙カーを改造して鬼さんの旅情カーを造ることになりました。
やり取りが長かったので第1景はここまでです。 
塞爺いが当選したかどうかは全然問題にならないワケで、どうしてこんなに長びいたのかわかりません。 つづきは第2景のこころだあ。 

おわり。


写真
左 : 参考に見せた室内積載カーの様子、室内には十分な空間が残ります。
   車両は2人乗りに変更申請必要。 商用車ベースなら不要。 
   自転車重量はサドル前部を引っかけた天井のパイプが担保し、揺れを抑える前後の装置を加えた3点支持。 これは自転車サイズが変わっても左右前後に固定位置を変えられます。
   ゆっくりやっても積載2分、荷下ろし1分半。 その後、前輪を取り付けエアを充填して準備体操をしたら即出発可能。 後輪を外さない当方式のメリットです。
   後輪の右奥に写っているのが前輪、いずれもクイックリリース採用にて工具不要で着脱。

   車両運転中にときおりミラーで揺れ傾きをチェックしていますが、動き出したり異音がしたりということが驚異的に皆無。 
   天井パイプに付けた印は500Kmの移動にも変化なしでした。 おしぐれ工房、最高傑作のひとつに数えられる車載装置。

中 : 自転車を積んでいないときの室内。
   なにやら小物入れが見えますが日焼け止めやらお数珠やらが入っています、底部をマジックテープで固定。 
   前方のシートとの境目に衣裳ケースの木箱と簡易冷蔵庫の上面が見える。 床面と面一なので全長1950mm全巾800mmの自吸式エアマットが敷けます。 
   窓に吸着式ブラインドが全面取り付けられ、サービスエリアの眩しい照明下でも安眠。
   鬼さんに提示した15万円はそれら室内機材を含む価格であり、おしぐれ工房には酒代ほどしか残らないのでございますよ。

右 : リヤタイヤ部を固定する器具。 おしぐれ工房オリジナルなので名前はないが涙ものの逸品。
   中央の凹をタイヤに押し当てて固定すると、ブラブラしていた自転車がピタリと動かなくなる。 
   自転車の自重を利用して固定する理論は目からウロコ。 出せば日本発明協会の名誉会長賞間違いなし。

   写真では薄汚れたイメージに写っているが廃品を利用して思考しては試行、思索しては試作を重ねて完成させた証し。 鬼さん車には新たに作るから美品が取り付けられる予定。
   これは1万円いや5千円欲しいなあ。
   断言します、どこのショップにもこのアイデアの車載装置はありません。 一品ものの受注工事にのみ対応。 商社による商品化の問い合わせには応じかねます。

幕間休演のあいだ黒子がご案内しております。
2015/07/20

皆さまにご来場いただいております 「潤沢ヘルスセンター劇場」 でございます。
只今の時間、舞台は暫時の休憩をいただいております。
 
開演時刻まで木戸の出入りは何度でも自由でございますが、この近隣に蕎麦屋 喫茶店 ブティックなどはございません。
飲食のご用命はヘルスセンター厨房よりお運びいたしますのでご用命くださりませ。

また、当会館内の温泉施設 「だんかい湯」 に入浴されますと、運がよければ湯上りに 「下野名物 レモン牛乳」 を腰に手を当てて飲める特典がございます。 
1日10本限定入荷の売り切れ御免でございますので入湯前に番台に予約をしておくとよろしいかと存じます。 

脱衣場裏の番台に座っておりますのは裏磐梯から来た出稼ぎ山姥、アダチ婆ぁでございます。 
山姥とはいえ元は女でございますから若い女性客のど派手な下着は嫉妬の元、籠の下側にしっかり押し込んでくださりませ。

申し遅れました。 わたくしセンター劇場の店長黒子でございます。 開演までの寸時をいただきまして皆さまにご案内をさせていただいております。
黒子でございますから名前はありません、お料理 お酒などご用の際には 「黒子ぉーっ」 とお声をかけてくださりませ。

さて出演中のでほらく二人組でございます、出番までの時間を利用してこの先の峠へリフレッシュライドに行きました。 元気ですねえ。
元気ならリフレッシュなどいらないじゃあーありませんか。 なのにお客様をほったらかして出かけて行ったのです。 それも まぁー あの山姥コーナーを攻めてくるなどと一丁前なことを言って。

前幕にて相方の鬼村半魚が落車したという例の魔のコーナーを検証しに行ったに違いありません。
あれはバーテープが弛んで不覚を取ったということでしたがそーじゃーありません。 あそこは必ず落ちるんです、あのふたりの技量ではねえ。
外足加重がうまく出来ないくせに進入速度が高すぎる。 ブレーキのタイミングが合っていないうえに思い切りが良くない。
 
ブレーキはね、だらだら掛けてはタイムロス。 シュパッと掛けてタイヤのラインを読み切る。 それを技量と言うんです。
落車しても背中で滑って行けば崖の途中のモミの木が抱きとめて呉れるなどととタカをくくっているところがあの二人にはあるのですよ。 そーゆーのを他仏頼願といいます。
そーゆー態度では技能の向上など望めません。

はっ? わたくしですか、はい 自転車競技の名門、作新学院自転車部で3年間補欠でありました。
アニメ 「弱虫ペダル」 のモデルはわたくしではありませんが、あの峠ではさんざん泣きました。 
でも正選手はもっと泣いて、泣きながら泪でチェーンを潤滑しいしい走っているのを見ています。

わたくしのようなへたれでも膝と肘に転びダコが今でも残っています。 だからお遊びライダーは許せないのです。 ないのですが仕事ですからふたりには帰って来てほしいのです。
この矛盾の模索を戦後レジュームからの脱却と言うのでしょうか。

それにしてもあのふたり、開演中のこの時期に危険な山に行ったりして、演芸のプロがそーゆーことをするかあー。 
もしもふたりとも帰って来なかったら、お客様に木戸賃を返さねばならんでしょうや。 お車代だって付けねばならん。 劇場の経営というものを何と心得ておるのか。
わたくしは黒子ですから出演者のプライベートな休み時間にまで関与したくはありませんよ。 
ありませんがあのふたりには滅私奉公 七生奉国という日本古来の美風が感じられない。 あるのは七転八倒だけです。

「そうだあ〜 黒子ぉー いいぞぉ〜 そのままお前がトリをとれー」

「黒子ちゃーん、おひねりを投げるから黒子頭巾を取ってお顔を見せてえ〜っ」

今小屋に掛っているでほらく二人組の出し物は、梅雨の時季に自転車ライドを自粛していたおしぐれ住職と濡れるの平っちゃらの半魚人、鬼村の掛け合いです。
おかげさまで4幕まで上演が進み、来場客数も尻上がりに増えてきた処でございます。

この瞬間はわたくしがあのふたりをコキおろすことでお客様のお怒りが暴動に発展しないように努力している裏で、スタッフが急ぎ又吉さんにオファーを続けております。
このままでほらくライダーが帰って来なくても、又吉さんならスーパーエンターテイメントですから木戸賃返せ騒ぎにはならないでしょう。 ギリシャだって取り付け騒ぎには至っていない。

「なに! ピースの又吉直樹が来るってかい? 
聞いたか皆の衆、芥川賞の又吉が出演するんだってよ。 てーしたもんじゃのう 場末のおしぐれ劇場」

あのー お客様、わたくしが又吉と申しましたのは芥川賞受賞の又吉直樹さんでねぐ、下の潤沢の住人で山女魚名人のカワウソ又吉さんのことでございます。 
越後は燕三条で鍛造された業物爪でさばく山女魚・岩魚のお造りは絶品。 必ずやお客様の舌を満足させてくれるでしょう。

「このやろーっ! ピース又吉が一躍脚光を浴びることになったのでカワウソの又吉を当ててきたな。 ペテン師黒子めーっ。
虎の威を借るペテンのテクはオメもでほらくライダーと同じ穴のムジナでねーがあー!」

いえ あの ムジナでねぐ、カワウソ ・・・ 。
あの お客さま、芥川賞の発表は安保法案衆院通過日と同じ7月16日でございました。 
しかるにカワウソ又吉のおしぐれ劇場デビューは過日の第2幕ですでに果たしており、さらに川魚お造りの技の話題を盛り込んだ第4幕のロードアップは7月13日でございます。

ですから又吉の話題は当然当方が先で、その人気に目をつけた芥川の選考委員が ・・・ むにゃむにゃ。

当劇場ではピース又吉氏の類い稀なる才能を以前より高く評価いたしておる処でございます。 出来ることなら舞台に呼びたいほどでございます。
ですがお客様、そのことでカワウソ又吉に又吉の名前を使ったということはございません。 カワウソ又吉は 「マタキチ」 でございます。

おお ちょうどでほらくライダーふたりが帰って参りました。 えがった えがった。
案の定ズタボロになっての生還ではございますが、舞台には上がれそうでございます。
なあーに、おしぐれ寺山門の名水蹲踞(つくばい)の水で顔を洗ってモミの木の葉っぱと額に吸い付いたヒルを落とし、破れたジャージを着替えれば大丈夫。

ほれ、衣裳さん お化粧さん いそいで 急いで。

そうそう、帰ってきたといえばお客様、遠地に流されていた 「北のやまから」 さんが帰ってきているのを知っていました?
昔は流刑といえば大宰府でした。 最近はもっと遠いフェニックス宮崎の延岡なんですね、何れにせよ防人の地です。
 
航空機の利用で1日で帰れる距離になってはいますが、延岡なら朝いちで出発しても本社に辿り着くのは午後5時の退社時刻をやや過ぎるころ。
その間にタイムカードを隠して門扉も閉めて帰宅してしまおう、 「ご苦労さん」 なんて言うものか。 
左遷の断を下したかつての上司がお礼参りから身を守る手段を行使するにギリギリの距離が延岡なんです。

次は沖の鳥島の駐在員を命じる辞令をもらったそうです。 船は月に1度だけなので独身寮で待機中です。
彼はいったい何をしでかしたんでしょうねえ。

さあ 間もなく5幕の開演でございます。 今しばらくお待ちくださいませ。

お客様、又吉直樹氏が 「火花」 で芥川賞に決定したこと、終演までおしぐれさんには内緒にしておきましょうねえ。 
あのひと自分も候補のひとりだと勝手に思い込んで知らせを待っているのです。 
この村に住所登録がないから郵便が遅れているだけだと、そう思っているのです。 不憫でなりません。


黒子のご案内おわり。 5幕は次回に。


写真
左 : コルナ号のフレームがカーボン仕様に変貌しました。 正しくはカーボン調仕様というべきですね。

   魔の山姥コーナーで落車したとき、モミの木に引っ掛かって止まったのですが車体にダメージを受けました。 (写真 中 に破れたコルナゴのメーカーロゴシール)
   峠山から帰ったときの 「落ち武者のような惨めな写真」 は公開できません。 
   そんな恥ずかしいことをしてご覧なさいましな、世界中のコルナゴファンから火炎瓶を自己融着テープで固定したボウガンの矢を射込まれて完全落城するでしょう。
   
   修理は破れたロゴのデカールを全部剥がし、フレーム全体を磨き直してロゴのあった部分にはカーボンシートを加工して貼り付けました。
   なにも貼らないことも検討しましたが、デカール位置は塗装面より0.2mmほどの段差で低くなっていることが分かったのです。
   つまり塗装面は0.2mmの厚みがあって、デカールを貼った状態で面一(つらいち)になる計算になっていました。

   純正ロゴのデカールはイタリアに発注してもいつ届くか判らない。 純正デカールはフレーム#と状況写真を送ってやっと1台分送ってもらえるほど管理がやかましい。
   ネットで見るコピー品は安いけれどそれを使ったら世界中のコルナゴファンから非難の嵐が ・・・ 。

   そこで自分で作ることにしました。 
   自動車のボンネットなどに貼る0.2mm厚の生成りのカーボンシートをAmazonで入手、純正デカールと同じサイズに切り出して接着しました。

   団塊屋トップページの店主独白にあるように、ボクらはかつてホンダN360とかトヨタレビンにテープのカセットステレオ世代ですからカーボンよりアルミのほうが馴染みがある。
   でも現代を生きる爺さまは進化してカーボンでしょう。
   内緒にしていますが実はボクらはカーボン大好き爺さまだったのです。
   でもでもでも、フレームだけはクロモリを譲れない。 この説明不能で理不尽な葛藤との闘いに敢えて挑むことこそ、いずれ迫りくる老いに立ち向かうエナジードリンク Red Bull の精神なのでございます。

   アメリカのドリンク剤 Red Bull がなぜあれほどデインジャラスでチャレンジングなスポーツシーンをスポンサードするのか?
   会ったことはないけれど社長さん自身がカーボン大好きなんじゃーないでしょうか。

   フェラーリレッドのフレームにカーボンの規則的な織り目がキラキラしている黒の胴抜きは、少し品位を落としたかなあと思うものではございますが出陣前の鎧武者を彷彿させると思いませんか?
   写真には前輪がありません。 曲がったので外したのではなく、スタンドなしではこうしないと自立しないからで、普段からこうしています。

   久しぶりの全体写真です。
   数年前のもの(バックナンバーの何処かには載っているはず)と比較するとハンドルの上下向きに 「つんのめり」 がなくなって、サドルが前上がりになってきています。
   さらに数年後には自走式車椅子の写真を掲載することになるのでしょうか。 Red Bull のステッカーを賑やかに貼ってねえ。
   
中 : 破れた純正デカールの一部、惜しいことをしました。 これを神棚に置くか仏壇に納めるか考え中。
   C の前のオリンピックカラーは5大陸チャンピオンを獲得したモデルにだけ許される。 このモデルがそうだが、ボクは剥がしたあと敢えて真っ黒なカーボンシート地のままとした。

左 : とはいうものの、小さな 「左」 マークを遊び心でココに1個だけ貼ってみました。
   左の字をつくる エ が ヒ になっていることに注目、PCでは出せない文字でした。 

   これは名人 左甚五郎の屋号のコピー、意味は 「ブレーキが左前配置ですよ、あなたはこの自転車を盗っても乗れませんよ」 と悪戯者に警告しているのです。
   上の方にエルネスト・コルナゴのサインが見える。 
   ブレーキ取り付けのブリッジに社章の三つ葉の刻印も。 カーボンシートの貼り付けでメーカーロゴが無くなりましたがこーゆーところがコルナゴなんですねえ。
   あまり関係ないけれどブレーキワイヤの曲がり具合がセクシーです。

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