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「俊水」の掲示板
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と金 八九郎
2016/12/18

「おしぐれさあ〜ん 宅急便ですぅー」

「ほー ぃ  いるよー。
いま開けるでよ、待ったれやー。 荷物はアマゾンかぁ〜?」
 
「こちらに と金さん ておられますの? 
アジアからの研修生ですか 東京からコレクト便です」

「ワシしかおらんが ・・・ 宛名は と金さん かね。 
なに? メッキ屋からか。 ああ ワシとこでええんじゃ」

「はい、 送料手数料込みこみ代引き 2,538円です」 

「メッキ屋め、ワシの名前を と金 と書くとはなあ。 冗談が過ぎるでや」

「へんな名前を宛先にしないでくださいよ、おしぐれさんだってそうとう変です。
配達区域の担当が変わるとき一応申し送りはあるんですが、先任者もおしぐれさんの意味と由来までは説明出来ないんです。
でもぼくは何度か配達するうちに分かったんですよ、な〜るほどおしぐれさんだなぁって」

「やかましい、配送ドライバーは寡黙を本領とするもんじゃ。
職務上見聞きした客先の個人都合を外部に漏らすことは、民間の配達員といえども世界配送機構 JP黒ねこ支部職務執行規則に違反する重大な背信行為であると心得よ」

「ははぁー おそれいりましたぁ〜」

「さてと、と金なんてハンコはないからサインでええか伝票よこせ。 と金とはな、鍍金と書くんじゃ。 ほれ代金じゃ、金を渡すと書いて鍍金。
さあ 渡したぞ」

「旦那ぁ〜、あっし相手に手間のかかるしゃれ言ってる間におしぐれ雲がかかってきますぜ。 
代金は実効性のある日本円の真券で払ってもらいやしょー」

「真券かぁ ナナコカードじゃだめけ?」

「コンビニ受け取りになっていればいいけど、今日の伝票ではダ〜メ。
あっしだってね旦那、師走繁忙貨物で積み切れない分をバンの足許にまで置いてブレーキのたんびに蹴飛ばし蹴飛ばし、決死の思いで走っているんですぜ。
真剣でがす」

「うまい! 黒ねこのしゃれを初めて聞いた。
ネコが箱のフタを閉めるコマーシャルもよかったが、オメさんのしゃれはライオンマスクをかぶった犬に赤ちゃんが抱きつくAmazon画像に次ぐ今年の大ヒットじゃ」

「ありがとうございます。
はあ〜 ここへ来ると癒されるなあ。 きょうも安全運転でがんばるぞー」

「うむ 青年よ、日本の輝かしき未来創出のためバンの荷物を配達しきるまでは昼飯にするんじゃないぞ。
それとな、駐停車禁止帯に停めるときにはな、

『おしぐれ庵さまへ赤穂藩より火急の密使です、ご町内の皆さま御免なすって』 

とバンのバックドアに書いておけ。
ブリッツエンの宇都宮でおしぐれさんと言えば弾劾免訴、12月は忠臣蔵じゃけんのう」

「へいーっ! そーしやす。
ブリッツエンとはおしぐれ雲からひり出される金色の稲びかり、お稲荷様のお使いのことですよね。 ここに来るまで知らなかったけど」


作家注 : ブリッツエン(独) 稲妻・雷光の意、強きものの象徴。  
      転じておしぐれ。 なに! 転じ過ぎとな? ・・ やかましい。
      ちなみに新興勢力 那須ブラーゼンは 疾風・はやて、那須岳おろしのからっ風も強烈です。


コレクト便で届いたのは小さなギヤだった。
東京下町の鍍金工場に金メッキを依頼していたものが戻って来たのだが、送り状は 「と金 八九郎 さま」 となっていた。

メールで加工の可否をやりとりするネームを 「18金のギヤを駆って破竹の勢いで坂を登る気合いのライダー 鍍金峠の八九郎 」 としていた。
メールネームがそのまま顧客名になったようだ。 せめて 峠 八九郎さま」 にならんかったものかいね。


<写真説明>

(なし) メッキ前のトップギヤ 重量18.8グラム  すみません 画像が見つかりませんでした。
(左)  加工後            19.2グラム  0.4グラムの差が金の重さと思われる。
(中)  取り付け状態   内側に金色の薄いプレートが写っているのが見えますね、ギヤ塊の左右位置決め用スペーサーリングです。 これもメッキしました。
(右)  おまけです    10月に志賀高原をカヤの平まで行ったときの写真。 背景の軽トラが邪魔ですねえ。 よそ者は 「どかせ」 なんて言えませんでした。 
                バイクはトレーラを曳いたカド号、巨大なリヤギヤに注目。 荷台の図面筒は釣竿ケース。 夜はNさんと温泉プラス酒飲み三昧。        

メッキ加工を位置決めリングと外側のトップギヤ1枚だけの施工にとどめ、成り金ライダー呼ばわりされる愚を避けてみました。いかがでしょうか。
加工賃と重量の増加を抑えた金のサンドイッチデザインでございます。

チェーンで金が削れることをご心配の読者さまへ。

シニアクラスのおしぐれさんには、平地でもトップまでギヤを上げてゆくほどの脚力が残されておりません。
よって長い長い降り坂以外は使わないのです。 
そんな坂はヘリコプターで上まで運んでくれるギアナ高地のエンゼルフォール観瀑ロードしかないでしょうよ。

これはテリトリーを越え那須街道まで行ってしまったとき、
不意に現れたからっ風ライダー、宇都宮で有名なおしぐれさんを知らないから不遜にもチャレンジを挑むのに対し金のトップで威嚇効果を狙った心理戦用なのであります。 効果 ・・ 不明。

断崖
2016/12/13

じいさん仲間の家に行ったら孫がいた。
お嫁さん了解のうえで借してもらった ”一日孫” を連れて、トイザラスへ行った。

お嫁さん破顔見送りのワケは、最初に寄ったコンビニを出た直後に明瞭した。
チョコアイスでクルマのシートがベタベタになったのはまあ許そう。 道中その手で窓ガラスをペタペタするのには閉口したがまあ許そう。

「どーして サンタクロースは赤い鼻をしたおじいさんなのか、ぼく知っているよ」

「ほぉー それはトナカイのおじいさんかい?」

「ちがうよ、じじいのほうだよ」

「ほぉー 謎めいてわくわくするのう。 ぜひ教えてほしいがその前にトイレで手を洗おうなあ」

「ぼく ひとりでできるよ」

「まて、 おしっこの前に手を洗うんだ」

「あのね、サンタ爺いはおばあさんよりあっとうてきにひまだからだよ。 あっとうてきってなに?」

「おしっこのときは前を向いてしろ、こっちに振るな。 フルのはフル出し終わってからだ。 それにしても圧倒的水量じゃのう」

「♪ タイガーマスクはふるふるパンツ、フレ フレー ひまのサンタさ〜ん ♪」

「おじいさんはひまそうに見えるかい?」

「うん、 ビールを飲むときだってゆっくりビンを傾けるのは時間が余っているからなんだって、
ばあちゃんはこくせいを傾けるほどの勢いでコップを差し出すよ。 じいちゃんをだんがいから突き落とすじたいに至らないうちに飲むんだって。 だんがいのじたいってなに?」

「おめさん、 現代社会の病巣を揺り起こすような質問をするねえ。 そりゃー 弾劾のことだがキミの家でもじわりとそーゆー事態に?
権力の一極集中を嫌う風潮が韓国から飛び火したか」

「ふーん かんこくのとくようってなに?」

「勧告のことだろう、特養入居のはなしもあるのかい。
キミのおじいさんはまだ介護度など付かないだろうが相続がらみか。 そーゆー話はライフ プランナーのNさんに相談することを強くお奨めしますぞ」

「Nさんならきのう来たよ」

「そーか。 あのひとは誰に得とかかれに不利とか情実に傾かないニュートラルな判断のできる経験豊富なお人じゃからのう」

「あのね、Nさんはばあちゃんの若い頃の彼氏だったんだってさ。
昔はスマートでカッコよかったんだって、嘘つきのような気もするけどねえ。
いろいろ事情はあったらしいけど、しじょうってなに?」

「私情か市場かわからんがニュートラルが揺らぐ事情だなあ。 至上的すみやかにお徳用クリスマスプレゼントを買って帰ろうか」

「うん ぼくね、じいちゃんに ”老いをひとりで生きるサバイバルキット‐北方の無人島仕様” を買ってあげたいんだ。
おじさんってさ、楽天のスーパープラチナムカードを持っているんでしょう」

「ワシか? セブンイレブンのナナコカードなら持っておるが、カムチャツカで使えるかは分からんぞ」

「あのね、いまならシンゾー ウラジーミル会談記念セール中だからOKかもって、ママが言ったよ」

「山口県内のロシアウイーク限定しゃぶしゃぶ用カモ肉の話じゃないのか?」


細月
2016/12/3

知らないひとが多くて少しふんがい。

今夜は師走の天文ショーなのですよ。
月と金星が大接近。

接近はすれど接合はなし、縦から見ると距離はそうとう離れているのだそうだ。

いいのだ、ワシもそうだが どーせ皆の衆もそーなのだ。

ふてたような細い月とほがらかの明星。
南西の空。

少し離れて赤い顔をした火星。

いいのだ、どーせその時分には赤い顔して 「ぷっふぁー」 とか不良っているから微細な接近状況など見てもわからん。

わかったとて、加勢もできん。

そんでも まあー ご同輩。
外は寒いが見るくらいのことは、都合つけてやるのが昔アストロ〜ンだったものの仁義というものではござらぬか。


見取り図作成中。
満月待ち。

おしぐれさんの じてんしゃ 大喜利 5 大団円
2016/09/23

「めいじ〜ん ミニクラス最強というのはホンマ? ちっとも跳ねませんなあ。 
自慢のアバルト直4ターボでしょうに、まだ100馬力に達しませんの〜。 わたくしは腕も腰も乳酸値が峠の一本松です〜」

「なんじゃ それ?」

「はい 高い所にあります」

「ふん まだまだじゃ」

「硬くて薄っぺらい レカロ のシートにハダシで立ってですよ、小さなルーフからカラダをせり出しているだけでも尋常でない景色でございます」

「ほぉー おまん、そんなこと言いながら次のせりを考えておるな」

「あなたねー、先にそれを言うたらいけません。
幼児がまねをして屋根から顔を出したら危ないじゃないですかと言っているのです」

「おまんを見ていると確かにそのように思えるわ。
幼児でもな 用事があるときはええんじゃ」

「なにそれ。 保護責任者義務違反でっせー。
そのうえなによ、タケコプター代わりの鎖鎌を回せとはシャーペン回しより重たいモノを回したことのない元公方のわたくしには辛ろうござりまする〜。
鏑矢の分銅がかなでる風切音さえも びゅん びゅん の軽やかさを失い、やがては三辺の長さの公式に近づいてまいりましょーぞ」

「さんぺいの公式? 林家か」

「違うーぅ 三平師匠ではございませぬ。 ヘロンの公式ですうー。
角度不明の三角形であっても三辺長さが分かれば瞬時に面積を求められる有名な法則じゃないですか」

「それで?」

「ですから つまり 腕も腰も ヘロン ヘロンと … 」

「おぬし、この期に及んでなおも大喜利の精神を発揮しようとは精進である。
じゃが数学公式と聞いてやっと解かるまで数秒の間を要するというのは如何なものであろうか。

それにな、演者のおぬしが元公方を標榜するからには然るべく格調を備えた場面設定とすべきであった。
さらに惜しむらくは語呂の響きが極めて へたれ であったこと、などなど」

「めいじ〜ん もしかして あーた、ヘロンの公式をご存じなかった。 とかぁ〜あ?」

「オッホン よいか、大喜利とは仏教経典に源を発するピンの対語のキリじゃ。 すなわち涅槃のことじゃ。
”質素にして気高く恵むごと清らに笑む” お釈迦様の生涯に想いを致すことが根本であることを忘れてはならん。 
よって座布団2枚のマイナスと判定させてもらおう」

「2枚もですか〜」
 
「なぜ2枚かというと、当欄読者の多くを占める前期高齢者層の支持を得にくい事実が大きく影響しておる」

「なんで〜?」 

「この人たちが幼少期に使った日本の算数読本はGHQの指示によりヘロンの定理およびその証明に関する部分を墨塗りされていた経緯があってな、
三角形の面積といえば 1/2×エル エイチ しか知らんお人が多いんじゃ。

元CIA職員エドワード・スノーデンが暴露した膨大な機密文書を精査するにつれ、残されていないとされていた極東占領とその後の統治政策に関する注目すべき部分が出てきた。
ええか、ここから先はウィキペディアさえも収録を遠慮するほどの機密じゃぞ」

「ぎょえー?」

「それによれば、古代ピラミッド設計にも通じる太陽神のもたらした三角形の神秘的な可変投影面積の絶対優位性を証明する当該計算式を駆使し、占領下にありながらもデルタ翼を有するゼロ戦後継機の設計図面を秘かに書き起こす若者が現われることを恐れたからだという」

「だれが?」

「ダグラス・マッカーサーじゃよ」

「だれ?」

「マックの作ったDC‐1を知らんのか、ダグラス エアクラフト社の傑作じゃ。 
ダコタのターボエンジンを搭載した軍用転用機は乗員7名の他にファットボーイと呼ばれた巨大な爆弾を1個積んでも上昇加速度では護衛機のムスタングより速かった。

だがもしも、セブ島基地を飛び立った主機と護衛機が とびしま諸島 上空を越え雲を透かして本土 呉市 の方向を窺ったとき、
入道雲の下から行く手をさえぎってフワリと浮かび上がった機影の三角翼に鮮やかに印された日の丸を認めた主機のキャプテンは、前に出るために重い補助タンクを捨てた僚機ムスタングの勇士を称えつつも諌め、迷わず一団の帰投を判断しただろう。

彼が失いたくなかったのはムスタング1機ばかりではない。
松根油燃料に さつま芋発酵アルコール と ひまし油 をプラスした代用ガソリンのレシプロながら、1/2マッハに迫る速度を保ったまま小半径での旋回も可能にした左右可変三角翼の ゼロ戦ステルス2 を産み出した奇跡の街、眼下の呉の町工場に向けてこの馬鹿げた爆弾など投げたくはなかったのだ」

「すごいハナシですねえ。 エアロ マンの仁義こそエア ロマンでございます。
下町ロケットの原作構想や かくして生まれたり。 ウィキペディアに投稿してやりましょうぞ。

それにしても名人、本編は じてんしゃ 大喜利 でございましょう、なのにアバルトなフィアットとかムスタングのハナシなのはどうして?
今日だって、もしもフェラーリに乗って来ていたなら違う展開になっていたかもよ」

「知らぬ、おしぐれ作家の気の迷いであろう。
近日発売予定と聞く氏の仮説新書 『でほらくのデデニオン』 が正しければ、この100年の世界史は少し違っていたのかも知れん」

「知らすかぁーっ!」

「ともかく、おぬしの今期の真打昇進は見送られる公算が高いなあ」

「めいじ〜ん なんとかなりませんの〜」

「わが工房で夏の初めにセットアップした 二輪のけん引トレーラー を憶えておろう。
オーナーは珍車好き、変なもの大好きな酔狂のご仁でな、なんと下野落語会の末席理事を務めておられる。 ねじれ小噺 はことのほか好みだそうだ。
一升瓶さげて昇進推挙を頼みに行くのは簡単じゃが、その前にワシらは目前の窮なる状況から脱して生還を期さねばならん。 そーじゃろ」

「はい〜 さようでございましたなあー」

「そこで、おぬしにはご苦労じゃがぜひもう一度やって欲しいことがある」

「なんでございましょう。
生きて帰ってそのうえ真打昇進となればなんでもいたしまするぞ」

「おまん、生還だけではあき足らず、勲章も欲しいってか」

「いけませんの?」

「えらい!
偉いぞー、えらいが今のワシらには脱出までのタイムリミットが迫っておる、その話はあとでもいいかな。
あのランボーでさえ そうするであろう」

「はいー もちろんでござりまするとも。 ランボーごとき紅毛偉人に遅れてなるまいか、拙者 大和もののふ でござるぞ」

「うむ、頼もしいのう。
じつはな、ワシらの機に深刻な問題が起こりつつある」

「びえ〜 ダース・ベイダーの三角翼機が急浮上して背後からロックオンしてきましたか! やつめ いつの間に」

「そうではない、GPSはなにもアラートしとらんじゃろ。 ワシらはまだ地上におるんじゃぞ、注視すべきは白バイ除けレーダーじゃ。 落ち着け」

「落ち着けって あんた。 この機のセキュリティーはダース・ベイダーと白バイが同軸上にあるんですかい」

「深刻な問題とはターボじゃ、アバルトなターボのブースト圧が上昇しないんじゃよ。 エンジン回転がなぜか頭打ちになって吹け抜けて行かん。
どうもな、排気系になにか起こっているらしい。 ケツに閉塞感がある、つまり ふんづまりじゃ」

「それはいけません。 おしぐれ峠の一本松までひと跳ねで飛んで行くには小腸 大腸が軽やかでなければならんのでしょう」

「うむ、鎖鎌のタケコプターはエネルギーの浪費となるうえ廻し手のストレスを貯めるばかりだから一時停止といたそう」

「さようでございますか、わたくしは細腕折れようとも回し続ける覚悟でございました」

「ウソを申せ、先ほどまでヘロンの法則だったじゃないか。 まあよかろう、コプター 停ぃ止ぃーっ!」

「ああよかった。 
コプター回しには疲れを知らぬクマ型ロボットのような持久力が必要です。
あいつなら、回転檻の中を何時間でもクルクル回って平気ですからなあ。

呼びましょうよ ごろえもん。 早くココを脱出しないと敵方の加勢がどんどん集結してまいりますう〜。 次は蓮舫連でしょうか」

「うむ、そーじゃな。 しかしおまん、ごろえもんの呼び出し用プロダクトキーを知るまい?
ワシもな、藤子 F 不二雄先生とはそこまでのつき合いがなかったでなあ。 こんなことになるなら ほうれん荘アパート 時代、F のつく前だった二階の藤子に一杯奢っておくんだった。
あのFはな、2FのFなんじゃよ」

「名人! でほらく 言っているヒマはないでしょうよ。 やって欲しいコトってなんですの、はやく言ってよ」

「それじゃよ、腕のしびれがとれたらな、ルーフ伝いに後ろに回ってマフラーのケツのところまで行ってくれ。
ワシが吹かすから排気の匂いと色を見てもらいたい。

プレミアムハイオクの香しき芳香が回転の上昇と共に懐かしいホーン岬の潮の香りに変わるはずじゃ。
吹き戻しには マダガスカル大トカゲ の紅い舌のような炎が ちょろり と見えるくらいが絶好調なんじゃ。 行ってくれるか」

「へい よーがすとも。 速度ゼロの安定重力の下ならドーム屋根だろうが聖火台だろうが いばらの道も這いずって参りやしょう。
ですが 大将、あっしの首根っこにある いまいましい 風呂敷荷物が喉にくい込んでおりやしてね、ランボーのような俊敏の行動を阻害するんでがすよ。
なんとかなりやせんかねえ」

「オメさん、いなせな職人口調がよく似合うねえ。 ほんとに元公方さま & 大和もののふ なの?
風呂敷をまだ背負っていたのか、律義ものというよりバカ正直じゃろ。 
いやいや誉めておるのじゃよ剣士どの、結びを解いてシートバックのサブシートに降ろせ」

サブシート? そんなものあったんですかい。
これけ! 園児バスの補助シートより狭いね、横向きに膝を抱えて座るとはまっことスパルタン仕様でございますなあ。
こーゆーのを しよう がないと言います」

「おまん、時間稼ぎをしておるのか! 早うルーフから出て行かんかい。 幌を蹴破るなよ」

「あのー ドアから出てはいけませんの? 風呂敷荷物さえなければ出られますけど」

「ばかあ〜 真打推挙は見送りじゃー。 早くケツに行けーっ!」

「めいじ〜ん マフラーの出口付近には紅い炎の大トカゲも ちょろり舌 のカナヘビもおりませんぜ。
かわりにと言ってはなんでございますが、アバルトチューンのシンボルである赤サソリのエンブレムがニヤリと輝いておるばかりでございます。
他には〜 そーですなあ 白い大根だけですわ」

「なんじゃと〜! 白いなんと申した」

「白くて ぶっ太くて 立派な 採れたて新鮮 高原大根が ずっぽり と突き刺さっておりますう〜」

「どこにだあ〜」

「マフラーの出口にですわいね。
これ電気自動車に変身できる新しいアクセサリーですかいね?
排ガスなんてエミッションなモノは全然出て来まへんでー」

「採れたて新鮮、立派な大根 って おまん、JA たかはら の広報か! 後方に回れとは言ったが洒落の材料になれとは言っとらんわい。
新型アクセサリーはネジ止めなのか。 外せるか!」

「生の大根がネジで止まりますかいな。 葉っぱをこっち側にして ずっぽり でございますう〜。 引き抜けるかも知れませんなあ〜」

「取れ〜 外せ〜 葉っぱを掴んで引っこ抜けえー」


「お・ふ・た・り・さん なにを騒いで い・る・の ? 有名童話の 大きなかぶごっこ でもしているの か・し・ら」

「びえ〜っ おまえはコンビニの魔女姐さん。
そ その手に持っているのは何だ! 白くてふくよかなセクシー大根のしも半身じゃないか」

「そーよ あたしが高原畑で掘って抜いてきた採れたて新鮮 二股大根よ」

「豊満バストの上半分はどーした」

「ふふん マフラー ずっぽり よ」

「な なんでおまえが大根掘りを、それより何だって我らがフィアットのマフラーに二つ割りしたセクシー大根の ずっぽり なんだ?
欧州に残っている数すら極めて少なくなったフィアット600tは小排気量ゆえにマフラーは一本出しの慎ましさだ。
もしもフェラーリの大口径二本出しだったなら、その二股のナニも ずっぽり するつもりだったのかあーっ!」

「も ・ ち ・ ろ ・ ん  そーよ」

「なんと したたか魔女め、コンビニはおまえの魔女効果で千客万来の大繁盛と聞くぞ、色気だし汁のおでん材料を仕入れに来たのか。
畑で掘って抜いたならコレも抜けーっ!」

「剣士どの、大声を出してはいかんと言っておろうが。
おお これはこれは魔女どの。 仔細はのちほどお訊ねするとして、まずは緑の黒髪葉っぱを揺らす妖艶大根の ずっぽりプラグ を抜いてもらえまいか?
後続の大型バスに迷惑がかかる。 駐車スペースまで動かしたいんじゃよ」

「はいよっ、そーゆーふうにお願いするものよ 剣士さん。 ほらほら 葉っぱの根元を力いっぱい引いてちょうだい、あたしは出刃包丁で回りをホリホリするから。
せーのっ!」

『スッポン』 

「ほら 取れた。 大きなかぶ」


「じいちゃーん、 じいちゃんも剣士さんと温泉に来たの? ずいぶん賑やかな登場だったねえ。
お母さんもばあちゃんも剣士さんちのおばちゃんも呆れ果てて、あの二人は知らない人だということにしましょうって、先にお風呂に行っちゃったよ。
あとで大広間で一緒にビールしようってさ」

「名人、あなた独身だって言ったじゃないのよ、孫がいるなんてどーゆーこと」

「ああ これは姪の子の輪太郎じゃ、ワシは独身じゃから孫などおらんよ」

「じゃあ ばあちゃんっていうのは輪太郎クンのお母さんのおかあさんなの?」

「違うよ あのね、ばあちゃんはじいちゃんのかつての連れ合いなんだ。お母さんの叔母さんさ。
じいちゃんは流れ者の根無し草の風てん無頼男だから出自はよく分からない部分が多いんだけどね、結果としてお母さんの元叔父さんさ。 だから じいちゃん」

「おい輪太郎、いまのすごい説明文は誰の受け売りじゃ! お慶か それともかつての連れ合いか」

「あらあら 名人、子供は正直だから。 ねえぼっちゃん」

「お姉さん、ぼくは中学3年生だよ。 ぼっちゃんはやめてください、あなたのお噂はかねがね聞き及んでおります。 エリちゃんのお母さんでしょう。
おとこを惑わす魔女だそうですが、ぼくはエリちゃんも同じ血脈の小魔女とは思いたくない。
それはともかくとして、母もばあちゃんもぜひ一度お会いしたいと申しておりました。
よい機会ですから大広間で一緒にご歓談ください。 じいちゃんにガールフレンドが出来てとても喜ぶと思います」

「まあー 利発な中学生だこと、うちの高1娘 エリとはえらい違いだわ」

「そうでしょう 魔女の恵みさん。 ぼっちゃまはね、あの有名某私立高に自転車競技部の招請で入学内定の英才なんです。 東京五輪が楽しみですなあ」

「あら 剣士さん、まだいたの。 手に持った 葉つき大根 返してちょうだい、葉っぱつきは高いのよ。 
そういえばあなたの奥様はこちらのご一家とどういうおつき合いなの?」

「それが分からんのさ。 先ほどまでお方さまとうちの女房が知り合いだったなんてわたくしはついぞ知らなかった。
琉球ぬんちゃっく元女流チャンピオンのお方さまと、伊達流 なぎなた 免許皆伝のうちの二代目たらちねに接点があるとすれば、
ねんりんピックのコーチ依頼が県知事からあったことかなあ」

「うわあー 面白そう。 あとで大広間にお邪魔してみるわね。
借りた農産市場の大根売り場を閉めてから行くから先に行ってて。 あたしね、やっと取れたコンビニの休みに実家の兄の畑を手伝って、高原大根が採れすぎたからここで売っていたのよ。
働き者でしょう。 魔女ならこんなに働かないわよ。

市場で大根売ってたらうるさい排気音のばかグルマが びゅんびゅん だの 跳べー だの騒いでいるから一番太い大根でマフラーを塞いでやったというワケよ。 
まさか 大根ずっぽり のばかグルマが名人と剣士さんだったとはねえ。 じゃあ 大広間に大根刺身を届けるわね〜」


「剣士どの、ここで思うんじゃがな」

「なんでございましょう?」

「どーもなあ。 なんだか初期の状況判断の切迫さと現在の展開・展望には大きなかい離が生じておらぬか」

「へっ?」

「ヌンチャクお龍が攻めてくるから防衛体制を固めねばなりませぬ。 とかいって大仰な剣道防具を担いだおぬしが汗を拭き拭きおしぐれ峠を登って来たところから一連の騒動が始まったようにワシは記憶しとるんじゃがなあ。
前々回号のページをめくって検証してみようかのう」

「あいや〜 それはぁー ・・ おぼっちゃまが血相変えてわたくしの道場に駆け込んで来まして、じいちゃんの一大事だって。
ばあちゃんはぬんちゃっくの名手だからきっと成敗されてしまうって。
元連れ合いとはいえ、嫉妬おんなの一撃はカスクのヘルメットをも砕くって」

「輪太郎、そうなのか」

「だって〜 お母さんがね、こりゃー叔父さん やっつけられるよってお父さんに話してた。 
電話でね 懲らしめてやりましょうよって、ばあちゃんと話していたのも聞いていたからさあ。
女ふたりにかかったら、いつもじいちゃん遣り込められていたでしょう。 そんなことになって入学祝いの競技用コルナゴレーサーを買ってもらう計画がフイになったらこまるから ・・。
剣士さんなら力になってくれるに違いないと思ったのさ」

「ふえ〜 やれやれじゃのう。
ええか輪太郎、ばあちゃんはそんなことせんよ。

お龍のヌンチャクは私恨ごときで振るうタチのものではないのだ。
かつて先島王朝の存亡を懸けた一戦に鍛えられた秘技ではあるが、今でもかの地ではひとたび錦袋より抜かば国事行為。

お龍はな、さきしま邪馬台の正統を受け継ぐただ一人の女流錬士として生きるためワシと別れて琉球と行ったり来たりしながら伝統継承に奔走しておるんじゃ。
後継者を育て後を託したそののちは、またワシとクルーザーで喜望峰回りの航海に出ようってなあ。
一等航海免許の更新で視力検査が通るうちに実現したいもんじゃよ。 はっはっはー」

「ひえ〜 お方さまぁ〜 うっうっう。
お方さまが、さきしまの正統お龍さまとはつゆほども存じませんでした。 お許しくださりませー。
しかも錬士さまにあらせられましたとは。 わたくしはいまだ二つ目でございますぅ〜」
 
「剣士どの、なにを泣いておるのじゃ。
おぬしだって剣術なら貧民街の三等地に道場を構える師範であろうに、道場はボロじゃが立派なものじゃ。 鎖鎌はいっこうにヘタレじゃがなあ。

余技の落語の真打推挙はそのうち酔狂ご仁に頼んでみるから機嫌を直して大広間へ行こうではないか。
魔方陣の結界は不要のようじゃ。 古峰神社女人参拝講の大型バスは出て行ったし蓮舫連もダース・ベイダーももはや来ることはあるまい」


「あら 叔父さんたちお風呂はいいの? 大汗かいたから先にビールを飲みたいって?
汗かくほどに何を悪だくみしていたのかしら、ねえ 叔母さん」

「だまれ だまれ、生ビールのジョッキをこっちによこせ。剣士どのの分もだ。 
摘まみか? 高原大根の生刺身がええわい」

「高原大根の生刺し? なによそれ、下仁田コンニャクの間違いじゃないの。 大根刺しなんかメニューにないわよ」

「あるよ お母さん、ほらね 来たきた。 魔女っこメグちゃんと 魔女っ娘エリちゃんでえーす」

「お待たせしました。メグちゃんが掘ってエリちゃんが谷川で洗い、たき火で焼いて冷水で締めた高原大根 生刺しでーす。
味付けは塩でよし わさびでよし マヨネーズでもよし 粉チョコレートもしくは昆布茶乗せはさらによし」

「あら あなた、恵みさん? あたしです、女子高テニス部で後輩だった慶子ですぅ〜。 
うわ〜 先輩お久しぶり、でもなんでココで大根のウェートレスをしているの? あなたが魔女って、もしかしてコンビニのお姉さんなの? しかも可愛い子魔女まで連れて」

「そうよ、あたしよ。 コンビニが本業で大根セールは今日だけ。 魔女のワケないでしょ、ホーキに乗っていないもの」

「先輩い〜 あたしね、あの話を聞いてからコンビニのお店へ行ってみたのよ。 
叔父さんのロマンスってどーゆーお相手の方かしらって、そしたら幸運の魔女の店だってうわさを聞きつけたすけべな男衆で混んでいて、近づくことすら出来なかったのよ。
でも恵みさんだったとはびっくりだわ。 テニス大会以来ですね」

「憶えているわよー。あたしとダブルスを組んだ県大会のときのピンクのラケット。 クルム伊達公子スペシャル。
あのラケットから捻り出されるリターンエースの魔球は相手をきりきり舞いさせたわねえ。
決まるたびにピンクレディーの振りで UFO を踊ったものだから審判から10ペナ減点を貰ったわねえ。
イギリスから個人輸入で叔父様が取り寄せてくれたって、そりゃー大切にして誰にも触らせなかった。

その叔父様がこちらの名人さま。 テニス部のころからクルーザーに乗って外洋に遊ぶ富豪のご親戚って知っていたわ。
ロマンスなんてそんなことあるワケないでしょう。

JTのレシートプレキャンが偶然にも剣士さんに当選したとき、これはもしかしたらあたしの超能力、あたしがレジ操作したレシート番号は離れた場所の抽選機をシンクロさせる魔力だって、幸運のレシート魔女伝説をでっち上げたのよ。 すべては商売繁盛の た・め・よ 」

「びえーっ おのれは本物の魔女やー」

「なんだ 剣士どの、おぬし気づいていなかったのけ。 騙されたふりをしていたと思っていたがのう」

「またまたあ めいじ〜ん、 苦しい芝居をしておりません? なんだか目の奥がドリフトしておりますぞー」

「オッホン、さて 二代目お局どの、ご挨拶が遅くなり失礼いたした。 スペシャル自転車工房のおしぐれでござる。
そんな訳で、避暑地の恋というにはいささか秋風の立つ時節と相成りましたがの、
『高級リゾートホテル ペアご招待 志賀高原 癒し旅』 の当選証書は剣士どのご夫妻にお返ししよう。

そもそも剣士どのがワシの工房製 「手曲げアルミパイプ たらちね型ハンドルバー」 の代金を踏み倒した末、癒し旅の当選証書で物納したことからややこしいことへの派生が始まった。
証書には当選者本人とその同伴者のみ有効、第三者への譲渡不可と書いてある。
そこでじゃ、本日の飲み食い代金を剣士どのが受け持つということですべての債務関係をチャラとする案はどーじゃろのう」

「あなた! 名人先生はあなたの顔が立つようにご配慮くださったのよ。
誰かさんと癒し旅に行きたくて、せっせとJTのたばこを買ってはレシートでキャンペーンに応募していたことくらい知っていたわよ。
誰かさんというのはわたしのことだと思えばいいのよね。 ねえお龍さん」

「やっとウチにせりふの番が回って来たわねえ。 さあ言うわよ」

一同 ごくり。

「うまい!
ビールがじゃないわよ、 まだ飲んでいないんだもの。 みなさんの対応が うまい! って言ったのよ。
さあ さあ エリちゃんと輪太郎が集めてきた座布団を二枚重ねにして座って頂戴。 みんなで輪になって飲みましょう。 魔方円ね」

一同 うまい!
一同 ごくり。
ぷっふぁー うまい。

「お慶ちゃん、みなさん、まことに良い具合になって参りましたところで申し訳ありませんが、
あたしは下仁田の実家に行っている母を迎えに行かなければならないのでこれにて失礼いたします」

「なんだあ 恵み先輩、飲んでいけないのおー」

「そうなのよ、母の姉さん夫婦というのが長い間フランスに行っていたんだけれど、ご亭主が定年になったのを潮に群馬の荒船山に中古の別荘を買ってね、
半農半きのこ採りの暮らしをするんだって帰ってきたの。
下仁田からは目と鼻の先だから親戚中が集まって定年お祝いと帰国歓迎会をやっているのよ。 わたしも今夜はあっちに泊まるから向こうでしっかり飲むわよ。

エリ 行くわよ、あら輪太郎ちゃんと隅っこのほうでいちゃいちゃしてる。 さすがは名人の姪孫ねえ、手が早い。
置いていくから慶ちゃんのところに泊めてよ。 なんならずーっと置いてくれたら助かるわあ、あたしも本物の独身に戻れる」

「ちょっとー お母さん なによ。 わたしを捨てるつもり? 魔女の子捨てなんて聞いたことがないわよ。
輪太郎ちゃんまたね、高校で待っているわ」

「メグどの、つかぬことを尋ねるがそのフランス帰りというご仁、もしや銭形というお方では?」

「あら なにかでご存知でした? 銭形茂平といいます」

「げっ! も もしやお母方のご実家は荒船姓か?」

「はい 母のおじいさんは昭和の国定忠治こと荒船清十郎とか言ってましたけどなんだか分かりません」

「びえ〜 めいじ〜ん ターボです、甦ったアバルトなターボを吹かして逃げましょう。
あのまむしさんのことだ、いつになるかはわからないけどエリちゃんと輪太郎ぼっちゃまの結婚式にきっと現われますぞ。

『おれのワルサーPPKは定年後も終生特認特許だ。 抜く手は見せぬぞ、見たいのか。 ほれ 3Dのメガネだ。 両眼セットで50ユーロだ』 
とか言うに決まってますう〜」

「心配するでない 剣士どの。 ワルサーの銃口に高原大根の岩塩一夜漬け角切り ずっぽり 作戦でへなちょこ不発となろうよ」

「めいじ〜ん、岩塩の塩気でガンもしおれる角切り大根 っちゅー落ちは、本編の幕引きに大変よーがすがね、 ずっぽり する係りは一体誰を想定してますの?
クマ型ロボットの ごろえもん でやんしょーね」

「うむ、極めて重要な役どころであるから深慮黙考のすえ、断腸の思いで決めた。  聞きたいか」

「聞きとうない。 聞きとうないけど、聞かな終わらんのがおしぐれ作家の悪いクセですう〜」

「ワシもそう思う、あの作家は三次元のX Y Zに 『そのさき』 のα仮説軸を書き加えて四次元に作り換えてしまうほどの非日常の天才じゃ。
とてもワシらの敵う相手ではない。 じゃからこれでいいのだ。

而して おぬしをおいてこの大事を他に頼めようか。
名手の誉れも高き剣士どの、わが同志よ。 我ら盟胞の契りにかけて他に頼める者はおらん。

もしも、万が一にも もしものときは、おぬしひとりを死なせはせぬぞ。 
ワシもな、寿命のかぎり でほらくのかぎりを尽くして放蕩したそののちに、必ずや きっと たぶん 後につづくであろう」
 
「うっうっうっ めいじ〜ん。 かかる大役、是非ともわたくしにご下命くだされましー」

「うむ、さすがは大和剣士。 もののふの覚悟である。 しからば以下に手順を示さん。
おぬし手練れの鏑の鎖鎌弾頭な、あれに搭載可能最大規模の塩大根を仕込むんじゃ。
そもそも かぶら とは 蕪 すなわち丸型の京大根のことじゃから違和感なし。
そしてな、ワルサー射程確度が急速に下がる15m距離の1/3まで接近したら、ターボを効かせて びゅん と飛ばすんじゃ。 幸運を祈るぞ」


おわり


「めいじ〜ん 読者でも容易に予想可能な終わり方でないですか〜。 大喜利的には面白くないんでないけ?
それに何ですか! 15mの1/3の距離まで近づいたなら、めっちゃ命中率の上がる危険ゾーンいうことやないかい!」

「やっぱり わかっちゃう? じゃあ 新しいシリーズを書いてもらって、違う方法でもういっぺん死んでもらおうか」

「じいちゃん、オータムジャンボ宝くじに当たって美人おんな詐欺師にまとわりつかれる話しがよいと思います。
剣士さんのキャラクターにぴったりです」

「ぼっちゃま〜 なんですの それ〜。
そーゆーとこ、デデニオンのじいさまによー似てまんなあ〜」
 
「魔女っ娘エリちゃんがアルバイトしているコンビニのスーパーマルチ機で買えるよ。
ぼくが代行で買いにいってもいいけど、当ったら賞金がすってんてんになる前にコルナゴ買ってね」

「輪太郎、エリちゃんに会いに行くのは構わんが、選手になったらおんなには気をつけるんじゃぞ。
選手召集後の宿舎には携帯電話すら持ち込み禁止じゃ。
ゴールするまでは観衆に手を振ってさえいかん。 厳しく己を律することの出来る者だけがプロで成功できるんじゃ」

「ほーぉ 名人が言うと説得力が一段とナニですなあ」

「おまん、破門されたいの?

それと抽選話しの件はな、そーゆーのを二番煎じといって濁川賞へのエントリーなどとても望めん。 
ここはオリジナリティー高きおしぐれ作家の手腕に委ねようではないか。
それまでは古いパナレーサーで練習を続けなさい。

よいか おしぐれ家 累代の家訓を授けよう、しかと聞け。
すなわち 『金持ち喧嘩せず。 無駄遣いなどもっとせずじゃがな、放蕩は無駄とは違う、修行の別称じゃ。 やがて己の宝刀とならん』 
 
はっはっはぁー おまえにしかと託したぞ、ワシはご先祖の呪祖からやっと逃れ、尻に帆かけて修羅種々主 じゃわいねー」

「めいじん、アバルトのマフラーから南半球ホーン岬の潮の香りにも似た芳香が立ち昇ってまいりましたぞー」

「うむ、しからば剣士どの タケコプターの びゅん びゅん を再開してもらおうかい。
パタゴニアの雪の峠に千年生きる巨木、 一本カラ松 の大枝に引っ掛かるまで回し続けるんじゃ。 さん ・ にぃー ・ いち ・ ターボぉーっ!」



おしぐれさんの じてんしゃ 大喜利 4
2016/09/20

ふもと温泉の駐車場は週末とあってけっこうな込み合いであった。
小さなフィアットをもぐり込ませるスペースを探してゆっくり進ん行くと助手席から首を伸ばしてきょろきょろしていた剣士が左隣りのレーンに空きを見つけた。

「名人 あそこ、赤いクルマの横が空いている」

「おおそうか、でもなココは右回りの一方通行だから一度出て、もいちど入り直してグルッと行かねばならん。
そのあいだに他のクルマが停めてしまうかも知れんな、剣士どのすまんが歩いて行ってキープしておいてくれ」

「へい そうしまひょ」

「なにをしておる、早く行け」

「あの、 止ってくれませんの?」

「おまん アスリートやないけ、この速度ならスッと降り立てるじゃないか。
イタリア映画の刑事はみんなそうしておるぞ」

「名人、あんた殺意がありますの? わたくしの首に風呂敷荷物とシートベルトが二重に巻きついているのを知ってて言いますのかいな。
ジュリアーノ・ジェンマのマカロニ刑事ものと同じに考えては困ります。 だいいちこのドアどーやって開けますの、内側のノブが無い」

「おおそうか、アダルトなアバルト仕様は窓から腕を伸ばして外側のドアノブを引くんじゃよ。
窓が電動でないことは前回号で知っておるな」

「名人、よしんば窓を開けたとて、大きな風呂敷荷物が身体を拘束しておりますゆえ手が届きません」

「おおそうか、しからば風呂敷を背負ってルーフから出よ。スペースエックス社のパタゴニア号で月へ行ったと思えばいいんじゃ」

「へっ!」

「こちらキャプテン。 重力を1/6に減衰するため一旦ターボを吹かせて加速し、次にブレンボのブレーキで急制動をかける。 
直後に瞬間的な重力差ゼロの時間帯が出現するからクルーはハッチを開けて離脱せよ。
そのあとは100m先の3Dボルトな空間域まで9.81秒で泳ぐんじゃ。

なお、ハッチは電動ではない。 ファイナリストはキチンと閉めること。
諸君とはいつの日にか地球で再会しようじゃないか、バーボンを奢るぜ。 幸運を祈る。 さん ・ にぃー ・ いち ターボぉーっ!」

「あんた、なに そのクールな待遇は。 わたくしの秘技・鎖鎌を助っ人頼りにしているから安心して温泉に来れたんでしょうが。
それともなにけ? ひとりでぬんちゃっくのお方さまと対決なさるおつもりか」

「ターボぉー 鎮火ぁーっ」

「名人得意技の ”アルミパイプ曲げ・膝ベンダー” を使いたくてもハンドポンプの油圧万力を持って来ていないから丸腰同然。 
ワルサーを忘れた銭形警部と同然ですわ」

「おおそうじゃった、頼りにしておるぞ。 剣士どの」

「この込み具合では大広間に魔方陣の結界をつくることなどできませんが、まわりは民間人。
お年寄りも多いから敵方も殲滅的無差別攻撃は差し控えるでしょう。

そーゆーのを原資効果の差別化と言います。
敵がケインズの経済の法則にひったっているうちにわれらは温泉に浸かってカラダじゅうに二酸化硫黄のバリアーを吸着させるんです」

「おお剣士どの、おぬし知恵者じゃのう。 ケインズとは水木先生の新しい妖怪か?
妖怪封じに硫黄が効くとは聞くまで知らんかった、礼をいおう」

「 ・・ 名人、関係者にしか分からない洒落をもじっている間に街道に出てしまいました。
早く戻らないと先ほどの空きスペースが塞がってしまいます」

「おおそうじゃ、じゃが前方から来る軽が直進なのか左折なのかよう分からんので当方は右折ができん。
かあちゃん軽のどっちつかずにはいつもイライラするのう。
彼女らの目にはワシの100馬力アバルトが軽に写るらしく、同族の気安さなのか信号を出さずに急に右折してきたりするから油断がならん。
おいおい 駐車場に入るじゃないの、いかん あそこのレーンを狙っているみたいだぞ」

「うわー めいじ〜ん あの軽スズキめ、赤いプジョーの隣りに入ろうとバックしていますぜ。
わたくしが行って、ここは名人の予約席だと追い出しましょう。ですからドアを開けて外に出してくださりませぇー」

「剣士どの、静かにいたせ。
いま外に出てはならん。 なぜならばあの軽は姪っ子のお慶だ、その子の中学生も乗っておる。
まだ此方に気づいておらんようじゃがもっと悪いことには隣りの赤だ。 あれはヌンチャクのお龍がいつも乗っている赤いプジョーだ。 
敵はすでに堅固な陣容の構築を済ませたと認識せねばならん」

「びえーっ! ぬんちゃっくのお方さまとは紅い錦斗雲に乗って現われるものと思っておりました。
赤のプジョーとは随分とセレブな乗り物ですな、フランスかぶれの銭形と同盟を組んでいるとしたら厄介でございます」

「まて、プジョーの助手席から女が降りてきた。軽スズキのバックを誘導するらしいが知らない女だ。
インターポールの女工作員か? いやそうではあるまい、ふつうの日本おばちゃん風である。 いやまてまて、あのすり足の運びは武道家のソレだ、油断ならん」

「びえーっ! あれに見えるおばちゃん風すり足女はわが女房でございます。
伊達流 なぎなた 免許皆伝、うちの二代目たたちねの局でございますぅ〜。
はい、初代はわたくしの母親でございました。
一見おばちゃん風ながら手加減のての字を知らず、風の字も取れた真正おばちゃんのたらちねの局の女房どのが何ゆえあって錦斗のプジョーに同席を ・・ 。

逃げましょう名人。 アレが我が家に来て40年、わたくしには分かります。なにか大きなお祭り騒ぎの陰謀めいた渦が頭上に迫っておりまする。
今ならバックして ・・・ だめだあ、後ろから古峯神社参拝講の女性専用大型バスが来ちゃった」

「なに! おんな古峯講とな、白装束の女どもがいっぱい乗っておるのか?」

「はい〜 白鉢巻きをキリリと締めてガイド席に丈夫そうな金剛杖が束ねてありますぅ〜。 
白半纏の両襟に輝く 金のお印し がなんだか ICPO のマークに似ておりますぅ〜。
うわぁー バスは宮城ナンバーです、伊達藩古峯講 なぎなた部会の加勢に違いない」

「なんと、 この説明困難なエキストラ出演バスを含む敵陣容の豪華さはどうじゃ。 もはや我らに活路も退路もないのか」

「名人、ターボです。 アバルト ターボを縦に吹かせてスペースエックスの如く跳ぶのです」

「オメさん、おしぐれ作家みてーな でほらく 吹くんでねーよ」

「だめ? 
そんなことないよね、軽より軽いアルミのボディーに100馬力ターボなんでしょう?」

「あたーぼよ、アダルトなアバルトに不可能はない。
剣士どの、ルーフを開けて鎖鎌を回せ、タケコプターの如くにびゅんびゅん回せ。 
風切音が佳境に入ったればターボレンジに入れるぞ、シートベルトを腰に巻き付けてしっかと回せよ」

「剣士 がってんの介」

「アダルトなアバルトよ、おしぐれ峠の一本松にみごと引っかかるまで跳んでみせろ。
剣士どの、覚悟はよいな。 さらば参らせ候ぞ。 さん ・ にぃー ・ いち ・ ターボぉーっ!」


つづく

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