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「おはよー おしぐれさん 練習行くべしー、 はやく始めねーとなし 暑くなってまうでー。
きょうも日中は 35℃ オーバーだってよう。
早えーとこやっつけてなし、 風呂して ビールして 昼寝だっぺえ〜。 あっはっはぁ〜っ。
オラだぢよ まいにぢ こーゆー暮らしでえーんだんべが あっはっはぁ〜。
え〜んだよなぁー。
オラだぢよ、現役時代は命がけの死にもの狂いの無茶苦茶さで両手に赤鉛筆と車券を持って ・・ そーでねぐペンとカメラを持って、いや掃除機と棒つきトイレたわしを持って車界の悪の ・・ ん ・・ そーでねーっぺよ 社会の悪のだったっぺーよ なあ」
「 ・・・ 」
「ともかくもだ 悪の根源といえばこいつとゆーことになっている○○界の魑魅魍魎どもと決死の血戦を展開した元戦士だもんなや〜 オラだぢは」
「 ・・・ 」
「あにしてるだい おしぐれさん。
まさか血栓が脳に展開したんではねーべなや」
「 ・・・ 」
「オメさんはよ〜 オラだぢのなかでは唯一それほどには働かねえ男だったけんど、 えーんだよう。 恥かしそうに柱にしがみついていなぐともなや。
あれま、まるで蝉だなや」
「 みんみん ・・ 」
「なんだんべ バイクの用意もできていねーぞ。 オメさんほんに具合が悪りーだか?」
「みんみん。
ほえ〜 剣志郎どのか、すまんのう 今日は欠走にしてたもれ。 みんみん」
「あんだって 欠走かや? そらー血相変わるわなあ〜」
「けほ けほ ひどい洒落じゃ、座布団返してたもれ」
「返せって、立てつけの悪い納戸に入れるのけ?
なんども開け閉めしたくないねえ」
「え〜い 裏返せちゅーんじゃ。 符牒のわからん男は嫌いでおます。 縁起を戻すんじゃー」
「あに そーだったかいね。 オメさんの京ことばはきょうも分からんかったでござるよ」
「けほ けほ ワシなあ、大藪クリニックで受けた予防注射の副作用が来こし召したらしい。 どうもローレンツ変換の調子が変なのよ。
ヒヤリショックとでも言うのかも知れぬ みんみん」
「げっ! ヒアリかや、 そらいけねーなあ。
まだそのへんにいるのけ? 町内会で配ったアリコロリのスプレーはどこだ。
ありっ! そーでねーってか。 こごで刺されたんではねーんだな。
したらばローレンツの定理っちゅー不発の洒落はロレツのことだったかや?」
「あのねえ 剣志郎さんや、そーゆー内実の 切羽詰まった厳しいことは聞かないのがプロの定理じゃろーがや」
「ほーかね オメさん、んだば みんみん鳴いているのは何だね。 ヒアリの鳴き声ではねーのけ? まるで蝉だなや」
「 ・・・ 」
「ヒアリといえば今や国際手配だっぺ。
国連事務総長とWHOのパスワードじゃなくてパスツール研究所には報告したのけ、日本が加盟し批准したアジア疫学保健機構にも報告義務があるぺさ。
オラだぢも名誉ある賛助会員だぞ、よく行く渡良瀬遊水地はツツガムシの特別警戒地域だかんなや。
な〜に大藪先生のつき合いで入っただけのお義理会員だがよう。
あに? なんのことだってかね。
オメさん忘れたのけ、 おしぐれさん前々回投稿号 「と金 八九郎 2」 に黄金熱病のパスワードとして野口英世博士も登場したっぺよー。
この画面をずーっと下の方までスクロールしてなし、前回号も突き抜けてどんどん行ってみろし。
”ごじゃっぺの極み” と評価の高い 「と金さん」 シリーズがページアップして来るだに。 来たっぺー。
思いだしたか、あんたがそうしたんだっぺよー。
ずーじゃ ごじゃっぺ書いている割りにはよ、おしぐれさんシリーズ の投稿は医科学誌 ネイチャーズ 読者のようなハイクラス知識人に好評なんだってなあ。
なんでだっぺなやーってみーんな不思議がっているんだあ」
「 ・・・ 真実の実相を書き貫くことに作家生命を賭ける姿勢が評価されたからに他ならぬ ・・ のじゃ ・・ みんみん」
「ほーがね、んだけっとがな オメさん。
オラにはな、裏の畑の芋の葉の露ほどにもほんとだとは思えねーんだ。 こーゆーこと言うオラは悲しい男け?」
「 ・・・ ぐふっ (鼻を啜る音) ・・・ 」
「オメさん、オラだって聞いてっつぉー。
前回投稿のあとは某政府文科省内に隔月開催される 『放任民間作家の時代考証の信用性を検証する局』 からその妥当性に疑念が持たれて投稿活動が一時差し止められていたんだってなあ。
某政府もなや、南スーダンPKOの日報事件以来すこーし心配になったのがも知んねえ。
その間にずいぶん読者を減らした事実はあるけんど再開されてえがったなあ。
あっちの国では軟禁状態のまま授賞式にも出られず死んだノーベル賞作家もいるっちゅうでよ、あんまし当局を刺激するごどは書かねーほうがなや。
オラは口には出さねど心配してんだぞ。 あれ 口に出してしまったなあ」
「 ・・ みんみん」
「それよりオメさん どご刺されたんだ。 股間じゃあんめーなや。
そらー大変だぞ、一生自転車に跨れなくなるかもしんねー。
オメさんの股間は自転車のバラスト用途以外には存在価値がねぐなって久しいがよ、
ぎ装具業者に頼んでサドルの先端をスッパリと切断したフランス革命斬首台タイプに改造してもらえばまた跨げれるかもなや、
あっはっはぁ〜 いやー 失敬 失敬」
「 ・・・ 」
「オメさんは昔からオラだぢ堅気の一般人には馴染みのない業界に首をつっこんできたでなや。
箇条書きしようでないの。
ラオスの密林廃墟で拾った木端から彫り出したという触れこみの仏像彫り師
金砂郷村を流れるマムシ沢で金色の尻尾を持つニッポンカワウソの繁殖養殖
諏訪湖にそそぐとみせて天竜川に直接落ちる有賀沢の梅花藻で百倍に増量した諏訪寒天の変造密造で巨万の富を得るも株山師Nさんの失敗のとばっちりで無一文にもどる
ポリ容器と水道水でヤマト生ワサビを育てるキット販売
陶の磁石の超電導軌道システムを万里長城の上に敷設するというホリザエマン プロジェクト
そして出雲の玉はがねを備長炭で鍛って気合いで鍛えて汗と涎で焼き入れした新進の鉈刀鍛冶、などなど。
いやはや、それら筆舌に尽くせぬ渾身の詐欺師の腕を買われて大洗港の埠頭に放置された木腐れ中華コンテナの修理を頼まれたんでないのか?」
「・・・ 知らんよ ・・」
「何億華僑元で請け負ったのかは言わねでもええが、ご法度の蛇頭コンテナに立ち入って立ちションしたときに運悪く分蜂中のヒアリの隠れ家に命中してあっという間に刺されたんだっぺよ。
おらだぢガキの頃によ、野道で見づげだミミズにしょんべんひっかけてよ、その晩のうちにあそごがパンパンに腫れ上がったっぺよ。
あれはミミズの怨念が電気となって良導性の液体しょんべんを逆かのぼって来てあそごに憑りつくんだって、オメさんの学説だっぺや」
「剣志郎どの、そうではない。
ご貴殿のものすごい邪推予測は、不意打ちも卑怯でさえもなんでもありの真剣剣士としてはもっともなる危険予知能力であろう。
さすがである。 ワシは敬服いたしておるんじゃ。
だがそうではない。 野道のミミズでも華恐蛇頭でも分蜂緋蟻でもない。 もっと恐ろしい大ヤブヒヤリじゃ」
「 ん ヒヤリ? 」
「市役所から通知がきたんじゃ、ワシにもな年齢の順番が来たで肺炎球菌の予防注射を公費助成で打ってくださるという ありがたーいお知らせじゃ。
そのハガキを持ってな、おととい大藪樋槍くんのクリニックで接種を受けたんだわ」
「おおヒヤリ先生か、今回彼は冒頭から何度も名前が登場しているぞ。
重要な役割を担っているみたいだから引退話しではないと見た。 元気だったかね」
「ああ 元気は元気だったがね、
『4日間ほどは注射の痕が赤く硬く腫れて熱が出ます、安静にしていてください』
なあ〜んてね。 マニュアル通りに言うのさ」
「言いそうだなあ」
「さらにだ、
『今後5年間は同種接種はできません。 他のクリニックで受診の際はご注意願います』
なあーんてね。 固定客を囲い込もうとする意図が見え見えだろう」
「って あんた、肺炎球菌ワクチンは一度接種したら5年のインターバルが必要なんだよ。 知らんのけ?」
「大ヤブ先生、 お訊ねしますがね」
「なんでしょう、 おしぐれさん」
「安静というのは飲酒しない 自転車しない オナゴともしない という先生ご推挙の 3ない運動 のことではありますまいな」
「そーです その 3ない運動を指して安静といいます。
あなたも最近はずい分とモノが分かって参りましたなあ。 年の功というもんでしょうか、 えらい えらい」
「やかましいわい 大ヤブヒヤリめ!
定年リタイヤ組の楽しみを奪う根拠なき 3ない運動 で安静を守れという太政官お布施は、現代によみがえった安政の大獄だと町内の碁会所では極めて不評じゃぞ。
ワシはいやじゃ、 反井伊 親リベラル派のワシは ぜーんぶ NG だっちゃ。 安静を強いるような注射はやめてけろ。
なに! もう終わっちゃったってかいね。
ぜーんぶ 注射しちゃったの? あの太い注射を? いつの間に?」
「はいーっ ぼくは市内開業医 ”痛くない注射コンテスト” 7年連続チャンピオンの注射名人です。
赤ちゃんを泣かせたことなど開業以来一度もありませんぞ。 ホイットニーの変顔して見せて、笑っているうちに ホイッ と終わりだに〜」
「あんたねえ 赤ちゃんがなつく 森のプーさん のような容貌は小児科医として天性のものだと恭賀に難くない。
じゃが大人の、正確には前期高齢者のワシがここに来る真の理由は幼き折よりの友人としての礼を尽くさんが為であり、貴殿の内科小児科医の腕を頼ってのことではない。
左をはっきりと二重に明言しておこう」
「ずい分はっきりと明言するねえ。 それも二重に」
「ええか、市の公費助成を扱う街の開業医ともあろうものがよ、来院患者の意向を十分に確認する前に注射器のプッシュを力一杯プレスしてはダメだっぺよ。
医師として重大な注意義務違反があったと言わねばならん。
よってこの予防注射は無効とし、即刻の取り消しが当然の当たり前じゃ。
ただちにワシの体内から注射液を抜けえ〜っ!」
「あんた なにいうてますの、そんな無茶な」
「ワシはこれから心拍190bpm超の超重度練習に行くんじゃ。 安静になどはしておれんのじゃ。
ええか! ワシは本県開催2020ねんりんピックの強化指名第1補欠選手、背番号10じゃぞ。
栄えある県土代表であ〜る。 頭が高い! 控えおろーっ」
「へへーっ!」
「ヒヤリドクター、ワシとおまんの仲じゃから教えてやるがな、
世界をめざすアースリートというものはカラダに注射針の痕跡があってはならんのんじゃ」
「へっ?」
「なぜか分からんのか。 世間知らずめ。
海外のリベラー諸国では予防接種の概念が日米欧とは異なる。 予防は飲み薬と塗り薬だけなんじゃよ。
皮膚下に直接注入する注射は、神を冒涜するドーピングとみなされる。
ペナルティーは厳しくてな、死罪もありうるんじゃ」
「げっ」
「上位でゴールした者ほど厳しいボディーチェックを受ける。
他に尿の検査も厳しくてな、最初の放出から最後の一滴まで2名の医師の立会のもとで行う。
女子レースで成績を残した美人選手がじつは男だったと発覚するのもこのときだ」
「びえ〜」
「この性別詐称へのペナルティーは熾烈を極める。
当然のこととして昔ながらの麻酔なしスッパリ断種。 そのスッパリ装置というのがフランス革命当時からのあれ」
「ぎょえ〜っ?」
「抗弁は許されないのじゃがセットする刃物は ダマスカス シリア か関の孫六、あるいは新潟 燕三条 のなかから選ぶことが許されているそうだ」
「びえ〜っ」
「願わくば今世紀末までには、出雲砂鉄のたたら製鉄でしか得られないという 玉はがね。
これに遠い起源をいただく(株)日立安岐ハガネ を鍛冶屋のこだわりを捨て、ひと塊 ン 百万円で買ってきて使うことで、
古代製刀法のなかでも幻といわれ、最近になってやっと解かった ふたつ割り玉ばさみ鍛造構造 を現代に再現しちゃった 「新作 下野俊水」 これもラインナップのうちに加えていただきたいものである」
「びえ びえ の びえ〜っ! 長いCM説明にも びえ〜っ! あんたこーんなときに利益誘導なことよー言いまんなあ〜」
「おっほん じゃからの、日米欧の選手は渡航前おたふく風邪予防注射には針の無い無針スペシャルシリンジを使用するんじゃよ」
「無針?」
「おまん、医師のくせに知らんのか。 これからの医療は無針注射が主流になろうよ。
リベラル諸国にも遠征する機会のあるワシら日米欧の1級選手にはな、国連スポーツ裁定委員会が無針スペシャルシリンジをワールドヤマネコ便で定期的に送ってくる。
西側世界のスポーツ界ではそーゆーことになっておるのじゃ」
「うっひゃー」
「そのシリンジを、今日ワシはここに持って来ていたのだ」
「ぎょぎょぎょーっ」
「なのにだっ! それを説明する前におぬしは有針でワシの腕に注射してしまった。 嗚呼 なんたる失態か。
明日の日の出は西から昇るのであろうか」
「ぎゃーっ」
「針痕は皮膚下に注射液が長時間留まるほど消えにくい。 内圧が高まるから小さな刺傷でも押し広がるのじゃ、医師のおまんなら分かるな」
「はい〜っ」
「何も無ければアスリートの健康な皮膚は5分で針痕をきれいに覆い消してしまうといわれる」
「亜鉛のサプリを服用しているアスリートはさらに早くて3分です」
「そーか。 じゃからアースリートのワシの腕から針痕を消すには亜鉛を飲んだうえに注射液を外科的にキャンセルしてオールナッシングにせねばならぬ。
そーだろーがっ ヒヤリッ!」
「え〜ん おしぐれさ〜ん、そんなの今さらできないよ。 ぼくは外科医じゃない。 小心な小児科医だ」
「ふん 臆病者のブラックジャックのなりそこないめ。
できぬと言うのであらば、県知事が最高理事を兼務する県体協ねんりんピック委員会を通じ厚生医療当局、すなわち国に選手救済の通告追訴をせねばならん」
「そんな 大げさなあ〜」
「言うなっ! 一生一度のアスリートにとってそれは生死を分ける必至のこと。
世界に打って出られるかの瀬戸際じゃ。 清濁併せてなんでもするぞ。 幼なじみのおぬしであろうと容赦はいたさん。
家伝の神刀 下野俊水スペシャル。 華厳乃滝に打たれ鍛えし別誂の錬一本じゃ。
抜かば剣志郎師範直伝の面一本。 必斬の気合いにてお見舞い申すーっ!
華厳逆落とし兜一本割りの秘技、受けてみよーっ!」
「ひえーっ お許しくださりませえ〜っ」
「クリニックの玄関先で刃傷沙汰とあらば どーなる?
しかも古式作法にのっとった仇討免許正法とならば、貴殿に申し開きの余地は芋の葉の露ほどもなかろう。
体面を気にする県市医師会は貴殿に対し永久追放・関係断絶を即断するに至るは極めて自然のことである。
変な注射のドーピングは地球上のすべてのネイチャーとアースリートへの冒涜であろーよ。 違うかあーっ!」
「ぴえー 看護婦さん、急いで エクストラクター の ポイズンリムーバー を持って来てください」
「はい先生、エクストラクター って ”くぎ抜き” のことでしょう。
でも ポイズンリムーバー って何ですの? 当クリニックに大工道具などありましたっけ?」
「ポイズンリムーバーは毒液吸い取り器です。
自宅に行ってください、末っ子孫の小学生のおもちゃ箱のなかから昆虫採集サイドをパスワード ”99” で開けてください。 ファーストエイド の青い救急セットがあります。
それが エクストラクター です。
急いでください、患者さんの乗ってきた電動アシストバイクを借りてフルスピードモードで行きなさい」
「はい先生 電動エクストリーム のハイパワーモードであっという間に行ってきました。
孫坊っちゃまから借りて来ましたコレですね、ずいぶん立派な道具セットだこと」
「そーでしょう、Amazon に数種類ありますが医療機器専門商社から入手すると消費税が免除されます。 民生用医療品ですから」
「先生はソレを孫坊っちゃまのおもちゃ用として医療税制上の優遇扱いで買ったのですね、その行為は当院の財務コンセプトでは瑕疵に相当しませんか」
「看護婦さん ナニを言っていますか。 あなたいつから蓮舫さんみたいになったの 今は緊急事態ですよ。
スーパーエクストラクター ポイズンリムーバーでおしぐれさんの腕から注射液を吸い出すんです」
「ひえ〜 おもちゃ箱のナニを人体に使うとはなんて画期的なんでしょう」
「おしぐれさんに訴えられる前に打った注射をキャンセリングのナッシングにするんです。
つまりポイですな。 ズンズン行きましょう」
「ポイ ・・ ズン しゃれですか? こーですか?」
「さー ? ぼくもやったことがない。 こーかなぁ〜 マニュアルはありませんか」
「オッホン あのねえキミたち、そーゆー ワイルドなフィールドで使うエマージェンシーなモノの取り扱いならワシに任せなさい。
先年下北半島西岸の人切り峠を単独アタック中、沢から飛び上がって来た山アブの大群に襲われて往生したことがある。
そのとき毒の吸い出しに使ったことがあるんじゃ。
峠には1キロごとに毒の吸い出し器を収納した赤十字マークのエマージェンス木箱が道端に立てられていてな、そのありがたさにワシは涙が出た。
下北の危機管理体制は日本一だと感心したものだ」
「まあ そーでしたの。 おしぐれさんは日本中を股にかけるワイルド ライダー&へら釣り師でしたものねえ。
世界に出られないのはパスポートの発給があのNZ国の偏狭な入管係員とのケンカ以来、日本外務省内の代々の申し送りにより半永久的に凍結されているからなんですってねえ」
「 ・・・ 」
「だいたい山と湖の辺境の清浄を国是とする南半球のNZ国ですよ、東洋日本の らっきょう竹 なんかは見たこともない異界の穴あき中空植物です。
そんな竿はそれこそゾンビの杖のように見えるでしょうよ。
入管が持ち込み禁止措置を取るのは当然です。
そーゆー国へへら鮒用の竹の和竿と南半球にはいない孔雀の羽根の浮子と水を汚す焼き麩のバラケ餌の他に真っ白くてキラキラした覚せい剤のようなグルテン餌粉を持って釣りに行くっていう考えはですよ、いいですかよく聞いてくださいよ。
それこそがホスト国NZのネイチャーの有史以来の地球に優しき習慣をですよ、自分には異文化だからとして排除し尊重しようとしないへら鮒釣り師の独善的偏狭さの顕著なる表れなのではないででしょうか」
「やかましい、そーゆー個人情報をあげつらうな。
キミ の超長いセリフ回しはどこかのファースト都知事とそっくりだ。 よくもまあ延々喋れるものだ。
勢いで相手を口撃しひるませておいて選挙に持ち込む。 戦術としては優秀だが二度は使えんぞー」
「 ・・・ 」
「教えてやろう、ワシはこころ広き男じゃからのう。
ポイズンリムーバーはなあ、こーやって吸い口のカップを皮膚に残った虫の刺し傷に押し当てたらサクションをかけて毒液を吸い出す。
きょうは注射針の痕に当てるんじゃ」
「サクション ・・ ですか?」
「うむ 負圧を発生させることじゃ。 日本語では 搾取 ン と書く」
「げっ!」
「うむ バキュームと同義語じゃな。 やってみろ。
待て! そーじゃない 強すぎる負圧はピストンを引いて開放するんじゃ、 バカっ! 押すなっ」
「あーら〜 先生ったら 押しちゃった。
先生、リムーバーのサクションカップ内に残っていた薬液はなんでしたの ? 全部おしぐれさんの皮膚内に入っていきましたよ」
「げっ!」
「先生は医師だから医療行為の結果の青タンに傷害罪は成立しませんよね。 薬液はなんて記録しましょうか?」
「うーん たぶん 蝉のオシッコでしょう。 小学生孫は昆虫の尿をリムーブするのが大好きです、偉人伝記で読んだファーブル博士の幼少期と同じ発展を見せています。
特に蝉のオシッコは庭で容易に入手できますから研究の対象の一丁目一番地なんですねえ」
「まあ ファーブル博士の生まれかわりですか。 すてきっ! さすがは先生の孫坊っちゃまですわねえ」
「あのねえキミたち、お喜びのところ恐縮じゃがね。
ワシはなんだか目まいがゾクゾクして腕が痺れてローレンツが回らんぞ。 みんみん」
「いかん この症状は リベラル性みんみんショック だ。
ただちに気つけ処置をせねばならん。
看護婦さん、重篤な休館いや急患です。 本日休診の札を表に出してください。
なに! 電動アシストバイクの患者さんがまだ待っている? いつものプラセボ薬の処方箋を出して帰ってもらいなさい」
そしたら自宅から気つけのブランデーを持って来てください。
奥さんにそう言ってな安いほうの スーパー トリス でええんです。 気つけ用だから。
なに グラスか? 冷えていなくとも構わん、検尿の紙カップに氷を入れて3個出しなさい。
なに? 3個か、キミとぼくとおしぐれさんで3人じゃないか」
「それでどーなったのよ ヒヤリ ショック ?」
「うん まだ気持ちが悪い。
胃にびらん性化学爆弾を受けたみたいだ」
「それってぇ 蝉の尿がヒアリ毒と同程度まで悪種に変性したのかも知れんよ。 どっちも昆虫だでなあ。
われわれより何万年も先から地球に住んでいた生物にはオラだぢの知らない強くて優れた能力がある。
地球の地面の穴は彼ら先住者のシェルターだ。 そこから這い出して来る穴の生き物をゆめゆめアナどってはならん」
「剣志郎どの ・・ しゃれたか?」
「あんた死ぬところだったんだぞ。 肺炎球菌の予防注射といっしょにそーゆー過激なコトをしてはいけないのさね。
安静にしていなさいという大藪ドクターの言う通りなのさ」
「みんみん」
「んで、気つけのツマミはなんだったの」
「ビタミンB12のタブレットと亜鉛サプリ錠、10分おきに鼻からO2吸入もしたよ」
「なあ おしぐれさん、オラは薬剤師ではねーだけんど素人でも分かる。 あんたは毒でカラダが弱ったところに変な気つけ酒と亜鉛サプリを大量に飲んだ薬害性二日酔いなんだよ、寝てろし。
ああ それとな、亜鉛の過剰摂取は銅の吸収を阻害するんだ。
家伝の神刀という 下野俊水 の鞘の拵え銅(こしらえがね)をゆっくり舐めてろし。 ああ 本物ならばな」
「剣志郎どの、ご貴殿はやっぱし薬剤師だったんでねーの」
「いやー あっはっはあ〜。
オラはちょっくら大藪樋槍クリニックの様子をみてくる。 きょうも 「本日休診」 だったらあそこもヤバいっぺよ。
ああ そうだ、おしぐれさんオラは今な、昔読んだ 手塚治虫全集 の記憶がなぜか唐突に甦っただよ」
「てっ!」
「たまたま飲んだ強精薬と偶然受けたおたふく風邪の予防注射が相乗影響したのか身体能力がむっちゃ向上した男が、自転車のアルプス越えツール ド フランに勝った話だ」
「それ、走れメロスだろう」
「ばか! メロスは太宰 治だっぺよ。 どっちも オサム だからって一緒にすな」
「わかった。 ブラック ジャック だ」
「それは幼少期のヒヤリくんの憧れの外科医だっぺよ。 そーでねぐ、自転車の ・・ ほれ」
「わかった。 ランスだ」
「うん、ランス・アームストロングの記録はドーピングの力を借りたものだったと結論されたのは残念なことだったが彼の幻の7連覇より30年も前に手塚によって書かれた話しさ。
主人公の名はランサー・エボリューションだったがね」
「和名は三菱でないのか?」
「オメさん、ネタばらしすなや」
「ランスはワシら若いころの英雄だったなあ。
あの登りの速さ強さカッコよさはスーパーを越えて神がかりだった。 しかし今はすべての記録が黒塗りされてワシらの記憶のなかにしかいない。
でもな剣志郎どの、ランスとは槍の穂先のことをいうんじゃろ、つまり自転車乗りの股間の槍だから英雄でいいんじゃよ」
「そーゆーもんけ?
いかにもおしぐれさんの論理だなあ。 ヒヤリくんの槍はどーなのかな」
「樋 (とい) の突っかえ棒くらいにはなっているだろうよ。 とい は Toy (おもちゃ) に通ずってなあ」
「うまい! ざぶとん2枚」
「ふっふっふーっ! ワシのランスは今もって雄々しいぞぉー」
「オメさん まあーだ 熱があるようだなや。 おとなしく寝てろし。
そのセリフはオラが貰っただよ」
おしぐれさんはその後2週間ほどボンヤリしておりましたが8月になって秋の蝉のごとく蘇えりました。
ドクター ヒヤリを嘱託スポーツ医に委嘱し、以前通りに剣志郎さんと自転車トレーニングに汗を流しております。
ご心配をいただいた皆さま、ありがとうございます。
昨年大言したまま延び延びになっております ”諏訪いちライド” を古希までにはなんとしてもやっつけねばと登坂練習のペダルにチカラが入っております。
「よいかっ! ライドっちゅうもんはの、なんども登ってなんぼなんじゃ。 ライズっちゅーくらいじゃからのう」
はて? ライドの複数形がライズかどうかはともかく、諏訪いちに2%を超える登坂などありましたかいね。
おわり
この投稿には一部に未検証の作り話と思われる箇所が見られます、医療関係者および研究者以外の方は安易に真似をしないでください。
写真説明
左 : Extractor ファースト エイド キット 外観。
絵柄の虎は TIGERコーポレーション のロゴであり、虎の噛み傷に対応できるというものではありません。
中 : 特殊なシリンジとサクションカップが5種、日本語取説&保証書。
楕円カップは毒蛇用? できれば使いたくないものです。
おしぐれさんが想定する毒虫は 虻(あぶ) カメムシ 蚋(ぶよ)。
よく出かける渡良瀬遊水地に棲息するというのが ツツガムシですね、ダニの一種で刺すのではなく噛むらしい。じつはまだ見たことがありません。
ツツモタセ ならしょっちゅう被害に ・・ なにを言いますか!
右 : 吸引中、写真は撮影用にモデルさんの刺し傷でないところを最小サイズのカップで吸引しています。
強すぎず弱くもなくの絶妙の負圧になります。 危険を感じたらピストンへのタップで一発中止ができます。
被験者を替えヤブ蚊の刺し傷で実験した結果では、30秒ほどでこの膨らみの先端に血液と混じった毒液がゆっくり浸潤してきました。
吸引をおわりカップを外すと、血の凝固作用なのでしょうかトロリとした感じになっています。 テッシュペーパーで拭きとっておわりでした。
吸引痕は軽い内出血ようになっていましたが数日できれいに消えました。
右はどこを吸引しているのかとても気になる画像ですね。 医学用です、念のため。
おしぐれ事務所では撮影用モデルさんを募集しています。 自転車に乗れて自称肉体派の若き女性なら年齢不問。
高給保証ながら常用雇用はできません、出来高払いの保険なし。 どーだんべが。
追伸
写真枠が3枚でいっぱいなので、栄えある県土代表指名選手補欠順位1位の背番号10ジャージィは次回にお見せします。
「こんちわー おしぐれさん、 クロねこですぅ〜 集荷にまいりましたー」
「おお 来たか青年、待っとったぞ。 荷物はこれじゃ、こころして運べよ」
「へえ 普通のダンボール荷物ですねえ。
Amazon空き箱の再利用じゃないですか、チャーターバイク便で来いとのご指定でしたがこれならバン型車でもよかったのでは?」
「うむ 行き先がな、トラックにはいささか隘路なんじゃよ」
「わいろ ですかい?
旦那あ〜 あっしらは公共性のきわめて高い運送事業者ですぜ、クロねこの社是によりそーゆー背徳モノの輸送はお受けしないことになっておりやす」
「えらいぞー青年、日本中の企業がそーゆー精神でコトに当ればトランプの揺さぶりなどは臆するに足らん。
おぬしら先日までの年末繁忙大荷物に耐えてよく頑張ったな、ご苦労であった。 台車ぶん投げのドライバーもおったようじゃが気持ちはよーわかるぞ。
ほれ、きょうは新年のご祝儀じゃ」
「いやー はははあー 旦那ぁ〜 これはこれは恐れ入ります」
「なんじゃ おまん、 前に出して広げたその手は?
それは賄賂受けとりのポーズではないか。 そーではない、隘路じゃ。 ご祝儀を届けに狭くて曲がりくねった道を行くんじゃよ。 ほれ、これを積め」
「はぁ〜 がっかり」
「さあ 行くぞ、ついて参れ」
「ついて参れって だんな〜 送り状は書かないのー。
自転車で行くなら自分で運べばいいじゃないですかあ〜」
「一緒に行くんじゃから送り状など要らん。 だいいち受け取り人はハンコなど持たんのよ、神界におわすお方じゃからなあ」
「びえーっ! 異星人のお客様ですかあ〜」
「ワシの自転車には荷物を積む装置がなかろ、じゃからと言うて背に負うには重すぎる。 来年古希じゃでなあ。
そこで運送業者を頼んだんじゃないか。 真っ当な利用法であろう、違法性など微塵も見当たらんぞ。
それともなにけ おまん、寄るべなき老人の依頼を冷たく拒むちゅーのんけ? ワシおまんとこの古い固定客、すなわちネコメンバーズやぞ」
「お客さ〜ん、 伝票がないと料金の計算ができませんのよー。
なんだか悪い予感がしますう〜。 せめて行先を教えてくださいな、会社に連絡してGPSで追跡してもらいます。
このまま帰らぬ人となっては日本運輸界の損失となりますからねえ」
「三千世界の果てまで自転車とモーターバイクで行けるか、すぐそこじゃ。
おしぐれ峠を下ったら鬼怒川沿いに下流へ50キロほど行ってな、江戸川と合流土手の産土神さまのところじゃ。
近道の旧道を行くから隘路のワインディングなんじゃよ、荷物を落とすなよ」
「えーと 鬼怒土手×江戸川土手うぶすな神さま と、 郵便番号と住所は?」
「んなものあるか、県境字外地先ポイントゼロじゃ」
「goo地図に載ってます?」
「おい 行くのか行かんのか。 いやならクマの飛脚と替えるぞ」
「行きます、行きますってばー とほほ〜」
「さあ 着いたぞ、なかなかのワインディングロードじゃったろう。
エンジン付きを先導して引くのは本末転倒の大変さじゃ。 ワシは心拍が200を超えたぞ、命がけじゃが年頭の初ライドはこーでなくてはならんな。
トラックやバンではここまで来れんでなあ。 さあ荷物を開けろ」
「着いたぞ 開けろって、旦那ぁ〜 ここですかい。 遠くに遊園地が見えるけど柴又の寅さんワールドまで来ちゃったの。
まわりは鬱蒼とした亜熱帯林じゃないのよ、どこ? ネコよりトラのほうがよかったみたいねえ。 あっしの役目はここまでやんしょ?」
「だめじゃ、おまんもお参りするんじゃ。 乗りかかったバイク便というじゃろ、しからば商運が開け交通安全も約されようぞ」
「ほえ〜 酒と米と塩まではわかりますがスルメは何ですの?」
「うむ スルメはアワビ熨斗のかわりじゃ、アワビは高価でのう」
「熨斗ってお年賀品の右上に付けるあの のし ですか、あれはアワビだったの?」
「うむ アワビ熨斗のいわれ因縁話しをひもとくとな、今回号に割り当てられたページでは足らん」
「ああよかった、もうおわりですか。 んー こっちにあるトゲの葉っぱと煮干しのアタマはなんだす?」
「それは柊鰯じゃ」
「ヒイラギ イワシ? 煮干しの魚はイワシですか」
「おまんは なあ〜んにも知らんのやなあ。 ええか、節分には門々に柊鰯を供えて邪鬼の近寄りを祓うんじゃ。
正式には生鰯を柊の枝に刺して臭気とトゲで鬼の嫌気を誘うんじゃがな、本物の生鰯ではワシらも臭いてかなわん。 それにな、草むらからマムシを呼んでしまうかも知れんでなあ」
「あのー だんなさま、節分は2月でございましょ、きょうは正月5日ですぜ。 マムシは冬眠中で出ませんが野良ネコなら集まって来ますなあ。
ちなみにあっしはクロねこです」
「いーの 神事はな、早め早めがええんじゃ。 ほれ そこに箱の品々を供えろ、ワシが祝詞を詠じたて奉るから自転車を支えてかしこまって聞け。
なに、自転車か? スタンドがないからおまんが支えておるんじゃ。
正月早々倒す訳にはいかんじゃろ、そのためにおまんを呼んだんじゃないか」
「旦那ぁ〜 そーゆー私的用途で公共性のきわめて高いあっしら運送業者を呼ばんでくださいよー」
「やかましい、ありがたい神域内にてウダウダ申しておると神罰が下るぞよ」
「ひえ〜 これでよろしゅうございますかあ〜。
ところで のりと って おしぐれさん、あんた禰宜さまだったんですかい」
「そーじゃよ、なんだと思っておったんじゃ?」
「へえー さいでがすか。 あっしはまた 自転車好きのよっぱらいのなまぐさ似非坊主かと思っておりやした。 禰宜さまだったとはねえ。 トウの立ったネギだ」
「おっほん、 静かにしておれと言うておろうが」
掛介麻久母畏伎産土神乃大前爾恐美恐美母白左久
(かけまくもかしこきうぶさうなかみのおんまえにかしこみかしこみももうさく)
大神乃高伎尊伎御徳乎仰奉利戴奉留団塊屋伊
(おおかみのたかきとおときおめぐみをいただきまつるだんかいやい)
中略
御酒御食種々乃物乎献奉里弖乞祈奉留状弥
(みきみけくさぐさのものをたてまつりてこいのみまつるさまを)
平良介久安良介久聞食志弖
(たいらけくやすらけくきこしめして)
中略
子孫乃八十続爾至留麻伝五十橿八桑枝乃如久立栄閉志米給比
(うみのこのやそつづきにいたるまでいかしやぐわえのごとくたちさかえしめたまい)
夜乃守日乃守爾守利恵美幸閉給閉登恐美恐美母白須
(よのまもりひのまもりにまもりめぐみさきわえたまえとかしこみかしこみももうす)
二拍シ拝シテ礼ス
来年以降に古希祝いのみなさまへ
中略なしのフル祝詞も受け賜わっております。 ご希望の場合は別途経費と出張旅費をご用意くださりませ。
団体さま一括御祈願の料金は 「くらしの相談 良の店」 にて親切受付中。 ご予約はお早めに。
写真の産土神さま、いわれ因縁はよく分りません。 お社の屋根に Audi のエンブレムをうやうやしく戴いておるところから拝察いたしまするに運輸交通系かと。
syn
お読みいただきありがとうございます、八九郎さんの代理人おしぐれです。
鬼怒川の土手ロードでヘルメットに飛び込んできた熊ん蜂にデコっぱちを刺され、こん倒して土手の芝草をすべり落ちた 「芝ライダー事件」 から早くも8年ほど経過しましょうか。
さいわい後遺症は軽いEDになったことと、ひとの名前がなかなか思い出せなくなったことくらい。
「貧脚なのは元々の素養プラス練習嫌いの相乗的パンデミックでしてな、治療の方法は確立されておらんのです。
あなたは蜂毒のせいだとお考えのご様子だが、主因を占める常在菌のへたれ真菌はおのれの怠惰を餌に増殖するのです」
「げっ! 星 新一 の世界け?」
「駆除しようとハイパーな新薬を使うとご本体さまのタマシイまで溶かしてしまう恐れがありましてなあ。
他人への感染性はないから日常生活は今のままでよいとしても、さても困ったお人だ。 つける薬はありません」
「でっ! 野口 英世 博士の世界なのけ?
パスツール研究所の見解はどーなんじゃ。 WHOは?」
「パスツールがわかりません」
「へっ! なにそれ、しゃれかいの?」
「あっ パスワードだった」
「先生、 パスワードとパスツールは同義語ですから先生の間違えではありません!」
若い看護師が キッ と八九郎さんをにらむ。
インフルの予防注射に行っただけなのに主治医の大ヤブ先生、八九郎さんのカルテの上にカーソルをぐるぐるさせながらそう言います。
美人看護師もグルのようです。
あの日予約なしで担ぎ込まれて以来、主治医に指名してやった大恩義は8年も経てば薄くもなりましょうが、
「もうED薬の処方も必要ないんでしょう?」
なんたる弱者切り捨ての非情発言か。
横に控えておった年増の看護師がわざわざ八九郎さんの正面に回って顔をのぞき込んだリアクションは、クリニックぐるみの演出か。
ひょっとして今夜の忘年会の余興練習なれば 「うまい!」 と誉めておこうが ・・
もしかして、ときどき立ち寄るロード脇の水飲み場でよく見かける半ホームレスから千円で買ってくれと持ちかけられた無料券を持って行ったのが意地悪のもとならば問題がある。
非課税世帯に配布されたはずのインフル予防接種無料券を売って酒代に変える半ホームレスの越冬対策は、券を配って終わりか。
市の高齢者健康福祉課を呼び付ける大問題であるが、その券を持ってのこのこクリニックへ行った課税対象者は罰せられるのであろうか。千円払っているのに。
事件以来蜂には恐怖症のはち九郎さん、盛夏から秋口は土手のまわりを飛びまわっているヤツらを避けて鬼怒川には近付けないでいた。
といってブリッツエンのメイン練習ロードである古賀志峠への街道筋には選手の邪魔をしてはならんという理由から近寄れず。 那須ブラーゼンのテリトリーをうろついては追い出され。
そうこうするうち冬になって蜂はいなくなった。
さあ蜂さえいなければ冬枯れの土手ロード。
行く手に沿ってただひとつ緑青を添えて土手下から伸び続く一筋の錦屏風、真竹のヤブ林。 それを唯一の風除け味方につけて八九郎。
破竹の勢いで自転車を駆る真摯雄姿はアスリートのかがみでございましょう。
見たか 大ヤブ、 練習しておるぞ。
されど寒い。
なんでこんなに寒いのか。 標高1600m超、紅葉の志賀高天ヶ原〜カヤの平コースは10月でも寒かったが海抜90mの鬼怒土手でそれを上回る寒さとは。
そうか もう12月だからか。
1月2月はさらに寒かろう、しからば八九郎さんも冬眠期に入ろうが練習はもう終わりけ?
というワケで冬は作家本業の自転車歴史文学者に戻れる唯一の季節。
前回号に付属した写真説明のつづきなどから始めましょう。
前回号の写真(中)と今回号の写真について。
ギヤ塊のことを業界ではギヤカセットといいます。
複数ギヤ歯の組み合わせを好みの歯数セットに差し替えることが出来るから可セットです。
とはいっても出鱈目に組み合わせては変速動作に支障がおこります。
一定の法則性があり、切り歯の位相合わせ・変速機との相性等々、規制のあるなかで工夫をしながら作ります。
シマノの出来合いの11枚セットを買ってしまうのが一般的ではありますが、八九郎さんのようなこだわり派はそーゆーことをせず自分で組み合わせを考えます。
そして実現の可 不可は一向に考えず、上首尾の出来上がりだけを夢想して当おしぐれ工房に発注してきます。
「そーゆー仕事って 断れないんですよねえー ぼく」
エンジン付きの場合はギヤ比を変えると負荷が変わって排出ガスレベルも変わります、よって国交省への届け出排ガス値のクラス変更を余儀なくされます。
この変更審査はメーカーが対象であり、個人では事実上門前払いされますが、自転車はその点何もない自由さがいいですね。
さて、写真の 「スーパー山行き 14‐32T」 は11枚セットから1枚減らして10速とし、変速機の左右移動量を楽にして耐久性と確実性を高めたおしぐれ工房スペシャルです。
シマノ11速から実を得て飾を捨てたオリジナル10速は、全巾で4.3%の縮小を実現できました。
これはシフトワイヤーにとって 「ありがたい」 と声を出すほどの厚遇になります。
シマノの画策による近年の度を過ぎた多段化は、増大したギヤ巾に追従せねばならぬリヤシフトワイヤーに無理を強いています。
出し引きの動きに加え先端部では左右にも大きく首振りをせねばならず、急角度での繰り返し動作はとても過酷なのです。
上り下りが続くワインディングロードへ行くと1分間に10回もシフト操作をしていることがあります。
F1マシンでもこんなにシフトを繰り返すことはないでしょう。
そこでシマノは数年前からCPU制御の電動シフト変速機を発売してワイヤーを廃した。 ただし価格は大変にお高い。
リアルレーサーやスポンサーを持つプロチームではこぞって新型の電動シフトにシフトして行ったのですが、貧乏な若い日曜ライダーには手が出ません。
一方 「金ならあるぞー」 のバブル盛期積立信託終生型年金組、頑固優雅なイタリアンライダーたちは、
「ふん、 あんなオートマチック車になんかに乗れるものか。 まるでドローン機のプロポやないかい。
ええか 自転車に限らず機械式スライディングギヤの変速ちゅーもんはな、回転を合わせて シュパッ! と一発で決めるんがベテランの味ちゅーもんや。
そーじゃろ ご同輩」
乗ったら便利で快適なのはわかるのだがそこはそれ、
「義理に生きるは男の意地じゃ」
やせ我慢というオールドライダーのメンツを通す八九郎さんたちなのであります。
本号写真の下のほうにチロッとほつれたワイヤーが写っています、クリックして拡大したら手を合わせて拝んでやってくださいまし。
これまでレース中にワイヤー切れで無念のリタイアをするメンテアホの選手を何度も見ています。
おしぐれ工房では11速を10速にしたことで首振り角を少なくしました。
さすがは老練のメカニック、失敗から得たノウハウなら他にひけをとりませんな。
「はい、失敗の数で他を圧倒しておりますでなあ。 んー! なにを言わせるんじゃー」
最大の特徴はトップから5枚目までが1歯飛びのクロスレシオなこと。 トップを14Tにしたことで18Tまでをクロスな並びに実現できました。
平地を巡行するとき風の抵抗が変わっても変速ショック少なくトルクの出る隣接ギヤに瞬速シフトし、分速80回のペダル回転数を維持できます。
最大歯数32Tは前回写真(右)に写るカド号の30Tよりさらに大きい。
八九郎さんがカヤの平の登りで苦労した経験から生まれたMTBのような巨大ギヤセットになりました。
今回はコルナ号用のリヤホイールに組み付けてみました。
写真がコルナ号のリヤエンド全景です。
手前で 「淡い山吹色」 に輝く金のギヤがトップ14T。
鍍金工場に単品を送ってから1週間、18金を纏ったギヤが 「キラ〜ン」 と帰ってきたときの狂喜乱舞の沙汰を前回号に書いています。
金のギヤを中央で締め付けている黄金色のリング(TOKENの文字がある)とチェーンの繋ぎリンクは18金ではありません。 色調が 「24金色」 に振り過ぎで、ニセ金とすぐに判りますよね。
どーやってこのような発色をさせるのかは知りませんが、こーいう小物部品がAmazonで買えるのです。
日本や台湾の自転車界では大国アメリカに媚を売ってはいるものの、その実は ・・ そのじつは、
自転車の生まれ故郷である遥か欧州ヴァチカンのローマ法王庁に収蔵されている金ぴかのコルナゴ、 ”五大陸王者号” 伝説のワールドチャンピオン実車に憬れというか郷愁のような想いを強くつよくしているのであります。
コルナゴユーザーでなくともイタリアンバイク乗りが金色小物でおしゃれをし礼を尽くすのはそのためであり、金ぴか趣味がどーのというハナシでは語れない自転車乗りのローマンスなのであります。
すべての自転車ロードは海も砂漠も踏み越えてローマに通じている。
goo地図を見ても明らかなように、けっしてパリの凱旋門などではないのであります。
それでもあのローカルな一大草レースであるツール・ド・フランス出場をめざす選手たち剛脚者のトップギヤは11Tあるいは12Tです。
彼らにとってカセットを構成するギヤ歯は消耗品ですから金メッキなどはしません、素材地金に亜鉛メッキしただけの質素版です。
彼らの14T歯は緩やかな坂をハイスピードで駆け登るときに通過する1枚のギヤに過ぎません。
貧脚八九郎さんのトップ14Tは前回号にも書いた通り 「スーパー山行き仕様」 の奥のほうの大ギヤを押さえておく役目として付いています。 ですからチェーンが掛かることは滅多にありません。
なのに、金メッキされて大きな顔をしているのです。
そして使われないのに通年取り付け使用(仕様?)でもあるのです。
「普段は11‐25Tか12‐27Tに付け替えているんでしょう」
選手にさらりと言われます。
「ああ まあ、そうね」
答える八九郎さんのひたいには四苦八苦労の汗がにじんでおります。
「オメさんたち そーゆーこと聞くかい。 だから選手の練習路には行きたくないのよー」
来春の 「諏訪湖周遊サイクルロード 何周できるか耐久大会」 に出場を考えておられる読者諸氏に申しあげます。
スペシャルゲストライダーがこの程度ですからビビることなくエントリーしてください。
優勝者には 「えらい!」 との惜しみない称賛が与えられますが、副賞はこれから受付するスポンサー次第です。
今のところ (株)シャイニングホイール様より夏タイヤ一式のご提供を賜るとの由。
大会事務局長のNさんなどは電動アシスト車用として背中に背負うタイプの宇宙服用大容量バッテリーパックをAmazonに発注したようです。
タイヤ欲しさに目がくらんだ秘策でありましょうか。 反則かどうかの判定権を持つ事務局長ですからきっとセーフなのでしょう。
価格的にはタイヤを買ってしまったほうがお安いと思いますが、そーゆーことでは語れない自転車乗りのローマンスにあのご仁もハマッた。 ということでございましょうねえ。
「おしぐれさあ〜ん 宅急便ですぅー」
「ほー ぃ いるよー。
いま開けるでよ、待ったれやー。 荷物はアマゾンかぁ〜?」
「こちらに と金さん ておられますの?
アジアからの研修生ですか 東京からコレクト便です」
「ワシしかおらんが ・・・ 宛名は と金さん かね。
なに? メッキ屋からか。 ああ ワシとこでええんじゃ」
「はい、 送料手数料込みこみ代引き 2,538円です」
「メッキ屋め、ワシの名前を と金 と書くとはなあ。 冗談が過ぎるでや」
「へんな名前を宛先にしないでくださいよ、おしぐれさんだってそうとう変です。
配達区域の担当が変わるとき一応申し送りはあるんですが、先任者もおしぐれさんの意味と由来までは説明出来ないんです。
でもぼくは何度か配達するうちに分かったんですよ、な〜るほどおしぐれさんだなぁって」
「やかましい、配送ドライバーは寡黙を本領とするもんじゃ。
職務上見聞きした客先の個人都合を外部に漏らすことは、民間の配達員といえども世界配送機構 JP黒ねこ支部職務執行規則に違反する重大な背信行為であると心得よ」
「ははぁー おそれいりましたぁ〜」
「さてと、と金なんてハンコはないからサインでええか伝票よこせ。 と金とはな、鍍金と書くんじゃ。 ほれ代金じゃ、金を渡すと書いて鍍金。
さあ 渡したぞ」
「旦那ぁ〜、あっし相手に手間のかかるしゃれ言ってる間におしぐれ雲がかかってきますぜ。
代金は実効性のある日本円の真券で払ってもらいやしょー」
「真券かぁ ナナコカードじゃだめけ?」
「コンビニ受け取りになっていればいいけど、今日の伝票ではダ〜メ。
あっしだってね旦那、師走繁忙貨物で積み切れない分をバンの足許にまで置いてブレーキのたんびに蹴飛ばし蹴飛ばし、決死の思いで走っているんですぜ。
真剣でがす」
「うまい! 黒ねこのしゃれを初めて聞いた。
ネコが箱のフタを閉めるコマーシャルもよかったが、オメさんのしゃれはライオンマスクをかぶった犬に赤ちゃんが抱きつくAmazon画像に次ぐ今年の大ヒットじゃ」
「ありがとうございます。
はあ〜 ここへ来ると癒されるなあ。 きょうも安全運転でがんばるぞー」
「うむ 青年よ、日本の輝かしき未来創出のためバンの荷物を配達しきるまでは昼飯にするんじゃないぞ。
それとな、駐停車禁止帯に停めるときにはな、
『おしぐれ庵さまへ赤穂藩より火急の密使です、ご町内の皆さま御免なすって』
とバンのバックドアに書いておけ。
ブリッツエンの宇都宮でおしぐれさんと言えば弾劾免訴、12月は忠臣蔵じゃけんのう」
「へいーっ! そーしやす。
ブリッツエンとはおしぐれ雲からひり出される金色の稲びかり、お稲荷様のお使いのことですよね。 ここに来るまで知らなかったけど」
作家注 : ブリッツエン(独) 稲妻・雷光の意、強きものの象徴。
転じておしぐれ。 なに! 転じ過ぎとな? ・・ やかましい。
ちなみに新興勢力 那須ブラーゼンは 疾風・はやて、那須岳おろしのからっ風も強烈です。
コレクト便で届いたのは小さなギヤだった。
東京下町の鍍金工場に金メッキを依頼していたものが戻って来たのだが、送り状は 「と金 八九郎 さま」 となっていた。
メールで加工の可否をやりとりするネームを 「18金のギヤを駆って破竹の勢いで坂を登る気合いのライダー 鍍金峠の八九郎 」 としていた。
メールネームがそのまま顧客名になったようだ。 せめて 峠 八九郎さま」 にならんかったものかいね。
<写真説明>
(なし) メッキ前のトップギヤ 重量18.8グラム すみません 画像が見つかりませんでした。
(左) 加工後 19.2グラム 0.4グラムの差が金の重さと思われる。
(中) 取り付け状態 内側に金色の薄いプレートが写っているのが見えますね、ギヤ塊の左右位置決め用スペーサーリングです。 これもメッキしました。
(右) おまけです 10月に志賀高原をカヤの平まで行ったときの写真。 背景の軽トラが邪魔ですねえ。 よそ者は 「どかせ」 なんて言えませんでした。
バイクはトレーラを曳いたカド号、巨大なリヤギヤに注目。 荷台の図面筒は釣竿ケース。 夜はNさんと温泉プラス酒飲み三昧。
メッキ加工を位置決めリングと外側のトップギヤ1枚だけの施工にとどめ、成り金ライダー呼ばわりされる愚を避けてみました。いかがでしょうか。
加工賃と重量の増加を抑えた金のサンドイッチデザインでございます。
チェーンで金が削れることをご心配の読者さまへ。
シニアクラスのおしぐれさんには、平地でもトップまでギヤを上げてゆくほどの脚力が残されておりません。
よって長い長い降り坂以外は使わないのです。
そんな坂はヘリコプターで上まで運んでくれるギアナ高地のエンゼルフォール観瀑ロードしかないでしょうよ。
これはテリトリーを越え那須街道まで行ってしまったとき、
不意に現れたからっ風ライダー、宇都宮で有名なおしぐれさんを知らないから不遜にもチャレンジを挑むのに対し金のトップで威嚇効果を狙った心理戦用なのであります。 効果 ・・ 不明。
じいさん仲間の家に行ったら孫がいた。
お嫁さん了解のうえで借してもらった ”一日孫” を連れて、トイザラスへ行った。
お嫁さん破顔見送りのワケは、最初に寄ったコンビニを出た直後に明瞭した。
チョコアイスでクルマのシートがベタベタになったのはまあ許そう。 道中その手で窓ガラスをペタペタするのには閉口したがまあ許そう。
「どーして サンタクロースは赤い鼻をしたおじいさんなのか、ぼく知っているよ」
「ほぉー それはトナカイのおじいさんかい?」
「ちがうよ、じじいのほうだよ」
「ほぉー 謎めいてわくわくするのう。 ぜひ教えてほしいがその前にトイレで手を洗おうなあ」
「ぼく ひとりでできるよ」
「まて、 おしっこの前に手を洗うんだ」
「あのね、サンタ爺いはおばあさんよりあっとうてきにひまだからだよ。 あっとうてきってなに?」
「おしっこのときは前を向いてしろ、こっちに振るな。 フルのはフル出し終わってからだ。 それにしても圧倒的水量じゃのう」
「♪ タイガーマスクはふるふるパンツ、フレ フレー ひまのサンタさ〜ん ♪」
「おじいさんはひまそうに見えるかい?」
「うん、 ビールを飲むときだってゆっくりビンを傾けるのは時間が余っているからなんだって、
ばあちゃんはこくせいを傾けるほどの勢いでコップを差し出すよ。 じいちゃんをだんがいから突き落とすじたいに至らないうちに飲むんだって。 だんがいのじたいってなに?」
「おめさん、 現代社会の病巣を揺り起こすような質問をするねえ。 そりゃー 弾劾のことだがキミの家でもじわりとそーゆー事態に?
権力の一極集中を嫌う風潮が韓国から飛び火したか」
「ふーん かんこくのとくようってなに?」
「勧告のことだろう、特養入居のはなしもあるのかい。
キミのおじいさんはまだ介護度など付かないだろうが相続がらみか。 そーゆー話はライフ プランナーのNさんに相談することを強くお奨めしますぞ」
「Nさんならきのう来たよ」
「そーか。 あのひとは誰に得とかかれに不利とか情実に傾かないニュートラルな判断のできる経験豊富なお人じゃからのう」
「あのね、Nさんはばあちゃんの若い頃の彼氏だったんだってさ。
昔はスマートでカッコよかったんだって、嘘つきのような気もするけどねえ。
いろいろ事情はあったらしいけど、しじょうってなに?」
「私情か市場かわからんがニュートラルが揺らぐ事情だなあ。 至上的すみやかにお徳用クリスマスプレゼントを買って帰ろうか」
「うん ぼくね、じいちゃんに ”老いをひとりで生きるサバイバルキット‐北方の無人島仕様” を買ってあげたいんだ。
おじさんってさ、楽天のスーパープラチナムカードを持っているんでしょう」
「ワシか? セブンイレブンのナナコカードなら持っておるが、カムチャツカで使えるかは分からんぞ」
「あのね、いまならシンゾー ウラジーミル会談記念セール中だからOKかもって、ママが言ったよ」
「山口県内のロシアウイーク限定しゃぶしゃぶ用カモ肉の話じゃないのか?」