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前回の 「呼吸編」 、おおむね好評の読者8と好調なすべり出し。 短めに書けとのご指摘はあるものの、こーゆーときには嵩にかかって攻めるのがアスリートの鉄則でございます。
ひとの迷惑なにするものぞ、書いてしまえばそのうち定説になる。
100年も経つうちには偶然が味方して検証実験の成功例がぽつぽつあらわれて、1,000年のやがてには宇宙の法則となろう。
酢タップ細胞ももう少し走ってくれると思っていたら思わぬところから責められて、いや攻められて仲間の車列が引き崩れてしまった。
速度の乗った直線路の先に突然現われた凍結路で先頭の落車に乗り上げた優勝候補のトレインに大落車が連鎖するという歴史的悲劇となってしまった。
よい位置にいたエースは辛うじて一騎立ち直したものの、周りの風除けをなくしたら学会とはなんと強い向かい風なのだろう。
引いてくれるチームメイトをなくし、やむなく自分が前に出て敵だらけの集団を引くことになったが、長丁場の風圧に耐える脚力がないままエースに祭り上げられていた自分に腹が立った。
ワタシはただのスケープ ゴートだった。 気づいたときにはリスタートの旗が振られていた。 もう止められなかった。
クルーのなかで一番テレビ映りがよいからとスポンサーから白い割烹着をイメージしたエース ジャージを贈られたとき断っていればよかった。 あのとき左京監督か大廣瀬ゼネラルマネージャーが止めてくれていたならば ‥ 。
そう思ったら涙があふれて回転が落ち、たちまち集団に飲みこまれてしまった。
集団では大柄な外国選手にひじで飛ばされ意地悪なNHKの中継車にリヤタイヤをつつかれ、次第に路外に押し出されて街路樹の囲いに突っ込んだ。
今さら手を上げて棄権を申し出るのはカッコ悪いがチェーンが切れては仕方がない。 集団もサポートカーも行ってしまった。 もう誰もいない。
ここはいったん自転車を降りて曲がったハンドルを膝で直し、チェーン無しでも降って行ける坂まで下を向いて歩いたら、坂を一気に降って唯一ワタシを正しいと信じてくれる群馬の母親の許に帰ろう。
母の作ってくれるオムライスを食べれば擦り傷なんかはすぐに治る。
宇都宮餃子をふわふわの餅で包んだギョウザ大福を食べればすぐにまた気宇壮大に戻れるさ。
おしぐれさんは己が半生と引き比べ酢タップの教訓はよくわかるハナシなのであったが、それにしてはちっともメゲないのであった。 きっとわかっていないのだ。 マザコンだから。
ここで各関係の機関、とくに理化学研究所のご担当の方々に 「酢タップ」 についての誤解と混乱が生じませぬよう申し添えたきことがございます。
本章にて酢タップと申しますのは、あの 「STAP」 のことではございません。
うさん臭いところが似てなくもないのでございますが、先の大発見 iPS との関連もまたございません。
「細胞」 との表記も生物学的細胞の意味合いに近い金属組織の細単位とご理解ください。 元来が無機質ですから増殖はありません。 ですが環境変化・経時変化に伴う増幅は、”あります”。
「酢タップ」 は弱酸性の溶液に工業用ネジ切りタップの刃先を所要の時間含浸(がんしん)してから対象金属の下孔に通す金属加工のテクニックです。 加工後のネジ部には強靭さと柔軟さとの二面性を併せ持つスーパー細胞が一個おきに背中合わせに手を繋いだ規則性をもって生配列(せいはいれつ)します。
このため新細胞の及ぶ範囲では高い制振性・耐食性・抗緩み性・高温下での耐焼き付き性など、つまり機械強度に優れ、さらに取扱いの簡便性と作業の静粛性が特徴です。
ネジ切りの進行と同時に加工部位には原初の細胞が発生することから一連の終結が早く、金属以外にも薄いカーボン繊維を集積したパイプ素材にネジ切りしても切削面から周囲にヒビが飛ぶことがない。
B787 がなかなか初飛行を迎えられなかった最大の要因はじつは、強すぎる 東レカーボン翼に接合するデュポン パイプ側の破断だったのです。
酢タップの画期的特性が確認されてから、航空機分野のみならず医療の分野 特に人工関節を生骨(せいこつ)に結合する応用が期待される夢の酢タップ技術といわれます。
開発はあの 「下町のノーベル ラボ」 と一部玄人衆に評価の高い おしぐれ工房。
穴開けやヤスリ掛けは50年キャリアのおしぐれ名人だが、最近はドリル作業中の直角度を保つのがしんどくなって来た。
ある日の午後、自転車部材の連続ネジ穴加工時に振れて熱くなって折れ込んだタップの取り出しに苦慮したおしぐれさん、疲れてこの日の作業をあきらめて折れタップを放り出し、風呂に入って餃子を焼いて晩酌を始めた。
ひとしきり飲んだおしぐれさんの酔眼に、作業場に残した加工材と晩酌のお供の宇都宮餃子のタレが左右の目玉に同時に別々に映った。
この眼球の動きはカメレオンの特技だが、集団の中を走る時の自転車ライダーも前後左右そして上空までたえず目を配って自分の位置取りを有利にしようとしているうちに身に付いた技。
上空とは頭上に繁る樹木の危険な枝のことではない、取材のTVヘリコプターのカメラ目線である。 背中のスポンサーロゴをここでしっかりアピールして、来期も契約をもらうのだ。
「これや!」
目玉を平衡位置に戻したおしぐれさん、餃子のタレを調合するときの鹿児島黒酢の小瓶を持って作業場に下り立った。
そしておもむろに折れタップの残った穴に割りばしの先を使って酢を一滴垂らし込んで、一晩寝かせたところ翌朝タップはスルリと抜けた。
科学的な説明などはいたしません。 鹿児島黒酢700年の秘法を享受した 「酢タップ」 開発秘話と申し上げたいところでございますが、酢タップ細胞はそーんな簡単なことではございませんのや。
下町のノーベル ラボがそう簡単に手の内を明かすハズがありませんでしょーや。
ラボ長のおしぐれさんはコレで食っているのでっせ。 食うといってももっぱら宇都宮餃子と下町ナポレオンの大分むぎ焼酎でございますがねえ。
今回レビューは短くまとめる約束で始めたハズでしたが、そこは長編作家のおしぐれさん。 前置きだけでほど良い量を越えておりますなあ。
急いでご紹介したいのは、年末のロードの寒風にふるえて購入を即断した速暖系の用品。
年明け早々届きました。 ネットショップと宅配便は休みなしに働いて民衆の暮らしを守っておるんですなあ。 国会も見習うとよろし。 野党もなんやでー いつまでも代表選挙なんぞやっとらんで 早よう仕掛けなはれ。
何を? ってアンタ アタックでしょうが、 アンタらの用語でいうたら政権交代の まくりやがなー。 自転車ロードでは2分毎に先頭交代を繰り返すんやでー。
アンタら番手に控えたまんま何年様子見しとるんじゃー。
さて 届いた速暖 シューズ カバー。 これはなかなかの良い買い物であった。
ワシ、なかなか褒めないんで有名なんやで。 「良い買い物であった」 としただけで、相当な褒め言葉なのだ。
いやいや 販売業者と結託しとるなんて そーんなオメさん、懐疑的なのは家族会議で説明できんからやろ。
アンタ、これまでの買い物でずいぶん失敗しとるでなあ。 知っとるだよー。
初孫用に買ったあの黄色い自転車モンテッサ号、たちまち来た冬にはサドルが破けたやろ。 あんなあ 長野のような寒冷地域で合成皮革はあかんのや。
低温硬化ちゅうてな、軒先に放置しとるあいだに水分が抜けてポキポキになっとる。 そこをあの暴れん坊が庭先に引き出して転ぶからたちまちボロボロや。 変な臭いもするから犬の小太郎が噛む。
むかし湖南の寒天干場で見たろや。 月も星も凍てつく夜に地面に並べられたカンテンから水分が天空にむかってスーッと立ち昇ってゆくさまを。
工学的には低温効果のフリーズドライなんやが、ワシは当時から文学の青年やったから違う見方をアンタに教えてやったやないかい。
あれがカンテンの魂の昇華や、寒中の天に昇るんやとワシが教えてやったやろ。 そーしてカンテンは寒天となり、海なし県の信州まで海からはるばる運んだ天草(てんぐさ)は諏訪の名品 寒ざらし寒天として世界シェアを握った。
理研の実験シャーレの中の培養池はすべて諏訪の中澤寒天やで。
低温硬化の効果が高価を生んだんじゃなあ。
「諏訪湖になんぼでも生えとる梅花藻を煮て、増量材として50パーセント加えたらどーやろ。 オラが誰にも分らんように夜中にそーっと泥舟で獲ってくるだに買ってけれ。
なあーに オラの取り分は売上の5パーセントでええだよ」
オメさん、そーんな提案書を持って行って中澤の親爺に殴られたっぺや。 2パーセントだったら成立したかも知んねーなあ。
なに! 覚えていねーだ? まあ 許そう、むかしのことだ。 ひとは不都合なことを忘れることができるから哺乳類中ひときわ長生きの部類にいる。
ところで孫のサドルを買い替えるなら、北米原野の野生馬 ムスタング の牡の臀部の皮だけを使い縫製のしっかりした Brooks 社製をお薦めする。
製品一個一個にその群れの雌馬から採った馬油のお手入れ油が付いてくる。 これを塗り込むことで水分量の微妙を塩梅するのだ。 これは爺さまの仕事だな。
硬化することも軟化することも劣化することもない。 お顔に塗り込んでもよい、アパッチ族から友好のメールが届くだろう。
プロの競輪選手も使う Brooks は孫が成人式のころになれば使い込まれた渋い風合いが完成するだろう。
そのサドルを成人祝いのロードバイクに (マウンテンバイクでもよいが ‥) 取り付けて贈るのだ。 エンドに打たれた鉄の鋲は錆びた味わいとなっていて、爺さまの評判が(やっと)上がりまっせ。
その際のバイク選定はぜひワシにまかせて戴きたい。 5パーセントでええでよ。
いかん 今回のレビューはサドルではない。 「シューズ カバー」 である。
防風・防寒用の冬のアイテムは色々あるが、靴の防寒は有りそうで少ないのがサイクル シューズ。 このカバーは役に立ったのでレポートしたい。
まず写真をお見せする。
本文は 「長い」 とお叱りを受けた前章の轍を踏まないよう前・後編に分けてご紹介。
写真の説明。
(左) シューズ カバー 内に靴が収まっている状態。 背後のジッパーを開けて靴ごと履くのだがかなり窮屈で、思わずアパッチのような叫び声を上げる。 糾靴というのだろうか。
一度履いたらカバーは脱がずに着けたままにしておいて、靴本体に直接足を抜き差しする方法を練習中なのですが、バックルの締め・緩めをどうしたものか 新製品には悩まされます。
こーゆーのを 抜き差しならない状況 といいます。 中国語では 抜不入不我困惑至極といいますかな。
靴によって異なるだろうが、足先部に空間があって膨らんで見える。 ここにホカロンの小を入れることは可能だが熱くなっても簡単には取りだせない。
なんだかんだ言っているが、素材がネオプレン+フリースなのでその暖ったかいこと。 遠目には冬専用のオーダーブーツに見え、物欲も満足。 問題は抜き差し。
(中) 靴の底側はこんな感じ、乱暴に歩くと破れそう。 つま先側中央に見える金具がペダルと結合する 「クリート」 。 このクリートはシマノのオフロード ペダルにも対応する。
ロードレース専用に特化したクリートではトイレのタイル床で滑るので歩くのは難しい。 みなさんロボット歩きで ソロソロ カチャカチャ 歩む。
おしぐれさんは還暦を期に ”歩ける” タイプのクリートとゴム底の靴に替えた。 まことに正しいシニアの選択である。
(右) カバー背部のジッパーは最大不満。 レバー ロック機構のない普通のパジャマのパンツ用ジッパーみたいな代物ではいつの間にか開いて下がってくる。
パジャマ パンツなら開いていたほうが何かと好都合だが、シューズ カバーはそうではならん。 絶対にならん。
手前にウインド ブレーカーを置いて大写しの写真を撮っているのは、同じような素材の生地使用・原産国も同じ中国ながらこちらのジッパーにはしっかりしたレバー ロック機構が付いている。
アディダスのマーク入りとなれば手を抜けなかったよい例だ。 この写真は拡大ができます。
シューズ カバーは国内の販売業者が中国の縫製工場で生産してもらって輸入したものだが、日本からの指示が行き渡らないうちの生産開始分だったのかも知れない。
このままではダメだから自分で対策しようと思うが、はて 妙案は?
販売者がこのレビューを読んだら急いで対策済みの代替品を送って来るだろうと、おしぐれさんの妙案とはそーゆー方向性なんですかな。
後編につづく
現在のレビュー王ランク
楽天 : 前頭 XX 枚目 前頭筆頭まであと何人抜きかは不明ながら岡場所では逸ノ城を凌ぐとと囁かれ、その気になっている。
Amazon : レビュー数45、お役立ちクリック数91(63.6%)、ベストレビューアー 賞にはまだ遠い16,749位。
Yahoo : レビューを読んで購入を決めたひと 0人、ポイントつかず。
係りA : 「あんたねえ レビューの文章がめちゃ長いんよ、フレームをはみ出しているやんけ。 おまけに地方不詳の変な訛りのまま書き文にするのんは でえーりゃーいかんでよ。
違反告発のクリック数ならあんた1位やで。 そやけん掲載見合わせなんよー」
レヴュア : 「やかんしー! わしの支払いはいつも一括払いの手数料なしやでオメら、商売になんらんとわしを外そうと思うとるのやろ。
わしはのー か細い年金口座からリボ払いでパーツをグレードアップしておるシニアライダーたちの声なき声を代弁して正直な使用感を書いておるのや。
わしかて買い物の失敗はぎょうさんある。 そやけんど ロード脇の鬼怒川に投げ捨てる訳にはいかねえだんべや、そーだっぺー。 じゃけん 小さく分解してゴミの日に少しずつ出しとるだよ。
そやからそーゆー役立たず品の情報を一刻も早く年金さんたちに報告して、同じ過ちをしでかさねーようにしてるだよ。
わかったら感謝状にスペシャル3倍ポイントを付けて偏執長があいさつに来んかい べらぼーめー」
係りA : 「削除ー。 職権により上の行を消去するー。 大事な広告主様を 役立たず品の 投げ売り王の 恥知らず とは何事じゃあー」
レビュア : 「わし、そんなこと言ったかいな?
ふん オメらには頼まん。 オメら知らんだろーが わしのバックにはのう、 ダンカラ マフィアっちゅうワールドワイドのレビュー シンジケートがあるだよ。
あとで泣きついて来たってもなや ダンカラの盟主さまがお許しにならわい。 どーじゃー 座りしょんべん洩らしたかあー べらぼーめー」
係りA : 「あのぉー ダンカラ マフィアってなんですの?」
レビュア : 「知らんのんか モノ知らず者め。 ルシアンダンスとカラオケの血盟団のことだがや。
北の大地のムネオーネ会長をゴッドファーザーに戴くハチリア島生まれの非情の組織じゃ。 若頭は北島屋のサブローネ親分さんじゃ。
あに! ハチリアを知らんのけ? おまんら破恥のもん、いや無知のもんには無理もないのー。 ハチリアは知床の沖合八里に浮かぶ美しい島じゃったが今は他国の管理下にある。
じゃけん わしらは島を返してもらうんじゃ。
ダンスとカラオケという友好の平和的手段でなや。
教えてやろうかい。 シンジケートの関東中部地域はなや、あの有名な団塊屋さまが取り仕切っておりなさるんじゃ。
どーだ ダンカラ マフィアの壮大なでほらくの気合いにびっくらたまげたかあー べらぼーめー」
<最新レビュー>
カテゴリー なくても特に困ることはないのだが、使えばライバルに衝撃の走る分野のクラス1位候補。 こーゆーモノが好きなご仁は意外にも多い。
商品名 「Turbine」 タービン、 スポーツ用品 : 鼻孔内に装着して鼻腔拡張・鼻呼吸を高める補助具、アジア地域新発売につきラージ&ミデアムサイズ各1個入り トライアルキット。
原産国 オランダ 短い日本語説明書付き、ただしよく解からない。 されどこーゆー挿入系のナニは説明いらないのが万国共通。
買価 1,236円 税 送料込み。
ショップ 非掲載。
レビュー本文
大量酸素消費系アスリートにとって鼻呼吸は大切な要素ですな。 間違いないでしょう。
口呼吸では吸気中の湿度と温度を程良く塩梅できません。 山登りの極限状況のなかで心肺機能を鼻呼吸で守る効果もさることながら、ゴールが近づくにつれ数を増すカメラの放列の前を口パクしながら一杯いっぱいで走り抜ける訳には参らんでしょーや。
アスリートは凛々しい横顔がイノチなんや。
口パクは死にかけの最後の一呼吸。 高倉 健さんに斬られた仇役の大黒屋、あの悪あがきがそーですな。
勧善懲悪の日本映画では、腹黒の大黒屋は凛々しくあってはならんのです。
鼻腔拡張器使用の主役が凛々しいかどうか疑問だ、という一部関係者の主張は主観の問題ですから本編では度外視で進めます。
鼻丘の外側からプラ板入りのテープを貼って鼻翼を引き拡げ、呼吸効率の向上を図って体内の血中酸素量を増やすことは医学的にもかなっていますね。 この十数年で一般化しました。
一般に東洋人の鼻の穴は欧州人のそれより小さいので自転車での山登りの高負荷時には空気の絶対量が不足しやすい。
そこで口呼吸も参加してなんとか補正しようとするのですが、ビジュアル的によろしくない。 日本古武士は切腹に際しても口は真一文字であったでしょうがや。
鼻穴の唯一の例外は前章でノースレールアイランド(株) (仮称) の重役会議の祭に登場していただいた北島屋会長のサブローネ親分くらいのもんです。
あのお方の鼻穴はアザラシ級ですけんね、鼻づまりなどは起こさんのですわ。
あに! 親分でもトドには負けるってかいな? そらー 当たり前や。 トドの鼻が詰まったらこの世の終りやんけ、トドのつまりちゅうてなあ。
アジアン人の鼻の穴が小さいのは ”始め人間” を作った東洋担当の神さまの失策ではなく、何十世紀を経て欧州から東洋の台湾とマレーシアに自転車生産工場が大挙移転して、結果日本に自転車ブームなどいう超高酸素運動が流行ると予測しなかっただけなのだ。
自転車は、発明したレオン・ド・ヴィンチのいう通り欧州人の骨格と鼻孔径を基に設計されている。
この最初の設計値は神の絶対値だから勝手に変えられない。 よって現代世界の自転車は細部寸法が同一値で、工業互換性のかがみと言われて200年経過したが今でもかがみのままだ。
一方東洋人の骨格は田んぼで短角黒毛水牛の背に跨ったとき、足で水牛の耳の後ろを蹴って進む方向を指示するのに最適な寸法で設計されている。
嘘だと思うならタイやミャンマーの田舎に行ってごらんなさいましな、東洋人が欧州規格の自転車でツールに挑むのは間違いだ。 と気づくはず。
その欧州人骨格と鼻穴をもってしてもツールのアルプス越えには鼻腔拡張テープが必須になるほど自転車というものは大量の酸素を消費する。
ツールの時期に大勢の選手が鼻穴をかっ拡げて急峻な坂を登るアルプスでは、酸素が薄くなって炭酸ガス濃度が若干増えるといわれるほどだ。
だがそれを地球温暖化の元だなどという者はいない。 自転車はユーロ伝統の国技だからだ。
日本のお相撲も巨体だから発熱量が高いが、日本で関取をデブとは言わないのと同じ尊敬の論理である。
おしぐれさんがツールの法則を知らずに自転車を始めた40年前の日本には鼻腔拡張テープなどなかった。
そーゆー補助具の使用は日本武士道として邪である。 という考え方が日本中に満ち満ちしていたからだ。
その根本は宮本武蔵が 「五輪の書」 という諸作法の本を書いたからだが、彼だって若いころは邪道のむちゃくちゃ流タケゾーと呼ばれていたのではなかったか。
武蔵がこの本を書いた本音は、相手を作法で縛っておいて諸法無用の二刀流を駆使して背後から刺し殺し、「勝てば正義じゃー」 と吠えたタケゾー精神の擁護に他ならない。 と天邪鬼は考える。
それはそれでいいだろう。 自転車界ではわざとミスシフトして相手を先行させ、背中に着いて風除けにする戦法は常道となっている。
おしぐれさんの鼻は同胞日本人のなかでは極めて稀な上品かつノーブル高貴な形状なのだが、それゆえF4ファントムみたいな巨大なエアインテークを持つツールの仮想敵にかないっこなかった。
そのころすでに鼻呼吸の大切さを認識していた同年代の日本陸上アスリートたちは、まだ数少ない輸入品のノーズエクスパンダを使っていたがそれはとても高価だった。
当時は1ドルが360円もしていて、終戦後からずーと固定だった。
鼻翼に穴を開けて金のピアスを通す習俗は南アジアからインド以西にまで普遍に見られる。
暖地に限らず寒冷な中国北部やチベット山地でも見られ、民衆にはなんの違和感もない。 おもに女性が左側鼻翼にだけ金のピアスまたは金の輪を通している。
ときどき指でつまんで金の輪を回し、癒着したり穴が狭くならないようにしている姿はとてもチャーミングである。
酸素取り込みのための穴ならば鼻翼の左右に開ける発想になろうからこれは宗教としか理解がつかない。
古来日本にはない習俗なので、もの知り顔で解説などする愚は避けるべきだが、
続く戦乱のなかで子供を抱いて逃げる際、食糧医薬と交換するには金がよいと代々の母親は娘が生まれると鼻に付けてけてやったものかも知れない。
鼻中隔に穴を開けて、鼻の中央に大き目の輪を通すのはさらに西に進んだアフリカ大陸の方に多い。
大切な家畜の牛にも一族の刻印を打った輪を同じように入れて一緒に暮らしているところをみると、鼻の穴は崇高な宗教行為に違いない。
おしぐれさんが当時うろうろしていた八王子アメ横で手に入れたノーズエクスパンダは、ベトナム戦地に赴く米兵士に支給される 「ファットマン」 。
サバイバルキットとしてUSアーミー正規装備品のなかに含まれていたそれは、ジャングルとデルタでの戦闘で負傷し仲間とはぐれたときの生き残り用だから超ヘビーな一品であった。
「生死の局地でもしも地雷を踏んだなら、コレを使って鼻の穴をおっ拡げ出来得る限りの酸素を体内に取り込みデルタに浮いて信号弾を撃て。
GPSが信号を受けたなら、5分以内に大統領のジェット コブラが必ず救出に行くと約束する。 それまで決して呼吸を止めずに待つんだ」
リンドン・B・ジョンソンはそう言って米大統領に就任し、ジョン・F・ケネディがフランスより引き継いだあと膠着状態だったベトナム内戦への介入を本格化させた。
いわゆる北爆である。
米兵の多くを占める黒人兵は呼吸効率が人類最高なので 「ファットマン」 など要らない。
ジッポーのオイルライターとホウレン草の缶詰さえあれば、彼らは敵をせん滅した後の泥河を渡って生還できる可能性が白人兵より1%高い。
ジャングルが深いほど、デルタの泥が重いほど彼らの血には遠い父祖の国のDNAがよみがえるのである。
立川基地からC30輸送機 キャリーボーイ で出発する前夜、外出を許された彼らはゲート前大通の向いにあった〇丹デパート裏の路地の暗がりに立っている闇の買人にソレを売った。
日本円の現金はすべて五百円紙幣で統一され無造作に束ねて輪ゴムで留めたソレは、路上に落としても音を立てることはなかった。
Gパンの尻ポケットに輪ゴム束をねじ込んだ彼らは、砲弾音の響かない最後の一夜を立川の遊興街に消えて行った。
係りB : 「あのぉー 先生。 そろそろ商品レヴューに取りかかっていただきませんと ‥ 」
レビュア : 「やかんしー ! 終戦前夜の歴史的背景から書かならんば最近のへなちょこ読者は分らんのんじゃ。
これを書くんはのー 戦後闇市派の雄たる 高倉 健 さんの背中を見て育ったわしら団塊1回生の責務なんじゃー。
わしらは先の大戦は知らんがベトナム戦争は見た。 ただし対岸からやった。 わしはのう 弾の届かん対岸にいたことを恥じておるんじゃー。 悪いかー」
おしぐれさんが初めてソレをおのれの鼻に貼ったころの世の中は、保守本流の流れの中に身をおかないと異端者と呼ばれた時代。
肉体を加工して好成績を得ても、それは邪道の卑怯者とののしられたのである。
この考え方は宮本武蔵を敗戦疲弊の日本に迎合するようリメークして新しい日本型英雄に書き替えてしまった吉川英治の責任が大きい。
鼻孔を拡げるテープが肉体の加工に当るのか。 ならば見えないようにマッチ棒を折って鼻の穴に押し込んだのは卑怯か。
ジョーン・バイズが反戦の歌を歌うのは反国行為か。
マリリン・モンローが豊胸術を受けたのは米国の恥か。
そんなことはあるまい。
祖国にはマリリンが胸を開いて待っている。 その一念でロッキード・ムスタング 2 戦闘機やグラマン双胴爆撃機ツイン・バードのボディにモンローのヌード絵を描いた整備兵は罰を受けなかった。 そればかりか兵士の士気を高めた功績で勲章を授かっている。
係りB : 「あんのぉー 先生。 わたしー そろそろ帰りますけどぉー」
レビュア : 「なんだとー この軟弱者めがー。 わしが心血を注いで書いておるレビューはどうするんじゃ。 勲章はどうなるんじゃー」
写真でお見せしているのがくだんの 「Turbine」 。
小ぶりな形状の左側がミデアムサイズ。 おしぐれさんはこれ。
試しに右側のラージサイズも挿入してみました。 牛が鼻輪で引っ張られて行くときの気持ちがよーく わかりました。
この写真はクリックで拡大表示できます。 よーく洗ってから写真を撮りました、そちら様のサーバーが汚染されることはないと存じます。
写真 (中) メール便で送られて来たときのパッケージと装着法の説明文。 欧州臭の漂うイラストです。
(右) はおしぐれさんが携帯容器として再利用している 「紀文 酢だこ」 のプラ箱と説明文の表側。 ライダーの絵が描かれていることからも自転車専用であることがわかる。
新製品 「Turbine」 は鼻に貼るのではなく鼻穴に差しこんで鼻孔を拡げる発想。 ありそうでこれまでなかったのは内装することでの危険性だった。
係りB : 「そらーそーですなあ 先生。
マッチ棒鼻に突っ込んで全力の逃げをかましてる最中にやで、体温が燐(リン)の発火温度まで上昇したら、
(日本のマッチには使われないが白リンの発火は40℃といわれる) 文字通りの 「炎のランナー」 でございますなあ」
レビュア : 「おまん ずいぶん分ってきたやんけ。 わしふうのものの見方が身に付いたようだな。 えらいぞー」
内装式鼻腔拡張装具 「Turbine 」 、鼻に装着して50kmほど走ってみました。
ちなみに素材にリン系は使っておりません、医療用プラスチックという安全な材料で出来ておるのだそうです。
<以下に使用感>
鼻の外側に貼るテープがうまい位置に貼れたときと同じくらいの通気を感じます。
走行中のパフォーマンス向上が確認できたような気がいたしますのでご報告させていただきます。
何ワットの出力増となったかとか、そーゆー計測値はありません。 ワット計がないものですから。 そのよーな高精度測定はメーカーチームでやってください。
わたくしのよーなプライベーターの唯一の計器である CAT EYE 社製の心拍計による高負荷ゾーンもがき中の印象では、
「呼吸が楽になっているのかなー でもやっぱり登りは苦しいなー。 すれ違うヤツがわしの鼻みて笑うしー」
あに! そんなレビューがあるかってかいね?
えろー すんまへん それしか分らんかったとです。 その代わりと言ってはなんやけど、「その他のレビュー」 ならなんぼでも書けまっせ。
<その他のレビュー>
1 装着の仕方にちこっとコツがあり。
鼻穴に入れるとき一気に押し込もうとすると抵抗感と骨材がフニュっと曲がる感触がある。
本体をペロリと舐めておいて滑らせるように挿入する。 このとき顔を左右に振り、イヤイヤしながらクイッと押すと何故かスッポンと進んで手を放しても取れない位置に収まる。
スッポン感を得られるサイズがベストサイズ。 アジアン人にはミデアムが良さそう。
もしもし ダンナ。 これアダルト系グッズのレポートやおましまへんでえ。 頼んますよダンナ。
2 途中でコンビニに立ち寄るとき。
女性やカッコマンなら外してからの入店がよいでしょう。
外した Turbine を自転車のサドルの上などに放置してはなりません。 友人Cさんは 「カラスに持って行かれた」 と嘆いておりました。
あの黄色い外観と女性生殖器の小型模型みたいな形状が殻を割ったカタツムリの身に見えたのでしょうね。
Cさんは見事な造形だと大変感心しており、また買うまでの間おしぐれさんのラージサイズを借りて入れています。 返して欲しくはないけどねえ。
おしぐれさんは鼻に着けたままコンビニの自動ドアを入る。 監視カメラのレンズををチラリ見てからトイレへ進み、鏡の前で外して鼻穴の状況を確認する。 そのあと水ですすぎ洗いをして携帯容器に収納し、背中のポケットに入れる。
トイレから出たら再度監視カメラをチラリ見る。 容貌の変容をカメラに登録して後日コンビニ強盗嫌疑がかからないように予防しておくのがアスリートの知恵である。 ヘルメットを取るのも同様の見地から。
容器は商品が送られて来たときに入っていたケースでは不可。 どーも欧州製の収納プラ容器は簡素化すぎていけません。
店内にやや太めの奥様がうるさいガキを連れて入店なさり、さらには一か所に立ち止まっていらっしゃるとき、狭くなった商品棚の間をすり抜けただけで潰れます。
なのに欧州プラ容器は商品本体を取り出す際、折り込み箇所が多くて硬くて指先を切る。
海外通販で届いたパーツの梱包を解き、内部の透明容器を開けるときには皮手をしてから始めないと危ないこと多しです。
あーゆーパッケージング感覚というものはわしらアジアンには分らん。 ユーロンは指先も肉食系の爪で装甲されているんでしょうかねえ。
おしぐれさん自作の携帯容器というのが写真 (右) です。 コンビニで買った 「紀文の酢だこ」 です。
どこにも鋭角がなくフタはピッタリ閉まって汗など通さない、そして外すときにはポンと軽く良い音とともに微かに酢の香りが漂い出て精神を覚醒する。
ユーロンは和音の響き香りなどというものには無関心なのかも知れないが、日本武士道ではたしなみの重要素である。 兜に白檀の香を炊き込めながら辞世の句など一筆参らせるのである。
それは、ポリシーなきおしぐれさんのような へたれ であっても よーく 解かるのだ。
さて 「紀文の酢だこ」、 中味は食べてしまってもプラ箱容器を捨ててはいけない。
この小物入れとして最適サイズの箱は全体で柔構造なので背中に入れていて違和感がない。 万一の転倒落車時にはほど良い緩衝材となる。 落ちるときには猫のように身をひるがえして背中から落ちるのだ。
おしぐれさんは若くてカラダの柔らかかった40年前に芝生の上で落車の受け身作法をみっちり修行したから大丈夫。
今でも出来るかどうかの確認は、危ないからしないことにしている。
この容器に 「Turbine」 のほかコンビニのプリペイドカードと緊急連絡先を書いた臓器提供承諾書と健康保険証も入れて出掛けます。
臓器提供は 「する」 に〇をしています。 そのほうが救急隊の取扱いが丁寧だったと友人Cさんが言っていました。
あのひと一度生き返っているのです。 臓器ドナーとしては裏切り者といわねばなりません。
3 冬場の注意
暖期でも体調と空気湿度によっては走行中に鼻水が大量に流れ出るときがありますね。
自転車用グローブはよく出来ていて、親指の甲にあたる部分にタオル地の鼻拭き布が縫い込まれている。 自転車乗りは手袋で鼻水をゴシゴシ拭いても奥さまから叱られることはないのだ。
とはいっても乾いた鼻水でテカテカになった手袋を子供とはいえ孫娘の洗濯ものと一緒に洗う愚行は避けたい。 まな孫娘に嫌われる最大の要因である。
あのお猿のケツのようなパッドの付いたパンツもしかり。
そういえば手袋の手のひら側も動物系ですねえ。 ハンドルを握ったときに強く接触する部分にパッドが仕込まれていているのは当然としても普段は何処にも触らない横の部分、空手チョップのときしか使わない小指の下から手首までの距離にも厚い皮が二重に縫い込まれている。
ここは落車して地面をスリップして行くとき、路面に擦りつけてブレーキを掛けるためのものなのです。
夏用でさえ木登り尾長猿の手のひらの肉球みたいな手袋です。 ですから厳寒期用といったらもうマウンテンゴリラかヒマラヤン雪男さんの手のようで、そのままホラー映画に出演可です。
さて、光る鼻汁のうえにロードの土埃が付着した渾身まみれのグローブを、黙ったままゆっくりと脱ぐ男の肩越しにオレンジ色の夕陽が射しかかる一瞬の逆光のさまは一幅の蒔絵のように美しい。
このシーンは高倉 健さんに演じて欲しかった。
健さん亡きあとは自分でやるしかないだろう。 他にいるか? ケビン・コスナーに演じきれると思うか?
名作シナリオの演出を自作自演するためにロードマンはひとり今日も荒野をめざすのであった。
んでもって、「Turbine」 を鼻穴に挿入したままの走行中、鼻水が大量に流れてきて鼻先から滴る場合どうするか。
このことはぜひ事前に承知してから走行を開始していただきたい。 ここが本レビューのキモとなろう。
それは、ハンドルから手を離すことなく顔を横方向にフッと振るだけでよいのだ。 早朝の鼻汁は比較的粘度が低いからそれだけでカラダ中から集められた病原菌の粘性体はTurbine先端から千切れて後方に飛んでゆく。
それでおしまい。 手袋を汚すことなく鼻汁を吹っ切れるのである。 先端のU字形のところにうまい具合に鼻汁が集まってくるのだ。
これは凄い発見であった。 おそらく開発メーカーもこの副効果には気づいていないのではないか。 拭く効果 なーんちゃって。
後続車には迷惑であろう、背後に付いて隙を待っている時は前走車のレバー操作の瞬間などを注視している。
鼻を拭くときは手がハンドルから離れるはずなのに、なんの前ぶれもなく鼻汁爆弾が水平に飛んで来る。
時速40kmで2メートルの車間距離だと顔面への直撃は避けられず、その粘着性衝撃は顔からサングラスをもぎ取って行く。
Turbine ライダーはそのときを待っていた。
ヤツが呼吸と視界を失って一瞬たじろいだその時に渾身の逃げアタックをかますのだ。
係りD子 : 「セーンセ うち こんなんイヤやー。 ネバー鼻クソの話しばーっかりやないのー。
こーんなん長ごうてネバーるレビューは送るフォームがないねんよー。 紙に印刷して持って帰ったら鬼の偏執長にドヤされるぅー」
レビュア : 「おおそうか、それはスマンことをした。 わしが直接鬼宛てにメールをかまそうでの 心配せんでもよか。
それより おまん、いつの間に担当を交替したんだい? ケーキでも食べに行こけ?」
係りD子 : 「ウーン センセ 優しなあ うち センセ だあーい好きえー」
レビュア : 「うんうん わしな おなごの係りには優しいんじゃー。 ロードマンの本能なんじゃよー」
係りD子 : 「あーんらぁ セーンセ 本能だなんて 妖しいこと言ったりしてえー。 ここはお寺だったのね?」
レビュア : 「こらー わしは明智光秀かあー。
おお そうじゃった。 たしかにわしは僧侶じゃったが 忘れとったわ。 そろそろ新年も近いで 梵鐘のすす払いなどしょうかのう。 盆と正月で ぼんしょう なーんちゃって。
ああ しゃれか? これはのう わしの信念の誓いなーんじゃよー」
この章 おわり
当掲示板の大家さんである 団塊屋オーナーのなーさん のご奔走により、このたび 故宮的中国史研究家である 北の山〜さん と知故を得ました。
はい、 団塊仲間文壇の主峰の座を狙っているあの 北の山〜 め であります。
早くも千年の知古のような書き方をしております。 どうぞお許しください。
過日なーさんに託した伝言 「おーし 受けて立とうじゃないか 青二才め」 に対し、氏より丁重な返信をいただきました。
それで ちこっと 知故った。 と洒落たくて ‥ いやー のっけから申し訳なし。
若き研究者の 北の山〜さん ですから私ら団塊世代を扶養する年代なんです。
いったいどれ程の負担をお願いしているのか。 そーゆー下世話かつ複雑精緻な計算は団塊屋さんの専門です。
私は好きなときに寝て、目が覚めたら自転車で出かけ、雨の日はローラー台に乗るかおしぐれさんを書くか、その前に 信州から届いた 宮坂酒造の美味しいヤツを一杯遣って昼寝しよーかと、極めていいからかん (後述) であります。
北の山〜さんの近著の冒頭部分にたびたび、「なかなか進みません」 とあるのを読むたび、たっぷり時間のある いいからおじさん は心が痛みます。
若き文学者には研究と文筆以外の時間を強要してはいけない。 おじさんは思います。
団塊屋オーナーのなーさん、北の山〜さんを団塊屋の学芸員に指名して参与なみの級俸を付与し、自在存分に故宮史研究に没頭していただく。 こーゆー提案はいかがでしょうか。
なに? わが国のGDPがアベノミクスの当初予想値のとおりだったなら、そーする心算だったってかいね?
今回の衆院解散にはやられましたな。 栃木のエース みっちゃん2 などにとっては新党準備に奔走するさ中の解散でしたから、こりゃー意地悪が過ぎるでや。
さて、北の山〜さんへ。
ご貴殿の中国研究には出て来ないであろう おしぐれさん とか いいからかん とか へたれマン とか、極めてヤマト語であるこれら俊水用語について解説をしておこうと思うのです。
「なかなか進みません」 ではなく 「おー みなの衆 待たせたなあ。 掲載してやったでこっちさ来て読めし」 そーゆー横柄かつ極めて みっちゃん 2 的態度をキープするのに俊水用語は役立つに違いありません。
* おしぐれさん
時雨が語源。 本来は晩秋の季語ですが急にザァーっと降って15分でまた晴れて午後の蒸し暑さを増す夏のしぐれ雨を連想。 転じてなんの役にもならない。 濡れても平気だがなんだか鬱陶しい。 こぜわしいひとの冠詞。
* いいからかん
よい唐の漢。 痴漢のかん 風来のひと。 言動にはてんから保障なし。
* へたれ
屁こ垂れ を語源とする向きは多いが、そうそう簡単なものではない。 サムライの切腹と同義とする研究者もある。 ヘタる とカタカナ表記すると工業用語で 減衰する の意となることにも注意。下手る がその源初か。
樹上より柿の実のへたが腐って落ちる直前のさまは壮絶。 地面を紅く染めて音も立てない。
*宮坂酒造
小沢 昭一 師の話中しょっちゅう登場なさる ”宮坂おとうさん” の酒蔵会社かどうかは定かでない。
そうであろうとなかろうと、ここまで有名になれば個人名の侵害とはなり得ない。
中国史のほうに出てくる張飛さんや曹操さんや始皇帝さんは苗字か名字か官職名か感触が判としない。 そのせいか硬い感じがしますね。 漢字だから。
おしぐれさんにももちろん漢字は出てきます。 漢字かなまじりが日本の国語だからですが、かなばっかりだったらなんのことだかわからなくなります。 適度に混じってソフト感が生まれます。
だからといって、三国志の英雄を愛称のちゃんづけで呼んでは本国からクレームがつきます。 「チャンとしなさい」 なんてね。
日本で最も有名なチャンはアグネス・チャンとマイケル・チャン。 このふたりだけはチャンで切っていいのです、その時点で尊称となっています。
ところで最近 made in china という表記をとんと見なくなりました。 PRC と書いてあります。 どこの略称かと思っていたら中国のことだった。
product by republic china というのだそうです。
もう支那ソバとは呼べないのです、PRC麺 (プリック ミェン) というのですかね。
もっともラーメンは戦後日本のオリジナルであって、中国では温麺・湯麺・担麺でないと通じませんね。 ギョウザだってそうです。 餃子日本一の宇都宮餃子は焼き餃子、しかも羽ねつき。 中国では焼かない、蒸すかスープで煮る。 復員兵が持ち帰って宇都宮で羽ばたいたオリジナル羽ねつき焼き餃子は遠慮することなく世界一と称してよい。
*レールマン・ラフネンコ
おしぐれさんの古い友人。 定年までは北海道でラフな鉄道ダイヤを編んでいた。
あるとき、役員室に呼ばれたレールマンは大変な謀略の計画を明かされる。
北海道レールウェイ株式会社 (仮称) が国の補助を受けて新規建設中である北海道新幹線の広軌道を利用して、ICBM ピースキーパーのロケットランチャー台車を高速無尽に走らせ、神出鬼没の発射基地化により※国の極東戦略上の最重要塞となって日本から独立し、国名をリパブリック・ノースレールアイランドと称する。
国の基幹産業は北海漁業と酪農業・観光のほか、ここが本音だが目の前の北方領土を※国ICBMを後ろ盾にして全島奪還し、さらなる領土拡大を国是とする。
謀議完遂のあかつきには、今ここにいる役員が全員内閣の要職に就くほかレールマンを鉄道省長官に任ずる。
「どーじゃ オメさん ここにある血判状に印しを押さんか。 社長、専務も是非にと言うておるぞ。 オメさんの編むレールダイヤはプラチナムだってなや。 おまけにロシア語が話せるそうじゃないか。 有能なオメさんのことは アイ ノウ じゃよ フエッ フエッ フエーッ」
北の黒幕とされる大地屋商店 (仮称) の会長が奥の席から鼻の穴をふくらませた。
「どこがリパブリックじゃい、 バイ国キングのペテン師どもめ。 ワシはたった今引退するけん話は聞かんど!」
敢然と椅子を蹴ったレールマン。 役員室のドアを開けたらそこに立っていた社長秘書のピリカが目にいっぱい涙をためて黙って差し出す花束を受け取って、エレベーターの前まで歩いたところでよろめいて倒れた。
北海黒百合のフレーバーには何やら化学物質が盛られていたらしい。 ピリカよ おまえもかーっ。
北大鉄道病院 (仮称) の玄関を出るレールマン・ラフネンコの横顔は晴々と清々しかった。 過去の記憶をほとんどなくしたタダのおじさんになっていたからだ。
宇都宮に帰ったレールマンのその後のことは、バックナンバー 「四季咲き桜」 「レールマンの逆襲」 などを参照されたい。
ある種の化学物質でコーテングされた彼の脳からコート剤が少し剥がれたのは、おしぐれ師匠による自転車特訓のサドル振動とメンテ用チェーン洗浄ケミカル剤の蒸気を鼻から吸ったことでコーテングが溶けたのだろう。
市販のチェーン潤滑剤には米国デュポン社のフッ化製剤が主剤として使われていることが多い。それを溶かして洗浄する日本クレ工業 (仮称) の実力は凄い。
そのデュポンのフッ化剤が脳にどうなるのかここに書けないもどかしさはあるが、デュポンとムジナ穴を同じくするCIAの調査能力と攻撃のえげつなさを知っているボクらは何もいわない。
レールマンはあいかわらずボケたままである。 最近作でこのふたりが北の大地をめざし装甲車のようなトレーラーを引っ張って旅をしている真の理由などボクは知らない。
* お方さま
謎の美女 峰 雪子こと ラフネンコ 雪子 = おまんの方さま
赤いプジョーのトランクが沈み込むほどのジュラルミンケースの中味が何処から支援されたものなのか?
そーんなこと、ボクが知っているはずないでしょうがや。 ほんまですってば。
いやーっ 調子にのって登場人物の個人情報まで披歴してしまいましたなあ。
あのね、 これは架空のハナシですけんね。
このあと どーゆー展開になるのか長期展望などハナからない いいからかん の でほらく ですけんね。 わかってますやろ。
*でほらく
出法楽 あるいは 出呆楽。
語源となったエピソードはバックナンバーでどうぞ のこころだー。
*作家のえせ関西弁
このひと、うそっぱちのときは何故か名古屋訛りの広島ふう関西弁になる。 山梨〜新潟〜山形弁のときには割とまともなこと多し。
北の山〜さん、俊水掲示板はこーんな調子なんです。 ある種のアナーキスト向けに暗号化された指示書の掲示板なんです。 本気にしてはいけません。
禁を冒して解読をこころみる変な仮面の男たちのアジト屋上に生タマゴ型UFOが来ていたりするのをユーロ支部ハットリ諜報員から報告されています。
この章 おわり
突然の大地震。
その直前にかけっぱなしにしてあった宇宙TV宇都宮チャンネルが叫んだ。
「ぺフォー ぺフォー 長野で地震。 備えてください! 大きいです。 大きいです。
観測 P波 通過ぁー、 続いてS波到来 3 秒前ぇー。
臍下丹田に気を込めて構えーっ。 おーっし 来るぞぉーっ! サン ニィ イチ 押忍!」
ゆらゆらから がんっ と来て ぐらぐらグラぁ〜ッと大揺れに変わり、ほどなく収まった。
棚から落ちた物はない。
揺れの間もローラー台を漕いだままのおしぐれさんだったが、そのペダリングにも特に影響はなかった。
ヘソはいつだって締めている。 肉体の修練と精神の修養を高めたアスリートには極めてあたり前の当然のことだった。
うーん さすがはインター ステラーのテレビだ。
400Km離れた震源から地震S波がP波の後を追って関東に到達するまでの時間は、地域補正値をプリセットしたカシオ電卓ソロバンの電源を立ち上げて長野 → 宇都宮と入力する間もないだろう。
放送値は大よそのハッタリに決まっている。 さりながら実質は極めてピッタリだったのだ。 大したものである。
彼もまたオールドな真空管の身の上ながら辛苦な空間にみずからの身を晒し、古術放電流 最後の伝承者としてのプライドを賭けて 奥義 プラズマン の荒行に耐える覚悟の証しであったろう。
JR大糸線沿線の東側から関東平野までは地殻の浅いところに地震の伝播速度を遅延させる要素の構造帯はないといわれている。
だから2次波の大揺れは距離×Pの倍秒遅れで到達し 「いまくるよ はいよー」 の計算は補正値なしの大よそでもOKという大胆さなのだ。 修練が確信を生むのだ。
石油帯や天然ガスの層は揺れの大きなS波を吸収減衰するダンパー効果があるといわれるのに対し、およそ7km毎秒速といわれるP波は個体以外でも平気で透過して到達してくる。
つまりここには鉄・窒素由来の岩盤組織はあっても石油・ガスのような気液資源の埋蔵はないということだ。
それは残念なことなのか幸いなことなのか判断には個人差があろうが、そんなことを考えている間に遅れてS波がやって来たという訳だ。
それがどれほど速いかというと、現在天候不順で打ち上げが延期されているJAXAの 「はやぶさ 2」 に搭載されている小惑星表皮採集装置 ”インパクタ” の発射初速度5.2km毎秒に迫る3.5km毎秒速といわれている。
これではどれほど速いのか余計に分かりませんね。 いいじゃーありませんか、とても速いんです。
今いくよ・くるよ というお姐さん漫才がそーゆー観点からネーミングされたのは間違いない。
そのこころは、 太った相方の反応速度が若干ずつズレて累積するたびに衣装の白鳥の首が上がる。 ‥ うまいっ! 上手っ! でも説明が長いから座布団は1枚。
そんなことはともかく、褒めたいのはおしぐれさんの集中だ。
震源震度6−の揺れをものともせずにペダリングを続けるアスリートの使命感の崇高さには頭がさがる。
3・11のときはフクシマに繋がる電線塔の下でローラー台にセットした0.9キロワット毎分の発電機を死にもの狂いで回していた。
あのとき、県境の山中で電線が切れてさえいなければ原子炉の冷却は継続できたはずだ。
この男なら 「人類の移住可能な未知の惑星」 を必ず見つけて地球に帰ってくるだろう。
映画 「インター ステラー」
11月24日(祝)より順次公開開始、 地球環境を一度でも汚した覚えのある者は見ておくべきだ。
アンタのことだよ! スナック帰りに雀の宮銀座館の駐車場の塀のところで立ちションしたべ! オラは見てたぞ 隣りに並んでな。
時間の経過とともに長野県北部での惨状がわかってきた。 白馬村からの中継映像が倒壊家屋や寸断した道路を映しはじめた。
さいわい死者はなかったようで、怪我人は収容が進み行方不明者はないそうだ。
お見舞い申し上げます。 建物ならいつかは再建できます、今はたいへんでもいつか必ずできる。 頑張ってください。 応援しています。
先年、小谷村から白馬五龍や大雪渓をまじかに見ようと村内の道から山の道に分け入って二日間挑戦したことがある。
マイカー規制地点を過ぎ、路線バス終点を過ぎ、歩いて登山口に向かうハイカーを追い越すたびに 「がんばってぇー」 と声をかけられ照れくさかった。
あまりの斜度にロードバイクのギヤ比では進まなくなり、日陰の苔の上で靴をペダルから外す間もなく転倒した。
下を向いたまま降りてくる山道ですれ違う登山者たちは、白いジャージのひじと背中にべったりと付いた緑色の苔土の痕跡を見て黙って視線を外してくれた。
敗戦のバイカーに 「あら どーしたんですか?」 とか 「もう上まで行って来たんですか? すごいわねえ」 なんて言葉がどれほどの恥辱であるかを白馬の登山者はよく知っていた。
大雪渓をあきらめ、下り基調となる反対側の山の小川村へ行ってみた。
道の駅のトイレの白漆喰の壁に 「日本一 美しい 小川村」 と書かれた幕が風に揺れていた。 柿の実が熟した頃の夕陽の小川村は世界一美しいに違いないと思ったものだ。
あのとき通り過ぎた美しい村々の民家の屋根が落ちている。 なんということだろう、冷たい雨も降り出したようだ。 余震はまだ続いているという。
あの辺りは昔から地震の巣があったように思う、松代群発地震と呼ばれていた。 最近あまり聞かないと思っていたら奴めエネルギーを溜めこんでいやがった。
糸魚川‐静岡構造線と関連あるともいわれているが、地殻エネルギーの発露なら糸魚川の海に注ぐ美川 青海川の源流域へ翡翠の塊りを押し出すだけに止めてもらいたい。
<目が覚めたがそのまま寝てしまった。朝になってかみさんにこっぴどく叱られた>
ローラーから降りたおしぐれさんが最初に打った安否お尋ねのメールに対し、数時間後に返ってきた長野市在住の知人 N さんの返事は極めておとなしめであった。
こっぴどく叱られたという奥さまが、まだ近くのコタツでお茶など啜って居たからかも知れない。
その程度でよかったと言えばそうだが、そーゆーことで オメさん いいのか。 再びローラー台に向かうおしぐれさんは呟くのであった。
信濃の国は大和のまほろば、つまり信州は日本のヘソだから地震が集中する。
これは地学者からは一笑に付されるであろう。 しかし医学者やジムのスポーツトレーナーは大いにうなずくところである。
思いっきり、地震のような屁をコキだしてごらんなさいな。 ほら、 ヘソまで揺れるでしょうがや?
腹囲95cm 脂肪層5cm超の N さんなら揺り返し分も含めて振幅はそうとうでしょうなあ。
揺れが収まったらしっかり起きて、かみさんに怪我のないことを確かめ、 「オレより先にお前を死なせん」 と どさくさまぎれに言い、家長として毅然とご近所に声掛けをして、とくに一人暮らしの高齢者には気を配りましょう。
こーゆーこと、いちいち書きたくはないが最近の前期高齢&予備者は体力があるからその分眠りも深いんだわ。 深酒のせいもあるがねえ。
奥さまの方は旦那のいびきの振動に慣れっこなので少々の揺れには目が覚めない。 これはそれでいいのだ。 そーやって地球は丸くおさまるのだ。
この章 おわり
「なあ レールマン、北海道はあっちやど。 フェリーに乗らんとどこさに行くんじゃ、そっち行ったら竜飛やないかい。 太宰の文学碑しかないわいな。
ほら見いや 走っとるクルマがめっきり少のうなってきた。 軽トラばっかりやないか」
相方から返事がないのでしかたなく外の景色を眺めていた。
津軽はすっかり晩秋の気配である。
道路の奥の丘陵はすべてリンゴ畑だ。 頂上近くまで見事に耕された畑には枝の先に残って真っ赤に熟したまんまるのリンゴたちがこちらを向いて揺れているのが見える。
自家用なのだろう最後の収穫の日を待ってみちのくの柔らかな陽光を遠慮がちに照り返している。
太宰も見たのだろうか。
「あーっ 吉 幾三 記念館 なーんて看板があるやんけ。 こらー そうとうローカルなところに来ちまったでえー。 彼のいうとおりや、電信柱とデカパイの乳牛しかおらん。
記念館ちゅーのはソフトクリームを売っている牧場のことけ?」
「おしぐれさん あんた さっきからうるさいよ。 しばらく黙っとれ、着いたらマグロを食わせてやる」
「マグロかいな、 そらええなあ。
けんどマグロは大間でないかい? 大間は下北の突端やで、津軽半島を行っても大間とは離れるだけやろ。 それともなにけ、このクルマ 海も渡れるんけ?」
「馬鹿なこというな、トレーラー引いて海を渡れるものか。
いいか よく聞け、大間だけがマグロの基地ではない。 海はソルトウォーターという形態自由の境目のない溶液で繋がっているのだ、よってそこを泳ぐマグロのうちのヘソ曲がりかつ減塩志向の小群れが竜飛岬の清水を飲むために岸に近づくことがあってもいいのだ。 公海航行の自由なのだ」
「あのねえ いつか言おうと思っていたけんど、オメさん そのバカボンパパみたいな口調はやめれ。 とても生来のバガボンドとは思えん」
「なんだとー!」
「ヘソ曲がりはあんたでねえの、ほんまもんを本場で食うてこそ旅の醍醐味やないか。 わし ヘソの真っ直ぐなマグロを食いたいなあ」
「黙れ だまれ! えせ関西弁のおろかな者よ。
ツアーバスのミーハー客が素通りする辺ぴの浜にすっくと立ちてひとりヘソ曲がりのマグロを食う。
醤油などいらん、ワサビなどはもってのほかである。 トッピングが欲しければ青森名産大玉ニンニクの生おろしかけ。 これぞパーソナル旅の本質なのだ」
「ほえー オメさん ええこと言うのう。 あの三文作家のやつに聞かせてやりたいもんだでや」
「ふん、 おまんのようなミーハー者は後ろに行って寝とけ。 戻りはおまんの運転じゃ」
キャンピングカーの狭い中央通路を最後尾まで行って硬めのソファーに座るまでのわずかな間に、おしぐれさんは二度ほどふらついて肩を左右の構造物にぶつけた。
レールマンの運転は顔に似合わないラフなハンドルさばきなのだ。
「痛てて、 おーい ソフトな運転しろよー」
鉄道線路ではブレーキとパワーレバーだけだからいわゆるステアリングハンドルなるものはない。ガードレールに沿って勝手にキャンピングカーは曲がって行くと錯覚するクセが彼にはあるから寝てなどはおれないのだが、万一の際には後部にいた方がダメージが少ないという判断である。
後ろの窓から牽引されて追走してくるトレーラーが見える。 前走車の巻き上げる木の葉をその端正な顔面にバシバシと受けながらも離されまいと必死について来る、歯をくいしばって走っている。
マラソン35Km過ぎの修羅場・決死の追走・サングラスを捨てた。 そういう悲壮かつ胸の熱くなるイメージなのは前引きのレールマン・ラフネンコ選手のハイペースのせいだ。
国内最大寸法を誇る豪華トレーラーの車内に例のサイクルトロッコとおしぐれさんのコルナ号が積まれている。 人用の居住装置を取り払って二台のマシンと防寒着やヘルメットなど装具・発電機・スペアパーツと工具類などを固定しているので内部は極めて無骨である。
外観はシンデレラハウスのようでも中のしつらえはおしぐれ自転車工房とあまり変わりがない。むしろ支店の小屋である。
万力が取りついたダイニングテーブルの足元で発電機が唸っているシンデレラルームに女性を招き入れても、「ダメよ〜 だめ だめェー」 であろう。
牽引トラクターである前走のキャンピングカーと合計の全長は大型トラックほどとなり、狭い道は不得意であるがここまでのところは国道を走って来ているので何とかなっていた。 この先は分らない。
ふたりとも大型トラックなど運転したことはない。ところが乗用車ベースのトレーラーは牽引免許なしでOKだというのだから日本の道交法はラフだ。
そのおかげで怪しい二人組には不相応な豪華&ロングトレーンはふらつきながらも竜飛崎の方向に向って走っている。
めざす北海道にまだ雪の知らせがないので海峡を渡る前に津軽・陸奥あたりで物見遊山しよう。 そーゆーへたれな発想であることに間違いない。
無人のおしぐれ小屋の前で作家が途方にくれていたとき、まるで面倒な物語の始まりを予感させるような真っ赤なプジョーに乗ったお方さまが現われる二週間ほど前のことであった。
伝説 3 おわり