なべログ
雑感……東京のおもしろ建物探訪記
文系出身の私がこの建築業界に入ったのは約30年前のこと。
当初は建築の「け」の字も知らない私でしたが、(今でもほぼ素人の域を出ていませんが…)長年身を置いていると、ある程度の知識が身について来るもので、それと同時に建築そのものに興味が湧いてくるようになりました。
建築はあくまでも技術が主体の世界ですから、平板で面白味のないものの様に思われがちですが、どうしてどうして。
知れば知るほど奥の深い世界で、珍しい建築物の話を関くと、つい実物を見に行きたくなってしまいます。まっ、そんなに沢山見ていませんが…
そんなこんなで今まで見に行った建物(ではないものも有)の中からいくつか見つくろってご紹介してみたいと思います。これが建築のこと、ひいては当社への興味につながって頂けたら幸いです。
どうぞ肩の力を技いてお付き合い下さい。
▲▲▲ (1)「東京都庭園美術館(旧浅香官邸)」 ▼▼▼
JR目黒駅で下車、目黒通りを清正公前方面へ徒歩で約10分左手。門を入って真正面に見える白亜の建物が、「旧浅香官邸」です。
建物の外観は、直線的なRC(鉄筋コンクリート)造で、現在ではとりたてて珍しいものではありませんが、内装と調度品が素晴らしく、一見の価値有です。
玄関ドアのガラスに描かれた女性のレリーフに感心しながら玄関ホールに入ると部屋の真ん中に鎮座ましましている異様な物体にまず度肝を技かれます。
解説書によりますと、これは「香水塔」となっていますが、どのようにに使ったのかはわかりません。ある種のオブジェと考えれば良いのでしょう。
1階部分で公開されているのはこのホールだけで、2階が美術品の展示スペースになっています。で、ここから階段を上がることになるのですが、この階段が豪華!
御影石と大理石で出来ているのです!
階段を上りきったところにある手すりの終端部分には、真鐘の円盤に沢山穴の空いた吸殻入れの様なものが設けられています。何かと思い案内孫の方に尋ねてみるとナント花剌しとのこと。このおしゃれな感覚には参ってしまいました。
2階部分の内装にはまさに唖然としてしまいました。壁紙は指で押すとやや弾力のある材質でとても上質なもの。ドアも幾何学模様を組合わせた金属板を張付けた今風のデザイン。
換気孔にまで同様のデザインが施されているのには舌を巻いてしまいました。
浅香官夫妻はヨーロッパ生活が長く、当時の最先端のデザイン(アールデコ様式)や技術に甚く感動して帰国、自宅の建設に際してそれらをことごとく採り入れようとした結果が、この日本離れした、当時としてはかなり先進的な建築物となったと言われています。
浅香官邸は昭和8年(1933年)築といいますから、約80年前の建物。まだ今日の様に建設資材の工業化や規格化が進んでいない時代のこと、材料のほとんどが欧米からの輸入品で賄われたと言います。必然的にすべてが特注品!現在でもあれだけの資材を揃えようとしたら相当な金と手間がかかるだろうことは容易に想像できます。それをあの時代にやってのけた
ことには驚きを禁じ得ません。
毎年4月頃、「アールデコ展」と称して建物自体を展示する催し物がありますので、興味のある方は見に行かれたらいかがでしょうか?